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活字中毒である。一日一文章以上読まないと苦しくなる。少しづつお薦めの本を紹介していきます

最近読んだ本


 あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。 氷の致死量 あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 バカのすすめ 倒産続きの彼女 元彼の遺言状 i(アイ) 鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・貴島柊志 はるか ルビンの壷が割れた 両刃の斧 総理にされた男 魔力の胎動  チョコレートゲーム もしも徳川家康が総理大臣になったら クラインの壺 焦茶色のパステル 99%の誘拐 アンダーリポート/ブルー 殺人現場は雲の上 夫のちんぽが入らない クスノキの番人 長生き競争! 最後の医者は桜を見上げて君を想う 【改題】明日なき暴走 半沢直樹 アルルカンと道化師 彼女は存在しない 満月の泥枕 記憶の果て デルタの悲劇 眠りの牢獄 身の上話 リラ荘殺人事件 タスキメシ 闇に香る嘘 我が心の底の光 十角館の殺人 恋のゴンドラ 冷たい手 騙し絵の牙 壁の男 ロートレック荘事件 新装版 七回死んだ男 殺戮にいたる病 名も無き世界のエンドロール 危険なビーナス 代償 ノーサイド・ゲーム シャイロックの子供たち あと少し、もう少し 負けるな、届け! 虹のふもと フォルトゥナの瞳 マスカレード・ナイト マスカレード・イブ マスカレード・ホテル スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 スマホを落としただけなのに 下町ロケット ヤタガラス 下町ロケット ゴースト 出られない五人 雪冤 ○○○○○○○○殺人事件 人魚の眠る家 ラプラスの魔女 貴族と奴隷 天上の葦 幻夏 殺人犯 プラージュ 月光のスティグマ 花咲舞が黙ってない 銀翼のイカロス 私に似た人 アキラとあきら 湖底のまつり ケモノの城 虚ろな十字架 屋上のテロリスト 暗黒女子 彼が通る不思議なコースを私も 北天の馬たち 殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件 独走 ルーズヴェルト・ゲーム ボクの妻と結婚してください。 仇敵 果つる底なき BT '63 民王 ターンオーバー 陸王 ドミノ倒し 鉄の骨 空飛ぶタイヤ 夢幻花 七つの会議 新月譚 10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦 微笑む人 別冊図書館戦争II 図書館戦争シリーズ(6) 別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) 図書館革命 図書館戦争シリーズ(4) 図書館危機 図書館戦争シリーズ(3) 図書館内乱図書館戦争シリーズ(2) 図書館戦争図書館戦争シリーズ(1) チーム? 一千兆円の身代金 幕末 まらそん侍 最後のトリック デッドヒート 殺人症候群 誘拐症候群 失踪症候群 空白の叫び ようこそ、わが家へ さよならの代わりに ロスト・ケア 被害者は誰? 迷宮遡行 流星ワゴン 天使の屍 愚行録 明日の空 灰色の虹  ナミヤ雑貨店の奇蹟 夜想 後悔と真実の色 走れ、健次郎 牛乳アンタッチャブル 水の柩 春から夏、やがて冬 銀翼のイカロス 悪党たちは千里を走る プレズム 慟哭 パラドックス13 転生 消失グラデーション 乱反射 八月からの手紙 8年 ×ゲーム 月と蟹 白銀ジャック 球体の蛇 瀬古利彦マラソンの真髄―世界をつかんだ男の“走りの哲学” 冬の喝采 運命の箱根駅伝 疾風ロンド 雀蜂 殺し合う家族 夫のカノジョ 20 モンスター カッコウの卵は誰のもの ロスジェネの逆襲 オレたち花のバブル組 オレたちバブル入行組 月の恋人 Moon Lovers ソロモンの犬 BOSS ラットマン 模倣の殺意 ボックス! 鬼の跫音 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 家族ゲーム シャドウ 花と流れ星 骸の爪 背の眼 片目の猿 公開処刑人 森のくまさん 人間の条件  龍神の雨 カラスの親指 ラストダンス 絶望ノート プラチナデータ 悪の教典 いつか白球は海へ 鳥人計画 セカンド・ラブ 王様ゲーム 臨場 王様ゲーム 終極 王様ゲーム 焔 The Flame 九月が永遠に続けば ピース 山手線デス・サーキット ミス・ジャッジ 標なき道 ヒート 殺人鬼フジコの衝動 指し手の顔―脳男2 チーム 大延長 神様のカルテ 龍は眠る 密室殺人ゲーム王手飛車取り プリンセス・トヨトミ 八日目の蝉 ダイイング・アイ 連続殺人鬼 カエル男 ユダ―伝説のキャバ嬢「胡桃」、掟破りの8年間 妻に捧げた1778話 永遠の0 赤い指 走ることについて語るときに僕の語ること 東京島 悪人 ボトルネック インシテミル 告白 ランナー 放課後 長い腕 使命と魂のリミット スイッチを押すとき 悪意 龍馬の黒幕 龍馬の船 死体を買う男 風が強く吹いている 特別法第001条 DUST 一瞬の風になれ Jの神話  少女A ライヴ リピート イニシエーション・ラブ オーデュボンの祈り むかし僕が死んだ家 おっぱいバレー?恋のビーチバレーボール編 おっぱいバレー? 名探偵の掟 パラレルワールド・ラブストーリー 天空の蜂 向日葵の咲かない夏 ある閉ざされた雪の山荘で 殺人の門 ストロベリーナイト ロンリー・ハート 陰日向に咲く 極限推理コロシアム 地獄のババぬき ガラス張りの誘拐 世界の終わり、あるいは始まり ハリー・ポッターと死の秘宝 氷の華 さまよう刃 冷たい校舎の時は止まる 悪夢のエレベーター 恋する日曜日 私。恋した NR(ノーリターン) そのケイタイはXXで 犯人に告ぐ 時の渚 硝子のハンマー 生首に聞いてみろ 片想い 残虐記 アルキメデスは手を汚さない  果てしなき渇き グロテスク 葉桜の季節に君を想うということ 太陽の塔 Aコース 女神 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 億万ドルの舞台 異常気象売ります 幻夜 QED 龍馬暗殺 神は沈黙せず 高知・龍馬 殺人街道 翳りゆく夏 白夜行 手紙 透明人間の告白 不信のとき ダ・ヴィンチ・コード 飼育する男 奇跡の人 ハリー・ポッターと謎のプリンス 神はサイコロを振らない 1リットルの涙 模倣犯 亡国のイージス 新・世界の七不思議 ハサミ男 火の粉 廃用身 脳男 バッテリー リアル鬼ごっこ 僕の彼女を紹介します 血と骨  黒革の手帖 ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 上下巻 アントニオ猪木自伝 人間の証明 動かぬ証拠 死にぞこないの青 指先の花 映画 世界の中心で、愛をさけぶ 律子の物語 世界の中心で、愛をさけぶ 解夏 よく見る夢 秘密 だめだこりゃ 白い巨塔 菊次郎とさき 迷宮遡行 バトル・ロワイアル?  鎮魂歌(レクイエム) 39? カルト 巨人の星に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ ボイス 怪文書殺人事件 青の炎 "It(それ)"と呼ばれた子 幼年期 理由 OUT ハリー・ポッターと賢者の石 ハリー・ポッターと秘密の部屋 ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 ハリー・ポッターと炎ゴブレット 冷静と情熱のあいだ 飯島愛の真実 空が落ちる(上)(下) 異形コレクション玩具館 ブリジット・ジョーンズの日記 13階段 霊感商人 ベストセラー小説の書き方 怪笑小説 毒笑小説 笑い宇宙の旅芸人 日本沈没 ヒュウガ・ウィルス  ダディ 邪馬台国はどこですか? ブラック・ジョーク大全 大人になった「矢吹ジョー」 黒い家 風の中の子供 元祖羅門堂病院 黒いカーテン 漫才病棟 水素製造法 笑え!五体不満足 宇宙衛生博覧會 爆笑問題の日本原論 日本語練習帳 あじゃ@109 お前と寝たいだけ プラトニック・セックス 20世紀語辞典 怖い日曜日 ストーカーズ 口説き方心理事典 悪趣味の本 壁抜け男 美と共同体と東大闘争 ジャズ小説 秘密の手紙箱 女子高校生誘拐飼育事件 完全なる飼育 香港情夜 バトル・ロワイアル とびっきり奇妙なこわい話 獣儀式 洗脳体験 超日本史 だからあなたも生きぬいて 虹の架け橋3時のおやつ ドグラ・マグラ 残像に口紅を 痩せゆく男 死の蔵書 龍馬死せず 謀略の本命馬 空手道ビジネスマンクラス練馬支店 新興宗教オモイデ教 火車 殺人鬼 女医 ご立派すぎて 異形コレクション15 臓器農場 小説 消費者金融 クレジット社会の罠 やぶれかぶれ青春記 白い不等式 自薦短篇集1 ドタバタ篇 近所迷惑 お聖どんアドベンチャー 狼の紋章 狼の怨歌 一身上の都合により、殺人


『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』 汐見夏衛 (スターツ出版文庫)
『中2の涼は転校先の学校で、どこか大人びた同級生・百合と出会う。初めて会うのになぜか懐かしく、ずっと前から知っていたような不思議な感覚。まっすぐで凛とした百合に涼はどんどん惹かれていく。しかし告白を決意した矢先、百合から聞かされたのは、75年前の戦時中にまつわる驚くべき話で――百合の悲しすぎる過去の恋物語だった。好きな人に、忘れられない過去の恋があったら、それでも思いを貫けますか?愛することの意味を教えてくれる感動作。』「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」の続編。続編の方は読まなくても良い感じもしたが・・・ 恩返しではなく"恩送り"が心に残った。

『氷の致死量』 櫛木理宇 (早川書房)
『聖ヨアキム学院中等部に赴任した英語教師の鹿原十和子(かばら・とわこ)は、自分に似ていたという教師・戸川更紗(とがわ・さらさ)が14年前、学院で何者かに殺害された事件に興味をもつ。更紗は自分と同じアセクシュアル(無性愛者)かもしれないと。一方、街では殺人鬼・八木沼武史(やぎぬま・たけし)が、また一人犠牲者を解体していた。八木沼は亡くなった更紗にいまだ異常な執着を持っている。そして彼の5番目の獲物は、十和子が担任する生徒の母親だった……十和子と八木沼、二人の運命が交錯するとき、驚愕の真実が! 映画「死刑にいたる病」の原作者が放つ傑作シリアルキラー・サスペンス』何で、この本を買ったのか・・・ 全く覚えていない。 誰かに、「面白いよ」とか言われてはいない気がする。 一年前、この本を読んでいる途中、目の不調に気づき、30〜40ページ読んで、それ以降、読むのを辞めてしまった。 アセクシュアルの主人公に、グロさ満点。 そういう話しなら、絶対に買わなかったのに・・・ なぜ、この本を読むようになったのか、分かるまで読もうとしたら、最後まで読んでしまった。 自分に薦めた人は誰だ? ただ、目が良くなって、2冊目を完読。
ちょっと色々と詰め込みすぎ。14年前に起きた女性教師殺人事件に、その学校に赴任してきたとても似ている主人公、性的マイノリティーや、毒親、母親に対する聖母信仰と、猟奇殺人、そして最後にどんでん返し的の真犯人。盛りだくさんすぎ。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』 汐見夏衛 (スターツ出版文庫)
『親や学校、すべてにイライラした毎日を送る中2の百合。母親とケンカをして家を飛び出し、目をさますとそこは70年前、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰に助けられ、彼と過ごす日々の中、百合は彰の誠実さと優しさに惹かれていく。しかし、彼は特攻隊員で、ほどなく命を懸けて戦地に飛び立つ運命だった――。のちに百合は、期せずして彰の本当の想いを知る…。涙なくしては読めない、怒濤のラストは圧巻!』はるちゃんのオススメ。 薦められていたけど、最初は特攻隊との恋愛物だから、なんだかな〜と思ったけど、作者が鹿児島出身という事で、これは読みたいと思い、早速、Amazonで購入。 それから、朝の通勤中に読み出したけど・・・ これが、朝なのに、どんよりとした気持ちに・・・ 朝、読むものではない。 『ありえないほど感情移行して大号泣』と、帯に・・・ 後半になればなるほど、降りる駅になると「なんて、平和なんだろう」と思う。 ここは、明日が絶対に存在する。一年後も想像できる。十年後も・・・ いつ死ぬのか分からない世界とは違う。 本当、今で良かった。 そんな感じだった。 読み始めの頃は、完全にバカにしていた。 大号泣するはずはないと。 不覚にも、朝の通勤途中で、何度かグッと来てしまった。 意外にも、若い世代で読まれているよう。 その事も救われた気持ちになった。

『バカのすすめ』 林家木久扉 (ダイヤモンド社)
『落語家生活62年、超長寿人気番組の“黄色い人"として、老若男女に大人気の林家木久扇師匠(84)。木久扇師匠といえば「バカ」が代名詞である。長年にわたってバカを貫き、バカの可能性を果敢に切り開いてきた。もちろん、実際の師匠は極めてクレバーかつ多才であり、計算し尽くした上でバカを演じバカの素晴らしさを世に伝えている。本書で伝えているのは、バカの天才である林家木久扇の「みんなから長く愛される生き方」と「人生を自分らしく生き抜く極意」。「バカになればなるほど、人は愛される、人は強くなれる」という木久扇師匠の生き方が、1冊の本としてまとめられている。世の中が息苦しさに覆われ、「生きづらさ」という言葉が広がる今こそ、木久扇師匠が強調する「バカの力」「バカになれる大切さ」は、ひときわ大きな意味を持つ。「ちゃんとしなければ」「バカと思われたら負け」という呪縛に無意識のうちにとらわれている人にとっては、自分を解き放つきっかけとなり、人生を変えるヒントや救いを与えてくれるだろう。師匠は長く険しく曲がりくねった道のりにおいて、一貫して「バカの力」を味方につけてきた。激しい空襲をくぐり抜け、苦労の多い少年時代を過ごして、漫画家になるつもりがいつの間にか落語家に。あの人気番組の大喜利メンバーとして、いかに自分のポジションを確立してきたか。その後も「ラーメン」などサイドビジネスに次々と手を出しては、成功したり失敗したりを繰り返している。2021年春の骨折だけでなく、2度のガンなど命にかかわる大病を何度も経験してきた。木久扇師匠の波乱万丈な人生を振り返ることで、師匠と「バカ」との切っても切れない関係や、バカであることの強さが明らかになってくる。そして、天才は天才を知る。木久扇師匠は、横山やすしさん、嵐寛寿郎さんなど「偉大なバカの天才」との交流も多い。常識では測れない交流っぷりには、バカの魅力があふれている。また、師匠が出会ってきたバカの天才について、知られざる横顔や本邦初公開のエピソードをたっぷり披露。その独特すぎる発想や行動に大笑いしつつ、なぜか心があたたかくなる。しかも、大切なことを教えられてしまう。さらに、この本の大きな楽しみどころであり、日本の芸能史にとって貴重な資料となるのが、木久扇師匠が「あの番組」の現在と過去の共演者&司会者について詳しく語った章。木久扇師匠ならではの視点や秘話が満載で、それぞれの個性的なバカっぷりを通して、バカについてまた新たな角度からの知見を与えてくれる。笑いながら読み進むうちに多くの学びがあり、気持ちがどんどん楽になって、もしかしたら人生観が変わってしまう…いや、間違いなく人生観が変わる一冊である。』バカのほうが世の中楽しいというのは同意します。真面目に考え過ぎちゃいけない。バカでちょうどいい。

『倒産続きの彼女』 新川帆立 (宝島社)
『彼女が転職するたび、その企業は必ず倒産する―― 婚活に励むぶりっ子弁護士・美馬玉子と、高飛車な弁護士・剣持麗子がタッグを組み、謎の連続殺「法人」事件に挑む! (あらすじ) 山田川村・津々井法律事務所に勤める美馬玉子。事務所の一年先輩である剣持麗子に苦手意識をもちながらも、 ボス弁護士・津々井の差配で麗子とコンビを組むことになってしまう。 二人は、「会社を倒産に導く女」と内部通報されたゴーラム商会経理部・近藤まりあの身辺調査を行なうことになった。 ブランド品に身を包み、身の丈にあわない生活をSNSに投稿している近藤は、会社の金を横領しているのではないか? しかしその手口とは? ところが調査を進める中、ゴーラム商会のリストラ勧告で使われてきた「首切り部屋」で、本当に死体を発見することになった彼女たちは、予想外の事件に巻き込まれて……。』今度、ドラマ化さける元彼の遺言状を読んで、また続編を読みたくなり、単行本でもAmazonで買った。剣持麗子とコンビを組むことになった美馬玉子が今回の主役。前作とは、主役が変わったのには、ビックリ。「会社を倒産に導く女」として、近藤まりあの身辺調査を行う。実際には只野さんという総務の課長に使われていただけで、裏にはトラという組織が絡んでいることが判明。トラという組織が、はっきりしなかったので、次作もありえるかも。

『元彼の遺言状』 新川帆立 (宝島社文庫)
『2021年・第19回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作 シリーズ累計55万部突破!! 全国書店で続々1位!TV・ラジオ・各誌紙でも話題に!「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と三ヶ月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家主催の「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円ともいわれる遺産の分け前を獲得すべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。他方で、彼女は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を譲り受けることになっていた。ところが、軽井沢を訪れて手続きを行ったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう……。』今回の受賞作は、女性が力強く活躍できる社会を願って、女性のために書いたようだ。文章が下手とか批判的な意見が多い中、自分的には面白く読んだ。読み終わってから、月9でドラマ化されるのを知った。綾瀬はるかが主人公で、大泉洋も出るよう。楽しみ。

『i(アイ) 鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・貴島柊志』 今邑彩 (中公文庫)
『作家・砂村悦子が殺された密室状態の部屋には、鏡の前で途絶える足跡の血痕が。遺された原稿には、「鏡」にまつわる作家自身の恐怖が自伝的小説として書かれていた。鏡のなかから見つめているのは、死んだはずの「アイ」――!? 貴島刑事が鏡に消えた殺人者に挑む、傑作本格ミステリ。』

『はるか』 宿野かおる (新潮文庫)
『賢人は幼い頃に海岸で一人の少女と出会う。彼女の名は、はるか。鮮烈な印象を残した彼女を、賢人はいつしか好きになっていた。長じて人工知能の研究者となった賢人は、あるAIを生み出す。AIの名は「HAL-CA」。それは、世界を変えるほどの発明だった――。話題沸騰のデビュー作を凌駕する、究極のアイの物語。』ルビンの壺が割れたに引き続き一気に読む。AIが進化するといつかこんな事が起こりえるのかも。

『ルビンの壷が割れた』 宿野かおる (新潮文庫)
『すべては、元恋人への一通のメッセージから始まった。 衝撃の展開が待ち受ける問題作! 「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」 ――送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりがはじまるが、それは徐々に変容を見せ始め……。 先の読めない展開、待ち受ける驚きのラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!』面白かった。衝撃のラストではあるが、あまりにも急展開で、そういうのもアリという感じ。女性がなぜ途中まで好意的にやり取りをしていたのに、徐々に変わっていくのが面白かった。「何とも分類しようのない小説」と解説にあったけど、本当そうだった。最後には「変態野郎」とは想像もしなかった。

『両刃の斧』 大門剛明 (中公文庫)
『迷宮入り事件の解決が、大切な人を傷つける。 ベストセラー『雪冤』の著者が贈る慟哭のミステリー! 十五年前に何者かに娘を殺された元刑事・柴崎。 その事件の解決を目指す後輩刑事・川澄。 ある日、自殺した警察官の遺書が見つかったことから事態は急変し、手がかりすらなかった犯人の身元が明らかになる。 だが逮捕目前に迫った時、犯人と目される男が殺された――。 元刑事の復讐殺人に世間は騒然。 しかし、犯人は本当に柴崎なのか? 事件の裏に隠された、あまりにも悲しい真実とは。 文庫書き下ろし』凄い面白かった。作者にはまったかも。奇跡的な確率が真相になるのかと思いきゃ、真相は全く予想もしていなかったものに。完全黙秘の動機も納得させられた。また、次の作品を読みたい。

『総理にされた男』 中山七里 (宝島社文庫)
『「しばらく総理の替え玉をやってくれ」―総理そっくりの容姿に目をつけられ、俺は官房長官に引っさらわれた。意識不明の総理の代理だというが、政治知識なんて俺はかけらも持ってない。突如総理にされた売れない役者・加納へ次々に課される、野党や官僚との対決に、海外で起こる史上最悪の事件!?怒涛の展開で政治経済外交に至る日本の論点が一挙にわかる、痛快エンタメ小説!』けっこう面白かった。 素人が総理になったら・・・ けっこうリアルに描かれており、分かりやすく政治について書いてあり、読みやすかった。 それにしても、最後の演説はスカッとした。 そして、エピローグ、最後のセリフは参ったな・・・ かなり無理な設定ではあったが、ここまで痛快だと、許せる範囲。

『魔力の胎動』 東野圭吾 (角川文庫)
『成績不振に苦しむスポーツ選手、 息子が植物状態になった水難事故から立ち直れない父親、 同性愛者への偏見に悩むミュージシャン。 彼等の悩みを知る鍼灸師・工藤ナユタの前に、 物理現象を予測する力を持つ不思議な娘・円華が現れる。 挫けかけた人々は彼女の力と助言によって光を取り戻せるか? 円華の献身に秘められた本当の目的と、切実な祈りとは。 規格外の衝撃ミステリ『ラプラスの魔女』とつながる、あたたかな希望と共感の物語。』「ラプラスの魔女」と前日譚の話し。全然、忘れている。「あの風に向かって翔べ」は、円華は風をよむことができ、ジャンパーが膝を悪くしてバランスを悪くしているのを見抜いた。「この手で魔球を」は、若手を育てる為に芝居をする円華、キャッチするのを見て若手が自信を取り戻す。「その流れの行方は」は、円華は川の流れをよみ、流れの早い川に飛び込もうとした元水泳選手の妻をとめた。飛び込んでいたら全員死亡だと証明。「どの道で迷っていようとも」は、ナユタもゲイだったとは・・・ 「魔力の胎動」は、子供と宝さがしだったとは・・・

『噂』 荻原浩 (新潮文庫)
『「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。』えっと思わず声が出る衝撃のラスト1行で読み始めたが、ちょっと、確かに衝撃を受けるけれども、細やかな伏線が無いのが・・・ ただ、中年刑事の小暮、本庁の美人警部補の名島のコンビが面白い。文章もどんどん読ませて、上手い感じ。荻原浩の作品、また読んでみたい気がする。覚えておこう。

『チョコレートゲーム』 岡嶋二人 (講談社文庫)
『学校という名の荒野をゆく、怖るべき中学生群像。名門秋川学園大付属中学3年A組の生徒が次々に惨殺された。連続殺人の原因として、百万単位の金がからんだチョコレートゲームが浮かび上がる。息子を失った一人の父親の孤独な闘いをたどる、愛と死のショッキング・サスペンス。日本推理作家協会賞受賞作。』スマホを使えば良いのにと思っていたら、1985年の作品だった。ラジカセとか。面白かった。

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 眞邊明人 (サンマーク出版)
『内閣全員、英雄――。 コロナを収束させ、信頼を取り戻せ! 2020年。 新型コロナの初期対応を誤った日本の首相官邸でクラスターが発生。あろうことか総理が感染し、死亡する。国民は政府を何も信頼しなくなり、日本はかつてないほどの混乱の極みに陥った。そこで政府はかねてから画策していたAIとホログラムにより偉人たちを復活させ最強内閣をつくる計画を実行する。 AIにより総理大臣に選ばれたのは、江戸幕府の創始者である徳川家康。 経済産業大臣には織田信長、財務大臣に豊臣秀吉、厚生労働大臣に徳川綱吉、総務大臣に北条政子、外務大臣に足利義満など錚々たるメンバーの中で、皮肉にも総理大臣の補佐役である官房長官に選ばれたのは、江戸幕府を終わらせた男・坂本龍馬だった。 そんな歴史に名を刻む面々で組閣された最強内閣は、迅速な意思決定で、東京ロックダウン、50万円給付金、リモート国会、令和版楽市楽座、リモート万博など、大胆な政策を次々と実行していく。最初は「過去の人間に政治ができるのか」と半信半疑だった国民も、偉人たちのえげつない決断力と実行力に次第に歓喜し、酔いしれていくが……。 時代を超えたオールスターは未曾有の危機にどう立ち向かうのか!? そして、ミッションを果たした先に待ち受けていたものとは……!? ビジネス、歴史、政治、ミステリー、 あらゆるジャンルと時代の垣根を超えた教養溢れる 新感覚エンターテインメント!!』凄い面白かった。 上大岡・横浜間の通勤中に読んでいたけど、何度か乗り越してしまいそうになる。 前に、坂本龍馬が暗殺されなかったら、日本は・・・という小説を読んだ事があるが、こういうあり得ないけど、仮想的な物語が好きな方。 作家がそれそれの偉人を知っているのか、偉人が言いそう、考えそうな行動とかが満ちあふれており、楽しみながら読んだ。 知らない偉人でも、注釈があり、分かりやすい。 歴史を知らなくても充分楽しめる。 後半の自由と不自由への考え方や川の話は勉強になった。 他人を批判し、自分を正当化するのは簡単、でも、現状的には何も変わっていない。 けっこう今、坂本龍馬ロスになっている。 オリンピックロスにもなっているが、坂本龍馬ロスの方が大きい。 これっ、ドラマ化されないかな〜 映画化でも良いけど・・・ 映画化では2時間には収まらないか。 今年一番の、というか、ここ数年の中ではダントツにオススメかも。 コロナ禍の小説でもあるけど、この様な政策をすれば、今のように感染拡大は防げるはず。 ただ、現実味がないのは、今の政治家のカリスマ性がないから。 金メダルをかじっている場合では無い。

『クラインの壺』 岡嶋二人 (新潮文庫)
『ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけでヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることになった青年、上杉。アルバイト雑誌を見てやって来た少女、高石梨紗とともに、謎につつまれた研究所でゲーマーとなって仮想現実の世界へ入り込むことになった。ところが、二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態は……。現実が歪み虚構が交錯する恐怖!』考えてみれば、携帯を持っていない昔の話しではある。写真を撮りたかったから、スマホが今ならあるのに…と思ってしまった。けっこう面白く、後半になれば、なるほど、読み進んだ。

『焦茶色のパステル』 岡嶋二人 (講談社文庫)
『ミステリー界の至宝はここから誕生した。二人で一人の作家、岡嶋二人のデビュー作にして江戸川乱歩賞受賞作。東北の牧場で牧場長と競馬評論家・大友隆一が殺され、サラブレッドの母子、モンパレットとパステルが銃撃された。隆一の妻である香苗は競馬の知識は一切持っていなかったが、夫の死に疑問を抱き、次々と怪事件に襲われる。一連の事件の裏には、競馬界を揺るがす恐るべき秘密が隠されていた。』最近、岡嶋二人にハマっている。焦茶色のパステルは乱歩賞受賞作でデビュー作。面白く読んだが、それだけだった。物足りなさを感じた。

『99%の誘拐』 岡嶋二人 (講談社文庫)
『末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第10回吉川英治文学新人賞受賞作!』中小企業の社長の夢を断った1968年の誘拐事件と、その19年後の1987年に起きた何者かによる誘拐事件。2つの事件がそれぞれ1部、2部という構成。自分的にはかなり、あっという間に話に引き込まれ、面白く読めた。これ、25年前の作品とは・・・ 凄い。

『アンダーリポート/ブルー』 佐藤正午 (小学館文庫)
『15年前、ある地方都市のマンションで男が撲殺される事件が起こった。凶器は金属バット。死体の第一発見者は被害者の隣人で、いまも地方検察庁に検察事務官として勤める古堀徹だった。事件は未解決のまま月日は流れるが、被害者の一人娘・村里ちあきとの思わぬ再会によって、古堀徹の古い記憶のページがめくれはじめる――。 古堀は事件当時、隣室に暮らすちあきの母親・村里悦子と親しい間柄だった。幼いちあきを預かることも多く、悦子が夫の暴力にさらされていた事実や「もし戒める力がどこにも見つからなければ、いまあなたがやろうとしていることは、あやまちではない」という彼女の人生観に触れる機会もあった。その頃の記憶にはさらにもう一人の女性の存在もあった。女性はある計画について村里悦子を説得したはずだ。「一晩、たった一度だけ、それですべてが終わる」と。よみがえる記憶を頼りに組み立てたひとつの仮説――交換殺人という荒唐無稽な物語が、まぎれもない現実として目の前に現れる! サスペンスフルな展開に満ちた長編小説『アンダーリポート』に加えて、新たに衝撃的なエンディングが描かれた短編小説『ブルー』を初収録した完全版。』正直、どうなんだろう。冒頭と終幕に同じ旗の台、最後まで読んだら、最初のページを読みたくなると言うが、そこまではなかった、ブルーという短編もありふれていたかな。「慎重に、用心して生きていれば、大きなあやまちからは逃れられる。注意してまわりを見れば、いまあなたがやろうとしているあやまちを戒めて、阻もうとする力がはたらいていることがわかる。その戒めの力は必ずはたらく。もしそれがどこにもなければ、いまあなたがやろうとしていることは、あやまちではない。」という所に、感銘した。

『殺人現場は雲の上』 東野圭吾 (光文社文庫)
『新日本航空の花のスチュワーデス、通称・エー子とビー子。同期入社でルームメイトという誰もが知る仲よしコンビ。容姿と性格にはかなり差がある凸凹コンビではあるけれど...。この二人が奇妙な事件に遭遇する。昼間、乗務中にお世話した男の妻が、自動ロックのホテルの室内で殺害されたのだ。雲をつかむような難事件の謎に挑む二人の推理はいかに?。短編集。ステイの夜は殺人の夜(投資マニアの大学助教授夫人が絞殺死体となって発見された。容疑者は2人存在するが、どちらにもアリバイがある。)、忘れ物に御注意ください(「ベビー・ツアー」の一行が、エー子とビー子が乗務した機内に、とんでもない忘れ物をした。赤ん坊である。新日本航空は、初めての珍事に右往左往する…。)、お見合いシートのシンデレラ(ビー子が資産家の中山に見初められた。親戚へのお披露目会にはエー子も招かれるが、何だか様子がおかしい。)、旅は道連れミステリアス(エー子とビー子が懇意にしている和菓子屋の当主が、高級とは言いかねるシティホテルの一室で、死体となって発見された。しかも、傍らにはもうひとつの死体が。)、とても大事な落し物(エー子とビー子が乗務する機内のトイレに、遺書が落ちていた。「決行」前に落とし主を見つけ出したいが、どういうわけか、その遺書には署名がない。)、マボロシの乗客(エー子とビー子が勤務する新日本航空に、不可解な脅迫電話が掛かってきた。悪戯電話の公算が大きいが。)、狙われたエー子(エー子が何者かに命を狙われたが、思い当たる節がない。)』飛行機内でたばこが吸えたり、時代を感じると思っていると、文庫本発売が1992年だった。軽いタッチで読めた。「お見合いシートのシンデレラ」と「狙われたエー子」が面白かった。。

『夫のちんぽが入らない』 こだま (講談社文庫)
『同じアパートに暮らす先輩と交際を始めた"私"。だが初めて交わろうとした夜、衝撃が走る。彼の性器が全く入らないのだ。その後も「入らない」一方で、二人は精神的な結びつきを強め、夫婦に。いつか入るという切なる願いの行方は―。「普通」という呪いに苦しみ続けた女性の、いじらしいほど正直な愛と性の物語。』なぜ出会いサイトの不特定多数男性のものはどれも入るのに、夫のものだけが入らないのかが、最後まで分からなかった。

『クスノキの番人』 東野圭吾 (実業之日本社)
『その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。 その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語。 不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった玲斗。 同情を買おうと取調官に訴えるが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまった。そこへ突然弁護士が現れる。依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるというのだ。 依頼人に心当たりはないが、このままでは間違いなく刑務所だ。そこで賭けに出た玲斗は従うことに。 依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性が待っていた。千舟と名乗るその女性は驚くことに伯母でもあるというのだ。あまり褒められた生き方をせず、将来の展望もないと言う玲斗に彼女が命令をする。「あなたにしてもらいたいこと||それはクスノキの番人です」と。 』よこさんに借りた本。読み終えた後、東野圭吾とは思えないとは言っていたが、それも納得だけど、東野圭吾は、結構読んだいるので、何となく、東野圭吾の作品と思える。最後、どのように終えるか、楽しみで読んだ。「この世に生まれるべきでなかった人間などいません。どんな人でも、産まれてきた理由があります」なかなか、良かった。玲斗の成長ぶりが、また良い。

『長生き競争!』 黒野伸一 (小学館文庫)
『「どうせなら金を賭けないか? 誰が一番長生きするか」 聡、弘、明男、正輝、博夫、規子の6人は、小学校時代からの幼なじみの76歳。全員ヒマな上、比較的元気なので、時折同窓会を開いている。しかし話題は、暗いものばかり。そんなある日、6人の中でも最も明るくマッチョな明男がそんなラテンな提案をする。皮肉にも、酔狂な賭けを通じて彼らはお互いのことをよく知るようになるのだが……。生と死、老いと人生を切なくもユーモラスに描き、高齢化社会を希望で照らす、ヒューマン・エンタテインメント。賭け金総額五千七百万円、『長生き競争!』ここに開幕。』どういう話しだったかは、書かない。 ちょっと調べてみたら、昔、トラマ化されていたようだ。 石原さとみも出演していたとは・・・ 生きていく上で、仲間というのは、必要と思わせる作品だと思った。 幸い、マラソンをやっているのでマラソン仲間、酒好きなので、呑み仲間が多い。 せっかく、生きているので、悔いの無い人生を。 思いついた事は、即実行。けっこう面白かった。

『最後の医者は桜を見上げて君を想う』 二宮敦人 (TO文庫)
『続々重版、25万部突破!本読み書店員が選ぶ「感動小説」第1位! 自分の余命を知った時、あなたならどうしますか? 死を肯定する医者×生に賭ける医者 対立する二人の医者と患者の最後の日々―― 衝撃と感動の医療ドラマ! あなたの余命は半年です――ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは? 究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか? それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生! 【文庫書き下ろし】』読みやすく、最後まで、どうなるか分からなく、面白かった。

【改題】明日なき暴走』 歌野晶午 (幻冬舎文庫)
『じつはディレクター長谷見のヤラセだったTV人気企画「明日なき暴走」内の若者たちの無軌道な行動。それを知らぬ若いネクラ美容師が若者たちと交錯し殺人鬼に変貌、凶行を重ねる。長谷見は視聴率アップを狙い暴走の末、職務停止に。だが彼は警察の裏をかき殺人鬼にコンタクト、なお映像に収めたい……。大どんでん返しに読者は戦慄し言葉を失う!(『ディレクターズ・カット』改題)』最後はどんでん返し、、と思ったら、さらに大どんでん返しで。

『半沢直樹 アルルカンと道化師』 池井戸潤 (講談社)
『東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとにとある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは。半沢直樹が絵画に秘められた謎を解く――。江戸川乱歩賞作家・池井戸潤の真骨頂ミステリー!「やられたら、倍返しだ」。明かされる真実に胸が熱くなる、シリーズの原点。大ヒットドラマ「半沢直樹」シリーズ待望の最新刊、ついに登場!』前作『銀翼のイカロス』が出てからはや7年、待ち遠しかった。一気に読んだ。

『彼女は存在しない』 浦賀和宏 (幻冬舎文庫)
『平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常は、恋人・貴治がある日突然、何者かに殺されたのを契機に狂い始める……。同じ頃妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく。その出会いが意味したものは……。ミステリ界注目の、若き天才が到達した衝撃の新領域。』確かに傑作!で特に後半から、面白かった。何がなにやら、訳が分からないうちに、最後のページにという感じで、頭がついてゆけなかった。多重人格の殺人犯は相手ではなくて自分だったというオチ

『満月の泥枕』 道尾秀介 (光文社文庫)
『主人公・凸貝二美男(とっかい・ふみお)は、自分の不注意で娘を亡くした。 妻とも別れ、いまは貧乏アパートでその日暮らしの生活。 ある夜、公園で酔いつぶれていると、誰かが池に突き落とされた音を聞く。 その後、同じ池から頭蓋骨が発見された。 近所の剣道道場の師範が行方知れずになっていることがわかり、ひょんなことから、 二美男と貧乏アパートの住人たちは、その行方を探すことになる。 アパートの住人も二美男同様、訳アリな人間ばかりだ。 ところが、どういうわけか、ほかにもこの頭蓋骨を狙っている者達がいるようで、二美男たちは逆に追われる立場になってしまう。 一体、この頭蓋骨は誰なのか? すべての謎が解け、明らかになるある男の人生――』前半から話しが複雑すぎて、後半、読み飛ばした。そんなに面白くなかった。

『記憶の果て』 浦賀和宏 (講談社文庫)
『親父が死んだ。自殺だった。俺は安藤直樹。親父が残したパソコンのなかにいるのは裕子。いや違う、あれは単なるプログラムにすぎない。でもプログラムに意識が宿ったのならば……。いったい彼女は何者なんだ! 徹底した方法意識に貫かれたテクストが読者を挑発する、第5回メフィスト賞に輝くデビュー作。』上下巻もあり、読むのに長くかかりそうだったけど、あっさり読み終わる。正直、第5回メフィスト賞取ったとは思えない。あらすじに大きな起伏がなく、少し退屈。

『デルタの悲劇』 浦賀和宏  (講談社文庫)
『ひと気のない公園の池で10歳の少年の溺死体が発見された。少年をイジメていたクラスメイトの悪童3人組は事件への関与を疑われることを恐れたが、真相は曖昧なまま事故として処理される。ところが10年後、少年の幼なじみを名乗る男が3人の前に現れ罪の告白を迫ってきた。次第に壊れゆく3人の日常。果たして少年を殺したのは誰なのか。人間の本性を暴き出し、二転三転しながら迎える衝撃の結末。予測不能の神業ミステリ!』何か、アレっと思って、まさかホモと思ったら・・・ 最後は、訳が分からず。ちなみに、作品に、浦賀和宏の本名である八木剛が登場し、作中で殺害されねが、現実でも、浦賀が他界されている。これが浦賀さんの遺作となった。

『眠りの牢獄』 浦賀和宏  (講談社文庫)
『階段から落ちた恋人・亜矢子は意識不明のまま昏睡状態に陥る。それから五年、浦賀は亜矢子の兄に呼び出され、友人の北澤・吉野と共に階下の地下室に閉じ込められてしまう。解放の条件は彼女を突き落とした人物自身の告白だった。外部で進行する「代理殺人」の本当の目的とは何か。驚愕の結末は予測不可能』電堆が自分に似ていると思って、読みやすい。しかも、同じ、和宏で親密感がある。一見全然関係のない話が交互に進んで、最後の最後で合わさる。中々、良かった。

『身の上話』 佐藤正午  (光文社文庫)
『あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選、巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。』最後、意味が分からず。語り手は誰、何がオチなのか、分からず。

『リラ荘殺人事件』 鮎川哲也 (角川文庫)
『埼玉県と長野県の境近く、かつては個人の別荘であった寮「リラ荘」を、日本芸術大学の学生七名が訪れた。その夜、橘と紗絽女の婚約発表に、学生たちは心のざわめきを抑えられなかった。翌日、リラ荘そばの崖下で屍体が発見される。横には死を意味する札、スペードのAが。そしてスペードの2が郵便受けから見つかり、第二の殺人が起こる。事件は連続殺人の様相を呈し、第三、第四の殺人が―。本格ミステリの金子塔を復刊!』これぞ本格推理小説、最後まで犯人が分からなくて面白かった。

『タスキメシ』 額賀澪 (小学館文庫)
『駅伝×料理男子。熱涙間違いなしの青春小説。陸上の名門高校で長距離選手として将来を期待されていた眞家早馬(まいえそうま・高3)は、右膝の骨折という大けがを負いリハビリ中。そんな折、調理実習部の都と出会い料理に没頭する。一学年下で同じ陸上部員の弟春馬、陸上部部長の親友助川、ライバル校の藤宮らは早馬が戻ってくることを切実に待っている。しかし、そんな彼らの気持ちを裏切って、心に傷を抱えた早馬は競技からの引退を宣言する。それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会がスタートする。 そのゴールの先に待っているものとは……。高校駅伝、箱根駅伝の臨場感溢れる描写とともに、箱根駅伝を夢見て長距離走に青春を捧げる陸上青年それぞれの思いと生き様が熱く描かれる。青年達の挫折、友情、兄弟愛・・・。熱い涙、しょっぱい涙、苦い涙、甘い涙が読む者の心を満たします。読後は爽快感と希望に溢れる熱血スポーツ小説』長距離走と料理の関連付けがあんまり・・・ 料理シーンに付け足し感を感じる。心理描写は良かったけど、後半、よく分からなかった。

『闇に香る嘘』 下村敦史 (講談社文庫)
『村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。驚愕の真相が待ち受ける江戸川乱歩賞受賞作。』江戸川乱歩賞受賞作というので読んだ。けっこう完成度はすごく高かったか、あまりにも、できすぎ。複雑に入り乱れており、凄いとは思ったが、頭がついていかなかった。エピソードがテンコ盛り過ぎているかな。

『我が心の底の光』 貫井徳郎 (双葉文庫)
『峰岸晄は五歳で伯父夫婦に引き取られ、空腹を抱えながら育った。母は死に、父は人を殺したからだった。学校では、椅子に画鋲が置いてあったり、いじめに遭った。幼なじみの木下怜菜は万引きまでさせられる晄をただ一人、案じてくれる存在だった。まったき孤独の闇の中で、晄が向かう先は――。驚愕のラストが待ち受ける、心に迫る傑作長編!』「驚愕のラスト」ととは思えず、期待はずれ。

『十角館の殺人』 綾辻行人 (講談社文庫)
『半年前、凄惨な四重殺人の起きた九州の孤島に、大学ミステリ研究会の七人が訪れる。島に建つ奇妙な建物「十角館」で彼らを待ち受けていた、恐るべき連続殺人の罠。生き残るのは誰か?犯人は誰なのか?鮮烈なトリックとどんでん返しで推理ファンを唸らせた新鋭のデビュー作品』最初に犯人をネットで知ってから読んでしまったけど、でもとうして、犯人に繋がるが分からなかった。江南は名前の通り、コナン・ドイルからとってドイルと呼ばれていたため、守須もモーリス・ルブランだと勘違いさせ、だから、ヴァンとは別人だと思い込まされる。さらに、島と本土の往復など出来ないという先入観があるため、犯人は七人の誰か、もしくは青司だと考えられていた。中々、面白かった。

『恋のゴンドラ』 東野圭吾 (実業之日本社文庫)
『里沢高原スキー場を舞台にした男女の恋の物語。7つの短編集であるが、それぞれの物語がつながっていく構成になっている。【ゴンドラ】結婚を目前に控えた広太は、婚約者には仕事だと告げて、結婚前の最後のアバンチュールとして、浮気相手の桃実と里沢高原スキー場に来ていた。浮かれた気持ちで浮気相手とゴンドラに乗った広太は、とんでもない事態に遭遇する。なんと、そのゴンドラに婚約者の美雪が乗り込んできたのだ。【リフト】同じ職場の男女6人で里沢スキー場にやってきた日田。そのメンバーの麻穂に、日田はひそかに好意を抱いていた。しかし、そのスキーに一緒に参加していた日田の親友の水城も、麻穂を狙っているような気配が・・・。だが、水城には秋菜という彼女がおり、秋菜も今回のスキーに参加していた。水城と秋菜が付き合っていることを麻穂は知らない。【プロポーズ大作戦】新しくできた彼女にプロポーズを決意した日田。水城のアイデアを受けて、サプライズのプロポーズを計画する。計画通りに物事は進行していくが、いざプロポーズを決行するというときに、とんでもない人物が現れる。【ゲレコン】自分が浮気相手だったことを知り失意に暮れる桃実は、友人の誘いでスキー場で行われるコンパ(通称「ゲレコン」)に参加することに。そこで知り合った日田に告白をされるが、桃実は「ごめんなさい」と断った。しかし、後日、桃実は思わぬところで日田と再会することに。その日田の姿を見て唖然とする。【スキー一家】月村が結婚した女性の家族には、一つ大きな問題があった。それは、彼女の父がスキー派で、スノーボードをやる人間を毛嫌いしていることだった。月村は、スノーボード派であった。そんな彼女の家族とスキーに行くことに。これは、この家族の毎年の恒例行事であった。月村は、自分がスノーボーダーであることを隠さなければならないが・・・【プロポーズ大作戦 リベンジ】日田のプロポーズを後押ししようと画策する友人の水城。水城の計画通りに事は進んでいくが、このことが水城を追い詰めることになる。【ゴンドラ リプレイ】日田と付き合うことを迷っている桃実は、日田という人間を見極めるために、日田らと再度里沢温泉スキー場に行くことに。そこで日田の人間性に好感を持った桃実は、日田と付き合うことを心に決める。そんな矢先、自分を浮気相手にした広太とその彼女が同じゴンドラに乗り込んでくる。広太に気付かれないようにしていた桃実だが、広太がとんでもないことを話し出す。それは、桃実に関することだった。』ポップな東野恋愛小説。中々、オチが面白かったが・・・

『冷たい手』 水生大海 (文庫)
『「あの日」が迫ったある日、ショッピングモールで働く朱里(あかり)のもとへ典子が一年ぶりに訪ねてきた。新進気鋭のアパレルメーカー社長・室町と、結婚の話がでているという。祝福する朱里に、典子は「私たち、幸せになっていいのかな?」と複雑な表情を見せ……。心の奥がざわつく迫真のサスペンスミステリー!』何か、面白くなさそうだったので、ネタバレのサイトで調べると「伏線が少なく、犯人にたどり着くのは難しい」「預かり飼っていたウサギから犯人の手がかりが見つかる」「、登場人物が増えて整理つかななかった」とか。1度は断念したけど、でも、最後まで読めたことは読めた。犯人は浅賀だったけど、犯人を知って読んだけど、もし、知らなかったら、ビックリしたのかも、やっぱり、ミステリーはネタバレを読むべきではない。

『騙し絵の牙』  塩田武士 (角川文庫)
『吉田大八監督で映画化&累計17万部突破!2018年本屋大賞ランクイン作。主人公は出版大手の「薫風社」で、カルチャー誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。 中間管理職でもある40代半ばの彼は、周囲の緊張をほぐす笑顔とユーモア、コミュニケーション能力の持ち主で、同期いわく「天性の人たらし」だ。 ある夜、きな臭い上司・相沢から廃刊の可能性を突きつけられ、黒字化のための新企画を探る。 大物作家の大型連載、映像化、奇抜な企業タイアップ。雑誌と小説を守るべく、アイデアと交渉術で奔走する一方、 巻き込まれていく社内政争、部下の不仲と同期の不穏な動き、妻子と開きつつある距離……。 交錯する画策、邪推、疑惑。 次々に降りかかる試練に翻弄されながらも、それでも速水はひょうひょうとした「笑顔」をみせる。 しかしそれはどこまでが演技で、どこからが素顔なのか?  やがて、図地反転のサプライズが発動する。 出版業界の現状と未来を限りなくリアルに描いた群像小説は、ラストに牙を剥く! 出版界の未来に新たな可能性を投じる「企画」で、各メディアで話題沸騰!  吉田大八監督で2020年6月映画公開。』大泉洋にモデルにしたとのことで読んでみた。大泉洋がそのまんま、ノーサイド・ゲームのように読んだ。でも、何となく、読んだけどそこまでは面白くなかった。映画で見たいかな。

『壁の男』 貫井徳郎 (文春文庫)
『ある北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。 その、決して上手ではないが、鮮やかで力強い絵を描き続けている寡黙な男、 伊苅(いかり)に、ノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが……。 彼はなぜ、笑われても笑われても、絵を描き続けるのか? 寂れかけた地方の集落を舞台に、孤独な男の半生と隠された真実が、 抑制された硬質な語り口で、伏せたカードをめくるように明らかにされていく。 ラストには、言いようのない衝撃と感動が待ち受ける傑作長篇。』著者の筆力の強さが光る。さすがだな〜 笑里ちゃんは親友の子どもだったとは・・・

『ロートレック荘事件』 筒井康隆  (新潮文庫)
『夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か?アリバイを持たぬ者は?動機は?推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未到のメタ・ミステリー。』ところどころで感じる違和感が最後に分かり、納得です。修と重樹、一人だと思っていたのだ。あとから、修って誰と思ってしまた。再度、読み返すには、エネルギーいるので、再度は読まない。誰が誰に話しているのか?会話のやりとりが非常にわかりづらいこと。

『新装版 七回死んだ男』 西澤保彦 (講談社文庫)
『高校生の久太郎は、同じ1日が繰り返し訪れる「反復落とし穴」に嵌まる特異体質を持つ。資産家の祖父は新年会で後継者を決めると言い出し、親族が揉めに揉める中、何者かに殺害されてしまう。祖父を救うため久太郎はあらゆる手を尽くすが――鮮やかな結末で読書界を驚愕させたSF本格ミステリの金字塔!』1周目では死ななかったはずの人間が、2周目から死んでいく。3周目、4周目と違う行動をとっても死んでしまう。そして試行錯誤して9周目を迎えたときには死なないから、タイトル通り、7回死んだ男なのか…と思っていたら、見事にやられた。良くできたストーリーだった。

『殺戮にいたる病』 我孫子武丸 (講談社文庫)
『永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。 』最後のオチが分からず。なんで40歳なんだと、最後はあれっと思った。あとでネットを読むと、雅子の息子は稔でなく、稔は雅子の夫。雅子の息子は信一。ビニール袋は父・稔から入手したのを自室に置いていたのだ。

『名も無き世界のエンドロール』 行成薫 (集英社文庫)
『ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは、「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した―。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?大いなる「企み」を秘めた第25回小説すばる新人賞受賞作』時間軸がバラバラで非常に読みにくかった。「一日あれば、世界は変わる。二日あったら宇宙がなくなってもおかしくない」。最初はリサにプロポーズすると思っていたが、まさかのまさか・・・ プロポーズ大作戦の真意(亡くなったヨッチにあの世でプロポーズをするためなの)にはビックリ。とにかく、伊坂幸太郎ぽく、好きではない。文章も退屈してしまった。

『危険なビーナス』 東野圭吾 (講談社文庫)
『弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である弟の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てば経つほど、彼女に惹かれていく。』凄い面白かった。やっぱり、東野圭吾という作品。それにしても、まさかの潜入捜査官だったとは・・・ 怪しいとは思っていたけど、まさかそこに行くとは・・・それに主人公の嫉妬や妄想、呆れるほど描かれている。

『代償』 伊岡瞬 (角川文庫)
『平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、一転、不幸な境遇に陥る。寿人という友人を得て苦境を脱し、長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込んだ“私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。かつての友情に免じて、私の弁護をしていただけないでしょうか”。裁判を弄ぶ達也、追いつめられた圭輔。事件を調べ始めた寿人は、証言の意外な綻びを見つけ、巧妙に仕組まれた罠をときほどいてゆくが―。『教室に雨は降らない』の気鋭による、クライムサスペンス! 』何か、もの凄く気持ち悪い小説。どうしょうもない悪党、何か、読んでいてムカムカするが引き込まれる。達也と道子は、嫌悪感なるくらい胸糞が悪くなる。設定はとても面白いので、次ぎにどういう展開になるのか、分からなく、面白かった。

『ノーサイド・ゲーム』 池井戸潤 (ダイヤモンド社)
『未来につながる、パスがある。大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。アストロズを再生せよ―。ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーの再建に挑む。』ラグビー物は興味なかったけど、テレビ化されていたので、本を買って読んだ。ラグビーは全く分からなくても、最後のプレーはかなり熱くなった。けっこう面白かった。試合が終われば敵も味方もない。まさにノーサイド、その精神は好きだな…

『シャイロックの子供たち』 池井戸潤 (文春文庫)
『「現金が足りないんです」。銀行の支店で起こった現金紛失事件。捜索の結果、当日の日付の入った札束の帯封が女子行員のショルダーバッグの中から発見され、疑いがかかる。女子行員は盗ったことを否定し、ミスを隠したい銀行は支店長らが金を出し合って補填をすることに。そのうち、別の男性行員が失踪――。 東京第一銀行長原支店――中小企業や町工場がひしめき合う場所に立地し、それらの顧客を主な取引先とする銀行を舞台に、?たたき上げ?の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤を描く。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇』長編だと思って読んでいたら、どうやら短編。短編でもなくなり、連作みたいな・・・ けっこう面白い。銀行レースから徐々に次のページをめくるのがたのしみになってきた。最後、真相がどうなんだろうと、思った。登場人物が多く、ごちゃごちゃになってしまったが、面白いと思った。

『あと少し、もう少し』 瀬尾まいこ (新潮文庫)
『陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが…。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。 』けっこう面白かった。それぞれの登場人物の描写や心理がが各区間の走者ごとに、描かれ、よく出来ている。

『負けるな、届け!』 こかじさら (双葉文庫)
『二十五年勤続にもかかわらず理不尽な理由でリストラされた小野寺かすみ。仕事が好きで頑張ってきたプライドはずたずたに。そんな折、友人から誘われた東京マラソンの応援で心を動かされ、勢いでランニングシューズを買ったが…。たったひとりでも応援してくれる人がいれば頑張れる。エールを贈ることで自分を奮い立たせられる。かすみはマラソンを通して大切なことに気づき、新たな人生の第一歩を踏み出す。読めば元気がもらえる“応援小説”誕生!』まさか、自分が突然出てくるとは・・・ しかも、だぶん、自分がそうやってしまうだろう・・・ フルマラソンを初めて走った時、自分もゴール後、何かが変わると思っていた。変わったのは、ありえない筋肉痛。ところが、走ることによって、少しづつ何かが良い方向に変わってゆく。

『虹のふもと』 堂場瞬一 (講談社文庫)
『球界を代表するピッチャーとして海を渡り、MLBでも活躍した川井秀人。45歳となった今も、日本の独立リーグで現役を続ける。リーグはエクスパンションを決定。川井はハワイのチームに移籍する。待っていたのは、かつて「棄てた」一人娘の美利だった。独立リーグを足がかりに、「メジャー」を目指す若い選手やフロント陣の野心。その中で、元一流選手が「現役プロ」にこだわり続ける意味とは――。堂場スポーツ小説の最前線』ちょっと尻切れトンボな感じ。そんなに面白いとは思わなかった

『フォルトゥナの瞳』 百田尚樹 (文庫)
『幼い頃に家族を火事で失い天涯孤独の身となった木山慎一郎は友人も恋人もなく、自動車塗装工として黙々と働くだけの日々を送っていた。だが突然「他人の死の運命」を視る力を手に入れ、生活は一変する。はじめて女性と愛し合うことを知った慎一郎の「死の迫る人を救いたい」という思いは、無情にも彼を窮地へと追いやり…。生死を賭けた衝撃のラストに心震える、愛と運命の物語 』一気に読了できたが、読後感はイマイチだった。設定自体は凄く面白いと思うが、何かもう一歩欲しい。

『マスカレード・ナイト』 東野圭吾 (集英社)
『累計300万部突破 「マスカレード」シリーズ最新作。 若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた一通の密告状。犯人は、コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す!? あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再び――。』全てが伏線として心地よく収束していく流れは流石。凄い面白かった。仲根(牧村)緑の正体が、実は男というのは衝撃。br>
『マスカレード・イブ』 東野圭吾 (集英社文庫))
『『「マスカレード」シリーズ』の第2作で、前作『マスカレード・ホテル』の前日憚となる連作短編集。2013年に『小説すばる』で発表された2編と、2014年に発表した1編に加えて、書き下ろしの「マスカレード・イブ」が収録され、前作からの主人公コンビ・新田と尚美が出会う前の、2人の新人時代も含めたそれぞれのストーリーや、前作で触れられていた台詞や場面に関するエピソードも明かされている。東野の提案で単行本化を経ずにいきなり文庫として刊行され、発売から約1か月半で発行部数100万部を記録した。コルテシア東京に就職して4年目の新米フロントクラーク・山岸尚美の前にかつての元彼・宮原隆司が客としてやってくる。元プロ野球選手のタレント・大山将弘のマネージャーとして彼と共にチェックインした宮原はその日の夜、尚美に愛人が自殺を仄めかして失踪してしまったと相談する。愛人が以前に自殺未遂騒ぎを起こしていることから予断を許さない状況の中、あくまで妻や会社に内密にしたいという宮原の意向を受けて尚美は、宮原が仕事の関係で海外に経つ明日までに愛人の捜索を開始する。やがて次々と高価なルームサービスを注文するプレジデンシャル・スイートの客の存在から、この騒動に関わる様々な人間達の仮面の下の素顔を垣間見ることになる。』マスカレードシリーズのエビソードゼロと言った感じ。山岸尚美と新田浩介が出会う前のお話で、凄い興味深く読んだ。マスカレード・ホテルをまた読み返したくなる。

『マスカレード・ホテル』 東野圭吾 (集英社文庫)
『東京都内で3件の予告殺人事件が起きた。事件現場に残された不可解な暗号から、3つの事件は連続殺人事件として捜査される。警視庁の捜査本部は、数列の暗号が次の犯行現場を予告するものであると解読し、第4の殺人は高級ホテル「ホテル・コルテシア東京」で起こると推測する。 数名の捜査員が、第4の事件を未然に防ぐ為フロントスタッフやベルボーイに扮してホテルに配置され、不慣れなホテルマンとしてのホテル業務に悪戦苦闘しつつ、不審な宿泊客を監視する事を強いられる。捜査一課の刑事・新田浩介は、英語ができる帰国子女であることから、同ホテルのフロントスタッフに扮することになり、新田の補佐・教育係には、優秀なフロントクラークの山岸尚美が任命された。 立場も職業倫理も異なることから、潜入捜査が始まった段階では衝突の多い2人だったが、共にホテルマンとして、時には捜査員としての目線を互いに共有しながら、日常起こるホテル内での悲喜交々の出来事に対峙していくうち、二人の間には信頼と共闘意識が生まれる。そして、捜査本部がこれまでにない厳戒体制を敷いた、ある特別な1日が始まった。』キムタクが主演で映画になるという。読みながら、この刑事には似合わないと思っていたけど、中盤から、プライド高いところから、役的にピッタリと思った。

『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』 志駕晃 (宝島社文庫)
『神奈川県警生活安全サイバー犯罪対策課の桐野良一はあるPCから、死体で見つかった女の情報を探っていた。そのPCは、「丹沢山中連続殺人事件」の犯人のものだった。秘密を探るうち、犯人は桐野にある取引を持ちかけ―。その頃、巨額の仮想通貨流出事件が発生。セキュリティ会社で働く美乃里のもとに、ハッカーらしき男からコンタクトがあり…。情報化社会の恐怖を描くサイバー・サスペンス! 』評判を呼んだ前作の続編。前作よりも続編の方が倍ぐらい面白かった。神奈川県警のサイバー対策担当刑事・桐野良一は、連続殺人犯・浦井光治の知恵を借りて、別の連続殺人や仮想通貨流出事件を探る。凶悪殺人犯に協力させるという設定が、そもそも現実離れ。前作同様、視点がコロコロと変わる所は、面白いが、明らかにミスリードを狙ってる。完全に、Bの方は、桐野が追っているMだと思った。

『スマホを落としただけなのに』 志駕晃 (宝島社文庫)
『第15回『このミステリーがすごい! 』大賞・隠し玉作品は、二転三転する恐怖のサイバーサスペンスです! 麻美の彼氏の富田がスマホを落としたことが、すべての始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる狂気へと変わっていく。いっぽう、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され…… 』スマホが拾った男が、パソコンを駆使して個人情報を拾い出し、麻美に近づいていく展開はリアルでスリリング。奇妙な出来事に次第に恐怖を感じていく麻美の姿も、真に迫る。物語に惹き込れていった。ただ、後半、真相が明らかになるくだりは、ちょっと期待外れ。あまりにも、急展開。しかも、動画再生の流れを、視点を替えて2回も繰り返すのが、不思議だった。

『下町ロケット ヤタガラス』 池井戸潤 (小学館)
『018年10月放映、ドラマ「下町ロケット」(TBS日曜劇場)新シリーズの原作小説『下町ロケット ゴースト』に連なる、「宇宙から大地」編、クライマックスへ――! 社長・佃航平の閃きにより、トランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。果たしてその挑戦はうまくいくのか――。ベンチャー企業「ギアゴースト」や、ライバル企業「ダイダロス」との“戦い"の行方は――。帝国重工の財前道生が立ち上げた新たなプロジェクトとは一体――。そして、実家の危機に直面した番頭・殿村直弘のその後は――。大きな挫折を経験した者たちの熱き思いとプライドが大激突!  準天頂衛星「ヤタガラス」が導く、壮大な物語の結末や如何に! ? 待望の国民的人気シリーズ第4弾! ! 』裏切られでも、最後には農業のために助ける佃社長。凄い、面白かった。

『下町ロケット ゴースト』 池井戸潤 (小学館)
『大人気シリーズ、待望のシリーズ第三弾!宇宙(そら)から大地へ。いま、佃製作所の新たな戦いの幕が上がる!2015年に放映されたドラマ「下町ロケット」(TBS日曜劇場)の大ヒットも記憶に新しい、「池井戸潤、絶対の代表作」に待望のシリーズ第三弾が登場!倒産の危機や幾多の困難を、社長の佃航平や社員たちの、熱き思いと諦めない姿勢で切り抜けてきた大田区の町工場「佃製作所」。しかし、またしても佃製作所は予期せぬトラブルにより窮地に陥っていく。いまや佃製作所のシンボルとなったロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工の業績悪化、主要取引先からの非情な通告、そして、番頭・殿村に訪れた危機――。そんな絶体絶命のピンチを切り抜けるため、佃が下した意外な決断とは・・・・・・。大きな挫折を味わってもなお、前に進もうとする者たちの不屈の闘志とプライドが胸を打つ! 大人気シリーズ第三弾!』前編みたいな感じ。テレビ放送中だけど、テレビは、前編と後編を一緒に合わせた感じになっているような。ギアゴースト社長、何か、最後に思いがけない展開で復讐に取り憑かれている感じで終わる。どうなってしまうか・・・

『出られない五人』 蒼井上鷹 (祥伝社文庫)
『廃ビル地下のバーに男女六人と死体が二つ。急逝した作家を偲び、彼の馴染みだった店の跡で一晩語り明かそうという企画のはずだったのに、死体が出てくるわ、闖入者まで出てくるわで、事態は混迷の極みに。なのに、参加者は皆、地下から「出たくない」という!?秘密と誤解にちょっとした偶然が重なって、とんでもない方向へと転がっていく、密室エンターテインメント! 』どう話しが転がっていくか・・・ どうも、文章がうまくなく、分かりづらい。

『雪冤』 大門剛明 (角川文庫)
『平成5年初夏―京都で残虐な事件が発生した。被害者はあおぞら合唱団に所属する長尾靖之と沢井恵美。二人は刃物で刺され、恵美には百箇所以上もの傷が…。容疑者として逮捕されたのは合唱団の指揮者・八木沼慎一だった。慎一は一貫して容疑を否認するも死刑が確定してしまう。だが事件発生から15年後、慎一の手記が公開された直後に事態が急展開する。息子の無実を訴える父、八木沼悦史のもとに、「メロス」と名乗る人物から自首したいと連絡が入り、自分は共犯で真犯人は「ディオニス」だと告白される。果たして「メロス」の目的は?そして「ディオニス」とは?被害者遺族と加害者家族の視点をちりばめ、死刑制度と冤罪という問題に深く踏み込んだ衝撃の社会派ミステリ、ここに誕生!第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞W受賞作。』あらすじは、平成5年の夏の初め、京都で殺人事件が起こる。被害者は、あおぞら合唱団に所属する長尾靖之と沢井恵美で、2人とも刺殺されていた。その容疑者として逮捕されたのは、2人が所属する合唱団の指揮者を務める八木沼慎一。慎一は一貫して容疑を否認し、裁判・法廷の場でも無罪を主張するも、最終的には死刑が確定し、慎一は死刑囚となってしまう。 事件発生から15年後の時効寸前、そんな息子の冤罪・無実を訴える慎一の父の悦史の元に、“メロス”と名乗る人物から「自首したい。自分は共犯で、真犯人は“ディオニス”だ」と連絡が入ると同時に、このような告白を受ける。(実際は“ディオニス”について告白を受けるのは菜摘で、内容も「自首できないのはディオニスのせいだ」という表現であって、共犯だと直接言ってはいない) 死刑制度という重いテーマで、語りが退屈したが、凄い面白かった。完成度の高いデビュー作。最後まで、どんでん返しに次ぐどんでん返し。

『○○○○○○○○殺人事件』 早坂吝 (講談社ノベルス文庫)
『アウトドアが趣味の公務員・沖らは、フリーライター・成瀬のブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島で毎年オフ会を行っていた。沖は、今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていたが、成瀬が若い恋人を勝手に連れてくるなど波乱の予感。孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が!さらには意図不明の密室が連続し…。果たして犯人は?そしてこの作品のタイトルとは?  第50回メフィスト賞受賞作』どうも、盗撮をなぜそんなに必要以上に神経質に怒るのか、違和感があった。そして、風呂場でこそっとのぞき見る場面とか。それが伏線になっていたとは。孤島でないと設定が難しかしい。まさかの、ヌーディストだったとは。そこに来るとは、思わなかった。ビーチで、女性の水着の描写がなかったのが違和感があったけど、まさかの…

『人魚の眠る家』 東野圭吾 (幻冬舎文庫)
『「娘の小学校受験が終わったら離婚する」。そう約束していた播磨和昌と薫子に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れた―。病院で彼等を待っていたのは、“おそらく脳死”という残酷な現実。一旦は受け入れた二人だったが、娘との別れの直前に翻意。医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気とも言える薫子の愛に周囲は翻弄されていく。 』どうかと思う。そんなに面白くなかった。ミステリー的要素を期待して読んだが、完全に肩透かし

『ラプラスの魔女』 東野圭吾 (角川文庫)
『"円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。 作家デビュー30年、80作目の到達点。これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。そしたらこんな作品ができました。』とても面白く読み進めていたけど、最後が。無理な設定過ぎたか。天候や流体運動などを予測する能力が異常に発達した少女を巡る物語。何となく、すぐに忘れそうな・・・読んだ後に残るものは少ない。

『貴族と奴隷』 山田悠介 (幻冬舎文庫)
『「貴族の命令は絶対! 」――盲目の少年・伸也は、共に拉致された中学生たちと30人、この世の地獄に放り込まれた。「貴族」と「奴隷」に分けられ、劣悪な環境での強制労働。つきまとう死の恐怖。異常な環境で、少年たちの感覚は麻痺し、大切な友人までが壊れていく。伸也は誰より過酷な扱いを受けるも、優しさを失わなかったが、ついに……』設定は面白かったが、それだけの話し。つまらない。主人公が盲目という設定は、何か意味があったのか。なんのためのシミュレーションなのかも分からなかった。太田愛の本を読んで、すぐにこの本を読んだからか、読んで損した気分。

『天上の葦』  (角川書店)
『白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。死の間際、正光はあの空に何を見ていたのか。それを突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。そして老人が死んだ同じ日、ひとりの公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる停職中の刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀……。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!? 鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。感動のクライムサスペンス巨編! 』『犯罪者』では修司が、『幻夏』では相馬が中心だったが、今作品では鑓水が中心になる。最近、太田愛にハマっていた。 相棒の脚本家で知られているけど、小説も凄い面白い。 『犯罪者 クリミナル』『幻夏』と文庫本で読んで、単行本の『天上の葦』と読もうとするが、本屋で探せない。 アマゾンで取り寄せてまで、読んだ。 結構、登場人物が出てくるし、上下巻なので、じっくり読みたいので、メモしながら読んだので、完読したのが二が月ぐらい掛かった。 一見関係のない伏線がちりばめながら、無駄なストーリーだと思っていたことが、後で繋がってゆく。 何度も読み返したりして、凄い、楽しませてもらった。 小さな火なら消せる。大火になったらもう消せない。 まさにそうなのかも・・・ ふと、TOKIOの山口達也、もし仮に、嵌められていたら・・・ まさに、この作品のように見せしめだったらと思うと・・・ なんて、考えながら読んだ。メモ

『幻夏』 太田愛 (角川文庫)
『毎日が黄金に輝いていた12歳の夏、少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と姿を消した。23年後、刑事となった相馬は、少女失踪事件の現場で同じ印を発見する。相馬の胸に消えた親友の言葉が蘇る。「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」あの夏、本当は何が起こっていたのか。今、何が起ころうとしているのか。人が犯した罪は、正しく裁かれ、正しく償われるのか?司法の信を問う傑作ミステリ。日本推理作家協会賞候補作。』太田愛は凄い。最後がどうなってゆくのか、全く分からない。読み進みにつれて、真実が分かってくる。伏線もいろんな所に散りばめられており、これほど完璧な小説は久し振り。尚の正体や、拓の殺人・・・ 母が探偵を雇う動機も切ない。次回作、単行本だけど、ついアマゾンで買ってしまった。

『殺人犯』 太田愛 (角川文庫)
『白昼の駅前広場で4人が刺殺される通り魔事件が発生。犯人は逮捕されたが、ただひとり助かった青年・修司は搬送先の病院で奇妙な男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか。はみだし刑事・相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人で博覧強記の男・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追う』凄い面白かった。山だらけという印象。この作者、女性だというのにビックリし、相棒の脚本家。だから、読んでいて、映像が浮かぶんだ。上下巻あるのに、中だるみはなく、次々にページがめくれてしまう。それでいて、どの登場人物も丁寧に描かれ、感情移入をはかれるようにしている。サスペンス満点、凄い面白かった。交錯していた多数の登場人物がようやくまとまって、話が見えてくる。鑓水の計画がすべて成功しなかったのが、リアリティがあり、良い意味で裏切られた。デジカメとか取られたの痛い。最高の小説なので、幻夏や天上の葦もすぐに読みたい。

『プラージュ』 誉田哲也 (幻冬舎文庫)
『あるシェアハウスに住む、厄介者たちの物語。 悪と正義、法と社会、加害者と被害者……。読む者の常識や既成概念を揺るがす、新たなエンターテイメント小説。たった一度、魔が差した結果、仕事も住む場所も失ったサラリーマンの貴生。やっと見つけたシェアハウス「プラージュ」で、人生やり直す決意をするも、個性豊かな住人の面々に驚かされることばかりの毎日。さらに、一人の女性住人にあることを耳打ちされて……。住人たちのそれぞれの秘密が明かされる時、新たな事件が起きる。 』各住人の視点で物語が進む。彰(潜入記者)が、実は友樹が冤罪になった友人を殺害した犯人だった展開は予想外。記者は彰のような気がしていたけど、冤罪の人が友樹とは思えなかったので、少しビックリ。記者が殺人者だったことは、なぜ、彰が友樹に拘っていたのか、それで納得。

『月光のスティグマ』 中山七里 (新潮文庫)
『幼馴染の美人双子、優衣と麻衣。僕達は三人で一つだった。あの夜、どちらかが兄を殺すまでは―。十五年後、特捜検事となった淳平は優衣と再会を果たすが、蠱惑的な政治家秘書へと羽化した彼女は幾多の疑惑に塗れていた。騙し、傷つけ合いながらも愛欲に溺れる二人が熱砂の国に囚われるとき、あまりにも悲しい真実が明らかになる。運命の雪崩に窒息する!激愛サバイバル・サスペンス。 』どんでん返しが無かった。でも、二人の関係が、凄い気になったけど・・・ まさか、援助交際していたとは・・・ しかも、最後には、死んでしまうのが、斬新。ある意味、驚いた。後半の展開が早すぎたけど、中々。面白かった。

『花咲舞が黙ってない』 池井戸潤 (中公文庫)
『その日、東京第一銀行に激震が走った。頭取から発表されたライバル行との合併。生き残りを懸けた交渉が進む中、臨店指導グループの跳ねっ返り・花咲舞は、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまう。隠蔽工作、行内政治、妖怪重役…このままでは我が行はダメになる!花咲舞の正義が銀行の闇に斬り込む痛快連作短篇。』チラっと登場する半沢直樹が楽しい。紀本平八も出てきて、合併前の様子が分かり、かなり読んでいて面白かった。

『銀翼のイカロス』 池井戸潤 (文春文庫)
『頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500億円もの債権放棄を要求する政府の再生タスクフォースと激突する。シリーズ史上最大の倍返し』単行本を前に買って読んでいたのに、買ったのを忘れ、途中まで、読んでいたのを忘れて、面白く読んでいた。

『私に似た人』 貫井徳郎 (朝日文庫)
『小規模なテロが頻発するようになった日本。ひとつひとつの事件は単なる無差別殺人のようだが、実行犯たちは一様に、自らの命をなげうって冷たい社会に抵抗する“レジスタント”と称していた。彼らはいわゆる貧困層に属しており、職場や地域に居場所を見つけられないという共通点が見出せるものの、実生活における接点はなく、特定の組織が関与している形跡もなかった。いつしか人々は、犯行の方法が稚拙で計画性もなく、その規模も小さいことから、一連の事件を“小口テロ”と呼びはじめる―。テロに走る者、テロリストを追う者、実行犯を見下す者、テロリストを憎悪する者…彼らの心象と日常のドラマを精巧に描いた、前人未到のエンターテインメント』小口テロにかかわる人々の全10篇の連作短編集。テロの被害者のもと恋人、加害者、その関係者、公安刑事、テロを追うもの、踊らされるもの等、実に多様な人々が描かれいる。それぞれの話しにストーリーがあり、別のストーリーと少しつながっているが、、独立した話として成り立っているのが良かった。第151回直木賞候補作に選ばれている

『アキラとあきら』 池井戸潤 (徳間文庫)
『零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった―。感動の青春巨篇。』凄い、感動物。あまり、期待せずに読んでいたけど、二人の主人公の小学生から30年の生き様、一つの小説とは思えないぐらいの厚みのある話しは傑作としか思えない。最初は、二人が敵対関係になるかと思ったけど、味方同士だった。敵は、宿命というか… 後半なるほど、展開が早くなるので、飽きさせない。厚い文庫本(700ページを超える長編)でも、あっという間に読んだ。「敗北宣言は勝利宣言の何倍も勇気がいる」という言葉が印象的だった。「人のために金を貸せ」とまさに、倒産を経験したバンカーだな。

『湖底のまつり』 泡坂妻夫 (創元推理文庫)
『旅先で突然増水した川に流された若い女性紀子は、投げられたロープに縋り救助された。その夜助けてくれた若者晃二に身をまかせるが、翌朝彼の姿は消えていた。祭で賑わう神社で晃二の消息を問うと、ひと月前に毒殺されたのだと告げられる。では昨日の人物は何者なのか。文学的香気を漂わす描写のうちに著者の仕掛けた謎があなたを惑わす』幻想的な雰囲気が、情景を難しくさせて、のめり込めなかった。それで、まさかのレズ。伏線の回収は上手くいっているけど、とにかく、読みづらかった。

『ケモノの城』 誉田哲也 (双葉文庫)
『17歳の少女が自ら警察に保護を求めてきた。その背景を探る刑事に鑑識から報告が入る。少女が生活していたマンションの浴室から、大量の血痕が見つかったのだった。やがて、同じ部屋で暮らしていた女も警察に保護される。2人は事情聴取に応じるが、その内容は食い違う。――圧倒的な描写力で描く事件は、小説でしか説明する術をもたない。著者の新しいステージを告げる衝撃作!』凄いエグイのに、読んでいける。北九州・連続監禁殺人事件がモデルとなっている作品は二作目。こっちの方がエグイけど、読みやすかった。ただ、結末が何か、よくわからない。“ケモノ”の城、タイトルの意味合いが恐い

『虚ろな十字架』 東野圭吾 (光文社文庫)
『別れた妻が殺された。もし、あのとき離婚していなければ、私はまた遺族になるところだった。東野圭吾にしか書けない圧倒的な密度と、深い思索に裏付けられた予想もつかない展開。私たちはまた、答えの出ない問いに立ち尽くす』冒頭の中学生の初恋が、数ページで終わってしまい、その後の事件とどの様につながっていくのかと、気になりながら読んだ。色々な事が盛り沢山に書きこまれている。東野圭吾でなければ書けない作品だったかも

『屋上のテロリスト』 知念実希人 (光文社文庫)
『一九四五年八月十五日、ポツダム宣言を受諾しなかった日本はその後、東西に分断された。そして七十数年後の今。「バイトする気ない?」学校の屋上で出会った不思議な少女・沙希の誘いに応え契約を結んだ彰人は、少女の仕組んだ壮大なテロ計画に巻き込まれていく!鮮やかな展開、待ち受ける衝撃と感動のラスト。世界をひっくり返す、超傑作エンターテインメント! 』帯の「あなたは100回騙される」に本を買ってみたけど… ご都合主義的で、物足りない。ただ物語のスケールはでかく、ヒロインの沙希の行動力がすごいと思った。

『暗黒女子』 秋吉理香子 (双葉文庫)
『聖母女子高等学院の文学サークルの第61回定例会は、毎年恒例の闇鍋をしながらの自作小説の朗読会であった。いつもは小説のテーマは自由だが、今回は現会長の澄川小百合により、「前会長・白石いつみの死」がテーマに設定された。各メンバー内の小説の内容は、他のメンバーが犯人であると告発し合うような内容であった。』それぞれのメンバーの話には相違があり、最後のオチが気になった。誰がいつみを死に至らしめたか・・・ 時々、中盤辺りで、全員かな〜と思ったけど、まさかの・・・ 後で考えると、つじつまが合っているような・・・ それしか考えられない。やられた・・・ 闇鍋、こんなに恐い物だったとは・・・ あと、イヤミス(嫌な気分させるミステリー)という言葉あったとは・・・

『彼が通る不思議なコースを私も』 白石一文 (集英社文庫)
『人は彼のことを“神の子"と呼ぶ――学習障害を持つ子どもたち。世界を変えようと決意するひとりの教師。彼の目に映る、人間の未知なる可能性とは。直木賞を受賞した『ほかならぬ人へ』をはじめ、“運命"をめぐる数々の名著を物した著者が、生への根源的な問いを放つ、渾身の一作。「本物の時間というのは、絶えず伸びたり縮んだりしているんだよ。人間はみんなひとりひとり、持っている時間の長さが違うんだ」――友人がビルから飛び降りようとしている現場で、霧子は黒ずくめの不思議な男と出会った。彼は修羅場の最中、気づけば消えるようにいなくなってしまった。彼の名前は椿林太郎。学習障害児の教育に携わる、抜群に優秀ですこし変わった小学校教師。霧子はひょんなことから彼と知り合うことになり、魅かれていくが、実は彼には知られざる不思議な能力があって……』不思議な印象の残る作品。

『北天の馬たち』 貫井徳郎 (角川文庫)
『横浜・馬車道にある喫茶店「ペガサス」で働く毅志は、二階に探偵事務所を開いた皆藤と山南の仕事を手伝うことに。しかし、付き合いを重ねるうちに、毅志は皆藤と山南に対してある疑問を抱いていく……』最後は、どう終わるのかと思ったら、普通に終わる。

『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』 清水潔 (新潮文庫)
『犯人が野放しになっている? 「桶川ストーカー事件」を手掛けた記者が迫る! 5人の少女が標的になった知られざる大事件。それを追う記者が直面したのは、杜撰な捜査とDNA型鑑定の闇、そして司法による隠蔽だった――。執念の取材で冤罪「足利事件」の菅家さんを釈放へと導き、真犯人を特定するも、警察は動かない。事件は葬られてしまうのか。5年の歳月を費やし、隠された真実を暴きだす衝撃作』タイトルと表紙を隠して売られたので、つい手に取る。ノンフィクション,記者の取材力に脱帽。後半、飛ばし読みになったけど、熱すぎる文章に、ちょっと・・・

『独走』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『国家に管理・育成されるアスリートの苦悩。オリンピック柔道金メダルを花道に引退した沢居弘人は、スポーツ省から特別強化指定選手「SA」の高校生・仲島雄平のサポートを命じられる。陸上長距離で日本記録を更新する反面、メンタルが弱い仲島の意識改革が狙いだった。次回五輪での金メダル倍増計画を国策に掲げ、アスリートを管理育成する体制に違和感を覚えながら、仲島は練習に励むが…。 』なかなか面白かった。レースが最後どうなったか、分からないけど、おそらく好タイムで優勝だったのでは・・・

『ルーズヴェルト・ゲーム』 池井戸潤 (講談社文庫)
『中堅電子部品メーカーの青島製作所は世界的な不況とライバル企業であるミツワ電器の攻勢を受け、経営は青息吐息の状態であった。そのような青島製作所の苦境の象徴が、青島製作所の野球部であった。社会人野球の強豪チームとして名をはせたかつての栄光は既に失われ、ライバルのミツワ電器野球部の後塵を拝し、対外試合ではほとんど勝ちをおさめられない状態まで野球部は落ちぶれていたのである。さらに野球部監督の村野三郎が主力二選手を引き抜いて、ライバルのミツワ電器野球部に寝返るという事件まで起こり、青島製作所の役員会では野球部廃止の声まであがる始末であった。野球部部長をつとめる、三上文夫総務部長は野球部存続のために奔走する一方、知人の日本野球連盟の理事に後任監督の推薦を依頼する。やがて、その理事から後任監督として、かつて新設高校で野球部監督をつとめていた大道雅臣が推薦される。大道は監督に就任するや、大胆な選手の入れ替えやポジションの変更をおこなう。大道のやり方にベテラン選手たちは不満の声をあげるが、大道は膨大なデータを駆使して理路整然と反論し、選手たちを心服させる。しかし、大道の野球部再建はいきなり挫折を味わうこととなる。投手の萬田智彦が肘を故障し、野球部を退部し、青島製作所も退職することになってしまったのである。後任の投手を探す大道の目にとまったのが、製造部の契約社員沖原和也だった。沖原は製造部と野球部のエキシビションゲームに代理投手として登板し、見事な豪速球を披露したからである。しかし、沖原には高校時代、将来を嘱望されながら、先輩部員にいびられ続け、母親までも侮辱されたことに腹をたてて先輩部員を殴ったという事情があったにもかかわらず、責任を一身に負わされて野球部から放逐されたという暗い過去があった。一方、青島製作所の細川充社長は大口取引先のジャパニクス社から大幅な生産調整と単価切り下げを通告され、窮地に陥っていた。さらにそんな細川の苦境を見透かすようにジャパニクス社社長の諸田清文はミツワ電器の坂東昌彦社長とともに、青島製作所とミツワ電器の合併を勧めてくる。規模の大きいミツワ電器と合併すれば、当座の苦境は乗り越えられるが、合併後、青島製作所のほとんどの社員は新会社からリストラされるのは間違いない…苦悩の末に細川がたどり着いた結論とは?そして、青島製作所野球部は再建されるのか?』2年前、テレビで見ていて本を読みたいと思っていたけど、テレビと同じく面白かった。でも、少しドラマとは違う

『ボクの妻と結婚してください。』 樋口卓治 (講談社文庫)
『バラエティ番組の放送作家・三村修治は、世の中のできごとを好奇心で“楽しい”に変換してきた。余命6ヵ月を宣告されたいま、最後の企画は、自分がいなくなったあとに家族を支えてくれる人を探すことだった。「決めた。愛する人に幸せな未来を残すと決めた」AD、芸人、リサーチャーから婚活本の著者まで、信頼できる仲間たちに助けを求めながら、三村修治はひたすら走る!果たして妻の結婚相手を見つけることができるのか―。』死の恐怖を感じさせず、最後まで読ませてもらった。余命半年 昨日、自分は病院の病室にいた。 現代の医学で見積もると、残りの命は約六ヶ月だという。 入院したとしても、延命は一年程度。 余命をマラソンに例えると、8月の道マラには参加出来ない。 すい臓ガンだって・・・ う〜ん・・・ う〜ん・・・ 樋口卓治『ボクの妻と結婚してください。』を完読。 余命半年を宣告されて放送作家が、愛する妻のために、ずっと笑顔でいられるようにと、最高の結婚相手を探す小説だ。 これを読んで、もし、自分が余命半年と宣告されたら・・・ と、考えてしまった。 もし自分なら・・・ まずは、自分がいなくなって、かーめさんが、今までの生活が出来るようにと、生命保険を考えるかも・・・ 誰に自分が亡くなったかを知らせるために、リストを作るかもしれない。 延命治療をするだろうか・・・ どうせ入院しても一年。 入院すれば、マラソン大会に参加出来なくなる。 4月のチャレンジ富士五湖の71kmまで今のところ、エントリーしている。 これは、絶対に走りたいという気持ちはないけど、やっぱり、8月の道マラは走りたい。 でも、道マラは走れない。 普通に、毎年毎年、普通に走れると思っていたけど、普通ではなかったのだ。 健康であってこそ走れていたんだ。 そんな事を考えてしまうと、一日一日、一ヶ月一ヶ月、一年一年と大事にしていかないといけないな〜と思ってしまう。 あと、それから、フルマラソン200回を残りの半年の間に完走したい。 今は何回だろう。 時間が無いので、計算する時間がないけど・・・ 小説では、自分の亡き後を考えて、妻の結婚相手を探している。 自分も、かーめさんの結婚相手を探すだろうか・・・ やっぱり、悲しんでいる顔は見たくない。 いつも笑顔でいる、かーめさんでいてほしい。 たとえ、自分を忘れたとしても、そうあって欲しい気がする。 そう考えてみると、結婚相手を探すというのはアリなのかもと思ってしまった。 ただ、自分が死ぬってことは現実味がないけど・・・ 小説の中で「男にとって結婚は、やり甲斐のある仕事が一つ増えたってことです」という言葉に共感を持った。 結婚式の時に「幸せにする」と誓った以上は、その仕事をやり遂げないといけない。 まぁ、幸せにするというのは、自分も幸せになるという事なのかもしれないけど・・・ そんな風に考えるようになったけど・・・ とにかく、自分が死ぬ前に・・・ どうするだろうか・・・ 普通に最後のマラソン大会は、どれにするだろうかと考えるかな・・・ ジャストタイミングで、誕生日合わせてという事ではないけど、本を読み終わって、ふと、思ったんだけどね・・・

『仇敵』 池井戸潤 (講談社文庫)
『幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす――。不正を知った男(ライバル)は謎の死を迎え、恋窪は“仇敵”への復讐を誓う。乱歩賞作家、渾身の連作ミステリー』凄い面白いのは分かるけど、銀行用語があまり理解できず、その面白みが分からない。しかも、登場人物が多く、ついてゆけなかった。短編じゃなく、長編の方が良かったかな・・・

『果つる底なき』 池井戸潤 (講談社文庫)
『これは貸しだからな。」謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員・坂本が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった……。坂本のため、曜子のため、そして何かを失いかけている自分のため、伊木はただ1人、銀行の暗闇に立ち向かう!第44回江戸川乱歩賞受賞作』面白かったけど、ストーリー展開があまりにもスピーディ過ぎて、ついてゆけない。殺人も多すぎているし、初期の作品だから、仕方が無いか・・・

『BT '63』 池井戸潤 (講談社文庫)
『気鋭の乱歩賞作家が描く壮大なエンターテイメント!! “池井戸潤”と聞けば誰もが「金融ミステリー」と連想するでしょう。しかし、今回は違いますよ! 主人公・大間木琢磨は父の遺品に触れた瞬間、奇妙なタイムスリップを体験する。呪われたトラックに誘われるまま、過去の世界で亡き父を救おうとする琢磨。昭和30年代の東京羽田を舞台に広がる壮大なエンターテイメント! まさに「池井戸潤=金融ミステリー」というレッテルを塗り替えるには十分かつ、それ以上の驚愕があるでしょう。先入観抜きで読んでください、本当に面白いです!!』 スティーブンキングみたい。あんまり評判が悪いと思って、読み始めたけど、文章の持って行き方が池井戸潤の片鱗が見えたような・・・ タイトルのBTとは昔のボンネット・トラックで、63は1963(昭和38)年のことなのかな・・・ 

『民王』 池井戸潤 (文春文庫)
『ひょんなことから、総理大臣の武藤泰山と、息子で大学生の翔の人格がある日突然入れ替わってしまう。混乱を避けるため、周囲には秘密のまま互いの仕事や生活を入れ替わった状態で過ごすことになるが、翔は政治に全く興味がなく、ろくに漢字も読めないため国会答弁も苦労する状況。一方の泰山も、就職活動で面接官を偉そうに論破しては不採用になるなど、苦闘することになる。』今までの池井戸潤とは違う。コメディ過ぎて、正直、ついてゆけない。貫井徳郎の「ドミノ倒し」もそうだけど、シリアスな小説が良い

『ターンオーバー』 堂場瞬一 (ハルキ文庫)
『プレーする興奮と観る感動をそのままに――アスリートたちの様々な瞬間を切り取った、手に汗にぎる純スポーツ小説集』2話目の「インターセプト」はアメフトの話。ルールが分からず読み飛ばしてしまう。「クラッシャー」のラグビーもルールが分からず、全く読まなかった。「ペースダウン」、さすが堂場瞬一。池井戸潤の「陸王」の走るシーン、それなりに面白かったけど、やっぱり、堂場瞬一の走るシーンは臨場感がある。自分も走っている缶がある。

『陸王』 池井戸潤 (集英社)
『埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか? 』人情味のある作品で、後半、、涙ながら読んでしまった。登場人物が全て良い味を出していた。

『ドミノ倒し』 貫井徳郎 (創元推理文庫)
『ひとつの事件が別の事件を呼び起こし芋づる式に掘り出される死体!死体!!死体!!!いったい何が起きているんだ!?油断大敵・貫井流ユーモア私立探偵小説。』終始おちゃらけた感じで、何か、いつもの作者じゃない感じだけど、そういう文体じゃないとオチがあまりにも反則技で何となく頷けそう。まさかの町ぐるみでの殺人。あんまり自分は好きではない。しかも終わり方、どうなるのだろうかという所で終わり、中途半端。

『鉄の骨』 池井戸潤 (講談社文庫)
『会社がヤバい。彼女とヤバい。次の地下鉄工事、何としても取って来い。――「談合」してもいいんですか? 中堅ゼネコン・一松組の若手、富島平太が異動した先は“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾く――技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に、「談合」の壁が。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ』三橋の苦悩も分かるし、平太と彼女とのすれ違っていくのが凄いリアルで、中々面白かった。それにしても、凄い池井。

『空飛ぶタイヤ』 池井戸潤 (実業之日本社文庫)
『トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも…。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族…事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともにたったひとつの事故の真相に迫る、果てなき試練と格闘の数か月。』夢中になって一気に読んでしまった。池井戸潤は凄い。中小零細企業と大企業の対決をか書けたら右に出るものはいない。もうダメだと思い、さらにダメおしされて、そこから這い上がってゆく。かなりの長文だけど、無駄がないストーリー。中だるみなしに一気読みしてしまう。

『夢幻花』 東野圭吾 (PHP研究所文庫)
『大阪の大学院生の蒼太は、父の三回忌で江東区木場の実家に帰っていた。兄の要介は、父の三回忌よりも仕事を優先して出かけてしまっていた。蒼太は、その要介を訪ねて来た秋山梨乃と知り合う。職業を偽ってまで梨乃に接近し、ブログから「黄色い花」の写真を直ちに削除するようにと忠告した要介の真意は何なのか? 梨乃の祖父・周治が殺害された事件に、謎の「黄色い花」が少なからず関係していると考えた蒼太と梨乃は、二人で「黄色い花」の謎と事件の解明に向けて行動を起こす。一方、西荻窪署の早瀬亮介は、息子・裕太の窮地を救ってくれた正義感の強い老人・秋山周治が、所轄の殺人事件の被害者だと知って驚く。手掛かりが少なくとも絶対に迷宮入りにはさせないと、犯人逮捕に向けて一人捜索を続けていた。2013年度の柴田錬三郎賞受賞』初めはいろんな話がどう繋がっていくんだろうと思ってたけど、色々な伏線が、最後にはつながり、スッキリ。東野圭吾は凄いと思った。

『七つの会議』 池井戸潤 (集英社文庫)
『トップセールスマンだったエリート課長・坂戸を“パワハラ”で社内委員会に訴えたのは、歳上の万年係長・八角だった―。いったい、坂戸と八角の間に何があったのか?パワハラ委員会での裁定、そして役員会が下した不可解な人事。急転する事態収束のため、役員会が指名したのは、万年二番手に甘んじてきた男、原島であった。どこにでもありそうな中堅メーカー・東京建電とその取引先を舞台に繰り広げられる生きるための戦い。だが、そこには誰も知らない秘密があった。筋書きのない会議がいま、始まる―。“働くこと”の意味に迫る、クライム・ノベル』定例会議、パワハラ委員会、経営会議、環境会議、計数会議、編集会議、御前会議と、色々な会議の連作の中で、主役は各話しごとに替わり、一つの大きな不祥事に直接的・間接的につながり、関係者たちの視点と人生を詳細に描かれている。かなり面白かった。登場人物が多かったけど、それぞれに味があり、気にならなかった。ドーナツの話がまた物語に花を添えている感じ。

『新月譚』 貫井徳郎 (文春文庫)
『八年前に突然絶筆した作家・咲良怜花は、若い編集者の熱心な復活のアプローチに、自らの半生を語り始める。そこで明かされたのは、ある男性との凄絶な恋愛の顛末だった―。』一歩間違えれば恐ろしくつまらない小説をここまで、面白く書けるとは… 自分も小説を書きたくなった。直木賞候補になるだけあって、凄い面白かった。

『10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦』 鷲田康 (文春文庫)
『1994年10月8日、シーズン最終戦、巨人対中日。勝ったほうがリーグ優勝。長嶋茂雄監督が「もはや国民的行事」と語ったように、この一戦は平均視聴率48.8%(プロ野球中継史上最高)を叩き出し、2010年に日本プロ野球機構が現役の監督、コーチ、選手を対象にしたアンケートでは「最高の試合」部門1位に輝いた。伝説として語り継がれるこの「世紀の決戦」を、今中、松井、立浪、桑田、大豊、斎藤……戦った男たちの証言で綴る。長嶋茂雄は言う。「野球のすべての面白さを凝縮した試合だった」。』伝説の名勝負、94年の10.8巨人-中日の優勝決定戦を出場していた監督・選手だけでなく様々な立場の関係者への取材でまとめていた。裏話満載で退屈しない。「ケンちゃん」には笑った。

『微笑む人』 貫井徳郎 (実業之日本社文庫)
『エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻子を殺害。小説家の「私」は事件をノンフィクションにまとめるべく取材を始めた。「いい人」と評される仁藤だが、過去に遡るとその周辺で、不審死を遂げた人物が他にもいることが判明し…。戦慄のラストに驚愕必至!ミステリーの常識を超えた衝撃作、待望の文庫化』完全にモヤモヤ感が残る作品。そのモヤモヤ感が人間って理解不能ってことなのかも

『別冊図書館戦争II 図書館戦争シリーズ(6) 』 有川浩 (角川文庫)
『“タイムマシンがあったらいつに戻りたい?”という話題で盛り上がる休憩中の堂上班。黙々と仕事をしている副隊長の緒形に、郁が無邪気に訊くと、緒形は手を休め、遠くを見つめるように静かに答えた―「…大学の頃、かな」。未来が真っ白だった無垢な時代。年をとるごとに鮮やかさを増す、愛しき日々。平凡な大学生であった緒形は、なぜ本を守る図書隊員となったのか!?過去と未来の恋を鮮やかに描く、シリーズ番外編第2弾。 』かなり良かった。副隊長緒形の過去の話、堂上と小牧の昔の話しも良かった。後半は長く、柴崎と手塚。結婚式場面が出てくるとは… ハッピーエンドで良かった。手塚が柴崎を助けに行くシーン、涙が出た。別冊1より良かった。

『別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) 』 有川浩 (角川文庫)<
『晴れて彼氏彼女の関係となった堂上と郁。しかし、その不器用さと経験値の低さが邪魔をして、キスから先になかなか進めない。あぁ、純粋培養純情乙女・茨城県産26歳、図書隊員笠原郁の迷える恋はどこへ行く―!?恋する男女のもどかしい距離感、そして、次々と勃発する、複雑な事情を秘めた事件の数々。「図書館革命」後の図書隊の日常を、爽やかに、あまーく描く、恋愛成分全開のシリーズ番外編第1弾。本日も、ベタ甘警報発令中 』当麻事件のその後、文句なしに甘かった。

『図書館革命 図書館戦争シリーズ (4) 』 有川浩 (角川文庫)
『原発テロが発生した。それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に、身柄確保をもくろむ良化隊の影が迫る。当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。郁たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。動謡する郁。そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった―「お前はやれる」。表現の自由、そして恋の結末は!?感動の本編最終巻。 』内容的に、凄い盛り上がった。プロローグで、原発テロが起こり、その手口によく似た小説を書いた作家当麻蔵人が、メディア良化隊に狙われる。 作家の拘束と執筆活動停止を求める。そうさせじと、図書館隊側は作家の身柄を確保するが悪戦苦闘。郁の一言「亡命させれば良いのに」で、亡命先の都内の大使館に連れて行こうとするが、警戒厳重で断念。郁は作家を連れて大阪の領事館を目指す。作家が大阪の街を歩いても一番目立たないようにする為、ど派手な大阪のおばちゃんり女装させるあたりも面白かった。エピローグに堂上教官と郁の新婚生活も書いてあって面白かった。少女マンガぽさも良かったけど、ストリーも面白かった。

『図書館危機 図書館戦争シリーズ(3)』 有川浩 (角川文庫)
『思いもよらぬ形で憧れの“王子様”の正体を知ってしまった郁は完全にぎこちない態度。そんな中、ある人気俳優のインタビューが、図書隊そして世間を巻き込む大問題に発展。加えて、地方の美術展で最優秀作品となった“自由”をテーマにした絵画が検閲・没収の危機に。郁の所属する特殊部隊も警護作戦に参加することになったが!?表現の自由をめぐる攻防がますますヒートアップ、ついでも恋も…!?危機また危機のシリーズ第3弾。 』マンネリ化する頃だと思うけど、さらに個々のキャラクターが魅力的になってきて、退屈させてくれない。堂上と郁、手塚と柴崎、玄田と折口の関係も気になってくる。 王子様の正が分かって、郁のぎこちなさも面白かった。完璧とはいかないけど両親との和解もあり、水戸の茨城県立図書館での陰湿な女子のいじめに克服させる郁の健気な頑張りも痛快だった。今回は、玄田隊長、撃たれた時は完全に部下の気持ちで心配になった。生き返ってホッとした。稲嶺司令がいなくなってからの図書館はどうなるのか、早く続きを読みたい。それにしても「床屋」が差別用語だったとは…

『図書館内乱図書館戦争シリーズ(2)』 有川浩 (角川文庫)
『両親に防衛員勤務と言い出せない笠原郁に、不意の手紙が届く。田舎から両親がやってくる!? 防衛員とバレれば図書隊を辞めさせられる!! かくして図書隊による、必死の両親攪乱作戦が始まった!? また、図書隊の中でも最も危険な任務を負う防衛隊員として、日々訓練に励む郁は、中澤毬江という耳の不自由な女の子と出会う。毬江は小さいころから面倒を見てもらっていた図書隊の教官・小牧に、密かな想いを寄せていた。そんな時、検閲機関である良化隊が、郁が勤務する図書館を襲撃、いわれのない罪で小牧を連行していく―かくして郁と図書隊の小牧奪還作戦が発動した!?書き下ろしも収録の本と恋のエンタテインメント第2弾』図書館戦争より、各脇役陣の個性が出て面白かった。登場人物たちにどんどん愛着を感じてしまう。とうとう郁が王子様の正体も分かったので、次巻からが楽しみだな。 また、本巻に出た「レインツリーの国」も読んでみたくなった

『図書館戦争図書館戦争シリーズ(1)』 有川浩 (角川文庫)
『2019年(正化31年)。公序良俗を乱す表現を取り締まる『メディア良化法』が成立して30年。高校時代に出会った、図書隊員を名乗る“王子様”の姿を追い求め、行き過ぎた検閲から本を守るための組織・図書隊に入隊した、一人の女の子がいた。名は笠原郁。不器用ながらも、愚直に頑張るその情熱が認められ、エリート部隊・図書特殊部隊に配属されることになったが…!?番外編も収録した本と恋の極上エンタテインメント、スタート』映画を見て、原作を読んでみようと思った。山田悠介並みの滅茶苦茶な設定だけど、郁と堂上のやりとりが面白い

『チーム?』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『ベルリンマラソン優勝、マラソン日本記録を持ち「陸上界の至宝」といわれる山城悟は、怪我と所属チームの解散危機で、引退の瀬戸際にいた。傲慢な性格の山城に、かつて箱根駅伝を学連選抜チームとして共に走った仲間たちがサポートを申し出るが、果たして彼は再起できるのか? 熱き男たちの友情、葛藤、そして手に汗握る駅伝レースの行方は? スポーツ小説の金字塔『チーム』7年後の物語』レースの描写が臨場感がありイキイキしていた。自分も走っているかのよう。最後のところで、最高の走りのイメージを持って、それを手本にして走ると、過去最高だった時の自分を越えることはできないと書いてあったので、なるほどだな〜と思った。自らの可能性を閉ざしてしまう事になる。

『一千兆円の身代金』 八木圭一 (宝島社文庫)
『第12回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞2作品のうち1作。本作は、前代未聞の身代金を要求する、史上最凶の誘拐劇です! 若者へ負担を押しつける日本の政治や、財政赤字への不満・不安をブログで訴える平岡ナオト。彼のもとに保育士や大学生らが集まり、ある計画がスタートする。やがて、元首相の孫にあたる小学生が誘拐される事件が発生。犯人「革命係」からの要求は、財政赤字の見直し、もしくは一千兆円の身代金だった! 政府、マスコミ、国を巻き込んだ事件の行方は…』ちょっと、社会に対する愚痴ぽくって、あんまり愚痴めいたものは読みたい気が起こらなくなった。完成度は残念ながら低い。小学5年生の雄真が主犯で大人を動かしていたのは斬新だと思うけど、何か、最初で分かったような気もする。読み終わった数日後に、何とテレビ放映された。誘拐されたのは男の子(小説)から女の子(テレビ)に代わっていた。

『幕末 まらそん侍』 土橋 章宏 (文庫)
『黒船の来航により、風雲急を告げる幕末の世。安政二年(1855年)、安中(群馬県)藩主・板倉勝明は、藩士の心身鍛錬を目的として安中城内より碓氷峠の熊野神社までの七里余り(約30キロ)の中山道を走らせた。“安政の遠足"とも呼ばれ、日本のマラソンの発祥である。美しい姫をめぐりライバルとの対決に燃える男。どさくさ紛れに脱藩を企てる男。藩を揺るがす隠密男。民から賭の対象にされた男。余命を懸け遠足に挑む男。涙と笑いの痛快スポーツ時代小説!! 』マラソン好きなら読まなきゃと思い、読みだす。それぞれの話が面白く、連作にもなっており、あっという間に読み終わった。映画化もされるとか…一応、日本最初のマラソン大会は、安政遠足。安政2年(1855)5月、板倉勝明は藩士の心身鍛錬を目的として、50歳以下の藩士96名を数組のグループに分け、安中城門をスタートラインにして、当時安中藩が警備の担当していた碓氷関所近辺で鍛えようと、碓氷峠頂上に建つ“熊野の権現さま”として知られる熊野権現神社まで七里七町(約29km)の中山道沿いの道を走らせたのです。これを「安政遠足」。史実に基づいて書かれているのか、凄い。完走者は延べ98人(うち2人は2回走ったよう)

『最後のトリック』 深水黎一郎 (河出文庫)
『「読者が犯人」というミステリー界最後の不可能トリックのアイディアを、二億円で買ってほしい―スランプ中の作家のもとに、香坂誠一なる人物から届いた謎の手紙。不信感を拭えない作家に男は、これは「命と引き換えにしても惜しくない」ほどのものなのだと切々と訴えるのだが…ラストに驚愕必至』確かに、読者が犯人と言えば、読者が犯人ですが、まさかこういうオチになるとは…。どうせなら、読者が犯人というのをオビで最初から知らせずに、最後の最後で分かったら…かなり驚いたかも…。自分の文章を人に読まれると恐怖で不整脈になる被害者が、読者に手紙を読まれて死亡するなんてオチ 、中々のアイデァなだったけど… あと双子の美人姉妹が使ったESPカードのいかさまが面白いトリックだった。

『デッドヒート』 須藤靖貴 (ハルキ文庫)
『駅伝の魅力って? 仲間の頑張りを信じ、想像することさ―――。上州南陵高校陸上部三年の走水剛は、中学時代からの親友・幸田優一と共に高校駅伝の関東大会進出を目指している。将棋八段の父親は超の付く変わり者で、剛との関係は最悪だった。その父親に将来の目標を問われ、思わず「オリンピックだ」と言い返してしまった手前、チームの六番手に甘んじている現状は心苦しく・・・・・・。破天荒な駅伝選手の成長を描く新シリーズ』色々なことがあり過ぎる。親友でライバルの優一の死、箱根駅伝で途中棄権、青葉製薬陸上競技部の廃部、監督の解雇、ケニア出張、太郎の鬱と、次々に起こる出来ごと。次に何が起きるか予想も出来なかった。この物語、1〜5巻まである。キャラクターが面白い。剛の指導者の阿久純に、父親の走水龍治八段、かなり面白い。

『殺人症候群』 貫井徳郎 (双葉文庫)
『警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。そのリーダーである環敬吾は、部下の原田柾一郎、武藤隆、倉持真栄に、一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探るように命じる。「大切な人を殺した相手に復讐するのは悪か?」「この世の正義とは何か?」という大きなテーマと抜群のエンターテインメント性を融合させた怒涛のノンストップ1100枚』鏑木と渉が同一人物だったとは、衝撃だった。『症候群』シリーズは、1作目より2作目、2作目より3作目と凄い面白くなった。全く違う殺人事件が、そう繋がるとは… 凄い作品だと思った。

『誘拐症候群』 貫井徳郎 (双葉文庫)
『誘拐事件が連続して起きていた。しかし数百万程度の身代金を払えば子供が無事帰ってくるため、泣き寝入りのケースが多く、警察は誘拐があったことに気づかない。ネット上で“ジーニアス”と自ら“天才”を名乗り、闇に身を潜める卑劣な犯人を炙り出す。警視庁の影の捜査チームに招集がかかった。だがその時、メンバーの一人、武藤隆は、托鉢中に知り合った男のために、別の誘拐事件に巻き込まれていた―ページを繰る手がとまらない、面白さ抜群のシリーズ第2弾! 』托鉢僧の武藤メインでストーリー。最後、どうなるのだろうと、面白かった。何か、最終作の殺人症候群につながる作品だった。武藤隆が環の捜査のやり方に疑問を持ち、自分も「犯罪者を追い詰める為には手段を選ばない」そういった捜査に何かが違うと、そう思ったけど… 殺人症候群が面白そう。

『失踪症候群』 貫井徳郎 (双葉文庫)
『警視庁には影の特殊工作チームが存在する。警察組織が扱いにくい事件を捜査し、真相を追い求める。失踪した若者たちに共通点がある。その背後にあるものを燻り出すべく、警視庁人事二課の環敬吾は特殊任務チームのメンバーを招集する。私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄。三人のプロフェッショナルは、環の指令の下、警視庁が表立って動けない事件を、ときに超法規的手段を用いても解決に導く。失踪者の跡を追った末、ついにたどり着いた真実とは。悪党には必ずや鉄槌を下す―ノンストップ・エンターテインメント「症候群シリーズ」第1弾! 』ポケベルとか出てきたりして、かなり昔に書かれた作品だと思ったけど、当時に書かれたとしたら、現在では、よくある事件ぽいけど、その当時書かれていたとは…先が気になって後半は、一気に読んでしまった。

『空白の叫び』 貫井徳郎 (文春文庫)
『退屈な日常の中で飼いならしえぬ瘴気を溜め続ける久藤。恵まれた頭脳と容姿を持ちながら、生きる現実感が乏しい葛城。複雑な家庭環境ゆえ、孤独な日々を送る神原。世間への違和感を抱える三人の少年たちは、どこへ向かうのか。少年犯罪をテーマに中学生たちの心の軌跡を描き切った衝撃のミステリー長編』上巻を携帯のメモを取りながら読んだ。かなり面白い。上巻は、登場人物三人が出会う前の話しで、殺人を犯すまでの話し。でも、上巻だけでも一作品として成立してる。一人目の主人公の久藤美也、小学校時代はいじめられっ子だったけど、逆にいじめ子に。二人目は裕福な家庭に育った葛城拓馬。三人目は、貧しい家庭で育ち、祖母が亡くなったのがきっかけで転げ落ちるように不幸になった神原尚彦。三人の話しが見ごとに興味深く描かれている。三人とも殺人を犯すのは知っていたが、誰を殺すのか、興味深かった。中巻のニ部では少年院の生活。少年院での生活が凄まじい。過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されていく中、3人の間には不思議な連帯感が生まれる。中巻途中から上巻の三部では、出所後の更生の話しになっている。少年達は銀行強盗を実行する。それが、リアルに描かれ、けっこう面白かった。銀行強盗自体は成功するが、そのからが、次の展開が気になって本が手放せなくなる。神原は交通事故で死亡し、久藤は自首し、葛城は警察に捕まる直前であっさりと、話が終わる。それにしても、長い小説だったけど、それがある意味、凄い小説だった。全く飽きさせない。あと、気になったのは、英里と水嶋。その後、どうなって生きて行くのだろう。

『ようこそ、わが家へ』 池井戸潤 (小学館文庫)
『真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜む恐怖"を描く文庫オリジナル長編。2015年4月 連続ドラマ化決定!』ドラマ化されるので読むことにした。ストーカーの話しかと思ったけど、出向銀行マンのお話の方がウエイト大きかった。半沢直樹や花咲舞のようなヒーローが出てくるわけでもないけど、気弱な主人公が精いっぱい頑張っている感じで好感もてた。

『さよならの代わりに』 貫井徳郎 (幻冬舎文庫)
『「私、未来から来たの」。劇団「うさぎの眼」に所属する駆け出しの役者・和希の前に一人の美少女が現れた。彼女は劇団内で起きた殺人事件の容疑者を救うため、27年の時を超えて来たというのだ!彼女と容疑者との関係は?和希に近づく目的は?何より未来から来たという言葉の真意は?錯綜する謎を軽妙なタッチで描く青春ミステリ』ヒロインの祐里の魅力が出た作品だった。けっこう貫井徳郎はハズレがなく、好きな作家になった。タイムトラベル物のSF青春ミステリ。後半になるほど、引きこまれた。

『ロスト・ケア』 葉真中顕 (光文社文庫)
『第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。死刑を宣告された「彼」は、なぜ43人もの人間を殺めたのか。検察官の大友秀樹、総合介護企業フォレストの営業部長だった佐久間功一郎、X県八賀市で認知症の母を介護していた羽田洋子、フォレストが経営する八賀ケアセンターで働く斯波宗則。発生当時にさかのぼり、関係者が置かれた状況をそれぞれ描いていくことによって、前代未聞の大量殺人事件の全貌が明らかになっていく』殺人鬼は弾だと思っていたけど、それが最初から出てきた斯波宗典だったとは… 犯人の名前が出てきたときには、驚いた。殺されたはずなのにと。そこがどんでん返しで面白かった。後、犯人を論理的に突き合わせて行く展開は斬新だった。それにしても、介護問題、ここまで、深く描くとは… 黄金律「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」と、この言葉、中々、深い意味がある。次回作も読んでみたい。

『被害者は誰?』 貫井徳郎 (講談社文庫)
『豪邸の庭に埋められていた白骨死体は誰なのか?犯人が黙秘を貫く中、警察は押収した手記をもとに、被害者の特定を試みるが…。警視庁の桂島刑事から相談される、迷宮入り寸前の難事件の数々。それを解き明かすのは、頭脳も美貌も態度も規格外のミステリー作家・吉祥院慶彦。痛快無比!本格推理の傑作』長編だと思って買ったら、短編だった。被害者は誰?、目撃者は誰?、探偵は誰?、名探偵は誰?の4編。口が悪い吉祥院先輩と後輩の桂島の掛け合いは面白かった。表題以下それぞれ探偵や目撃者など犯人以外を探す趣向で、最後の名探偵は誰編は特に面白い。

『迷宮遡行』 貫井徳郎 (新潮文庫)
『平凡な日常が裂ける―。突然、愛する妻・絢子が失踪した。置き手紙ひとつを残して。理由が分からない。失業中の迫水は、途切れそうな手がかりをたどり、妻の行方を追う。彼の前に立ちふさがる、暴力団組員。妻はどうして、姿を消したのか?いや、そもそも妻は何者だったのか?絡み合う糸が、闇の迷宮をかたちづくる。『烙印』をもとに書き下ろされた、本格ミステリーの最新傑作』あんまり、評価が低いけど、自分的には、面白かった。最初は情けない男だったけど、美人の奥さんを助けるために、後半はヤクザを殺してしまうぐらいの男になる。何でも、アリで、どうなんだろうか… しかも、30章は何だったんだ…

『流星ワゴン』 重松清 (講談社文庫)
『永田一雄は死んじゃってもいいかな、と思っていた。仕事はリストラ寸前・妻からは離婚・子供は引きこもり。地元で入院している父親を見舞に行った時に貰える交通費の余りで何とか暮らしている有様。その父親も癌でいつ死ぬかも分からない。父親の見舞帰りに駅で酒を飲んで酔っ払っていると、ロータリーに1台の車が停まっている事に気が付く。その車には5年前、偶然見た新聞の交通事故の記事で死亡が報じられた橋本親子が乗っていた。言われるがままにその車に乗り込む一雄。そしてその車は一雄を、人生の分岐点へと向かう。降り立ったのは、仕事の途中で妻を見かけた日。他人の空似だろうと仕事に戻ろうとした所に、一人の男が目の前に現れた。一雄はその男の事を、よく知っていた。その男は今の自分と同い年、38歳の時の父親だったのだ』38歳にして会社はリストラ、妻はテレクラで浮気を繰り返し、一人息子は中学事受験に失敗しいじめにあい、ひきこもりになり家庭内暴力で暴れまわる。もう、死んでもいいかなーって深夜の駅前のロータリーで佇んでいると、一台のワゴン車が迎えにきて、一年前にタイムスリップ。3組の父と息子の物語。第一回目、テレビ放映されて、バック・トゥ・ザ・フューチャーみたいだと思って、面白そうだと思い、本を買ってみた。中々、考えさせられた。結果は変えれなかったけど、これからはハッピーになると思う。

『天使の屍』 貫井徳郎 (角川文庫)
『思慮深かった中学二年の息子・優馬がマンションから飛び降り、自殺を遂げた。動機を見出せなかった父親の青木は、真相を追うべく、同級生たちに話を聞き始めるが…。“子供の論理”を身にまとい、決して本心を明かさない子供たち。そして、さらに同級生が一人、また一人とビルから身を投げた。「14歳」という年代特有の不可解な少年の世界と心理をあぶり出し、衝撃の真相へと読者を導く、気鋭による力作長編ミステリー』真相が納得できない感じ。でも、そこが「大人の論理」と「子供の論理」の差なのか、少年達がそこまでやれるかと思った

『愚行録』 貫井徳郎 (創元推理文庫)
『ええ、はい。あの事件のことでしょ?―幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家四人が惨殺された。隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる、「事件」と「被害者」。理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。確かな筆致と構成で描かれた傑作。『慟哭』『プリズム』に続く、貫井徳郎第三の衝撃』ルポライターが一家惨殺について関係者にインタビューしていく形で話しが進む。何か、こういうインタビューの話しは正直つまらない。でも、中々、面白かった。惨殺事件の犯人は田中光子。そして、動機は、未婚の母となった光子が、たまたま田向夫人を見かけ、1個500円もするようなケーキを幾つも買っていたを見て、世の中の不公平さに、何かがプツンと切れてしまったとか。さらに、「お兄ちゃん」と呼びかける女の子が光子で、小説の冒頭に育児放棄により子供を死なせた母親。さらに、「記事を書くため」と人々を訪ねて証言を聞いているライターが、実は幼少の頃から唯一彼女の味方であった「お兄ちゃんだった。

『明日の空』 貫井徳郎 (創元推理文庫)
『両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った栄美は、高校3年にして初めて日本で暮らすことに。「日本は集団を重んじる社会。極力目立つな」と父に言われ不安だったが、クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。だが一つ奇妙なことが。気になる男子と距離が縮まり、デートの約束をするようになるが、なぜかいつも横槍が入ってすれ違いになるのだ。一体どうして―?栄美は、すべてが終わったあとに真相を知ることになる』part2でPart1の主人公の栄美は全く出てこないし、全く違うストーリーになり、どうつながるかと思ったが… 最後で結びついた時。

『灰色の虹』 貫井徳郎 (新潮文庫)
『親しくしていた検事が自宅で何者かに殺害されたことを知った刑事の山名省吾は、7年前の殺人事件に関わった人々が次々と不審な死を遂げていることに気付く。7年前、小さな運送会社に勤めていた江木雅史は、上司を殺害した無実の罪で逮捕・起訴された。暴力刑事の荒っぽい取り調べに屈し自白してしまったが、決定的な物証はなく、状況証拠を積み上げただけの事件だったため事態が好転することを願っていたが、目撃証言が決定打となり懲役6年の判決が下された。控訴も上告も棄却され、打ちひしがれながらも服役を終えた江木だったが、出所した彼を更なる絶望が襲う。江木は、自分から全てを奪った者たちへの復讐を決意する』無実の罪を着せられた主人公やその家族の気持ち描写に引き込まれて、一気に読んだ。中々、良かった。考えてみれば、冤罪事件の真犯人は誰だったのかを思い出す以前に、冤罪について深く考えさせられた。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 東野圭吾 (角川文庫)
『コソ泥をして逃亡中の敦也・翔太・幸平は突然盗んだ車が動かなくなり、仕方なく以前翔太が見つけた廃屋「ナミヤ雑貨店」に逃げ込み夜が明けるのを待つことに。三人が店を物色していると、突然シャッターにある郵便口に手紙が投げ込まれる。手紙を開けるとそこには、月のウサギと名乗る者からの悩み相談が書かれていた。店に残っていた雑誌によると、ナミヤ雑貨店はかつて店主が投函された相談に一生懸命答えてくれる事で有名だった。敦也は放っておこうというが、翔太と幸平はこんな機会でないと人の相談に乗れないと返事を書く事を決意する。ミュージシャンを目指す克郎は、慰問演奏で児童養護施設「九光園」を訪れた。子供達は演奏を楽しく聞いてくれていたが、その中に一人だけ克郎を見ようとしない女の子が居た。克郎はその子を喜ばそうと様々な曲を演奏するが、全く効果はなかった。音楽に興味がないんだと諦め演奏会の終わりに必ず演奏する自分のオリジナル曲を演奏すると突然女の子は興味を示し、克郎に話しかけてきた。貴之は父親の雄治が運営するナミヤ雑貨店を訪れ、店を畳んで二世帯同居をしようと持ち掛ける。しかし雄治は悩み相談に答える事を生きがいにしており、いつもその話に聞く耳を持とうとしなかった。だが突然、雄治が潮時だと言って店を畳んで貴之と同居すると言い出す。浩介は事故で急死した従兄の遺品であるビートルズのレコードを譲り受け、それをキッカケにビートルズのファンになる。裕福な家庭だったので部屋には最新型のアンプやスピーカーが置かれ、友人達にビートルズを聞かせたりしていた。そんなある日、友人からビートルズ解散の話を聞かされる。夜明けまで一時間となった時、新たに手紙が投函される。迷える子犬と名乗る十九歳の女性から、OLを辞めてキャバ嬢に専念したいので如何すれば良いかという物だった。敦也・翔太・幸平の三人は軽い女子だと決めつけ返信を書くが、その後の返信で迷える子犬が詳しい事情を告げると三人の考えは一変する。第7回中央公論文芸賞受賞作品』やっぱり、東野圭吾はうまいな〜 五章から成っていて、どの話も良かった。一章が読み終わり、ニ章になると相談者のそれぞれの悩み解決のオムニバス短編かと思ったが、すべてが繋がっていた。特に、後半はすごいスピードで相談者達と丸光園という施設が繋がっていた。正直、ついてゆけないほど… 

『夜想』 貫井徳郎 (文春文庫)
『事故で妻と娘をなくし、絶望の中を惰性でただ生きる雪籐。だが、美少女・天美遙と出会ったことで、雪籐の止まっていた時計がまた動き始める。やがて、遙の持つ特殊な力は、傷ついた人々に安らぎを与え始めるが…。あの傑作『慟哭』のテーマ「新興宗教」に再び著者が挑む。魂の絶望と救いを描いた、渾身の巨篇』中盤までは、何か面白みがなかったけど、徐々に面白くなった。それに、娘に逃げられた憐れな子安嘉子がどう絡むのか、興味深く読んだ。でも、女医が幻だったとは…

『後悔と真実の色』 貫井徳郎 (幻冬舎文庫)
『第23回(2010年) 山本周五郎賞受賞。“悪”を秘めた女は駆除する―。若い女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」が社会を震撼させていた。捜査一課のエース西條輝司は、捜査に没頭するあまり一線を越え、窮地に立たされる。これは罠なのか?男たちの嫉妬と裏切りが、殺人鬼を駆り立てる。挑発する犯人と刑事の執念。熾烈な攻防は驚愕の結末へ。』貫井徳郎の凄さを感じた作品だった。一瞬、最初の大崎警官が犯人ではと思うところはあったんだけど、まさかの… この展開は初めてだった。警察内部の西條と綿引の関係、トムとの先輩後輩の関係、三井、村越、登場人物が多いと思ったけど、中々、一人一人が個性があり、ドロドロとか人間描写も上手くて、かなり面白かった。後半は一気読み。主人公がまさかホームレスまで落ちるとは… かなり人間関係のドロドロだったけど、後半が読めずに、かなり面白かった。人間のキャラクターを描くのが上手いので、次の作品を読むのが楽しみだ。

『走れ、健次郎』 菊池幸見 (祥伝社)
『このレースはどこかおかしい、何かが違う―先頭集団が五キロのチェックポイントを通過したとき、地方局アナウンサー桜井剛は奇妙なことに気がついた。盛岡初の国際マラソン大会。スタートから男がずっと走っているのだ、沿道を。しかもトップについて!たった一人、誰の声援も受けず、なぜ彼は走り続けるのか?実況が成功すれば、キー局への移籍も夢ではない桜井は男の存在を無視するが…。快調にレースを引っ張るマラソン界のエース、大会を後援する大手スポーツメーカー社員、アナウンサーの妻、多くの人たちの想いが、謎のランナーに絡まっていく。熾烈なレースの行方は?そして男のゴールとは?やがてその走りは、観る人の心を変えていった―。爽快マラソン小説誕生』読み始めは、何かつまらないと思ったけど、一気に読めた。凄い面白かった。正直、ありえない設定だろうけど、それでも許せる。読みながら、久しぶりに何か心が熱くなり、何か泣きたくなった。凄い話だ。走りたくなった。沿道を。

『牛乳アンタッチャブル』 戸梶圭太 (双葉文庫)
『「お前んとこの牛乳飲んだせがれが腹いたぁなって病院担ぎ込まれたんや!わかっとんか!」雲印乳業西日本支社のお客様相談センターにかかってきた一本の電話。ろくな対応ができない無能な経営陣を倒すため、社員たちが決起した!戸梶圭太がブッ放す抱腹絶叫・疾風怒涛のサラリーマン・バトル、いざ開幕』半沢直樹みたいな企業小説かと思ったら… けっこう面白かった。戸梶圭太にハマった感じ。

『水の柩』 道尾秀介 (講談社文庫)
『老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、 自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。 同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、 誰より“普通”を欲していた。 文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。 「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」 敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。 だが、少女には秘めた決意があった。 逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。 大切な人たちの中で、少年には何ができるのか』純文学ぽい作風で、何か、正直、読みにくかった。冒頭から、敦子が死んでしまっていると思っていたけど、騙された。あまり自分の評価は悪いけど、小さな謎も全て回収されているあたりはさすがだった。

『春から夏、やがて冬』 歌野晶午 (文春文庫)
『スーパーの保安責任者・平田は万引き犯の末永ますみを捕まえた。いつもは容赦なく警察に突き出すのだが、ますみの免許証を見て気が変わった。昭和60年生まれ。それは平田にとって特別な意味があった―。偶然の出会いは神の導きか、悪魔の罠か?動き始めた運命の歯車が2人を究極の結末へと導く! 』後半で、まさかの展開。平田がますみを殺してしまうとは… 凄い展開だと思っていると、最後の最後で、何か、ズルイ終わり方で、何か好きになれない。

『銀翼のイカロス』 池井戸潤 (ダイヤモンド社)
『半沢直樹シリーズ第4弾、頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500億円もの債権放棄を要求する政府の再生タスクフォースと激突する。シリーズ史上最大の倍返し』人気シリーズ「半沢直樹」の四作目。巨大な的になればなるほど、面白い

『悪党たちは千里を走る』 貫井徳郎 (幻冬舎文庫)
『「真面目に生きても無駄だ」。しょぼい騙しを繰り返し、糊口を凌ぐ詐欺師コンビの高杉と園部。仕事先で知り合った美人同業者と手を組み、豪邸の飼い犬を誘拐しようと企てる。誰も傷つけず安全に大金を手に入れるはずが、計画はどんどん軌道をはずれ、思わぬ事態へと向かってしまう――。スピーディな展開と緻密な仕掛け。ユーモアミステリの傑作』何となく道尾秀介の「カラスの親指」を思わせるぐらい、楽しい小説だった。憎めない悪党たちというのは良いかも。

『プレズム』 貫井徳郎 (創元推理文庫)
『小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが……。万華鏡の如く変化する事件の様相、幾重にも繰り返される推理の構築と崩壊。究極の推理ゲームの果てに広がる瞠目の地平とは?『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んで話題を呼んだ衝撃の問題作』凄い面白かった。今まで読んだことがない推理小説。本当、タイトル通りプリズムな作品。まさか、オチあると思ったのに、オチか゜ないとは…そこが違和感なく伝えられているのが凄い。何だろう… 人の描写も凄いので、かなりハマってしまう。章が変わるごとに主人公が変わり、視点が変わり、この人が犯人だと思った人がまさかの無罪で、それはそれで、犯人探しをしているし… 本当、この作家にハマってしまった。でも、本当の犯人は誰だったのだろうか…

『慟哭』 貫井徳郎 (創元推理文庫)
『連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編』2つの話が並行して描写されて、まさかな〜と思っていたら、やっぱりのオチ。それでも、騙された〜という感じ。文章が上手いので、どんどん引き込まれていった。慟哭とは「大声をあげてなげき泣くこと」。まさに、それが動機でもあったんだな〜

『パラドックス13』 東野圭吾 (講談社文庫)
『3月13日13時13分13秒、ブラックホールの影響で「P-13」と呼ばれる現象が発生することへの対策が、政府の間で極秘に進められていた。学者や政府関係者ですら、具体的にどういう現象が発生し、どういう影響を受けるのか詳細につかめないため、関係各署には、その時間だけ危険な作業を中断し危険な場所から離れるよう通達だけされたが、国民には混乱が起きないよう、この情報自体、その時が過ぎるまでの極秘事項として決して公開されなかった。刑事の久我冬樹は、同じく警視庁の管理官である兄・誠哉とともに強盗犯の確保に取り掛かっていたが、冬樹のミスにより、誠哉が犯行グループに撃たれてしまう。冬樹もまた、犯人の撃った弾を受け、その衝撃の後、冬樹は意識を取り戻すが、東京の街には誰もいなくなっていた。訳がわからないまま街を歩き、見つけたのは同じような現象に出くわした10人で、その中にはなぜか死んだはずの誠哉もいた。そして、状況が飲めない彼らは、廃墟と化した東京をさまようことになり、そこへ数々の天変地異、そして疫病が襲う』東野圭吾らしくない小説だった。SF的。話の展開がすごく、最後は、どうなるんだろうと思いつつ、面白かった。映像化されそうな気がする。

『転生』 貫井徳郎 (幻冬舎文庫)
『自分に移植された心臓は、ドナーの記憶を持っているのか?移植手術を受けた大学生の和泉は、これまでとは違ってきた自分の趣味や嗜好に戸惑う。突然夢に現れた恵梨子という見知らぬ女性の存在も気にかかりながら心惹かれてゆく。やがて和泉は夢の記憶だけを頼りに、タブーであるドナーの家族との接触を図り、恐るべき近代医学の闇に直面する』面白かったけど、何か、それだけ。物足りなかった。前半に登場する、如月、紙谷の脇役達をもっと使えたらと思った。

『消失グラデーション』 長沢樹 (角川文庫)
『他人とのコミュニケーションが苦手で女の子との逢瀬だけで心を埋めようとする高校二年生の康。ある日、片思い中の女子バスケ部員、緑が屋上から転落する。しかし彼女は血痕だけを残していなくなった』主人公の性格に、何かついていけずに、怪我しても、何かざまあみろなんて、思ったり… でも、最後には… 何か無茶な仕掛けなんだけど、ここまで、やっちゃうと、アリなのか… 

『乱反射』 貫井徳郎 (文庫)
『物語はマイナス44章から始まり、事故発生の経緯が描かれ、発生を経て改めて第1章から続いていくが、日本推理作家協会賞ではこの点が「『すでに知っている事柄の答え合わせをさせられている』感覚が強い」などの批評もあったが、作家としての技量やミステリ界に対する貢献などが加味されて受賞に至った。強風で街路樹が倒れ、側を歩いていた女性が押していたベビーカーに直撃する。止まらない血に動転する母親を様々な不幸が襲う。病院の患者たらい回し、軽い風邪程度で夜間救急を利用する若者たち、ある病気により街路樹の診断を怠ってしまった業者、街路樹の伐採に反対し診断業者を追い返した主婦たち、プライドから犬のフンの片付けを途中で切り上げた市役所の職員、犬のフンを片付けなかった老人、少しずつのモラルのない身勝手な行動が不幸の原因を作っていった』関係なさそうな話しが、半分ぐらいで、繋がってゆくのが面白かった。けっこう楽しく読んだ。しかも引き込まれる文章で飽きなかった。それにしても、誰もがやりそうなことで、それが重なり、人が死んでも、自分的には、そんなことすぐ忘れて、いきなり糾弾されても「悪かった」と言えやしないし… 

『八月からの手紙』 堂場瞬一 (講談社文庫)
『一九四六年、戦後間もない東京で野球の力を信じた男がいた。復興への期待を胸に、「日本リーグ」を立ち上げようと走り出す日系2世の元ピッチャー矢尾。戦時中、カリフォルニアの収容所で絶望の日々を送る彼を支えたのは、ニグロリーグのスター選手ギブソンとの友情だった。構想10年、渾身の感動作』後書きを読んで、実話であった事がわかる。ギブソン、ペイジの活躍するシーンが凄い楽しかった。

『8年』 堂場瞬一 (集英社文庫)
『2度のオリンピックで華々しい活躍をしながらも、ある事情でプロ入りを諦め一線を退いた投手・藤原雄大。8年後、33歳になった藤原は突如ニューヨークのメジャー球団に入団する。ソウル五輪で期待以上の活躍と誰もが賞賛した中、ただ1人、藤原本人は自責点1を負わされたことが悔しくて仕方がなかった。自分の球を打ったあの男ともう一度戦いたい、その気持ちが藤原を大きく突き動かす 』第13回小説すばる新人賞受賞作。8年越しのライバルとの勝負が物足りなかったけど、なかなか、面白かった。

『×ゲーム』 山田悠介 (幻冬舎文庫)
『郵便局に勤務する小久保英明は、小学校の同窓会で蕪木鞠子の名前を聞き嫌な記憶を思い出す。10年前クラスで流行っていた『×ゲーム』。くじを引かせてそのくじに書かれた罰ゲームを行わせるという遊びだったが、実際は蕪木鞠子へのいじめのための遊びであった。さえない容姿で性格も暗かった蕪木鞠子。英明は×ゲームにより鞠子への“マジ告白”をする羽目になったのだ。そして10年後の今、告白を信じ込み英明のストーカーとなった蕪木鞠子が現れた。鞠子はかつての担任教師やクラスメイトをいじめの復讐として惨殺する。さらに、鞠子は英明の恋人の明神理香子に嫉妬して理香子を拉致してくじを引かせる。『×ゲーム』である。さらに、鞠子は英明にもくじを引かせるのだ。』アイディアや描写は面白いと思うけど、それまでの話しか…

『月と蟹』 道尾秀介 (文藝春秋)
『「ヤドカミ様、僕の願いを叶えて」。行き場のない思いを込めた他愛ない儀式がやがて……。子供たちの切実な心が胸に迫る俊英の傑作!第144回直木賞受賞作品。』何か、直木賞の取るために書かれたような感じ。文学的な感じがプンプンした。正直、あまり面白くなかった。期待はずれ。

『白銀ジャック』 東野圭吾 (実業之日本社文庫)
『倉田玲司は、スキー場でリフトやゴンドラなどの運営を行っている。働き始めてから15年。40歳になり、結婚するチャンスもない日々を送っている。そんなある日に、スキー場へ脅迫状が届いた。ゲレンデの下に爆弾を埋めた。という内容のものであった。警察に通報できない状況の中で、犯人は悠々と身代金を奪取してゆく。ゲレンデを乗っ取った犯人の動機はいったいなんなのか。1年前の禁断のゲレンデが鍵をにぎっている』何か読みやすく、どんどん読んだけど、面白い事は面白かったけど、何かそれだけ。結末が何か、こじつけたような感じで、あまりよく理解できなかった。

『球体の蛇』 道尾秀介 (角川文庫)
『幼なじみ・サヨの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった。白い服に身を包み自転車に乗った彼女は、どこかサヨに似ていた。想いを抑えきれなくなった私は、彼女が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込むという悪癖を繰り返すようになったが、ある夜、運命を決定的に変える事件が起こってしまう―。幼い嘘と過ちの連鎖が、それぞれの人生を思いもよらない方向へ駆り立ててゆく。最後の一行が深い余韻を残す、傑作長編』何か、後半、文章がとっつきにくかった。最後の一文が深い余韻を残すとあったけど、特にそうは感じなかった。ということは、あんまり共感しなかったのかな〜

『瀬古利彦マラソンの真髄―世界をつかんだ男の“走りの哲学”』 瀬古利彦 (ベースボール・マガジン社)
『「企業秘密」として、マラソン練習のノウハウや練習メニューを一般に公表したことのなかった瀬古利彦が、ここにすべてを明かす! 停滞している日本男子マラソンの飛躍をうながす一冊。』黒木亮氏の『冬の喝采』を読んだら、何か瀬古利彦氏の『マラソンの真髄』を前に読んだことがあるのを思い出し、また読み返してみた。その中にマラソンの真髄の百カ条を書かれている。興味があるのだけ抜粋してここに残していこう。あくまで、自分の為に書いているだけだけど… 一 マラソン練習とは、42.195キロを、長い距離だと感じないようにしていくこと 一 マラソン練習とは、35キロを中間点だと思うようにすること 一 練習は強制されてやるものでしない、決められた練習でも自分の責任下でやるもの 一 一度、決めた練習なら、絶対に逃げてはいけない。練習の途中で走るのをやめたら、レースでもきっとやめる 一 ただのジョグはするな。生涯、トレーニングしていくなかで、大半を占める練習はジョグである。軽んじてはいけない 一 フォームは歩いて固める 一 体幹を鍛えないと、いいフォームで走れない。人は、足や腕で走っているのではない。体幹で走っている 一 報われない怪我はない。人間は駄目だと思ったときが始まりであり、乗り越えられない壁は与えられない 一 練習で、これとこれを走りば、こうやって走れていくという法則を持つ 一 レースは調整して出るので、練習の何十倍も楽だ 一 集中力は長く続くものではない。レースに向けて集中するのは、当日になってからでいい 一 レースで勝つ人は、レース中に苦しまない 一 たくさんの人の支えがあって走ることができている。感謝の気持ちを忘れない 何か耳の痛い言葉もあるけど、何かずっしりと胸に応える。あんまり、瀬古利彦氏は、好きではないけど、マラソンの一時代を築いたランナーなので、その言葉は重みがある。考えてみれば、自分はダラダラとジョグしていたけど、もっとタイムを上げようとするには、ジョグでも、色々と考えて走らないと無駄になってしまうんだな〜完全休養の日に、走って疲れを抜く積極的休養90分ジョグをやれるくらいではないと、凄い記録は生まれないのかしれない。

『冬の喝采 運命の箱根駅伝』 黒木亮 (幻冬舎文庫)
『「天才は有限、努力は無限」 北海道の大地を一人で走り始めた著者が、怪我によるブランクを乗り越え、準部員として入った競走部には、世界的ランナー・瀬古利彦がいた。入部後も続く怪我との戦い、老監督との葛藤など、1年8ヶ月の下積み生活に耐えて掴んだ箱根駅伝の桧舞台で、タスキを渡してくれたのは瀬古だった。それから9年後、30歳になって自分を箱根路に導いた運命の正体を知る』(途中だけど)。何だろう。箱根駅伝を走るぐらいだから、凄い速いのだけど、何か、自分とは何か違う。ちょっと否定的なんだけど。こういう走り方は嫌だと思った。怪我を気にしながら走り過ぎているというか… 故障して、走れない時期も長く、苦悩したのも分かる。走れるようになっても、常に怪我との戦い。しかも、監督の目を気にしながら練習しているようだし… 確かに怪我で痛いのだけど、そういう走り方では、マラソン人生は短命に終わると思ったら、4年の箱根駅伝で最後の陸上生活にしようとしているし… 本当に、楽しんで走っていたのかな〜自分なら瀬古選手が近場にいるなら、もっとワクワクしてもおかしくなかったのでは… でも、中村清監督とは相性合わないだろうけど… とにかく、怪我を恐がりながら、走りたくない。恐がるぐらいなら、たとえ、速くなくても、たとえ箱根を走れなくても、怪我を完全に治してから走ろうとするだろう。それで4年間が終わろうとも、いつかは走れるようになると夢を描くだろう。そうすれば、卒業しても走り続けていたのかな〜何か、自分とっては、悲しいマラソン人生の話しに思えてしまった。でも、学生時代の陸上って、そういうものなのかもしれない。自分の後輩も、昔、陸上部だったけど、今は全く走りたくないと言う。無理に○○大会で一緒に走ろうと言うと、ムスッとするので、誘えなくなってしまったけど… それにしても、著者はマラソン人生は終わったのかもしれないけど、作家として走っている。第二の人生ぽいけど、ある意味、羨ましい。

『疾風ロンド』 東野圭吾 (実業之日本社文庫)
『「いきなり文庫」の大ヒットミステリー『白銀ジャック』から3年。今度の東野圭吾最新作は、まさかの「文庫書き下ろし」!!■東野圭吾が贈る、この冬最大の興奮! ラスト1頁まで気が抜けない長編ミステリー! 拡散すれば人々を大量死に陥れる威力をもつ生物兵器K-55が盗まれた! 引き換えに3億円を要求する犯人からの手がかりは、スキー場らしき場所で撮られたテディベアの写真のみ。しかも犯人との交渉が突如不可能に! 圧倒的なスピード感で二転三転する事件のゆくえ、読者の予想を覆す衝撃の結末に酔いしれろ! 』最後、この話しは上下巻あるのじゃないかと思ったけど、最後の最後(3ページ)で、あっと思った。やっぱり、東野圭吾は安定感があり、面白い。スキーは興味ないけど、東野圭吾の作品の中で一番読みやすかった。

『雀蜂』 貴志祐介 (角川ホラー文庫)
『11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能! 』確かに予測不能な結末だけど、もう少し伏線が欲しいところ。あまりにも予測不能過ぎて、ついてゆけなかった。

『殺し合う家族』 新堂冬樹 (徳間文庫)
『浴室に転がった孝の生首が、貴子を見上げていた。「いゃあっ!」。貴子は悲鳴を上げ、生首を蹴り上げた。「お父さん!」。優太が、赤い飛沫を上げながら排水口に転がる生首を慌てて拾い上げた。―死体の解体を終えた貴子は最後の足をゴミ袋に詰めた。手伝わされた優太は完全に壊れていた。この場で繰り広げられている地獄絵図は、富永の存在なしには起こり得るはずがなかった。洗脳、私刑、殺人、死体解体そして驚愕のラスト』北九州監禁殺人事件をモデルにした小説らしい。あまりにもグロ過ぎて、凄い気持ちの悪くなる話しだった。

『夫のカノジョ』 垣谷美雨 (双葉文庫)
『夫の浮気を疑った妻が、相手の女性に会いに行く。すると、言い争っているうちに、なんとふたりの身体が入れ替わってしまったのだ。平凡な日々の生活に少し不満をもっていたけれど、自分の家族や人間関係を別の立場で見てみると、いままで気づかなかったことが見えてきた。自分が変われば相手も変わるかもしれない…読んだあと、少し人に優しくなれそうな、Ifの世界をリアルに描いた長編小説』あまりにも都合よく物事が進んでいくけど、中々、面白く読んだ。歯ブラシの勘違いは笑えたけど、腕時計の方は… 本当に夫に下心は無かったのだろうか… 腕時計をプレゼントするなんて…

『20』 堂場瞬一者 (実業之日本社文庫)
『低迷に喘ぎ、売却が決定した名門球団“スターズ”。本拠地でのシーズン最終戦、プロ初先発のルーキー有原はノーヒットノーランのまま9回を迎えた。スターズのリードは1点。快挙達成へのアウト3つを奪うため、ルーキーが綱渡りで投じる20球を巡り、両軍選手や監督ほか関係者の思惑を、1球ごとに語り手を替えて濃密に描き出す。堂場野球小説の真骨頂、渾身の書き下ろし! 』20球の間に、主人公が1球ごとに変わる。中々面白い試み。また、過去の小説の登場人物も出てきて、中々楽しかった。が、一球一球が長く、ちょっと疲れたかな〜 最後の一行「お前の今の一球で、人生が変わったと感じた人間は、俺以外にも何人もいるはずだ」に感動したこの言葉を書きたかったために、この小説を書いたのではと思わせる一行の重さだった

『モンスター』 百田尚樹 (幻冬舎文庫)
『瀬戸内海に面した人口4万人の古い田舎町でレストラン「オンディーヌ」を営む絶世の美女・美帆。彼女は店を経営しながらある男を待っていた。この世のものとは思えぬほど醜い顔で生まれ落ちた少女・和子。彼女は同じ町に住む少年に恋をし、それが彼女を狂わせていく』取材力が凄い。最後、どうなるんだろうと思いつつ、読み進んだ。

『カッコウの卵は誰のもの』 東野圭吾 (光文社文庫)
『スキーの元日本代表・緋田には、同じくスキーヤーの娘・風美がいる。母親の智代は、風美が2歳になる前に自殺していた。緋田は、智代の遺品から流産の事実を知る。では、風美の出生は? そんななか、緋田父子の遺伝子についてスポーツ医学的研究の要請が……。さらに、風美の競技出場を妨害する脅迫状が届く。複雑にもつれた殺意……。超人気作家の意欲作』最後、どんでん返しはくると思ったけど、複雑すぎた。それにしても良く出来過ぎているので、あんまり急展開過ぎて自分にはついてゆけなかった。東野圭吾って、遺伝子ネタ好きなんだろうか…

『ロスジェネの逆襲』 池井戸潤 (ダイヤモンド社)
『バブル世代に銀行に入社した半沢直樹が、合併・統合を経てメガバンクとなった東京中央銀行の子会社の東京セントラル証券に、部長として出向し、IT業界の買収劇に巻き込まれるというストーリーだ。ロスジェネとは、買収劇に巻き込まれた東京スパイラルの瀬名社長と、半沢の部下の東京セントラル証券のプロパー社員・森山のことだ。瀬名と森山は私立の中高一貫校で一緒だったが、バブルがはじけて株価暴落のために瀬名の父親が破産して自殺したため、瀬名は私立高校を辞め、高卒でIT関連企業に就職した。就職先が倒産した後、瀬名は自分のプログラム技術を生かして友人をさそって起業し、今やIT企業の社長として注目される人物となっていた。対する森山は、就職氷河期にぶちあたり、なんとか東京セントラル証券に就職できたが、親会社の銀行からの出向者の上司にこき使われ、理不尽を感じている毎日だった。瀬名の東京スパイラルは、経営陣の内紛から、敵対的企業買収が仕掛けられる。半沢の東京セントラル証券は、当初その買収計画のアドバイザー契約を獲得する予定だったが、思わぬ展開でカヤの外に追いやられる。そんな時に、森山は、旧友の瀬名に突然電話を掛ける…。「やられたら倍返し」という半沢直樹のモットー通りの展開が心地よい。楽しめる企業小説』前2作よりも、かなりスカッとした作品だった。最初は何か面白くなさそうだったけど、だんだん引きこまれてしまった。4作品目の銀翼のイカロスはダイヤモンドで連載が行われているらしいけど、まとめて文庫で読みたいと思った。

『オレたち花のバブル組』 池井戸潤 (文春文庫)
『大阪支店から東京中央銀行営業第二部次長に栄転した半沢直樹は、法人部管轄の老舗ホテル「伊勢島ホテル」の再建を押し付けられることになる。同族経営の伊勢島ホテルは、羽根夏彦専務らが経営再建のため正義感の強い経理部長の戸越茂則を追い出して実権を握り、社長の湯浅威をも追放しようとする動きを起こしている。しかも、二百億円の融資後、莫大な損失が出たことを東京中央銀行側が把握できないのに、ライバル銀行が把握していたなどの不可解な事実が見つかった。折しも、銀行に金融庁検査の通知が来る。主任検査官・黒崎駿一は容赦ない摘発で銀行を破たんさせた辣腕の人物である。もし、黒崎によって、ホテルの経営再建計画が進まず融資の回収がおぼつかないと判断されると、融資の判断責任が問われ、倒産防止のため数千億円の引当金が命じられる。そうなれば、銀行の信用は崩壊し業績が悪化する。憂慮した頭取の中野渡は、半沢に申し分のない再建策作成を命じたのである。貧乏くじをひかされたようなものであるが、負けるわけにはいかない。しかるに、銀行内は一枚岩でなく、合併前の二つの銀行の派閥争いが渦巻き、足の引っ張り合いが起こるなど予断を許さない。一方、半沢と同期の近藤直弼は、出向先の中堅電機メーカー「タミヤ電機」で総務部長に就任し、融資を求めて、東京中央銀行銀行京橋支店に日参していたが、支店長らは近藤と別の銀行出身のため言を左右にして応じない。さらに社長の田宮基紀は近藤の進言に耳を貸さず、無能呼ばわりするばかりだし、部下の経理課長野田英幸からは執拗ないびりに遭うなど散々な状態である。鬱々として、またしても心身の不調を感じていた近藤であったが、ある日、野田の不正な裏帳簿を見つけた怒りから、失われていたバンカーとしての矜持を取り戻し、敢然と田宮らに立ち向かう。そんな近藤に勇気を与えられた半沢は、湯浅社長と再建について話し合う。湯浅は、かつて勤務していたホテル再建に誠意ある態度を見せた半沢を忘れておらず、従来の殿様商売を捨て、中国や香港、台湾方面の顧客の開拓とITを導入した斬新な再建策を示す。半沢は湯浅の心からの信頼に支援を約束する一方で、渡真利忍、戸越、近藤、新聞記者の松岡らの助けを借りて調査を続ける。すると、損失は以前から銀行側が把握していたことばかりか、田宮に用途不明の三千万円が京橋支店より融資されていたことも浮かび上がる。半沢と別行動で社内の不正を追及していく近藤に怒った田宮は、京橋支店長の貝瀬郁夫に、近藤の出向解除を申し出す。だが、近藤は怯むことなく、バンカーとしての誇りを支えに三千万円の行方を捜すうち、意外にも、東京中央銀行上層部の影が浮かび上がってくる。何かがある。やがて、金融庁検査の日。果たして傲慢そのものの黒崎がやってきた。万全の再建策を用意した半沢に勝負の時が訪れる・・・・』中々、面白く、一気に読めた。デレビ放映に追いつけて良かった。第三弾のロスジェネも買う事にした

『オレたちバブル入行組』 池井戸潤 (文春文庫)
『主人公・半沢直樹は大手の東京中央銀行にバブル期に入行し、今は関西支店の中でも中核店舗とされる大阪西支店で融資課長を務める。妻の半沢花と宝塚の社宅で二人暮らし。持ち前の行動力と正義感、「やられたら倍返しする」という反骨精神が売り物である。上昇志向の強い支店長浅野匡の強引な命令で「西大阪スチール」に5億円の融資を行うが、その直後に会社が倒産、半沢は、課長の波野に問いただし、帳簿を調べると明らかに粉飾のあとが。そこで社長の東田満に事情を聴くと開き直った末に失踪してしまう。業績を上げれないことに怒った浅野は「粉飾を見破れなかった」として、半沢にすべての責任を押しつけ、知らぬ顔を決め込む。憤激する半沢だが、今ここで5億円の債権回収しておかねば銀行員として失格の烙印を押された挙句、子会社への出向という処分を受けてしまう。そこで、部下の垣内、同期の渡真利忍、東田に遺恨を抱く町工場社長竹下清彦、信用調査会社の来生卓治らの協力を受け、東田の行方を追う。浅野の息のかかった東京本店幹部の陰険な事情聴取をかわし、嫌がる波野を捕えて追及していくうちに、東田の粉飾と計画倒産との真の狙いを割り出すが、そこには銀行の信用にかかわる重大な事実があった。・・・・』ドラマの半沢直樹の視聴率が良いというので、買った。中々おもしろかった。銀行の話しということで、難しそうな単語が出てきても、分かりやすく書かれていた。読後の爽快感がたまらない

『月の恋人 Moon Lovers』 道尾秀介 (新潮文庫)
『冷徹にビジネスを成功させる青年社長・葉月蓮介が、夜の上海で巡り合った女。ありえない二人の物語は、美貌の中国人モデルや、部下の社員らを巻き込み予測不能の展開に…。旬のエンターテインメント作家がフジテレビ月9ドラマのために書下ろした、話題沸騰の恋愛劇。』月9になった小説。何となく、キムタクが主演していたのを覚えていた。道尾の作品は、最後のどんでん返しを期待するけど、小粒のトリックが中心になっていた。道尾の恋愛小説というので、意外性で読んだ。

『ソロモンの犬』 道尾秀介 (文藝春秋文庫)
『秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、まだ幼い友・陽介の死で破られた。飼い犬に引きずられての事故。だが、現場での友人の不可解な言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。そして予想不可能の結末が…。青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー』まさかまさかの… 主人公が死んでしまうとは… さらに、夢とは… 中々、面白かった。二重三重の驚きがあった。

『BOSS』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『ニューヨーク・メッツのGM(ゼネラル・マネージャー)に就任した高岡脩二。「野球はいかに効率よく点を取り、失点を少なくするか」----データ重視の彼は、投手力、出塁率に着目しチームの主砲すら放出し、理想のチームを編成してシーズンに挑む。かつて高岡を育てた球界の重鎮アーノルド・ウィーバーもアトランタ・ブレーブスのGMとして現場に復帰する。はやくもメディアは師弟対決と盛り上がるが......。グラウンドに立たないGMという立場で組織(チーム)を率いる二人のかけひき。 選手、監督との確執。さらにはチームのオーナーとの関係。リーダーとして人を動かし、活かし、導くこと、そして「勝負事に勝つ」ことの真の意味をスポーツ小説の俊英が描く会心の一冊。』最後が中々、良かった。清々しく終わった。本当、続編が読みたいかな〜

『ラットマン』 道尾秀介 (光文社文庫)
『結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とは―。このミス2009で10位』最初は初は、ひかりを殺したのは姫川姫川ので、過去に姉を殺したのは父親にせいだと思っていた。このままでは終わらないのが道尾の小説。ところが、姉を殺したのは母親であり、父はそれを隠蔽したと分かる。さらに、ひかりを殺したのは妹の桂で、姫川は桂の犯行を隠蔽。姫川が父親と同じことをしようとしている。ところが、ひかるを殺したのは野際… ドンデン返しにつぐドンデン返し。登場人物全員が「勘違い」や「思い違い」をした殺人事件を描いたミステリー小説だった。なかなか面白かった。それにしても、タイトルは面白い。

『模倣の殺意』 中町信 (創元推理文庫)
『七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。記念すべきデビュー長編の改稿決定版』まさかの、同姓同名、しかも同時進行で進んで行ったストーリーが一年のズレがあったとは… 少し、やられた感があった。これが40年前の作品とは… 類似の小説はあくさんあるけど、これが、一番最初だったようです。ミステリー界では「幻の名作」として有名な作品らしい。確かに…

『ボックス!』 百田尚樹 (文庫)
『高校ボクシング部を舞台に、天才的ボクシングセンスの鏑矢、進学コースの秀才・木樽という二人の少年を軸に交錯する友情、闘い、挫折、そして栄光。二人を見守る英語教師・耀子、立ちはだかるライバルたち…様々な経験を経て二人が掴み取ったものは!?『永遠の0』で全国の読者を感涙の渦に巻き込んだ百田尚樹が移ろいやすい少年たちの心の成長を感動的に描き出す傑作青春小説』ベタな感じだったけど、けっこう面白かった。木樽のデビュー戦は凄い感動。朝の電車で、目頭が熱くなった。最後のトーナメント、木樽と鏑矢との戦いになるかと思ったけど、違った。違った意味で、裏切られた感じで、良かった。

『鬼の跫音』 道尾秀介 (角川文庫)
『刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…(「〓(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…(「悪意の顔」)。心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作。道尾秀介初の短編集。収録されている短編はどれも独立していながらも、全ての作品に登場する「S」という謎の人物によって奇妙に結びつけられています』一話一話、中々、面白かった。どの話も暗さがある。特に「冬の鬼」の最後は中々、良かった。

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 村上春樹 (文藝春秋)
『多崎つくるは、木元沙羅と交際中だが、なかなか関係は進展しない。その原因として沙羅は、高校時代の友人から絶交されたことについてのわだかまりがあるのではいかと考えて、つくる自身が当時の友人たちに会って直接話をすることで、事態を打開するように勧める。そこでつくるは、名古屋とフィンランドに住む友人たちのもとを一人ずつ訪ね、絶交の真意を知る。そのうえで、あらたに沙羅との関係を進展させようと決意する』村上春樹の文章はリズム良く、スラスラと読める。しかも、その影響により、自分の文章がスラスラと思い浮かび、思考が回るような気がする。音楽を聴いているように読んだ。最後は、何か、すっきりしない。多崎と沙羅との関係はどうなったか、シロは誰に殺されたかと、色々と残る。でも、何の取り柄もないと自分では思っていても、人はそう思わないというのが、何となく、小説を読んで分かったような…

『家族ゲーム』 本間洋平 (集英社文庫)
『優秀なボクとダメな弟…。そんなボクらの前に一風変わった家庭教師が出現して、事態は急変!受験戦争を軽快に笑いとばした第5回すばる文学賞受賞作』テレビ放送が面白かったので、本を買ってみたけど… 純文学ぽく、読みにくいし、テレビの方が面白いような…

『シャドウ』 道尾秀介 (創元推理文庫)
『小学5年生の我茂凰介は、進行性の癌で母・咲江を亡くす。それから間もなくして、幼なじみの亜紀の母親で咲江とも親友だった恵が、夫の勤める病院の屋上から飛び下り自殺、亜紀は交通事故に遭い、凰介の父親・洋一郎もまた異常を来していく。家族の幸せを願う鳳介が行き着く結末とは』中々、面白かった。これも伏線が全て回収されている。田地先生もビックリだったけど、まさか洋一郎が正気だったとは… 亜紀へのことで疑って読んでいたのに…

『花と流れ星』 道尾秀介 (幻冬舎文庫)
『死んだ妻に会いたくて、霊現象探求所を構えている真備。その助手の凛。凛にほのかな思いをよせる、売れないホラー作家の道尾。三人のもとに、今日も、傷ついた心を持った人たちがふらりと訪れる。友人の両親を殺した犯人を見つけたい少年。拾った仔猫を殺してしまった少女。自分のせいで孫を亡くした老人…。彼らには、誰にも打ち明けられない秘密があった。人生の光と影を集めた、心騒ぐ5編』真備シリーズの短編集。正直、中々、面白かった。『流れ星のつくり方』のオチが驚いた。

『骸の爪』 道尾秀介 (幻冬舎文庫)
『ホラー作家の道尾は、取材のために滋賀県山中にある仏像の工房・瑞祥房を訪ねる。彼がその夜見たものは、口を開けて笑う千手観音と、闇の中で血を流す仏像。しかも翌日には仏師が一人消えていた。道尾は、霊現象探求家の真備、真備の助手・凛の三人で、瑞祥房を再訪し、その謎を探る。工房の誰もが口を閉ざす、二十年前の事件とはいったい。シリーズ第2弾 』背の眼も面白かったけど、骸の爪は数段面白かった。解説で知ったけど、作者の仏像への知識が深く、参考文献は確認の為だけに使用しただけという。驚かされた。毎度のことながら、数多い伏線は、ちゃんと回収されていた。

『背の眼』 道尾秀介 (幻冬舎文庫)
『小説家を目指し、“10年経っても芽が出なかったら諦めよう”と決めていた作者が、10年目に書き上げた初めての長編作品で、第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した、作者のデビュー作。「真備シリーズ」の1作目。――レエ……オグロアラダ……ロゴ……(ねえ、ボクのカラダ、どこ?)福島県白峠村を訪れた作家の道尾秀介。村ではここ数年、児童の神隠し事件が起こっているという。河原を散策していると、妙な声が聞こえてきた。そこは、神隠し事件で最初にいなくなった少年の切断された頭部だけが流れ着いた場所だった。この声は少年の霊の声なのか、気味の悪くなった道尾は、予定を切り上げて東京へ帰り、霊現象を探求する友人・真備庄介に相談を持ちかける。同じ頃真備は、白峠村とその隣町・愛染町で相次いだ自殺者の友人・上司たちから似たような相談を受けていた。死ぬ直前に撮っていた写真に写る彼らの背中に奇妙な眼が写り込んでいる、自殺する理由は何もなかった、その眼が自殺を引き起こしたのではないかというものだった。なぜ眼だけが写ったのか、道尾が聞いたゴビラサという言葉の意味とは……』中々、面白かった。後半まで、どういう解決になるのか、全く分からなかった。ただ、タイトルでもある「背の眼」の謎が結局解決されていない。

『片目の猿』 道尾秀介 (新潮文庫)
『盗聴専門の探偵、それが俺の職業だ。 目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。 楽器メーカーからの依頼でライバル社の調査を続けるうちに、 冬絵の存在を知った。 同業者だった彼女をスカウトし、チームプレイで核心に迫ろうとしていた矢先に殺人事件が起きる。 俺たちは否応なしに、その渦中に巻き込まれていった。 謎、そして……。 ソウルと技巧が絶妙なハーモニーを奏でる長編ミステリ』叙述トリック的な仕掛け。中々、面白かった。後で思い出せば、色々なところで伏線がちりばめられていた。三梨は帆坂くん以外は足音で分かるといったところとか。クッキーの缶をトウミが左手で缶を支え、マイミが右手で蓋をあけるとか… まさか登場人物が障害者だった伏線だったとは… そして、最後、特殊な能力をもつ男の話しだと思ったら…

『公開処刑人 森のくまさん』 堀内公太郎 (宝島社文庫)
『童謡を歌いながら、アイツがやって来る! ネット上に実名を晒された悪辣なレイプ犯や鬼畜なキャバ嬢が、次々に処刑されていく――。掲示板に犯行声明を出す「森のくまさん」を名乗るシリアル・キラーの正体は!? 第9回『このミステリーがすごい! 』大賞最終候補作に、徹底的に手を入れて生まれ変わった、編集部推薦の「隠し玉」です』読みやすく一気に読んだ。中盤で、もう森のくまさんの正体が分かってしまった。ただ、もうちょっと文章が上手いと良かったけど…

『人間の条件』 森村誠一 (幻冬舎文庫)
『片倉宏は結婚相談所のパーティで出会った仁科里美に求婚するが断られてしまう。失意の片倉の自宅周辺で起こったOL殺人事件の捜査に動き出した警視庁捜査一課・棟居刑事は事件解決の手掛かりすら掴めずにいた。そんな時、近所の川で魚が全滅したことに不審を覚え水質調査に乗り出した片倉が、恐るべき生物災害の存在と人為的な細菌散布の可能性を探り当てる。棟居は、片倉と新興宗教「人間の家」に関連した家出人捜査に携わっていた新宿署・牛尾刑事から情報を得てOL殺人事件の背後に潜む「人間の家」の危険な正体に気づく』人間の家がオウムと統一教会をまぜたような感じ。面白かったけど、下巻が急展開過ぎたかな〜

『龍神の雨』 道尾秀介 (新潮文庫)
『添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作』後半にさしかかった時、読んでいる途中で、読む手が止まってしまった。あれっ、これは何だ。ええっ、衝撃を受けた。これは何だ今まで勘ちがいして読んでいたのか… カラスの親指と同じく作者にやられてしまった。次から次に、あれっ、あれっ… 何と言う作家だ。凄いファンになった。ミスリードする文章力に参った。

『カラスの親指』 道尾秀介 (講談社文庫)
『“詐欺”を生業としている、したたかな中年二人組。ある日突然、彼らの生活に一人の少女が舞い込んだ。戸惑う二人。やがて同居人はさらに増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは』それにしても、凄い。細かな伏線が全て拾われて、最後、読みながらゾクゾクした。これだけ、伏線があるのに、最後まで気づかせないのが凄い。

『ラストダンス』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『プロ野球「スターズ」の同期、真田誠と樋口孝明。その野球人生は常に対照的だった。ドラフト二位で即戦力と期待された樋口はついにレギュラーを奪えず、真田はドラフト五位から球界を代表するスター投手へとのし上がる。そして今季、球界最年長・40歳の二人に引き際が訪れた。二軍監督要請という形で引退勧告を受けた樋口に対し、真田はシーズン半ばで突然引退会見を行う。ところが引退宣言以降の登板で真田は連勝、低迷していたチームも優勝争いにからむ快進撃を始めた。シーズン終盤、正捕手の負傷で一軍に昇格した樋口と真田に17年ぶりのバッテリーを組む日が到来する…』野球の描写がドキドキ感じがあって良かった。

『絶望ノート』 歌野晶午 (幻冬舎文庫)
『いじめに遭っている中学2年の太刀川照音は、その苦しみ、両親への不満を「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねていた。そんな彼はある日、校庭で人間の頭部大の石を見つけて持ち帰り、それを自分にとっての“神”だと信じた。神の名はオイネプギプト。エスカレートするいじめに耐えきれず、彼は自らの血をもって祈りを捧げ、いじめグループ中心人物の殺人を神に依頼した。「オイネプギプト様、是永雄一郎を殺してください」―はたして是永はあっけなく死んだ。しかし、いじめはなお収まらない。照音は次々に名前を日記帳に書きつけ神に祈り、そして級友は死んでいった。不審に思った警察は両親と照音本人を取り調べるが、さらに殺人は続く―』騙された〜 最後の来宮のことは、『弟』という記載で何となく関係がありそうと予感があったけど。それにしても、こっそりノートを見る人が、何とも多いことか… 大迫はなぜ父親の刑事に言ったのだろうか… 少し疑問。

『プラチナデータ』 東野圭吾 (幻冬舎文庫)
 『「電脳トリップ」という、トリップ体験ができる電子デバイスを使用中に、ホテルで女性が殺害される事件が起こった。ホテルに残された毛髪、体毛から、犯人はすぐに検挙された。 だが、事件はそれだけでは終わらなかった。同様に、電脳トリップを使用し、乱暴後に拳銃で殺害するという事件が起こったのだった。残された精液によるDNAデータから、すぐに犯人は割り出されると思われていたが、DNA検索システムは「Not Found(NF)13」という結果を示した。これは、類似する遺伝子が登録されていない、というものだった。 その後、蓼科兄妹が殺害される。おどろくべきことに、彼らを殺害するのに使用された拳銃は、NF13事件で使われたものと同一のものだった。彼らは死亡する前、神楽へ『DNA検索システムは不完全。モーグルを完成した』と、伝えていた。 早樹の服には、神楽の毛髪が付着していた。そこから、神楽は彼らを殺害した犯人と疑われる。 神楽には早樹たちに会った際、空白の数時間があった。というのも、彼は多重人格者であり、"リュウ"と呼ばれる人格で、早樹に会っていたからだ。本当に自分の人格が殺害したのか、確かめようとするが、リュウに確認することがなかなかできなかった。逮捕されることを恐れた神楽は、早樹たちの残した"モーグル"が事件解決の鍵になるのではないか、と早樹たちの別荘に向かう。 一方、浅間は捜査に協力的であった志賀たちが、急に捜査打ち切りのために動いていたことを察し、背景に何かがある、と動き出していた』前半はそうでもなかったけど、後半から面白くなった。スズランが本当にいるのか、いないのか、凄い気になった。中々、面白かった。

『悪の教典』 貴志祐介 (文春文庫)
『第1回山田風太郎賞受賞作、第144回直木三十五賞候補作、第32回吉川英治文学新人賞候補作、2011年本屋大賞ノミネート作。不良生徒やモンスターペアレント、集団カンニングに、淫行教師などの問題を抱える東京都町田市の私立高校につとめる蓮実聖司は、有能で人気者だが裏では自分に都合の悪い人間を次々と殺害していくサイコパスであり、一部の生徒から疑われ始めていた。文化祭の前日、蓮実は邪魔になった女生徒を自殺にみせかけて始末しようとするが、手順が狂い殺人の嫌疑がかかりそうになる。それを覆い隠すため出し物の準備のため校舎に泊り込んでいたクラスの生徒全員を同僚の教師の仕業に見せかけて散弾銃で皆殺しにしようとする。こうして一夜の血塗れの大惨劇が始まった』木の葉は森に隠せと、どんどん人を殺してゆく。やり過ぎではないかと思うけど、何か、後半は、殺していく蓮実を、なぜか応援してしまっているような… 小説だから面白く感じる。けっこう面白かった。

『いつか白球は海へ』 堂場瞬一 (集英社文庫)
『六大学野球で活躍した海藤敏は、プロ野球界入りを諦め、社会人チーム“間島水産”に入団。オーナーの熱心な勧誘と、全国制覇を遂げた名門チームへの憧れが心を動かしたのだ。だが、入団早々、オーナーが急死し、チーム存続の危機が明らかになる。勝利にこだわるルーキーの熱い思いは、他の選手達を…。野球を愛する男達の闘いを描く気鋭のスポーツ小説。ひたむきな昭和のフィールド・オブ・ドリームス』ありきたりな展開でも、けっこう面白く読んだ。

『鳥人計画』 東野圭吾 (新潮文庫)
『和製ニッカネンとの異名を取った天才ジャンパーが毒殺された。不振が続く日本ジャンプ界にあって、彼、楡井明だけは世界の頂点をも窺える強さを持っていた。そんな彼がなぜ―。捜査は難航を極めたが、1通の「密告状」から活路を見出す。そして警察は、この上もなく「意外な」人物を逮捕した。周囲は驚きの色を隠せない。容疑者が、被害者の死で最も大きな痛手を受ける筈の人間、楡井の専属コーチである峰岸だったからだ。完全犯罪を確信していた峰岸自身もまた、この予想外の展開に動揺を禁じ得ない。捜査陣は、峰岸が黙して語らない「動機」の追求に、峰岸は、「密告者」の探索に全力を傾けるが、その行き先には更なる驚愕の真実が待っていた』初めから犯人は分かっていて、自首しろと謎の人物から密告状が届く。その人物と動機を解明していくストーリー。単純な話しだと思っていたけど、二転三転と意外に面白かった。

『セカンド・ラブ』 乾くるみ (文春文庫)
『里谷正明は会社の先輩から誘われたスキー旅行で、内田春香と知り合う。交際を始めた2人は2月のある日、身形(みなり)のいい紳士に強引に呼び止められる。紳士は春香を新宿のパブで働く「美奈子」だと断じた。後日、店を訪れた正明は、春香にそっくりな女、美奈子と出会い驚愕する。はたして、美奈子の正体は春香なのか? ベストセラー『イニシエーション・ラブ』に続く「驚愕の恋愛ミステリー」第2弾!』イニシエーション・ラブほどのビックリ感はない。小説なので、最初から、かなりのネタバレ感がしていた。でも、まさか死んでいたとは… ええっ、後から凄いと思った。

『王様ゲーム 臨場』 金沢伸明 (双葉文庫)
『王様ゲームの番外編。物語の冒頭は終極と同じ時間軸で展開される。携帯で読んだ王様ゲームという小説、それが実話であるということに気付いた高校生の葉月はかつて王様ゲームが行われたという紫悶高校へと向かう。?王様ゲーム?より少し前、奈津子が体験したもうひとつの王様ゲーム。そこで奈津子が体験したものとは・・・』伸明と出会う前の奈津子の王様ゲーム。けっこうグロいシーンがヒドクなった。

『王様ゲーム 終極』 金沢伸明 (双葉文庫)
『王様ゲーム終了直後、一人生き残った伸明は再び王様ゲームへと参加することを決意する。全ては死んでいった恋人、親友、そしてクラスメイト達のために。そしてその数ヵ月後に伸明の転校先で再び王様ゲームは始まり、悲劇が繰り返されていく。そんな彼の前に現れた王様ゲームを知る謎の少女、本多奈津子。伸明は彼女の手により翻弄され、次第に追い詰められていく。過去を探るにつれて次第に明らかになる王様ゲームの全貌。そしてついに明らかになる王様の正体。王様ゲームを止める方法は伸明にとってはあまりにも過酷で、残酷だった』前作よりも面白かった。感動的な場面も多く、表現が上手くなった気がした。命令5が凄まじい命令だった

『王様ゲーム』 金沢伸明 (双葉文庫)
『モバゲータウンで4ヵ月連続で総合ランキング1位を獲得したホラー小説。ある日の夜0時0分に、金沢伸明とそのクラスメイトの元に?王様?からメールが届く。そのメールには王様からの命令が書かれており、その命令に24時間以内に従わなければ罰を与えられるという。その日から毎晩0時0分にクラスメイト達にメールが送られるようになり、最初はふざけ半分で王様メールからの命令を実行していたものの命令の内容は次第にエスカレート。そしてとうとう命令に従わなかったためにクラスメイト二人に?罰?が下された。それを皮切りにして次々と死んでいくクラスメイト達。迫られる選択、王様の目的は一体何なのか。 果たして伸明たちはこの悪夢から逃れられるのだろうか』次がどうなるか、どんどん読み進んだ。登場人物が多いが、工夫されているのか、そんなに多さを感じさせずに読んだ。でも、あまりにも、多くの人が死んだので、悲しみの余韻が残らないまま、展開が進み、もったいない感じ。後半、文章が分からなくなった。

『焔 The Flame』 堂場瞬一 (実業之日本社)
『プロ9年目の今季、FA権を取得するスターズの主砲・沢崎。一流の成績を残しながら打撃タイトルとは無縁で、「無冠の帝王」の称号に甘んじていた。アメリカ在住のスポーツエージェント・藍川は「大リーグを目指すなら、死んだ気になってタイトルを取りに行け」と沢崎を激励。彼は期待に応え、チームメイトの四番打者・神宮寺と首位打者争いを繰り広げてきた。ペナントレースは残り10試合。藍川の描いた“栄光”へのシナリオは、一点の翳りもないように見えたが……。実力派が放つ衝撃の野球サスペンス』咲に電話してからの最終戦がかなり面白かった。堂場瞬一のスポーツ物の結末的には、最高な感じ。5打席連続ホームランが、意外な結末になるのかリアルだった。

『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる (新潮文庫)
 『高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編』第五回ホラーサスペンス大賞受賞作。文章力で大賞を勝ち取った作品と言われるだけあって、文章は上手いと思うけど、自分には、読みづらさがあった。 性描写が凄い、具体的でえぐい。

『ピース』 樋口有介 (中央公論文庫)
『埼玉県北西部の田舎町。元警察官のマスターと寡黙な青年が切り盛りするスナック「ラザロ」の周辺で、ひと月に二度もバラバラ殺人事件が発生した。被害者は歯科医とラザロの女性ピアニストだと判明するが、捜査は難航し、三人目の犠牲者が。県警ベテラン刑事は被害者の右手にある特徴を発見するが…』帯の「意外な犯人、ラストのどんでん返し」「もう参ったという感じです」を見て、読んでみたけど、正直、あまり面白くなかった。梢路と樺山咲の存在意味はなんだったのだろう。意味が分からなかった。

『山手線デス・サーキット』 藤ダリオ (角川ホラー文庫)
『修平がふと目を覚ますと、そこは山手線電車の中。左には見知らぬ女性。2人は手錠でつながれており、首にはタイマーつきの時限爆弾が仕掛けられていた。通報すれば人質の親友が殺される。ゲームメーカーのクイズに答えて指令をクリアし東京都内の駅を駆け抜けろ。間違えれば死が待っている―。白昼堂々繰り広げられる、先の読めないサスペンス・ホラー。今度のラストもかなりすごい。注目を集める鬼才の最高傑作』面白いんだけど、何か安易。軽い感じがした。

『ミス・ジャッジ』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『たった1球の判定が、野球人生を狂わせてゆく――スポーツ小説の旗手が贈る、野球小説の金字塔が遂に文庫化! ボストンレッドソックスの先発投手として、メジャーデビューを果たした橘。暗い過去を秘めた日本人初のMLBアンパイア竹本。高校・大学時代の確執を引きずるふたりの人生が、大リーグを舞台に再び交錯する。たった1球の判定が明暗を分ける熾烈な世界で、因縁の闘いに決着はつくか――強烈な自負心と深い孤独を抱えた男たちのドラマを描く、傑作野球エンターテインメント』なんか主人公が考え過ぎではないかと思うほどで、少しイライラ。

『標なき道』 堂場瞬一 (中公文庫)
『同じ大学陸上部の出身でありながら、全く違う道を歩いてきた3人のランナー。一人は日本記録保持者でありながら故障に悩まされるガラスのエース。一人は実力はありながらも陸連を真っ向から批判したために表舞台から姿を消したアウトロー。その2人が再起をかけて、五輪出場権最後の一枚をを賭けたレースに参戦する。そして最後の1人は、この物語の主人公であり、長く安定した結果を残したものの優勝には縁のない「勝ち方を知らない」ランナー。そんな主人公に「決して検出されないんです」とドーピングを勧める男が現れて……というストーリー』前半、ドーピングを勧めが間延びした感じで、面白くなかったけど、やはりレースの臨場感は面白かった。堂場瞬一にハマっている。箱根駅伝の学連選抜をテーマにした『チーム』、日本人が世界最高記録を出させるために新設された東海道マラソンを テーマにした『ヒート』、そして、つい最近、読んだ勝ちたいランナーの葛藤、トーピングをテーマにした『標なき道 』… この『標なき道』、レースシーンは少ないけど、中々、考えさせられた。考えてみれば、なぜ、ドーピングが悪いのだろう。心身に悪影響を与えるから… ドーピングが悪いのは分かるけど、明確に、なぜ、悪いのか説明できない。 手を出す気持ちは分かる。少しでもタイムが上がるのなら… 例えば、薬を飲めば、簡単に1時間タイムを縮められるとあれば、どうだろう。しかも、絶対に見つからない。心が揺れてしまう。勝ちたいという気持ちが強ければ、強いほど、薬に手を出したくなってしまう。悪いことなんだと知りつつも、勝ちたいという気持ちは悪くない。勝負する者、少しでも成績を伸ばしたい。 ドーピングには、選手間の公平性を損なう。小説にも書いてあったけど、練習自体も不公平さはある。お金があれば、高地トレーニングに行けたり、良いシューズだって簡単に買えたりする。時間も豊富にあれば、好きな時に好きな練習を続けられる。 考えてみれば、酸素カプセルも、一種のドーピングだったりしているのかもしれない。鉄分が足りないと感じると、すぐにサプリメントを飲んでいたりする。少しでも速いタイムでゴールしたいと、本番の時にニューシューズで走ったりする。 文章がまとまらないけど、勝ちたいと言う一心で、大きなリスクがあろうとも、その勝負に勝とうとする気持ちは何か凄いと思った。 一応、読後の感想。

『ヒート』 堂場瞬一 (実業之日本社)
『日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるため新設された「東海道マラソン」。神奈川県知事の指令のもと、あらゆるお膳立てがなされたレースは終盤、思いがけない展開を見せる――困難と矛盾をはらんだ「世界最高記録」をめぐる男たちの人間ドラマと、疾走感100%のレース展開を圧倒的な筆力で描ききる、著者渾身の書き下ろし長編!箱根駅伝を描いたベストセラー『チーム』のその後を描いた、傑作陸上小説』これぞ、マラソン小説と言う感じ。レースシーンの心理描写はやはり、リアルで感動。エリートランナーは、こんな風に感じて走っているのかと思った。最後は、本当、どうなるのだろうか… 続編があればいいのに。

『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子 (徳間文庫)
『一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…』本の帯に「この本はあとがきまでが物語です」というのに興味を引かれて買ってしまう。何しろ「頭をガツンと殴られた衝撃が待っている…」らしい。それにしても、老若男女15人を殺害したとは… 何かオチは少し分かりづらかった。

『指し手の顔―脳男2』 首藤瓜於 (講談社文庫)
『その瞬間、彼女は永遠に声を失った。罪と怒りと正義の行方 問題作がスケールアップ 連続爆破事件の共犯者という疑惑が残る鈴木一郎が連続殺人犯だというスクープが地元紙に載る。かつて精神鑑定を担当した真梨子に注目が集まる中、警察捜査の裏をかくように行動する鈴木一郎。残虐行為を繰り返す美貌の殺人者とは何者なのか? 乱歩賞受賞作『脳男』から7年、更なる問題作が満を持して登場』精神、絵の説明が多いのが何となく読みにくかった。色々な事象が、最後にまとまってくるのが、鮮やかだった。続編も読んでみたい。真梨子のその後も気になる。

『チーム』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『ゴールの瞬間まで目が離せない ノンストップ駅伝小説! 箱根駅伝出場を逃した大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は――選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。 巻末に、中村秀昭(TBSスポーツアナウンサー)との対談を収録。』「大延長」で堂場瞬一にハマり、「チーム」を読んでみようと思った。駅伝小説といえば、三浦しをんの「風が強く吹いている」だけど、「チーム」の方が面白かった。文章も読みやすく、一気に読んでしまう。「風が強く吹いている」はご都合的な面もあったけど、「チーム」は現実的。門脇の走りには、朝倉が失敗しているだけに、感動した。山の走り方には参考にもなった。これで、使用がつの箱根駅伝、学連選抜も目が離せなくなった。

『大延長』 堂場瞬一 (実業之日本社文庫)
『初出場でありながら、大会屈指の好投手を擁して勝ち上がった、新潟の公立進学校・新潟海浜。甲子園の常連で、破壊的な打撃力を誇る、東京の私立・恒正学園。両校間で行われた夏の全国高等学校野球選手権大会・決勝戦は、延長15回の熱闘に決着がつかず、優勝決定は翌日の再試合に持ち越された。監督は大学時代のバッテリー同士で、海浜のエースとキャプテン、恒正の四番バッターは、リトルリーグのチームメート。甲子園球場に出現した奇跡の大舞台で、互いの手の内を知り尽くしたライバルたちの人生が交差する。エースの負傷欠場、主力選手の喫煙発覚など、予期せぬ事態に翻弄されながらも“終わらない夏”に決着をつけるため、死闘を続ける男たちの真摯な姿、<甲子園優勝>をとりまく数多の欲望の行方を俊英が迫力の筆致で描く、高校野球小説の最高傑作』中々、面白く、他の作品も読みたくなった。

『神様のカルテ』 夏川草介 (小学館文庫)
『主人公・栗原一止(くりはらいちと)は、信州松本にある本庄病院に勤務する内科医である。彼が勤務している病院は、地域医療の一端を担うそれなりに規模の大きい病院。24時間365日などという看板を出しているせいで、3日寝ないことも日常茶飯事。自分が専門でない範囲の診療まで行うのも普通。そんな病院に勤める一止には最近、大学病院の医局から熱心な誘いがある。医局行きを勧める腐れ縁の友人・砂山次郎。自分も先端医療に興味がないわけではない。医局に行くか行かないかで一止の心は大きく揺れる。そんな中、兼ねてから入院していた安曇さんという癌患者がいた。優しいおばあちゃんという感じで、看護師たちには人気者だが、彼女は「手遅れ」の患者だった。「手遅れ」の患者を拒否する大学病院。「手遅れ」であったとしても患者と向き合う地方病院。彼女の思いがけない贈り物により、一止は答えを出す』二度、泣きそうになった。一度は、学士の為に男爵が描いた桜。もう一つは、安曇の死。一止への手紙が良かった。ハルさんの温かい優しさも良かった。いい夫婦関係だと思う。感動した言葉は「一に止まると書いて、正しいと言う意味だなんて、この年になるまで知りませんでした。でもなんだかわかるよな気がします。人は生きていると、前へ前へと気持 ちばかり急いて、どんどん大切な物を置き去りにしていくのでしょう。  本当に正しいこというのは、一番初めの場所にあるのかもしれませんね」まさにそうかも。

『龍は眠る』 宮部みゆき (新潮文庫)
『嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化』どうも話しが複雑すぎた気がした。

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』 歌野晶午 (講談社文庫)
『“頭狂人”“044APD”“aXe”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なニックネームをもつ5人がインターネット上で殺人推理ゲームの出題をしあっている。密室、アリバイ崩し、ダイイングメッセージ、犯人当てなどなど。ただし、ここで語られる殺人はすべて、現実に発生していた。出題者の手で実行ずみなのである…。茫然自失のラストまでページをめくる手がとまらない、歌野本格の粋』何度も驚かされた。頭狂人が女性だったこと、殺した兄が044APDだったこと、伴道全教授が女子高校生のギャルだったこと… 久し振りに、面白く読んだという感じだった。シリーズとして三部作にするらしい。今のところ、2も出ているので、それをを見たいと思った。

『プリンセス・トヨトミ』 万城目学 (文藝春秋文庫)
『5月31日の木曜日、午後4時。突如として大阪府で一切の営業活動、商業活動がいっせいに停止した。物語はそこからさかのぼること10日前、大阪に実地検査のため足を踏み入れた会計検査院の調査官3人と、地元の中学校に通う2人の少年少女。一見何のかかわりもない彼らの行動とともに描かれる。会計検査院第六局所属の松平ら3人は実地検査のため大阪を訪れる。そのリストの中に入っていたのは謎の団体「社団法人OJO」。しかし期間中彼らはOJOの検査をできないまま一旦帰京する。空堀中学校に通う大輔と茶子は幼馴染。長い間女の子になりたいと思っていた大輔はセーラー服姿で登校することを夢に見、実行に移す。しかし、彼を待っていたのは壮絶ないじめであった。週が明けて火曜日、ある理由から大阪に残っていた松平はOJOの実地検査ができることを知り、現地へと向かう。一方の大輔はその日、担任教師に早退を命じられ、彼の父とともにある場所へと行くことになる。松平と大輔、二人が見たものは地下に眠るもう1つの国「大阪国」であり、大輔は父が大阪国の総理大臣であることを告げられる。「大阪国」は35年間で国から175億円もの補助金を受けていたが、肝心なことを国との条約を盾に語らない。松平はこの「大阪国」の不正を明るみにするために対決することに。そんな中、大輔へのいじめがエスカレートし、茶子はいじめた相手への襲撃を決行するが、そのことが思いもよらぬ事態へと発展する。それぞれの思惑と誤解が交錯したとき、長く閉ざされていた歴史の扉が開かれる』設定が面白かった。鳥居が面白い。本当、ミラクルだな〜 旭が警察に鳥居を引き取りに行く場面には笑ってしまった。

『八日目の蝉』 角田光代 (中公文庫)
『1985年2月、愛人であった秋山丈博の家に侵入した野々宮希和子は、眠っていた赤ちゃん恵理菜を見て衝動的に誘拐する。希和子は赤ちゃんを薫と名づけ、親友の家や立ち退きを迫られている女の家へと逃亡。しかしやがて、警察が追いかけていることを知ると、公園で天然水や自然食を販売していた謎の団体・エンジェルホームに身を隠すことを決意。所持金をすべて手放し入所する。希和子が逮捕されて17年後の2005年。秋山恵理菜は大学生になり、過去の出来事を忘れようとしていた。彼女がアルバイトをしているところに、かつてエンジェルホームにいた千草と名乗る女が現れる。入所していた人間を取材していた彼女は恵理菜からも事件のことを聞き出そうとする。一方、恵理菜は妻子持ちの岸田と付き合う中で希和子と同じ道をたどろうとしていることに恐怖を覚える。そして、恵理菜にある異変が起きる』映画を見ていたので、原作も読んでみる。映画の方が、分かりやすかったような…

『ダイイング・アイ』 東野圭吾 (光文社文庫)
『雨村慎介は仕事帰りに何者かに頭を殴打され、瀕死の重傷を負う。数日後、彼は意識を取り戻すがその中で重要な記憶の一部が欠落していることに気づく。それは自らが運転していた車で死亡事故を起こしたということだった。彼は記憶を呼び起こそうとするが、以前に自分が何をしようとしていたのかを思い出せないでいた。そして、彼の周りでは怪しい動きが。同居していた女の失踪、そして、謎の女の登場。プロローグで語られるある女性の死亡事故。この女性が死ぬ間際に見せた目の力で、全てのものが支配されていく』現実離れしすぎていた。でも、たまには、こういう作品は良いかも。最後まで呼んで、やっとタイトルの意味が分かったような…

『連続殺人鬼 カエル男』 中山七里 (宝島社文庫)
『「このミス」大賞史上初!最終候補にダブルエントリーされ、「こっちを読みたい!」という声が続出した話題作。「このミス」ファン待望の作品が、満を持して登場! マンションの13階からフックでぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに……。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の正体とは?どんでん返しにつぐどんでん返し。最後の一行まで目が離せない』どこまでもグロテスクな連続殺人に、どんでん返しの結末は、中々面白かったけど、登場人物に作者の考え方を無理やり喋らせているところや、町の暴動やピアノの説明が、ダラダラと続き、読みにくかった。

『ユダ―伝説のキャバ嬢「胡桃」、掟破りの8年間』 立花胡桃 (幻冬舎文庫))
『キャバクラ界きってのスターキャストが集まる歌舞伎町ドルシネアで、胡桃は店一番の上客・大野に出会う。自分の客にしたいだけ、これは恋愛なんかじゃない。そう自らに言い聞かせながらも、どうしようなく大野に惹かれていく―。文庫化に際し、新たな書き下ろしも収録。怒涛の展開から片時も目を離せない、究極のエンターテインメント小説』ここまで書いてしまっていいのと言う感じだけど。しかも三回も中絶するなんて… 愚かな女… よく旦那がこの本を出版させようとしたな〜

『妻に捧げた1778話』 眉村卓 (新潮社)
『余命は一年、そう宣告された妻のために、小説家である夫は、とても不可能と思われる約束をした。しかし、夫はその言葉通り、毎日一篇のお話を書き続けた。五年間頑張った妻が亡くなった日の最後の原稿、最後の行に夫は書いた──「また一緒に暮らしましょう」。妻のために書かれた1778篇から19篇を選び、妻の闘病生活と夫婦の長かった結婚生活を振り返るエッセイを合わせたちょっと変わった愛妻物語』久し振りに眉村卓の作品を読んだ。もしかしたら学生時代ぶりかも。最後の「最終回」がなかなか、良かった。また一緒に暮らしましょうと、中々、言えないな…

『永遠の0』 百田尚樹 (講談社文庫)
『日本軍敗色濃厚ななか、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」とさげすまれたゼロ戦パイロットがいた...。人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎とフリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。祖父の話は特攻で死んだこと以外何も残されていなかった。元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は健太郎たちの予想もしないものだった。凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗り―それが祖父だった。「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻を志願したのか?健太郎と慶子はついに六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実にたどりつく。はるかなる時を超えて結実した過酷にして清冽なる愛の物語』最初は、あれほど、生にこだわっていたのに、なぜ特攻で死んだのだと、読み進むにつれて謎が深まる。しだいに、特攻、戦争の悲惨さが伝わる。戦闘機乗りのリアルな戦いが描かれているので、ストーリーに引きこまれる。最後に二度、ビックリした。最後は涙が出そうになった。ヤクザの話も感動だった。

『赤い指』 東野圭吾 (講談社文庫)
『加賀恭一郎シリーズの第7作。オフィスにいた前原昭夫の元に、妻の八重子から「早く帰って来て欲しい」と電話が入る。前原にとって、「家庭」は安らぎを与えてくれる場所とは言い難い存在になっていた。同居している義母を重んじる夫をなじり続ける八重子。親和性に欠ける前原夫妻の一人息子、直巳。前原は家路を急いだ。自宅の庭に投げ出された黒いビニール袋からは、白い靴下を履いた小さな足が出ていた。昭夫は息子のために事件の隠ぺいに取り掛かる』息子がダメなら、親もダメ。加賀の洞察力は面白い。将棋相手がまさか… 奥が深い

『走ることについて語るときに僕の語ること』 村上春樹 (文春文庫)
『1983年のアテネ-マラトン間での初マラソンの回想、2005年度ニューヨークシティマラソンの準備期間などの想いをつづる。そして自身の小説家としてのキャリアが、いかに「走ること」と連関していたかを述べる。小説を書くきっかけとなった神宮球場でのデーゲーム、群像新人賞受賞、ジャズ喫茶の経営と小説の執筆を振り返りつつ、小説家の資質に必要なのはまず才能としながらも、集中力を持続させるための体力が不可欠だと考える。そのために、自身の孤独を好む性格にフィットし、特に場所を選ばない長距離走を選んだ。そして村上は「走ること」にさまざまな思いを抱えながらも、それを四半世紀ほど一貫して続けてきたのである。作家=ランナーとしての村上春樹の側面が垣間見られる作品』何か、なぜ走るのかと考えさせる作品だった。凄い共感するところが多い。例えば『一般的なランナーの多くは「今回はこれくらいのタイムで走ろう」とあらかじめ個人的な目標を決めてレースに挑む。そのタイム内で走ることができれば、何かを達成したことになるし、もし走れなければ何かを達成できなかったことになる。もし、タイム内で走れなかったとしても、やれる限りのことはやったという満足感なり、次につながっていくポジティブな手応えがあれば、また何かしらの大きな発見のようなものがあれば、たぶんそれはひとつの達成になるだろう。言い換えれば、走り終えて自分に誇りが持てるかどうか、それが長距離ランナーにとっての大事な基準になる』 それなんだよな〜これが言いたかったのかも… 学生の時は、走るのは苦手だった。そんな自分が、毎日のように走り、レースも数多く出るようになった。それなりの成績も残している。ゴールする時の達成感は、何度やっても、良いものだと思う。昔は走れなかった自分がフルマラソンを走れている事が、自分の中では重要なのかもしれない。 『昨日の自分をわずかにでも乗り越えていくこと、それが何より重要なのだ。長距離走において勝つべき相手がいるとすれば、それは過去の自分自身なのだから。』 過去の自分がライバルだから、いつまでも続けてられるのだろう。他人に負けても、全然、悔しくは無いのに、自分に負けてしまうと、凄く悔しい。過去の自分と言うのは、実際の自分なのだから、それだけに、悔しく思うのかも。 『Pain is inevitable. Suffering is optional. それが彼のマントラだった。正確なニュアンスは日本語に訳しにくいのだが、あえてごく簡単に訳せば、「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」ということになる。 たとえば走っていて「ああ、きつい、もう駄目だ」と思ったとして、「きつい」というのは避けようのない事実だが、「もう駄目」かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられていることである。この言葉は、マラソンという競技のいちばん大事な部分を簡潔に要約していると思う。』 キツイ、キツイと思いつつ、走れている自分が不思議だったけど、結局は自分の裁量だったのだ。自分が練習を続けているのも、もう駄目だをもっと先、キツイと思ってから10km先に思うようにしているような気がする。笑顔でゴールが自分の理想とする走り。そうなるように、日々、走っている。 『たとえ絶対的な練習量は落としても、休みは二日続けないというのが、走り込み期間における基本的ルールだ。筋肉は覚えの良い使役動物に似ている。注意深く段階的に負荷をかけていけば、筋肉はそれに耐えられるように自然に適応していく』 凄い、分かりやすい。最初は二週間に一回、走っていたと思う。それが一週間一回になり、一週間に二回になり、三回になり… それが、いつのまにかに毎日、走るようになっていた。走るのが普通になっている。急に毎日走ろうとしていたら、筋肉は絶対に壊れていただろう。徐々に筋肉を鍛えていったお陰で、故障しなくなったのではないかと思う。

『東京島』 桐野夏生 (新潮文庫)
『32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か?いつか脱出できるのか―。食欲と性欲と感情を剥き出しに、生にすがりつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読者の手を止めさせない傑作長篇誕生』設定が面白かった。最後、どんな終わり方になるのか、想像つかなかった。人間のドロドロ感も出ており、けっこう好きな作品だった。

『悪人』 吉田修一 (朝日文庫)
『福岡市内に暮らす保険外交員の石橋佳乃が、携帯サイトで知り合った金髪の土木作業員に殺害された。 二人が本当に会いたかった相手は誰だったのか? 佐賀市内に双子の妹と暮らす馬込光代もまた、何もない平凡な生活から逃れるため、出会い系サイトへアクセスする。そこで運命の相手と確信できる男に出会えた光代だったが、彼は殺人を犯していた。彼女は自首しようとする男を止め、一緒にいたいと強く願う。光代を駆り立てるものは何か? その一方で、被害者と加害者に向けられた悪意と戦う家族たちがいた。誰がいったい悪人なのか? 事件の果てに明かされる殺意の奥にあるものは? 』悪人と言うのは、大学生なのか、主人公なのか、殺された人なのか、マスコミなのか… 考えさせられた。

『ボトルネック』 米澤穂信 (新潮文庫)
『亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔』最後が分からなかった。

『インシテミル』 米澤穂信 (文藝文庫)
『「ある人文科学的実験の被験者」になり、7日24時間監視付きで隔離生活するだけで時給11万2000円がもらえるという募集に釣られ、何も知らずに〈暗鬼館〉に集った、年齢も性別も様々な12人の男女。彼らに知らされた実験の内容とは、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う殺人ゲームだった。各々の個室には殺人に利用出来る種類の異なる凶器が一つずつ用意され、夜間は部屋から出ることが禁じられるなど多くのルールがある。人を殺せばより多くの報酬が得られるが、犯人であることを指摘されれば報酬は減額する。何もしなくても報酬が貰えるならと、行動を起こさないことが参加者の間で暗黙の了解となり落ち着いたように見えた。だが3日目の朝、参加者の1人が死体で発見されたことをきっかけに、第2第3の事件が発生する』面白かったけど、最後が、よく分からない。タイトルも「淫シテミル」らしいけど、何のことだろう? 最初は登場人物が多くて、取っつきにくかったけど、徐々に減ってきて、キャラクターが見えてきたって感じ。

『告白』 湊かなえ (双葉社文庫)
『「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!』それぞれが告白文のような構成。本を3分1読んでから、映画を観て、結末まで知ってから本を読んだけど、中々、最後まで面白く読んだ。

『ランナー』 あさのあつこ (幻冬舎文庫)
『長距離走者として将来期待されながらも、試合での惨敗を機に退部届けを提出した碧李。母からの虐待を受ける妹の守るために陸上部を退部したと思い込もうとしていた碧李だが、それがたったの一度レースで惨敗しただけで走れなくなった自分への言い訳であることに、心のどこかで気付いていた。碧李の才能に固執する陸上部監督の箕月や、マネジャーの杏子の説得もあり、碧李は陸上部に復帰するが、母と妹の関係を気にするあまり、なかなか走りに没頭できない。しかし親友の助けもあり、碧李は徐々にランナーとしての勘を取り戻し、秋の県大会に五千メートルの選手として出場することに決める。妹に見守られながら、碧李はもう一度スタートラインに立つ』陸上の話しかと思っていたら、全然、違う。かなりヘビィーな内容。重すぎる。「一瞬の風になれ」みたいに、走りたくなる小説ではないな〜嫌な話し、誰だってそうかもしれないけど、あまりこういうランナーには、なりたくない気持ち。でも、リアルに世間には程度や環境は違えど、そう思いたくないけど、ありえるような… 最後、頑張れと応援していた。本当、凄い。 ただ、落ち込んでいる時に読むと、さらに暗くなってしまう。レース前とかに読む小説ではないかな。ヘタすれば、走りたくなくなる。 良い文章が合った。『競技としてのランには必ずゴールがある。…お前はゴールを突っ切ってしまう』走るのは怖ろしい事ではない。走るのは楽しいはず。ゴールがあるから楽しいのだ。自分と主人公とは違うことは分かる。でも、同じ長距離ランナーではあることは確か。ゴールにたどり着いたら、ゴールにたどり着かなくても、また次のスタートに立てば良い。そうあって欲しいけど、主人公のゴールを突っ切ってしまう走りにも憧れる。 走る事に答えが無い。答えが無いのが魅力の一つかもしれない。その魅力を知ろうとするから走っているのかも… 一歩一歩、走る。なぜ、走るのかを考えても、余計に迷うだけ。楽しいから走るからで良いじゃないか。辛い環境でも、走っていれば、楽しいそこに逃げられる、それでも良いじゃないかな〜誰が決められたわけではなく、自分が走りたいから走っているだけ。不思議と、そう思っていくと、また次のゴールが見えてくる。ゴールが見えてきたら、最初にスタートラインに立った時のゴールにはたどり着いている。そんな自分のマラソン人生だと思う。だから、飽きっぽい自分でも、ずっと走り続けているような気がする。

『放課後』 東野圭吾 (講談社文庫)
『校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。乱歩賞受賞の青春推理』伏線ががさりげなく、凄く面白かった。まさかの動機、密室のしかけ、最後の妻の殺意にも驚かされた。この殺人の動機、斬新だった。でも思春期の女の子が一番、見られたくないところを見られてしまったらと考えると、何となく、分かるよう…

『長い腕』 川崎草志 (角川文庫)
『第21回横溝正史ミステリ大賞受賞作。島汐路が勤めるゲーム製作会社で、同僚の女性社員が転落死する事件が発生した。一方、汐路の故郷では、女子中学生が同級生を猟銃で射殺するという事件が起きていた。同僚と女子中学生が、同じキャラクターグッズを身につけていたことに気付いた汐路は、故郷に戻って調査を始めたのだが…』タイトルと内容が読み終わっても分からない。石丸は何だったんだろうか… でも、内容的には興味深く読んだ。家の歪みが人にあたえる影響という部分、なかなか、面白い。2作目を書いているはずなのだが、探してみよう。ゲーム上で電話が鳴るときには、一音目を大きくさせている工夫がある点は、意外だった。

『使命と魂のリミット』 東野圭吾 (角川文庫)
『心臓外科医をめざす研修医の夕紀には、亡くした父と同じ病気の人を助けたいという思いともうひとつ隠された秘密の動機があった。病院に入院する患者、研修医の夕紀を指導する西園教授、研修医となった彼女は父を執刀した医師の元で研修を行う事に。そんな時、彼女のいる大学病院に、医療ミスを公表しないと病院を“破壊するという内容の脅迫文が届く…。 病院で起こる追う刑事、それらが複雑に絡み合い、一つ一つ事実が明るみに…。』何となく、最後はどうなりそうだと読めたけど、けっこう最後まで飽きなくて読めた。やはり安心して読める。何より「悪人」が居ないのが良い。「人間というのは、その人にしか果たせない使命というものをもっている。」という言葉が印象的。終盤の手術シーンの緊迫感は、さすがだと思いました。

『スイッチを押すとき』 山田悠介 (角川文庫)
『2008年、増加する若年齢層の自殺を防ぐため、政府は青少年自殺抑制プロジェクト(YSC)を立ち上げた。無作為に選んだ子供の心臓に、スイッチで心臓が停止する機械を埋め込んで隔離。どんな心理状態のとき、子供は自ら命を絶つのか、その精神構造を分析しようというものだった。監視員として横浜センターに赴任してきた南洋平は、そこで17歳になる4人の被験者と出会う。外部と完全に遮断された過酷な環境で、それぞれが大切な人を想い、いつか会える日が来るかもしれないと、励まし合って生きていた。ところが、所長の佃やその他の監視員によって与えられるプレッシャーの数々に、4人は徐々に追い詰められてゆく。その様子を間近で見ていた洋平は、決して同情してはいけないという監視員の鉄則を破り、ついに彼らと共にセンターの脱出を試みるが――。逃亡の最中に出会った人々、次々と減ってゆく仲間、そして洋平の過去が明かされるとき、思いもかけないラストが待っていた!戦慄の国家プロジェクトに翻弄される少年たちの哀しみを、繊細な筆致で綴った感動のストーリー』山田悠介の作品、最後が尻切れトンボになる場合が多いけど、今回は面白かった。ただ、多々、設定がむりやり過ぎるかな〜

『悪意』 東野圭吾 (講談社文庫)
『小説家の日高邦彦が殺された。刑事の加賀恭一郎は、日高の親友で児童向けの小説を書いている野々口修の手記に興味を持つ。加賀は聞き込みや推理を通して、野々口の手記に疑問を持つ』いきなり犯人が捕まり後半をどうするのだろうと思っていたら、さすが東野圭吾、最後まで期待を裏切らない。とにかく意表をつかれた。

『龍馬の黒幕』 加治将一 (祥伝社文庫)
『一八六七年十二月十日夜、坂本龍馬斬殺。犯人は新撰組とも京都見廻組ともいわれている。しかし矛盾と謎が多すぎる。真犯人は誰か?浮かび上がる「龍馬の手紙」―幕臣勝海舟、英国武器商グラバーと行動を共にした龍馬が、死の直前に書いた最後の手紙に込めた「暗号」を読み解くことで、龍馬暗殺犯、さらには幕末維新の真相を暴く、驚愕の書』中々発想が面白かった。明治維新はフリーメーソンの陰謀であり、グラバーやパークスはフリーメーソンの手先で、坂本龍馬も彼らに操られていたという。まさかフリーメーソンが出てくるとは…

『龍馬の船』 清水義範 (集英社文庫)
  何と坂本龍馬を船オタクにしてしまった作品。最後に暗殺される場面も書かれておらず、龍馬と船の関わりという一点のみでまとめられていた。中々面白かった

『死体を買う男』 歌野晶午 (講談社文庫)
『江戸川乱歩の未発表作品「白骨鬼」が発表された。昭和9年、南紀紀州白浜、私は景勝三段壁から身を投げようとして男に救われた。麓の旅館に腰を据えると、私を助けてくれた男は、同じ旅館の離れにいる塚本直で、夜な夜な振り袖を着ては惚けたように月を眺める月恋病の御仁という。ところが翌日三段壁で首を吊っている直が発見されたが、目を離したすきに死体は消えてしまった。しかし状況から海に落ちたのだろう、と言うことになった。その夜、私は金満家父親の塚本大造と直と瓜二つの弟塚本均にあう。あれは自殺ではないかも知れない、と考えた私は詩人の萩原朔太郎とともに捜査に乗り出す。北野雪枝は均の婚約者であったが、東京であまりのその荒れた生活ぶりに驚き、直を恋するようになった。彼女は自分が直にせまったため、彼が良心の呵責に攻められ、自殺したのかも知れないと言う。しかし萩原はゴム毬を使って、死んだふりをする方法を私に示し、直は生きているかも知れないと示唆する。平成2年、夢幻という小説一作で有名になったが、いまは書く能力を失った細見辰時は「白骨鬼」原稿を持ち込んだ若い西崎と対面した。問いつめられて西崎は実は義理の祖父の「我が犯罪捜査記録」にあった事件をを、ほとんどそのまま「白骨鬼」に採用したのだという。塚本直と均は記録では小松利忠と利人であった。それを知った細見は西崎に版権を譲れ、と頼み込む。しかし西崎は細見のずるさに驚き、断る。私と萩原が捜査を続けていると、白浜で直らしい白骨死体が見つかった。これで事件は解決か。しかし私は直が生前自動車事故を起こしたが、骨には傷が残っていない事を指摘し、直は死んでいないと指摘する。直は自殺のお芝居をした後、双生児の弟を殺したのではないか。そのころ死体を検死した野崎医師が死んだ。二人はその死が他殺の疑いがあるとして家人の協力を得て、芝居を打つ。もし直の犯行なら、真実を知っている医師に生き返られては困るから必ず襲ってくるはずだ!!。ところがあらわれたのは…。再び、平成2年、病院の細見辰時は西崎の訪問を受ける。西崎は小松利人、塚本均、細見辰時の秘密を解いて、細見を驚かせる。細見は白骨鬼のタイトルを替え、さらに新しい解釈を加え、自分の名で最終回として発表することにこだわる…。なかなかの本格推理小説』かなり、昔風の文章が気になる。読みにくい。でも、タイトルを読後に読むと凄いと思った。

『風が強く吹いている』 三浦しをん (新潮文庫)
竹青荘というアパートは、寛政陸上部の合宿所であった。なにも知らない学生たち9人が住む竹青荘だが、ハイジはついに10人目の入居者を見つけた。走(カケル)だった。ハイジは皆を集めて、この10人で箱根駅伝を目指す!と宣言。何となく、ワクワクさせられる。でも、走る事を知っている人にとっては、このハチャメチャな展開は面白過ぎる。映画でも見たけど、さらに小説を読みたくなった。まず10人という大人数な登場人物。清瀬灰二、ハイジ。経験者。住人たちを巧み操り、メンバーたちを纏める言いだしっぺ。蔵原走、カケル。天性の才を持つ長距離走者。過去に問題を起こし、表に出たがらない。岩倉雪彦、ユキ。司法試験にすでに合格した知性派。理論・統計と独自の枠で行動する。平田彰彦、ニコチャン。元経験者だが、今ではヘビースモーカー。大学5年生で最年長。城太郎・次郎の双子。ジョータ・ジョージ。見た目そっくりな陽気で能天気な双子。坂口洋平、キング。テレビのクイズ番組マニア。クイズ王だからあだ名はキング。ムサ・カマラ、ムサ。外国人だから走るのが速いわけでは無いという、ただの国費留学生。柏崎茜、王子。マンガオタクで運動音痴。漫画で埋まった部屋に住む。美顔の持ち主。杉山高志、神童。帰省するのに二日かかる山奥の村出身。山道には強いが方向音痴。ハイジとカケル以外は、素質はあるものの素人ばかり。そんな彼らが一から陸上を始める。初めは纏りのない彼らだが、ハイジの的確な指導や、自身で走るのが楽しくなっていく。ランナーズハイとは違う、ゾーンというものがあるのをはじめて知る。ゾーンになってみたい…

『特別法第001条 DUST』 山田悠介 (幻冬舎文庫)
『2011年、未就労者、未納税者で溢れかえった日本では、財政難にあえぐ政府が打ち立てた棄民政策「特別法第001条」、通称?ダスト法?が可決され、第一号として強制的に無人島に送り込まれた、選ばれた「ニート」、18歳の広瀬章弘。つい最近まで人が住んでいたはずの『鬼哭島』に連行されて来たのは、章弘の他、5人の男女。自然と死ぬのを待つだけの?流刑?生活の期限は500日。自分達を「棄てた」国への復讐に燃え、人は「生き延びる」ために協力し合うことにするのだが…。』設定が面白いのだけど、中味が… 料理次第ではかなり面白くなるのに。後半は感度を与えようとしていたのは分かるけど… 親子の絆を描きたかったのか、サバイバルの模様を描きたかったのか、よく分からない。物足りなさを感じた。ただ、この作家の他の作品よりは面白かった。

『一瞬の風になれ』 佐藤多佳子 (講談社文庫)
『主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった。 3部作。新二がシーズン(春から秋)の1年目を終えるまでが描かれる。競技の初心者である新二の目を通じて、読み手も陸上のいろはが自然と身につく構成だ。見事なのは、競技中の描写。新二が走る100m、200m、400mなどを中心に、各競技のスピード感や躍動感が迫力を持って伝わってくる。特に、本書の山場とも言える4継では、手に汗握る大熱戦が展開される。丁寧な人物描写も、物語に温かみを与えている。生き生きと描かれる登場人物たち、彼らが胸に抱えるまっすぐな想い。その1つひとつが、小説全体に流れる爽やかさを生み出し、読み手の心を強く揺さぶるのだ。何かに、ひたむきに打ち込むこと。風のように疾走する新二や連を追ううちに、読者は、重たい現実を一瞬だけ忘れ、彼らと同じ風になることができるのだ。2作目。オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、2年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る! 「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは南関東へーー。新二と連の第二シーズンが始まる。 三作目。いよいよ始まる。最後の学年、最後の戦いが。100m、県2位の連と4位の俺。「問題児」でもある新入生も加わった。部長として、短距離走者として、春高初の400mリレーでのインターハイ出場を目指す。「1本、1本、走るだけだ。全力で」。最高の走りで、最高のバトンをしようーー。白熱の完結編』陸上競技にかける高校生を描いた物語。誰かの日記で紹介されており、読もうと本屋に行ったけど、単行本だったので、厚い本を電車に乗って読むのはためらって、その時は、諦めていた。それが、7月中旬だったか、文庫本で発行されており、本を速攻で購入したけど… まだ読みかけの本があったので、やっとその本を読み終わり、先週ぐらいから読んでいる。それが、面白い。走ると言う感覚が、凄い分かると言うか… 練習方法も参考になったり… 3巻あるうちの、まだ1巻の半分ぐらいしか読んでいないけど、お気に入りの一冊になりそう。読みやすいので、一気に読んでしまい所だけど、一行一行、かみしめて読んでいる。 風になる感覚。これ、凄い分かる。最後まで読み終わる。とにかく、読みながら泣けてくる。マラソンしているので、共感する部分も多く、凄い良い本だった。良かった場面は、連が新二に言うセリフに「俺さ、おまえとかけっこしたくてこの部に入ったんだよ」。この、かけっこと言うあたりが、いい。あと、女子3000mで谷口が走り終わったあとに新二にいきなり抱きついてきた時。けっこうこういうのは、好きだな〜

『Jの神話』 乾くるみ (文春文庫)
『全寮制の名門女子高「純和福音女学院」を次々と怪事件が襲う。一年生の由紀は塔から墜死し、生徒会長を務める美少女・真里亜は「胎児なき流産」で失血死をとげる。背後に暗躍する謎の男「ジャック」とは何者か?その正体を追う女探偵「黒猫」と新入生の優子にも魔手が迫る。女に潜む“闇”を妖しく描く衝撃作』リピートとイニシエーション・ラブと読んでいたので、期待していたけど、正直、ガッカリした。これが第4回メフィスト賞授賞作って感じ。YY染色体を持つ胎児というのが、凄い発想。後半は何か自分のイメージに全然、合わないと言うのが、つまらなさの原因だろうな〜

『少女A』 西田俊也 (徳間文庫)
『オレ、アイダ・ナオ。高校入試に失敗しつづけ、ジョーダンのつもりで女装して受けた女子高に、なんと入学してしまった。最初はおっかなびっくりだったけど、だれも気づく気配がないし、まわりはみーんな女のコ。これはオレのための花園なのかもしれない…。「十五歳」の体と心の成長を鮮烈に描いた、パワーとスピード感あふれる痛快な青春小説』最初、文章が慣れずに読みづらかった。しかし、女装して受けた女子高に合格するストーリーに興味を引かれて読み進む。「スカートの中をアスファルトに見せながら歩くのは、自分の身の置かれた頼りなげな感じに似ていて…」という文章が妙に気に入る。だけど、ギャグ的に面白いと思ったけど、意外にもエロ過ぎで、期待するほど面白くなかった。それにしても、男が女子高に入学できて、しかもそれが分からないというのも設定がおかしい。

『ライヴ』 山田悠介 (角川文庫)
『感染したら死に至る奇病“ドゥーム・ウィルス”。日本にそれが蔓延するなか、あるはずのない特効薬が貰えると奇妙な噂がネットに広がる。感染した母親を持つ田村直人は、半信半疑で集会場所へ赴くが、特効薬はトライアスロンを完走しなければ貰えないという!スタート地点のお台場からテレビで生放送されるレース、残酷なトラップに脱落していく選手たち。愛する者を救うため、直人は最悪のデスレースを走りきれるのか。』最後のオチは強引だったかもしれないけど、前半は、面白かった。殺人まで起こったのはどうかと思ったけど、トライアスロンの設定が面白かっただけ。そういえば、走れメロス的な感じでゴール目指すような… どうも山田悠介は奇抜な発想が良いのだけど、やはり文章が幼いのが勿体ない。

『リピート』 乾くるみ (文春文庫)
『もし、現在の記憶を持ったまま十ヵ月前の自分に戻れるとしたら? この夢のような「リピート」に誘われ、疑いつつも人生のやり直しに臨んだ十人の男女。ところが彼らは一人、また一人と不審な死を遂げて……。あの『イニシエーション・ラブ』の鬼才が、『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ仰天の傑作』リピート前が長かったけど、リピート後はジェットコースターみたいに展開が早く、先が見えず面白かった。皆それぞれ、色々な夢を見てリピートしたはずなのに、一人、また一人と死んでゆく。徐々に恐怖に駆られててゆく。また彼女と上手く別れて、新たな恋人を手に入れて前よりいい人生を楽しむはずだった毛利も、殺人を犯してしまう。リピート仲間が次々と死んでいく真相は、まさかそんな真相だったとは…驚きだった。これは上手い。あり得る。人生は一度きりだから、一生懸命に生きようとするのかも。

『イニシエーション・ラブ』 乾くるみ (文春文庫)
『僕がマユに出会ったのは代打で出た合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて……。「必ず2回読みたくなる」と評された驚愕のミステリー 僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて……。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説――と思いきや、最後から2行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず2回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。』。後の1ページまでベタベタのラブストーリーなのだが読み終わって、なぜ2回読まないといけないのか分からなかった。最後の辰也って誰。主人公は鈴木夕樹ではなかったか。後半になると主人公の行動が、どうも前半の性格とは違うような気もするし。辰也が、マユとの過去を思いだしているのも、鈴木夕樹(たっくん)とは違うし。分からない。そして、解説のテープもカセットもA面が回ってるときにはB面も回ってるというので、気づく。男が二股かけていると思ったら、女の方も… マユの日焼けもたっくん達と行ったものだったのか… 指輪も、そういう事だったと分かったし… マユの便秘の入院で会えなかった実の理由は… 色々と考えると「私、今日のことは一生忘れないと思う。初めての相手がたっくんで、本当に良かったと思う。二度目の相手もたっくん。三度目の相手もたっくん。これからずっと、死ぬまで相手はたっくん一人」考えてみると、女は恐ろしい。笑えるのが、夕樹がターミナルホテルを予約できたのは、辰也が予約をキャンセルしたおかげだと思ったところ。

『オーデュボンの祈り』 伊坂幸太郎 (新潮文庫)
『主人公、伊藤のコンビニ強盗から物語は始まる。伊藤は気付くと、見知らぬ島にたどり着いていた。その島は荻島といって、江戸時代以来外界から鎖国をしているという。島には、嘘しか言わない画家や、島の法律として殺人を許された男、未来の見える、人語を操る案山子などがいた。しかし、伊藤が来た翌日、案山子はバラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた。そこで問題になったのが、「未来がわかる案山子はなぜ自分の死を阻止できなかったか」という事である。それを調べるために、色々な事件に巻き込まれながら、繰り広げられる物語である』不思議な小説だった。喋るカカシ、殺人が許されている男「桜」、太りすぎて動けない「ウサギ」、逆の事しか言わない画家など、独創的なキャラクターが愉快。。

『むかし僕が死んだ家』 東野圭吾 (講談社文庫)
『「あたしは幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは……。超絶人気作家が放つ最新文庫長編ミステリ』最後まで読んだが、プロローグの意味が分からなかった。なぜ、沙也加と久香を入れ替える必要があったのか、よく分からない。そもそも、家が墓になるというアイデァ、必然性もない。驚きはあるけど。謎解きの過程は面白かったけど、最後はなんだかすっきりしない考えてみれば登場人物は、2人。話の舞台も古い屋敷。ほとんど屋敷から動かない。それでいて最後まで読者を引っ張っていく力は凄い。けっこう伏線が散りばめられている。

『おっぱいバレー?恋のビーチバレーボール編』 水野宗徳 (リンダブックス)
『おっぱいバレー?』のその後、高校3年生の夏が舞台で、大人のお店でおっぱい見るために地元のビーチボール大会に出場し賞金をゲットしようという話。前作とまったく遜色ない面白い。おっぱい先生が出てこなくても、十分物語になっていた。不覚にも泣いてしまった。

『おっぱいバレー?』 水野宗徳 (リンダブックス)
『新任教師の寺嶋美香子は臨時教師として三ケ崎中学校に赴任してくる。しかし、この学校に赴任する前の学校である事件を起こし生徒からの信頼を失い、教師としての自信も失いかけていた。新しい学校に赴任して心機一転、美香子は男子バレーボール部の顧問になる。しかし、部員はやる気が無く、バレーボールすらまともに触ったことが無い部員ばかりで、女の子のことしか頭に無く常にHな妄想にふけっていた。さらに周りからは「キモ部」呼ばわりされていた。そんな部員達を奮起させようと美香子は「あなた達が頑張ってくれるなら先生なんでもする」と宣言。すると部員達は「試合に勝ったら先生のおっぱいを見せてください」と言い出す。美香子は最初は断るが、いやいや約束してしまう。それから、部員達は今までとは打って変わって練習に励む。美香子も部員達の熱意に応え、失いかけていた自信も取り戻していくが、「おっぱいは見せたくない、でも試合に勝って生徒達に勝つ喜びを教えてあげたい」という複雑な思いを抱えていた。試合を間近に控えた頃、「おっぱいの約束」が学校に知られて大問題となる。』本当、絵に描いたような青春小説。バカバカしくも、おっぱいを見るために頑張る姿、それでいて、そんなに甘くはないバレーボール。貝塚学園との決勝戦を、京急の中で読んだけど、不覚にも感動して読んでしまった。面白かった。

『名探偵の掟』 東野圭吾 (講談社文庫)
『名探偵である天下一大五郎は、謎解きの名人。「密室殺人」「犯人捜し」「孤島の殺人」「ダイイングメッセージ」「アリバイ崩し」「2時間サスペンスドラマ」「バラバラ殺人」「トリック」「童謡模倣殺人」などなど何でも解決してしまう。でも、なんで犯人はわざわざ密室にしたり、孤島で殺人を犯したり、 童謡を真似たりする必要があるのだろうか?? そんなミステリに疑問を抱く作者が、タブーに迫る。12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?本格推理の様々な“お約束”を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ』面白いのか、面白くないのか、意見が分かれるところ。探偵に華を持たせるために、警部が事件をミスリードして関係のない容疑者を逮捕したり、別人格者を犯人にしたり、興味深くもっと長く話の展開が出来そうなのに、簡単に殺人事件になったり… 突っ込みどころが満載。ミステリが好きなら、共感できそうだけど…

『パラレルワールド・ラブストーリー』 東野圭吾 (講談社文庫)
『若手技術者の敦賀崇史には、三輪智彦という昔からの大親友と津野麻由子という美人の彼女がおり、共に同じ職場で働いていたのだが、ある日彼は不思議な夢を見たのだった。なんと、智彦の彼女が麻由子であり、その状況を自分が祝福しているのだ。実際は真由子は自分の彼女であるし、そんな状況はありえないと思う 崇史であったのだが、何かひっかかるものを感じた。そこで、久しぶりに智彦に会って話でもしてみようと思ったのだったが、智彦はいつのまにかアメリカへと行ってしまったのだという。大親友の自分に黙っていなくなるなんて…不信感を募らせる崇史であったが…』会社の後輩が東野圭吾の中で一番面白かったというので、読んでみる気になったのだけど、あと数十ページ。何か、凄い文章力というか、読ませるというか、共感させるというか、自分にもわかるその気持ちというか… 親友の恋人に惹かれて行く主人公の苦悩に引きこまれる。

『天空の蜂』 東野圭吾 (講談社文庫)
『錦重工業小牧工場では開発中の新型ヘリコプターCH-5XJの機体完成お披露目会が催されるはずだった。しかし、そのヘリコプターが何者かによって盗まれてしまう。それもヘリコプターの中にそのお披露目会にやって来た社員の子どもを間違って乗せたまま飛び立ってしまった。ヘリコプターは無人で操作され、福井県の高速増殖炉『新陽』の真上まで飛んで行ってそのままホバリングをしている。政府に対してファックスで送られて来たテロリストからの脅迫状に書いてあったのは『新陽』以外の日本中にある原発をすべて停止する事。もし停止しなければ爆弾を積んだヘリを原発『新陽』の上に落とすというものだった。それに対して政府はどういう対応を取るのか?犯人の目的はなんなのか?ヘリに取残された子どもを助けだすことはできるのか。圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス』物語の構成、伏線、リアリズム感、キャラクター、どれを取ってもすばらしい。ただ、専門用語も多く、難しい文章で、飛ばし読みだったけど、けっこう後半もスピード感があり面白かった。もっとゆっくりと読めば良かったかも

『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介 (新潮文庫)
『夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。』死んだS君が蜘蛛に生まれ変わってミチオの前に現れるという不条理な物語だと思っていた。でも、それも伏線になっており、まさか、周りの人までも。ミカがトカゲだったとは… 騙されたのは母親が人形をミカに見立てていたので、それが騙される要因だったかも。トコお婆さんの猫にも騙された。スミダさんの白い百合の花にも。「スミダさんが女友達と一緒に入ってくるのが見えたとき」「女の子は僕をちらりと見て、そのままスミダさんを連れて教室を出ていってしまった」と文章が巧妙に、スミダさんを人間と思わせている。二度読みすると、そのあたりが面白いかも。でも、あとがきに書かれてる通り、好き嫌いは分かれるだろうな〜

『ある閉ざされた雪の山荘で』 東野圭吾 (講談社文庫)
『オーディションに合格した役者志望の男女7人が、乗鞍高原のペンション『四季』に集められた。指示を出したのは、敏腕演出家の東郷陣平。そこで演出家は、彼らに奇妙な形の「舞台稽古」を命じる。仮想の場所で起こる仮想推理劇の登場人物を演じろと言うものである。7人は戸惑いながらも、演出家の指示に従う。豪雪のために交通手段も通信機能も失った、と想定された山荘で、一つ目の殺人劇の幕が上がった。被害者役は退場。そしてまた一つ―。だがここで、残された演技者たちは状況の不自然さに気付く。これは本当に「舞台稽古」なのか? 驚愕の結末の中にも爽快感を残す、本格長編推理』何か、物足りない。どろどろがないのか…最後は、ドンデン返しがあったり、真相がわかるのだが…

『殺人の門』 東野圭吾 (角川文庫)
『「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如きあの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはならない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか?人が人を殺すという行為は如何なることか。直木賞作家が描く、「憎悪」と「殺意」の一大叙事詩』物語は、田島和幸という男の半生を幼少時から追っていく形になっている。彼の幼少時から青年期までずっとからんでくるのが小学校の同級生である倉持修なのだが、どうもこの田島、ことごとく、倉持に騙されている。バカも思うぐらい騙され続けているのだが、読み続けていると、ストーリーも結局はこの繰り返しになっているのに気づく。面白いように読んでいった。中々、面白かったのは、田島の親子関係。結局は父親が女に騙された事も、子の田島の同じように騙されている。血は繋がっているのを感じる。最後のオチも、まさか

『ストロベリーナイト』 誉田哲也 (光文社文庫)
『姫川玲子、二十七歳、警部補。警視庁捜査一課殺人犯捜査係所属。彼女の直感は、謎めいた死体が暗示する底知れない悪意に、追ることができるのか。青いシートにくるまれ、放置されていた惨殺死体。警視庁捜査一課の主任警部補・姫川玲子は、直感と行動力を武器に事件の真相に迫る…。熱気と緊張感を孕んだ描写と、魅力的なキャラクター。渾身の長編エンターテインメント』けっこう面白かった。キャラクターが生き生きとしている。公安出身のガンテツというライバル警部補の個性がとても強烈で、ストーカー的な井岡巡査長、登場人物は多いが一人一人のキャラクターがはっきりしているので、ここまで登場人物が多いのに、何の違和感が無く読めた。かなりエグイ描写もあるが、面白い。徐々に事件の全貌に向かっていく捜査で、犯人はだいたい予想がつくが、考えてみれば、玲子は地道な捜査ではなく、あくまでもひらめきで事件を解決するタイプ。その勘の良さは犯罪者と同じ思考回路を持っているからくるものだから危険だというガンテツに言われていたけど、何となくわかるような気がした。

『ロンリー・ハート』 久間十義 (幻冬舎文庫)
『中国・黒社会がからんだ強盗、車を駆使したレイプ事件…。凶悪事件の連続発生。煩瑣な捜査に疲弊する中、警視庁綾井北署の刑事たちが突き止めた驚愕の拉致殺人犯とは?『刑事たちの夏』『ダブルフェイス』そして…。1988年11月。東京・綾瀬で発生した女子高校生コンクリート詰め殺人を素材に、破滅と悪意にまみれた街の少年たちの姿を白日の下にさらした警察小説三部作の頂点』刑事達が言う「オレたちが若いときは犯罪は貧困から始まると教えられた。貧乏と差別。それに当てはまらないものは、犯罪以前の”異常”の範疇だったんだ。それがどうだ。いまはぜんぶが”異常”だよ」言葉が妙に印象的。どうも少年たちが犯した拉致レイプ事件の他に、中国・黒社会などの題材を詰め込んだために、焦点がぼやけてしまったような。

『陰日向に咲く』 劇団ひとり (幻冬舎文庫)
『ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年。合コンで知り合った男に遊ばれる女子大生。老婆に詐欺を働く借金まみれのギャンブラー。場末の舞台に立つお笑いコンビ。彼らの陽のあたらない人生に、時にひとすじの光が差す―。不器用に生きる人々をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デヴュー作』連作ってことで5つの短編の内容が少しずつ繋がっている。なかなか、よく出来た話だと思った。最後の何ページでそれまでの内容が一気につながってくる。意外に面白かった。

『極限推理コロシアム』 矢野龍王 (講談社文庫)
『夏の館と冬の館。14人の各プレーヤーたちは、その見知らぬ館で目が覚めた。主催者は「それぞれの館で起きる殺人事件の犯人を当てよ」と推理ゲームを命じる。二つの館は通信でのみ、情報のやりとりが可能。生き残るためには相手となる館のプレーヤーたちよりも早く正解にたどり着かねばならない。被害者はプレーヤーから選ばれ、一人また一人と命を落としていく。二つの館の犯人当てゲーム。生きるか死ぬかの極限サバイバル。唯一与えられたヒントは「銅像」のひとこと。夏の館にある銅像は「アルマジロ」だが…。第30回メフィスト賞を受賞』トリックがあまりにも… キバで犯人の数を推理するというのも、とってつけたような… 不思議だったのは、最初は毒を気にして冷蔵庫のものに手を出せなかったのに、いつのまにかに食べるようになっていた。それにしても、冬の館の通信が聞こえるという設定にも、公平さが… 最後も偶然が重なり、出来すぎた感じ。タイトルが極限推理とは、名前負けしているな〜

『地獄のババぬき』 上甲宣之  (宝島社文庫)
『前作の世間を騒がせた阿鹿里村の生き神事件より生還した、しよりと愛子。今度は卒業旅行のため東京行きの夜光バスに乗った。そのバスでバスジャック事件に遭遇。犯人の要求は、乗客と特殊ルールのババ抜きを行い、勝ち抜けた者を解放する。25時間テレビで生中継される地獄のババぬきが始まった。 プレイヤーは、しより、愛子、前作で愛子と殺戮劇を演じ、逮捕されたレイカ。愛子への復讐のために刑務所を脱獄してきたのだ。そして、レイカに拉致され、現場に連れてこられた、しよりの友人弥生。弥生は前作で携帯電話を通じ、しよりの脱出に手を貸した心理学の達人。そのほか背後霊に憑依された少女。宝石強盗の逃走途中に、同じバスに乗り合わせた世界に名を知られた大泥棒。その相棒の女性魔術師。最後に、バスジャックの犯人であり、元放送作家の博打王の8人。それぞれの能力を最大限に活かし、相手を騙し、相手のうそを見抜き、ばば抜きを勝ち抜け』第一回このミス大賞で各賞受賞を逃したものの、話題作として出版された「そのケータイはXXで」の続篇。前作の登場人物たちが再集結、そして新たに加わるひと癖もふた癖もあるキャラクターたち。とにかくキャラクターの性格付けがきちんとなされ、とても生きている。「そのケータイはXXで」よりも読みやすく、登場人物も生き生きしていたような。面白かったのは、ババぬきで、開始する時の枚数で、奇数・偶数で有利不利があるってこと。確かに、そうなのかもしれない。

『ガラス張りの誘拐』 歌野晶午 (角川文庫)
『世間を恐怖に陥れている連続婦女誘拐殺人事件。少女惨殺の模様を克明に記した犯行声明が新聞社に届けられた。ところが、家族や捜査陣の混乱をよそに、殺されたはずのその少女は無事戻り、犯人とされた男は自殺、事件は終結したかに思われた。しかし、事件はまだ終わっていなかった。捜査を担当している佐原刑事の娘が誘拐されたのだ!しかも、犯人は衆人環視のなかで身代金を運べと要求する……。犯人の目的はいったい何なのか?刑事達を待ち受ける驚天動地の結末とは?偉才が放つ奇想のミステリ!』第3章、第2章、第1章という珍しい作品。その構想の意味が、オチに生きているような。

『世界の終わり、あるいは始まり』 歌野晶午 (角川文庫)
『東京近郊で連続する子供ばかりを狙った誘拐殺人事件。被害者の子供たちはみな身代金の受け渡しの前に銃で射殺されており、その残虐な犯行に世間は騒然としていた。冨樫修は妻と息子と娘と幸せな家庭を築いていたが、ある日、息子の部屋から誘拐殺人事件の被害者の父親の名刺を見つけてしまう。もしかしたら、息子は事件について何か知っているのか? ひょっとしたら何か関わりを持っているのか? 疑惑は深まり、やがて…』富樫修が雄介の机の引き出しから拳銃と銃弾を発見した場面までは作中の現実だが、その後は五つの結末が用意されている。一つ目、雄介が補導され、菜穂が誘拐されて殺害される。二つ目、一家無理心中を図るも断念。しかし家族は殺害され、自分に容疑がかかる。三つ目、雄介を追及し、その釈明を聞かされるが、それが嘘であることに気づく。四つ目、雄介を殺害し、蓮見守に罪をかぶせようとするが、逆に殺される。五つ目、雄介を殺害し、蓮見守に罪をかぶせようとするが、犯行が露見する。中々、面白かった。自分的には、一つ目の結末の方が、現実的だったが、逆に誘拐されるというのは、どうかと。妄想オンパレードというのは、これだけ続けば、面白い。

『ハリー・ポッターと死の秘宝』 J・K・ローリング (静山社)
『ハリー・ポッターシリーズの第7巻であり、完結編。ハリー・ポッターはホグワーツの七年生。しかし前年(謎のプリンス)にアルバス・ダンブルドアがハリーに遺した仕事「ヴォルデモートを滅ぼす唯一の方法である分霊箱を壊すこと」を遂行するため学校には行かず、親友のロン、ハーマイオニーと共に旅に出た。ハリーたちはヴォルデモートの手下死喰い人に追われ、大切な存在を失いながらも着々と分霊箱を破壊していく。そしてホグワーツにある分霊箱を探しつつ、ハリーとヴォルデモートの対決が迫る 』ハリポタシリーズのオチって、思いもよらぬ人物の正体が思いもよらないものだった、というのが多いと思うが。一巻ならスネイプじゃなくてクィレルかよ! 二巻はリドルがヴォルデモートかよ。三巻はスキャバーズがペティグリューかよ。四巻はムーディがクラウチかよみたいな。五巻と六巻にはそれがなくて、期待してたんだけど七巻にもそれがなかった。途中ロンの様子がおかしくなって「アヤシイ」とか思ってたんだけど、ただのひねくれだった。ロンがヴォルデモートに尊敬の念を抱けみたいなことを言った時は目を疑ったんだが。訳し方がおかしいんじゃないかな。原文知らないけど「畏敬」の意味合いが強いのではないかと。七巻の主軸は、分霊箱探しとダンブルドアの過去。まさかここにきてダンブルドアが実は悪いやつだったんじゃねか、みたいな展開になるとは。オイオイそれはねーぜと思いながら読んでいた。そしてグリンデルバルド。一巻に名前だけ出てきたこいつが、いきなり重要キャラに。これだからハリポタシリーズはすごい。どんな些細なものでも伏線だからな。グレゴロビッチとか、必要の部屋の像とか。グリンデルバルドのマーク、ゴドリックの谷の墓にあるマーク、ダンブルドアの遺品にあったマークなど、謎の共通のマークが興味をひく。つながりそうもなかったそれらが最終的には全部繋がり、「そうだったのか」と納得。ダンブルドアの過去が暴かれていくのは面白かったなあ。一時期本編よりもそっちのが気になってた。彼にも、青い時がったんですね。副題となってる「死の秘宝」とは、全部今までに出てきたアイテムだったのですね。お見事。特にニワトコの杖はすごいな。七巻は杖の秘密が重要になっていて、杖と持ち主の関係などが明かされるが、その薀蓄こそラストバトルの重要な伏線でしたね。スネイプがダンブルドアから所有権を奪った、と思いきやドラコ・マルフォイがエクスペリアームスしていた、と思いきや更にハリーがドラコを打ち負かしていた。ニワトコの杖の所有者はハリーだった。実に見事。ファンタジーの中に緻密なロジックが入り混じるローリング節の醍醐味。分霊箱探しでは、グリンゴッツでの展開がいかにもファンタジーしてて面白かった。金庫の中で触れると熱くなって鼠算式に増える宝とか、ドラゴンに乗って脱出とか。ヒャッホー!って感じのハラハラドキドキ展開。映像化にはもってこいだな。そして、ホグワーツでの最後の戦い。マルフォイの館でペティグリューが死んだ時は「え?」ってなったが、もはやそんな暇もないほど人が死んでいく。フレッド、ルーピン、トンクス、クラッブ、コリン・クリービー……オイオイちょっと待て。死にすぎだろ……常識的に。フレッドの死は唐突すぎるし、ルーピン・トンクスなんて死の瞬間すら描写されてない。いきなり亡骸になって登場。その文章を見た時、一体何人の読者が叫びそうになっただろうか。クラッブの死は意味がわからないな……わざわざ殺す意味が。別に死ななくてもいいし、死ぬならゴイルも死ぬべきだろう。物語的に。敵側の死は、逆に全然描写されてなかったような。ベラトリックスは死んだのだろうか。なぜ死喰い人の中でももっとも残忍で、存在感のあるベラトリックスがロンのおかあさんに倒されなくちゃならなかったんだろう。ロンの家族は誰もベラトリックスに殺されてないけど。宿命的にトンクスが倒してほしかったなあ。今までのキャラ総出演のホグワーツバトルは、熱いのなんの。巨人のグロウプに、トレローニー先生、ケンタウルス、クリーチャーたちも参戦。クリーチャーの寝返りには感動せずにはいられない。やれやれー!って感じだった。ネビルが組み分け帽子からグリフィンドールの剣を出すのも熱い。「真のグリフィンドール生だけが剣を出すことができる」。ネビルはハリーに追いついたわけだ。同じく予言に選ばれた子の一人として。 そしてスネイプの死。スネイプは善玉だと確信していたし、銀の雌鹿もスネイプだろうと思っていたし、リリーが好きだからそうなんだろうともわかってたけど、何らかの形でそれを明かしてくれると思ってたから死んでしまったのには目を疑った。が、ペンシーブなんて便利なものがありましたね。いやー、スネイプの過去。松岡さんも後書きで語ってるけど、ハリーの物語よりも感情移入してしまう。これまで六巻を費やしてスネイプという「敵なのか?味方なのか?」キャラを魅力的に描いてきたので、その集大成、答えを出す「プリンスの物語」はハリーポッターシリーズ最大の伏線回収だったのではないか。リリーのことが好きなんだろうなとは思ってたけど、それが中心になってダンブルドアの味方をしていたとは思わなかった。そうでしたね、これは「愛の物語」でした。最後の最後でスネイプが最も美しい愛をかっさらっていきました。「これほどの時が経っても、か?」「永久に」の、ダンブルドアとスネイプの会話は七巻で最も感動したやり取り。スネイプは最後までジェームズとハリーのことは憎んでいたことでしょう。しかし、ハリーの目はリリーの目だった。スネイプがハリーの敵になるわけなかった。ハリーが死ぬかと思っていた。ハリーは一度はヴォルデモートの死の呪文を受けるが、死なない。なぜかというと、ヴォルデモートはハリーの血から復活しましたから。リリーの保護呪文も受け継いだということになる。つまり、実はヴォルデモート自身がハリーの分霊箱にもなっていたということだった。その後、ヴォルデモートと最終章で戦い、ヴォルデモートの放った死の呪文を跳ね返し、ヴォルデモート死亡。エピローグは「ありがち」の一言で、物語の締め方に関していえば何の感慨もなかった。あまりに普通すぎて。そりゃ「よかったよかった」て思って感動はしますけど……ハリポタシリーズの終焉にはもっと僕は違った期待を持っていました。 大人になったハリーとジニーが結婚して、ロンとハーマイオニーが結婚して、その子供がホグワーツに入学? 正直、誰でも想像できる同人誌レベルの終結……おっと、暴言が過ぎました。確かに、これが最も綺麗な終わり方なんでしょう。

『氷の華』 天野節子 (幻冬舎文庫)
『専業主婦の恭子は、夫の子供を身篭ったという不倫相手を毒殺する。だが、何日過ぎても被害者が妊娠していたという事実は報道されない。殺したのは本当に夫の愛人だったのか。嵌められたのではないかと疑心暗鬼になる恭子は、自らが殺めた女の正体を探り始める。そして、彼女を執拗に追うベテラン刑事・戸田との壮絶な闘いが始まる…』デビュー作とは思えないくらい、完成度の高い作品。伏線が張り方も上手く、かなり面白かった。犯人は判ってるのに、それでも読ませてしまう。二転三転する展開、追う者と追われる者の駆け引き、なかなか、面白かった

『さまよう刃』 東野圭吾 (角川文庫)
『長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編』被害者に厳しく加害者に甘い日本の少年法に一石を投じた作品。最後の密告者のすり替えには、ビックリした。最後の密告はいつしたのだろうと最後を読む前に読み返したけど、まさか…

『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月 (講談社文庫)
『第31回メフィスト賞受賞。ある雪の日、学校に閉じ込められた鷹野、深月、昭彦、菅原、梨香、景子、清水、充。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰なのか。ジワジワと侵食し始める恐怖と不安。張り詰めた緊張感の中、グループの一人が忽然と消えた…。未だに思い出すことができない級友の名前。少しずつ明かされていく、それぞれの心に潜む闇。5時53分で止まっていたはずの時計は、次に消される人物と深まる謎に向かって再び時を刻み始めた。彼らは思い出せない。どうしても“その名”を思い出すことができない。学園祭最終日、学校の屋上から飛び降りて死んでしまった級友は誰だったのか。緊張と不安に包まれ次々と仲間が消える中、抵抗も空しく時計は進んでいく。そして不気味に鳴り響くチャイムとともにまた一人、誰かが消える。彼らを校舎に閉じ込め漆黒の恐怖に陥れているホストの正体がついに明らかに。感動の長編傑作』8人が校舎の中に閉じ込められる。何故この8人が閉じ込められたのか、閉じ込めた「ホスト」の目的は何なのか。そして、自殺したのは誰なのか。この8人の中に自殺した人物がいる。それは一体誰なのか。全く分からない。最初は、深月、その次は充、その次は梨香と自殺した人を想像したが。読み進めていくうちに、8人のそれぞれの心の傷が浮き彫りになってきます。それが痛々しくもあり、凄く共感できたり。読んでいて誰が犯人なのかなぁと考えていたんだけど、気付かなかった。まさか、角田とは…完全に騙された。考えてみれば、色々と伏線が張ってあったような。キーマンとなる人物の過去で「あれ?」と思う部分があったり、どうしてあの人だけ過去の話が出てこないんだろうと思ったりしたけど、これで1本に繋がるのかと納得できたり。やられた

『悪夢のエレベーター』 木下半太 (幻冬舎文庫)
『後頭部の強烈な痛みで目を覚ますと、緊急停止したエレベーターに、ヤクザ、オカマ、自殺願望の女と閉じ込められていた。浮気相手の部屋から出てきたばかりなのに大ピンチ。しかも、三人には犯罪歴があることまで発覚。精神的に追い詰められた密室で、ついに事件が起こる。意外な黒幕は誰だ?笑いと恐怖に満ちた傑作コメディサスペンス』章ごとに視点が変わるのが面白い。第一章は小川という28歳の男性がエレベーターのなかで後頭部の痛みを覚えながら目を覚ますところから始まる。目を開けると、彼を覗き込む三人の顔。関西弁で話すヒゲをはやしたスーツ姿の男、メガネをかけている痩せた男、そして全身真っ黒の服を着て、手にはぬいぐるみをぶらさげている年齢不詳の女性。小川はこの三人と故障したエレベーターに閉じ込められたらしいというところから始まるが、ちょっと強引過ぎる展開や設定も、第二章になると、なるほどと思うように。中々、面白かった。

『恋する日曜日 私。恋した』 渡辺千穂・田中夏代 (リンダブックス)
『ガンで母を亡くしたなぎさは、母と同じ病院へ入院することになる。自分の命があと3ヶ月と知ったなぎさはひとり、生まれ育った海辺の故郷に旅に出る。そこには幼なじみで初恋の人、聡が暮らしていた。病気のことも、恋心も告げられぬまま、なぎさに残された時間は刻一刻と過ぎていく…』リンダブックスは初めての出版会社。聞いた事は無いぞ。母をガンで亡くし、自分も同じガンで余命3ヶ月と宣告された18歳の少女。最後の思い出に、生まれ故郷で初恋の人に恋を告白しょうとする。初恋相手は不倫愛で親からも見離され不倫相手の子供からも嫌われながら結婚を考えながら独りで生きている。故郷における3日間の生活。初恋の相手と一つ屋根で過ごすがあくまで幼馴染の妹みたいに扱われる。見知らぬ猫の死。不倫相手の夫と初恋の彼の争い。不倫相手の子供の孤独を知る少女。子供がいるため離婚に踏み切れない女。重い出来事が続くが、必死に生きる人たち。田舎の時の流れ、そして、余命がないことも恋の告白も出来ずに、しないで別れが来る。それでも今の彼が好きで恋したこと、愛したことを大事に胸にしまう少女。短い人生でも恋したことの喜びをかみ締める少女。相手の彼のことを考えれば打ち明けなくていいのかな。彼の思い出の中に少女は永遠に生き続けるから。

『NR(ノーリターン)』 川島誠 (角川文庫)
『目覚めたら病院。交通事故により記憶の一部を失ってしまった主人公の高橋進。人から聞く話によると、日本屈指の素質を持ったランナーにして科学の天才だったらしい。枕元におかれた手紙に至っては自分が「救世主」だときた。ホントのところ、自分は一体何者? 退院後、進は15歳の叔母に引き取られる。で、病室にもやってきたことのある中国人マフィアに拉致られる。とあるバイトをしていたらしく、そこの店長のところに連れて行かれる』記憶をなくして目覚めた青年、あまり人の話を聞かない主治医、アスリートだったと主張するコーチ、預けたアレを返せと迫るアンダーグラウンド的雰囲気を持つ「店長」、そして彼の後見人としてスペインから来た「眉子おばさん」…前半の、話の展開が良かったけど、後半の展開は、わけが分からない。ちよっと読んで損したかな…

『そのケイタイはXXで』 上甲宣之 (宝島社文庫)
『この作品は第1回「このミステリーがすごい!」大賞で話題となり、息つく暇さえない携帯電話ホラーサスペンスの最高傑作。温泉旅行に出かけたしおりと愛子は、山間の温泉郷にたどり着く。だが、道中で人を「イヌ」呼ばわりする眼帯女に出会ったり、村の神社では等身大の人形を火あぶりにする怪しい祭りが行われていたりと、不気味な雰囲気が漂う。温泉に入り宿に戻ったしおりは、誰のものかわからない携帯電話を拾った。そこに着信があり、電話に出たしおりは、物部と名乗る男から驚くべき話を聞かされる。今すぐにその宿から逃げ出さないと、彼女は片目、片腕、片脚を奪われ、村の生き神として座敷牢に監禁されてしまう運命だという。その言葉を裏付けるように、しおりの周辺で変事が持ち上がっていく。そして、温泉に残った愛子の身にも事件が起きていた・・・』突っ込み甲斐の多い作品だと思ったが、けっこう、それでいて面白い。ジェットコースターのように話が展開していく。レイカが凄まじい生命力、完全に死んでいるはずなのに、どうして生きているんだ……「別れ屋」ととは何なんだ。前にも犠牲者がいたんだろうけど、なぜ発見されなかったのかとか。いくら外部と隔絶されてるからって異常なことくらい分かるだろうとか。しかも、不細工な男だってだけで、勝手に失望して銃を向けるというのは、何なんだ…最後まで助けてくれてたのに。誰が味方で誰が敵なのか誰が本当のことを言ってるのか、誰を信じればいいのか…どんどん次が読みたくなる。しかも、連絡手段は充電切れそうな携帯電話。民俗学と携帯電話が妙にかみ合い、面白かった。

『犯人に告ぐ』 雫井脩介 (双葉文庫)
『連続幼児殺害事件の捜査に行き詰った警察は、テレビと組んで公開捜査に乗り出すという賭けに出た。指揮を執るのは、かつてメディア対策で失態を演じ左遷を余儀なくされていた刑事・巻島。史上初の《劇場型捜査》は成功するのか? 警察内部の確執や利害関係、メディアとの駆け引き、家族の問題などを盛り込んだ、濃密な作品』素直に面白い。文章がしっかりとしていて、長編なのに読み手を飽きさせない作品。本を開いてからは、一気に読むことが出来た。史上初の劇場型捜査とあったで、かなり派手な展開を期待していたが、犯人に番組から呼びかけて手紙を待つだけだったような…6年前の会見で失敗した時、マスコミの質問はいやらしいながら、一方で、まっとうだとも思う。警察官が沢山見ている前で、また映像も撮られている前で、磁石つきの紙を落とすことって可能なんだろうか。これは巻島の孫が誘拐される展開になるかなと予想したら、本当に…。前半で伏線もあったし。でも。誘拐犯が予想外。バッドマンが手紙を落として風で飛ばされたことで、事件が解決につながる。かなり、お粗末な感じ。植草は、巻島を妨害したかったというよりは、未央子の気を引き、自分を追わせ、掌握したかっただろうけど、あの自殺した人が「ワシ」で確定。自殺のタイミングを考えると合ってそうなんですけど。バッドマン、ワシ達の事件への動機や手口はあまり語られていなかった。ワシは金がないからやったという部分もあったんじゃ…現実では、どういう人物が快楽殺人犯・愉快犯は、なりやすいのだろうか。

『時の渚』 笹本稜平 (文春文庫)
『もと警視庁捜査一課の刑事であり、今はしがない私立探偵の茜沢圭は、食道がんで余命半年と宣告されてホスピスに入った老人、松浦武三から35年前に生き別れた息子を捜し出してほしいと依頼される。極道だった頃に生まれたひとり息子で、母親は子どもを産んですぐに死亡、事件を起こして指名手配されていた松浦はやむなく、たまたま出会った見知らぬ女性に息子をあずけたのだという。  同じ頃、刑事時代の上司にあたる真田警部から連絡を受け、女子高生殺人の重要容疑者とされる駒井昭伸の身辺を探る役目も請け負うことになる。この駒井昭伸こそ、三年前に西葛西でおこった駒井夫婦刺殺事件の第一容疑者として限りなくクロに近い立場にありながら、DNA鑑定によって犯人から除外された人物だった。そしてその西葛西の事件の犯人は、車で逃走中に茜沢の妻と息子をひき逃げで殺害していった犯人でもあるという意味で、茜沢にとって因縁浅からぬ関係があった。女子高生殺人の犯人と西葛西の刺殺事件の犯人がDNA鑑定で同一人物だと判明したことで、駒井昭伸の逮捕が一気に三年前の事件の決着にも結びつくかもしれない、という真田警部の配慮があっての人選だった。茜沢は息子の消息を辿る中で、自分の家族を奪った轢き逃げ事件との関連を見出す…。「家族の絆」とは何か、を問う第18回サントリーミステリー大賞&読者賞ダブル受賞作品』読み始めてから、何となく結末が分かるような気がしたが、複雑な人間関係に読み応え満点。最後の最後で、まさか、こういう展開もアリという、どんでん返しの駒井の捜査で茜沢に協力する通信機器のエキスパート・西尾の尾行術、クライマックス前の立教大学のキャンパス立て篭もりなど、けっこう面白かった。期待していなかっただけに、意外にも面白く、そのまま一気に読んでしまった。人間関係の設定があまりにも偶然性が強すぎる気はするが、人間の家族愛を思い出させてくれて、心が熱くなる。最後はすこし泣ける話し。小説の中でも犯人はかなり特定されて、読んでいても怪しいのはその犯人だけども、その犯人に至るまでの過程とか環境とかがなかなか複雑でたどり着かなくて、しかも、ちょっと伏線が絡みすぎというか…でも飽きずに面白く読めた。物語の最初の数10ページで、ある程度作品の全体を読み切ってしまいそうだけど、謎はそれだけに終わらない。この作者は登場人物の造型がうまい。主人公をはじめとして登場人物のそれぞれが個性を発揮し、作品に活気を与えている気がする。親子の絆、血縁関係というのが本作の重要なテーマ。読み終えて初めて大きく実感できる。第七章と終章が圧巻。茜沢がたどり着いた真実は酷だったのだろうか。良だったのだろうか。両方だろうか。

『硝子のハンマー』 貴志祐介 (角川文庫)
『見えない殺人者の、底知れぬ悪意。異能の防犯探偵が挑む、究極の密室トリック!「青の炎」から4年半、著者初の本格ミステリ!   日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号。廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが…』。前半は、探偵の目線で、外部からの進入は不可能と読者に印象付ける。後段は犯人側から見た犯行のプロセスが描かれる。つまり鉄壁の監視システムをいかにかいくぐって目的を達成したか、その頭脳的プレイを披瀝する。犯人は、後半ですぐに分かるが、問題はトリック。「こんなトリックあり」という気もしたが、なかなか面白かった。

『生首に聞いてみろ』 法月綸太郎 (角川文庫)
『有名な彫刻家・川島伊作が癌のため逝去。その遺作となったのは、1人娘の江知佳を形どった石膏像。しかし家人が伊作を救急車で病院に連れて行っている間、無人となったアトリエに何者かが忍び込み、その首を切断して持ち去っていった。その死の前日、偶然、江知佳と知り合いになっていた法月綸太郎は、その事件に巻き込まれることに』題名が、ちょっと…感じだけど、中々のもの。読んでみると、謎が込み入り、途中で誰がどこで何をしたという事が整理できずに、ごちゃごちゃになり、何がなにやら分からなくなった。じっくりと読めば、読み応えがあるような気もする。絡み合った謎を、ゆっくりと、解きほぐしていくのが、推理小説の醍醐味ならば、まさに本格派の推理小説かも。さりげない伏線、思いがけない登場人物のすり替え、変装など、油断していると、あの時によんだのが伏線だったのかと、ビックリしてしまう。2005年版「このミス1位」に納得。ただ、本当、時間をもっとかけて読めばよかったかな〜

『片想い』 東野圭吾 (文春文庫)
『十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー』性同一性障害をテーマに扱った話。最初はそんなに広大な世界が待っているとは思っていなかったが、途中から息をもつかせぬ展開に、殺人、友情とか色々と絡んできて、中々、楽しめた。

『残虐記』 桐野夏生 (新潮文庫)
『小説家が、ある手記を残して失踪。その小説家は、小さい頃にケンジという男に誘拐され、一年間も監禁される。その体験を記した手記。物語は、その手記をそのまま載せるような形式。ケンジという男に誘拐され、工場の二階に閉じこめられる主人公の「私」。ケンジはレイプするとかイタズラをすることなく、ただ主人公を見ながら自慰をする。男の隣の部屋にはヤタベさんという人物がいるはずなのですが、なぜか主人公を助けてくれない。ヤタベさんは耳が不自由でした。それで、いくら声をはりあげても、聞こえない。絶望しながらも、主人公は逃げるスキをうかがう。が、うまく逃げることができなかった。一年後、たまたま工場のおばさんに見つけられ、救い出される主人公。救い出された主人公には、公判のためいろいろと調べられたり、近所の人たちの好奇の目にさらされたり、家庭が崩壊したり、と、主人公には不幸が訪れる。検事の宮坂は、ネチネチとケンにどんなことをされたのかをしつこく知りたがる。あまりにも現実が辛いため、自分の殻をつくり、そこに自閉する主人公。主人公は成長し、やがて自分の体験を取り入れた処女作を書き上げ、小説家となっていく…。こうした中で、主人公は事件の真相を知ったり、気付いたりす。ところが、この事件の真相は、二転三転してゆく。そもそも、この手記自体が虚構の可能性さえある。最後は、なかなか考えさせる終わり方』ちょっとヘビー過ぎて、あまり面白くはなかった

『アルキメデスは手を汚さない』 小峰元 (講談社文庫)
江戸川乱歩賞受賞作。『豊能高校の柴本美雪の死因は公式には盲腸となっていたが中絶の失敗だった。建設会社の父は葬儀の夜、復讐を誓う。高校では弁当のセリ市が開かれていたが競り落とした柳生隆保のそれに農薬が入っており、危うく命を落とし掛ける。隆保の姉美沙子の情婦亀井 正和が隆保の家で情事を楽しんだ後、行方不明になる。隆保の母、幾代の不審な行動から足がつき、亀井の死体が隆保の家の床下から見つかる。学園際でアルキメデスを演じた4人組は一つでも役にたつことをしようと他人の日照権を奪い、老婆を死に至らしめた柴本に復讐するために美雪を犯すことを計画し、隆保の相棒町田が琵琶湖への夏期旅行で成功。さらに美沙子との情事しか考えない汚らわしい亀井にカツを入れる事を計画。四国への修学旅行時に自宅に戻って殺害することにやはり隆 保が成功、アリバイ作りに残り3人が協力したものだった』。標題は「アルキメデスが発明した殺人機械は、大勢のローマ兵を殺した。しかし実行したのは兵士たちだ。アルキメデスは無罪といえるだろうか。」という作者の問いかけをあらわしているようだ。正直、そんなに面白くは無かった。

『果てしなき渇き』 深町秋生 (宝島社文庫)
『元刑事・藤島秋弘のもとに、失踪した娘の加奈子を捜してほしいと、別れた妻から連絡があった。家族とよりを戻したいと願う藤島は一人、捜査に乗り出す。一方、三年前。中学生である瀬岡尚人は手酷いイジメにあっていた。自殺さえも考えていたところを藤島加奈子に救われる。彼は彼女に恋をし、以前、彼女がつきあっていた緒方のようになりたいと願うようになるが…。二つの物語が交錯し、探るほどに深くなる加奈子の謎、次第に浮き彫りになる藤島の心の闇。用意された驚愕の結末とは―?「このミステリーがすごい!」大賞第3回受賞作』。突然行方がわからなくなった高三の娘・加奈子を必死で探す父親の情念の作品だけど、この主人公が「俺が俺が」という自己中みたいな感じで、読んでても引いてしまう。次第にヤク中になっていく主人公は、元妻を覚醒剤を使って暴力的に犯すような男なので感情移入など不可能に近い。暴力的な主人公に共感を覚えなかった。それでも、父親と娘の関係、どこまで堕ちてくんだ?と思いつつ、先を知りたくて一気に読み終えた。ただ、背景を描くのが下手だったと思う。時々、誰が話しているのか分からないときがあった。最後もかなり後味が悪い。

『グロテスク』 桐野夏生 (文春文庫)
『世にも美しい妹ユリコを持つ「わたし」は、ユリコと離れたい一心でQ女子高を受験して合格し、スイスに住む両親と離れて祖父とふたり暮らしを始める。エスカレーター式の名門Q女子高は厳然とした階級社会であった。佐藤和恵という同級生が美人しか入れないという噂のチアガール部に入ろうとして果たせず、苛立つのを、「わたし」は冷やかに見守る。夏休み前に母が自殺したという国際電話が入る。ユリコが帰国するというので、「わたし」は愕然とする。同じQ女子高の中等部に編入したユリコは、その美貌でたちまち評判になるが、生物教師の息子木島と組んで学内で売春し、それがばれて退学になる。和恵はQ大学から大手のG建設に就職した。―そして二十年後、ユリコと和恵は渋谷の最下層の街娼として殺される』登場人物は、怪物のような美貌を持ち、その「美貌」を磨き続けるユリコ。天才的な頭脳を持ち、その「頭脳」を磨き続けるミツル。頭脳も美貌も持たずに、「悪意」を磨き続ける「私」。そして、悪意を磨くことも出来ず、もがき苦しむ和恵。登場人物は多くなく、それぞれの女性の内面を鋭くえぐっている。何か、あまりにも暗すぎて、あまり評判ほどには、正直、面白くなかった。ラスト近くではユリコの息子である百合雄が登場する。彼もまた美貌の持ち主であり、生まれつきの盲目である彼が、「私」を引きずり込んだ地獄とは…

『葉桜の季節に君を想うということ』 歌野晶午 (文春文庫)
『第57回日本推理作家協会賞、2004本格ミステリー10、第4回本格ミステリー大賞受賞。成瀬将虎は、ガードマンにパソコン教室の先生、エキストラなどの何でも屋をやりつつ、金で女を買って抱いたりと、自由気ままな生活を送っていたが、電車のホームで自殺していた女性を助けたことからその女性と懇意になる。その一方で、成瀬は後輩の知人である久高愛子に頼まれて怪しげな悪徳商法を営んでいる「蓬莱倶楽部」の調査を依頼されるが…』後輩Sが薦めてくれた本、作者に一番騙された本という事で読んでみた。最初は、麻宮さくらが売春していた、安藤士郎の奥さんのシンディの店の名前が「山下」ではなく娘の名前・千絵の「TIE」、成瀬将虎は安藤士郎の…、麻宮さくらの正体は…。結局、後輩が言いたかったのは…。何となく気づいていたけど…。人間の思い込みを見事に逆手に取った小説という感じ。誰だって女子高生を出会い系サイトでひっかけ、携帯電話を2機も操り、パソコンで電話番号検索をする男をどう考えたって若いと思ってしまうだろうけど、そこが実は作者の目の付けどころだった。どこで、気づいたかと言えば、安藤士郎との会話、成瀬は先生だからと言っても、対等に喋ってるというので、違和感から、何かおかしいかな〜という感じになった。俺は後輩には「ハサミ男」を2番目にお薦めした本として挙げたが、少し似ている感じがした

『太陽の塔』 森見登美彦 (新潮文庫)
一人の京大農学部5回生(但し休学中)の語りによって活き活きと描かれている。文章が面白かった。舞台は、先日一人旅した京都。京阪電車、銀閣寺、四条河原町交差点という地名などが出てくると懐かしい。モテナイ部類に属する主人公、所属していたクラブの後輩の水尾さんという女性と恋に落ち、わずかな期間では付き合っていたのだが、彼女から突然袖にされてしまう。そこで彼は「決して水尾さんに対する未練に基づくストーカー行為などではなく、彼女はなぜ私のような人間を拒否したのかという疑問を解明するという副次的な目標を持った、緻密な観察と奔放な思索、および華麗な文章で記され文学的価値も高い水尾さん研究を行う。水尾さん研究は、崇高なる研究であって、未練だとかそういうものではない。けして私は恋だのにかまけているわけではない。世間は間違っており、クリスマスは憎き行事で、そして私は正しいのだ。などと、理屈ぽく文章は続く。夢玉、ゴキブリキューブ、京大狩り、猫ラーメン、ええじゃないか騒動と、愉快な話しが続く。明らかにストーカー行為をしてるにも関わらず文学的高尚な言い訳を繰り返す主人公、そしてそれと似たような思考回路を持つ友達、彼らの一見高慢に思える言い訳が笑える。無駄に終わった自分の大学生活を思い起こしてしまいそうな読後、懐かしくなったりする。もっと青春をしておけばよかった。

『Aコース』 山田悠介 (幻冬舎文庫)
『主人公の藤田賢治とその友人たち5人の高校生は、ゲームセンターの新アトラクション「バーチャルワールド」のAコースに挑戦する。バーチャルワールドというゲームでは、まるでそこに居るかのように行動することができる擬似空間を体験することができる。ゲームを開始した賢治たちが降り立ったステージは、炎に包まれた病院。賢治たちは迫りくる敵を退けながら、脱出のために行動する。しかし、賢治たちはある違和感を感じる…。果たして賢治たちは無事脱出ができるのか…。そしてゲームに感じた違和感の理由とは』読みやすく、あっという間に読み終わった。ただ、それだの内容だったような…ご都合だけで進んでいくストーリー展開、スィッチがタイミングよく見つかるし、子供が登場人物の兄だったオチにも、味気ない。全然、気持ちが高ぶる事無く読み終えた。

『女神』 明野照葉 (光文社文庫)
『自分の望むものを手に入れる為には、手段を選ばない女性が主人公。佐竹真澄は企業の広告と販売促進補助を主業務とする会社のOL。憧れていた東京での一人暮らしだったが、27歳になった今もお洒落とは程遠い生活を送っていた。そんな真澄が気になってならないのが、同じ会社の君島沙和子。三十二歳の沙和子は美人でセンスもよく、営業成績は常に上位だった。男性に負けないほど仕事が出来るのに女らしく柔らかい雰囲気を失っていない。そんな沙和子の完璧さが、真澄はどことなく現実離れしているようで奇異に思える。同じアパートの友人の吉村由貴に進められて真澄は沙和子の観察メモを作る事にした。するとその秘密主義、完璧主義は、常軌を逸しているように見えた。転職、転居を繰り返す紗和子の素顔に隠されたものとは』最初の部分で、もしや紗和子が殺したのではと、分かるけど…それで話しは終わらない。完璧な人間になろうとする紗和子も異常だけど、その彼女を執拗に観察し見つめる二人の女性真澄と由貴もある種の異常。ラストは意外にもスッキリ、爽やかさがあった。

『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』 泡坂妻夫 (新潮文庫)
『恐山でイタコの真似をし、惟霊講会の美鳥那那の霊をおろしたヨギガンジーは不動丸、美保子と再会。不思議なしあわせの書と出会い、華聖のもつ本の最初の単語を当てる透視能力の話、惟霊講会で最近死んだはずの何人かが華聖によって復活した話等を聞き、興味をもち、密かに本部に潜入する。発見されてしまうがガンジーは、華聖にその超能力を認められ、後継者決定のための断食レース審判を依頼される。出席者は候補で一度は死に復活したという霊能力の高い胡泉瑠璃子、教祖の親戚の清林寺忠成、候補ではないが志願したという美鳥那那、六郷藍子、これに海尻五郎、小豊田信江、鷹狩勝道、力井福之助、いづれも一度惟霊講会を脱会し、日一天会という新組織会員ということになっている。それに不動丸、美保子等。若狭の山奥の一軒家に泊まり込む。三七、二十一日間の経過と共に胡泉瑠璃子、海尻五郎のみが元気で、後はみな衰弱して行く。ことに一方の候補清林寺忠成氏の衰弱激しく、後継者は胡泉瑠璃子に決まり、と見えた。しかし三人組は隠されたしあわせの書の包みを発見、それが終わりのころ半分近くに減っていることに気づく。そして判定の日ヨギ・ガンジーは「後継者第一人者は清林寺忠成氏である。胡泉瑠璃子氏は選ばれる資格がない。断食の目的はわれわれ全員を餓死させることにある」と主張する。どうしてそういう事になるのか…41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、実はある者の怪しげな企みが隠されていた。マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企て…』。とにかく、驚いた。本にこういう仕掛けがあったとは… 途方もないトリックに愕然。どうりで、所々に、文章が読みにくいところがあったわけだ…それだけに作者がどれほどの苦労をしてこの作品を仕上げたのかを考えると…物凄い小説である。

『億万ドルの舞台』 シドニィ・シェルダン (アカデミー出版)
あらすじは『売れない役者のエディー。妻が妊娠したのに、食料品店のツケはたまる一方。あせるエディに転がり込んできた旅の一座のちょい役。南米のアマドールへ旅立つ。そのアマドールという国は、軍事政権の独裁国家。その独裁国家の独裁者ラモン・ボリバルの将軍が病気になる。しかし、独裁者が病気となると民衆が反乱を起こすというので、トーレス大佐の思いつきで、ボリバル将軍にうりそっくりのエディーを影武者として、独裁国家の将軍に祭り上げられる。国家の財産を私物化し、市民を家畜のように扱っていた将軍とは違い、人の良いエディは、次々と国を変えていく…』。テンポの速さ、軽快な会話は相変わらず読みやすい。エディの楽天的な所が、面白い。

『異常気象売ります』 シドニィ・シェルダン (アカデミー出版)
あらすじは『各地で異常気象が発生し、各地で科学者が事故死していく。異常気象は自然に発生したものではなく世界的シンクタンクKIGのオーナーであるタナーの仕業だった。タナーは殺した科学者の妻を言葉巧みに呼び出し殺そうとする。夫を殺された妻(もちろん美女)二人が出会い何者かによって殺されそうになっているのを感じやがてその敵がタナーだと確信。夫の死の真相を解き明かしていく。タナーの兄KIGの創設者でノーベル賞受賞者であるアンドリューは、心やさしい人物であった。ある日事故によって脳に大変な障害を負い、兄に代わってタナーがKIGのオーナになったが、その事故も弟タナーの仕業であった。最後にアンドリューはプリマをなんとか操作してタナーの乗った自家用機を攻撃した』。話のテンポの良さ、場面の切れ変わり、いくつも驚く場面がちらばめられ、飽きずに一気に読めた。タイトル通り、異常気象が売られる話し。アンドリューとタナーのやりとりが、いかにも小説らしい。そして殺し屋の手際の悪さが目立ち過ぎ。こんなにも助かっていいのだろうかという感想。あとがきに、最後が、あっけなさを感じた。もしかしたらタナーの兄が記憶を取り戻して弟を…というオチかな〜と思っていたが。上院議員がタナーの女というのも意外。あとがきに書いてあったが、「この本に出てくる異常気象は、世界のどこかで実際にあった」という話があり、これにはビックリ。結局、この作品がシェルダンの最後の遺作。何か、寂しいものである。

『幻夜』 東野圭吾 (集英社文庫)
あらすじは「舞台は1995年の阪神・淡路大震災に始まり、2000年1月1日まで現実にあった事件・出来事などを照らし合わせて物語は進んでいく。父の通夜の翌朝に起きた大地震後に、借金返済を強いていた伯父を殺害してしまった水原雅也。ふと辺りを見回すとそこには見知らぬ女性が・・・。その女性は「新海美冬」と名乗っていた。不思議な事に美冬は黙秘し、雅也と共存するように助け合うことになる。だが、彼らの出会いを境に何人もの男が運命を狂わせていく。まるで目まぐるしく変わる東京の街のように」。ヒロインの美冬は「白夜行」の雪穂より以上に狡猾な悪女であり、雅也は「白夜行」の亮司ほど底の深い闇を抱えてはいない。それにしても、美冬の悪女っぷりがえげつない。女優と見紛うばかりの類い稀な美貌。その美貌の下に隠された成功へのあくなき執念。成功の妨げになる者を次々と陥れる非情さ。ふと、女性不信になってしまいそう。二人が幸せになるためとか言っておきながら、どう見ても成功しているのは美冬だけ。それでも美冬のために動く雅也がまた健気。ラストは、これぐらい憎らしいぐらい非情な美冬に悲劇は似合わないと思っていたが、ラストは物凄い展開。これならば納得だけど、何か物悲しいラストだった。あとがきに3部作となるようなことが書かれていたので、楽しみになってきた

『QED 龍馬暗殺』 高田祟史 (講談社文庫)
学会が開催される高知への出張を命じられた薬剤師の棚橋奈々。坂本龍馬ファンの妹の沙織も強引に同行し、奈々は大学時代の後輩である全家美鳥と再会し、彼女の生まれ故郷である蝶ヶ谷村に向かう。人家が4軒しかない山奥の村は、近く隣の村に吸収合併されることが決まっていた。村には奈々の先輩である桑原崇も来ていたが、高知に接近していた嵐のせいで、村から麓に通ずる道が土砂崩れで封鎖されてしまう。嵐の夜に殺人、自殺が相次いで発生し、わずか10人の村人を恐怖に陥れる。嵐で美鳥の実家に閉じこめられた桑原達は、「誰が龍馬を暗殺したのか」を話し合う。そこに暗殺事件の決定的証拠ともいえる手紙がこの村に存在することがわかり…。寺田屋事件の指の負傷で、ピストルをうまく扱えない、刀も扱えないというのは斬新な意見にビックリした。坂本龍馬暗殺の黒幕は誰かという論議と現在の殺人事件が平行して進む。何となく、現在の殺人事件が浮世離れして、ピンとこなかった。いくら、村の教義と言っても…。桑原崇のウンチクにもなんか読みづらかった。

『神は沈黙せず』 山本弘 (角川文庫)
フリーライターの和久優歌は、幼い頃に両親を自然災害で失ったため、心に深い傷を負い、神を信じなくなっていた。2011年、終末予言を標榜するUFOカルト昴の子らを潜入取材していた優歌は、空からボルトが降ってくるという超常現象に遭遇。それがきっかけで、神が存在するのではないかと思うようになる。同時に彼女はある重大な疑問にとらわれる「なぜ神はこの世界に悪や惨劇が跳梁することを許すのか?」と。同じ頃、彼女の兄で人工知能研究者の和久良輔は、遺伝的アルゴリズムによる進化シミュレーションを研究するうち、ある仮説に到達していた。この世界は壮大な仮想現実「神によって創造されたシミュレーション」だというのだ。凄い発想である。この発想は、今まで読んだSFには、たぶんない。おりしも日本を襲う経済破綻。世界的に急増する超常現象。そうした状勢を背景に、良輔の仮説を知った天才小説家・加古沢黎が、ある策謀をめぐらせはじめる。そしてついに、神はその存在を人類の前に示した…。何と月が…とにかく半端じゃない情報量で、まずその量に圧倒される。とにかく出てくる出てくる次から次へとトンデモ理論やトンデモ話。よくこれだけの話を集めてきたなと感心するぐらいの量で、しかもそのすべてに一応の説明をつけていくから凄い。そして神が存在するという現象が登場し、一体この話はどうなっていくのか…と読むことがやめれなくなる。作中で語られる話…なるほど主人公の兄が開発したゲーム「ドーキンズ」や作中で語られるエドモンド・ハミルトン作の「フェデッセンの宇宙」が出てきたあたりからこの小説の終着点は見えてくる。大和田氏と奥さんの実験には、少し寂しさを覚えた。あまりにも次から次へと細かなエピソードが出て来すぎていい加減、早く結末を読ませろよとは思った。また昨今の世相も繁栄してか話自体はかなり暗め。経済崩壊やテロなど主人公たちにもいろいろな災難がふりかかるのですが、最後の方で語られる「ヨブ記」の真実と主人公たちが出した結論は、何か、自分自身を明るくさせて、凄く納得できた。オチとしては確かに神を持ち出せば何でも説明はつくが、でも理屈抜きでとにかく面白かった。よくここまでいろいろと詰め込むだけ詰め込んでそれをうまくまとめたよなと感心。小説、特にSF小説はだましてなんぼの世界であり、法螺話とはいえ、この小説には気持ちよくだまれた。

『高知・龍馬 殺人街道』 西村京太郎 (新潮文庫)
日本の洗濯を宣言した龍馬を名乗る犯人は、防衛庁への賄賂を噂される大会社の社長を東京で射殺。その後も、京都、フェリーの船中と、あたかも坂本龍馬の足跡を辿るかのように、次々と殺人を繰り返していく。必死で龍馬を追う十津川警部と亀井刑事。しかし二人をあざ笑うように、高知・桂浜の龍馬像に、犯行報告が書き込まれる。そしてネットで同志を募った龍馬は、ついに首相を標的に定めた。

『翳りゆく夏』 赤井三尋 (講談社文庫)
東西新聞社人事厚生局長の武藤は、社長の杉野に呼び出された。ライバル週刊誌の「週刊秀峰」が「誘拐犯の娘を記者にする大東西の『公正と良識』」という記事を掲載することになったのだ。抜群の成績で内定した朝倉比呂子は、二十年前横須賀で起こった誘拐事件の犯人で、逃走中に共犯の女と事故死した九十九の娘だった。杉野の命令は、朝倉比呂子を辞退させず入社させることだった。さらに、杉野は社主の命を受け、二年前の不祥事で編集資料室で干されていた梶に事件の再調査を命じる。武藤と梶は当時横須賀支局で事件を取材していた。梶は、当時事件を担当していた元刑事の井上や病院関係者、事件の関係者を探し出して取材していく。そして、いくつかの疑問から共犯者の存在を確信していく。ついに共犯者にたどり着くのだが、最終的な真相は衝撃的なものだった。犯人が明らかになっている二十年前の事件を、ちょっとした矛盾から隠れた真相を探って行く過程が見事だし、新聞記者の世界とか、登場人物のキャラクターもおもしろい。江戸川乱歩賞受賞作。一度見たものを忘れない「直感像素質」と呼ばれる特殊能力を持つ者が出てくるが、この物語では一つのエピソード扱い。魅力的な能力だけどね。びっくりしたのは、真相がかなり意外性。社長と事件の再調査を依頼する梶秀和の二人が碁を打ちながら会話をする場面の会話が面白かった。そこから、物語が面白くなっていったような気がした。

『白夜行』 東野圭吾 (集英社文庫)
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。よく練られた構想、散りばめた伏線、最初に質屋の主人が廃墟ビルで殺される事件があり、その後暫く次から次へと新しい登場人物が出てきて新しい話が語られる。各章ごとに雪穂と亮司が交互に現れ、この主人公二人については心理描写は一切なく、周りの人々が二人をみた印象しかわからない。そして、各章のたびに何年も経っており、そのたび二人は高校に行き、大学に行き、働いたり結婚したり、それぞれの人生を歩んでいるかのように見える。そんな二人の接点は中盤まで明らかにはされないが、何気ない小物や台詞やそんなものに、二人の接点が垣間見える展開、その何気なさが実にうまい。そして、いつの間にかに、それらの新しい話しや登場人物が全てどこかで繋がってゆく。この作品では心理描写がないのに、二人がどういう人間なのかがだんだんと浮き彫りになってくる。この効果はすごい。こういうやり方もあるのかと東野圭吾の筆力に、次の作品も読みたくなる。ドラマ化されたのを読後知る。主演だった電車男の山田孝之、綾瀬はるかのコンビ、どうもキャスティングが違うとイメージと感じる。

『手紙』 東野圭吾 (文春文庫)
強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。凄い作品である。日常頻繁に耳にする犯罪や殺人という言葉。その加害者あるいは被害者そしてその家族になってしまったら…どういう現実が待ち構えているか…気にながら読み進む。ここまでも社会からの迫害や差別の中で生きていかなければならないかと思う反面、それが現実。これから犯罪を犯そうとする人にぜひ読んで欲しい作品である。自分でも、差別してはいけないと頭では分かっていても、生理的に差別してしまうような気がする。それが現実だから

『透明人間の告白』 H.F.セイント (新潮文庫)
凄腕の証券アナリスト,ニック・ハロウェイは,ある日,取材にいったハイテク機械の事故が原因で透明人間になってしまう。それからというもの人生が一転し、秘密警察に追われる日々となる。最初は、正直、面白くなかったが、ニックが透明人間になった辺りから、興味を引かれ面白くなる。透明人間のリアルな描写、主人公の気持ちをとても丁寧に描かれ、感情移入もしやすいので読みやすい。透明人間といえども、体が透明になっただけのただの人間だから、当然、腹は減る。腹が減ったら何か食べのだが、食べ物も透明じゃないから、食べてしまうと、胃の中の消化工程がつぶさに見えてしまう。外へ出るに出られず困り果ててしまうニック、虚構の世界とはいえ、かなりのリアル。誰もが透明人間になったらと考えるけど、食事・買物・生活費等々、透明な人生は決して楽では無いことをリアルに教えてくれる。本の雑誌が選ぶ過去30年間ベスト30の1位らしいが、透明人間になったらどうなるかの想像力が凄いので、この評価に納得。

『不信のとき』 有吉佐和子 (新潮文庫)
妻にはないマチ子の淑やかさに浅井は惹かれていく。マチ子は子供を産みたがっていたが、浅井はあくまでも遊びのつもりだった。一方、初老の小柳は未成年の愛人に翻弄されていた。そして、不妊のはずの道子が妊娠した時、すべての歯車が狂い始める。浮気が発覚して狼狽する男の愚かしさと、愛が憎しみに変貌した時の女の凄絶な執念。不信にみちた男女の相克を描く長篇小説。色男ぶって、いい気になって女遊びをしていた男たちがギャフンと言わされる話し。かなりの笑い話し。テレビ化された時に観ていたけど、著者の人間観察眼の鋭さが随所に光り、リアリティを感じる。愛人と子供の存在が妻にバレてどうなるかと思いきや、浅井が先天性無精子症だったという、素晴らしいどんでん返しのアイデァ。さらに、うまくやっていた小柳老人までが、妻に捨てられるという不幸なオチ。やはり、戯れに恋をしてはいけないのか。そしてタダより高いものはない。マチ子は初めのうち浅井に何も求めなかったのに、浅井の方がそんな彼女に気を良くして、責任を持つなんて言ってしまったものだから、結局、追い詰められることになってしまう。女は馬鹿ぽくみえるけど、甘く見ない方が身のため…

『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン (角川文庫)
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く…。世界中でベストセラーになっていることに納得。上中下の三巻をあっという間に読んでしまった。本当に面白かった。テンポがよくて、間延びする退屈な部分がない。芸術、宗教、文化、歴史に関する講義。キリストがマグダラのマリアと結婚していたとは… 随分専門的な話を、本当に詳しく記述している。しかもわかりやすいけど、内容は、衝撃的。ダン・ブラウン自身が、巻頭で「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実にもとづいている」と言っているだけに、リアリティがあり過ぎ。ルーブル美術館に行ってみたくなった…

『飼育する男』 大石圭 (角川ホラー文庫)
水乃玲奈は27才。かつては女性ファッション誌の売れっ子モデルだったが、今はモデルの仕事を辞めて、大手広告代理店に勤務する35才の夫と4才の息子の3人で郊外の住宅街に暮らしている。モデルを辞めて5年近くがたつが、彼女は今も充分に美しいし、スタイルもいい。もちろん、現在の生活にまったく不満がないわけではないし、早々とモデルを辞めてしまったことを後悔していないわけでもない。だが、母として、妻として、玲奈はそれなりに幸せな日々を送っている。そんな夏のある朝、自宅に宅配便業者を装った男がやって来る。男は伝票にサインをするために身を屈めた玲奈の首筋に、突然スタンガンを突き付ける。気が付くと、玲奈はコンクリートに囲まれた密室に置かれた鉄製のベッドに、全裸で縛り付けられていた。やがて、ノックが聞こえ、部屋に男が姿を現わす…というふうに始まる、何人もの女性をコレクションする男の話し。物語の舞台はいつもの湘南ではなく、千葉県の房総半島。映画「コレクター」の例を持ち出すまでもなく、ごくありふれた内容だけど、最後まで飽きずに読んだ。ラストは、ありきたりなラストではないところが良い。

『奇跡の人』 真保裕一 (新潮文庫)
主人公相馬克己は、交通事故で重傷を負ってしまった。脳死直前という状態から、克己は奇跡的な回復を遂げる。克己の母は、あなたは奇跡の人なのだ、と日記に記す。8年という歳月を経て、克己はついに退院の日を迎えた。この時、克己は31歳。しかし、事故に遭う以前の記憶が、克己の脳裡から欠落していた。まったくの白紙状態から、克己の第二の人生が始まる。克己の行動は、純粋に「会いたい」気持ちの表れではあるのけど、あまりにも勝手な行動で相手の立場というものを考慮していない。克己を応援したい気持ちが、急速に萎えてくる。ラストは、感動的というより、なんでという感じ。果たして奇跡は二度起きるのだろうか。どうして、そこまでするんだろうと考えてしまうが…○子さん…

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』 J. K.ローリング (静山社)
魔法大臣はコーネリウス・ファッジからルーファス・スクリムジョールに変わりファッジはマグルの首相との連絡係となった、その頃ナルシッサ・マルフォイとベラトリックス・レストレンジはセブルス・スネイプの所に訪れ、ナルシッサはスネイプと破れぬ誓いを結んだ。ハリー・ポッターは夏休みにダーズリー家に帰省していた。ハリーを迎えに来たアルバス・ダンブルドアからシリウス・ブラックの遺言が見つかり、全財産をハリーに譲るものだったハリーはブラック邸と屋敷しもべのクリーチャー(バッグビークはルビウス・ハグリッドに譲る)を相続することになった。ハリーは隠れ穴に行く途中ホラス・スラグホーンをホグワーツ魔法魔術学校の教諭になることを説得することに成功させた。そしてジミーとハリーは付き合いだす… 第4巻「炎のゴブレット」から上巻は何となく読むのが退屈で、下巻になると物凄く盛り上がるパターンが続いたけど、今回もそんな感じ。ハリー達も色々と大人になったな〜と思うと、感慨深いものがあった。最終巻の第7巻は面白くなりそうと思えるラスト。「謎のプリンス」、ハリーは生き残れるのか、スネイプはどっちの味方か、R・A・Bとは誰、ダンブルドアは本当に死んだのか、ヴォルデモートと最期の戦いは…今から楽しみ。ちょっと推理してみる。スネイプが裏切ったとは考えずらい。その理由はスネイプがリリーを好きだったからではないかと思う。まず第一に、リリーはスネイプをかばってくれていた。第二に、ハリーの悪口を言うときに、ジェームズのことは言っても、リリーのことは言っていない。ハリーが外見がジェームズそっくりといっても、スネイプだけが母親そっくりの目には触れていない。そして、「なぜあの記憶を残していたのか」ということ。自分の最も嫌いな人から受けた屈辱の記憶を普通ならばさっさと忘れてしまいたいものなのに、なぜ残しておいたのか? それはやはり、リリーが自分をかばってくれた記憶だったからでは。その記憶が大切だったからではないだろうか

『神はサイコロを振らない』 大石英司 (中公文庫)
かつて、忽然と消息を絶った報和航空四〇二便YS‐11機が突如、羽田空港に帰還した。しかし六十八名の乗員乗客にとって、時計の針は十年前を指したまま…。戸惑いながらも再会を喜ぶ彼らと、その家族を待ち受けていた運命とは…。歳月を超えて実現した愛と奇跡の物語。墜落事故で全員が死亡だと告げられた遺族は、それぞれの10年間があり、再婚した人、離婚した人、必死に子供を育ててきた人…。それとは対照的に、普通にフライトを終えて羽田に到着すると10年後だった乗客。乗客1人ひとりと、その家族や恋人たちにはそれぞれの人生があって、再び消えてしまうまでの間の出来ごとが、事細かに描写されている。誰かが主役というわけでなく、それぞれの違った人生が絡み合っているところが、面白い。ただ、あちこち手を広げすぎた挙句、最後は収集つかなくなってバタバタと適当に始末を付けた様な印象がぬぐえない。殺人、飛び降り自殺、強盗犯の立籠りなど、物騒で内容的にもたいして練れていない事件を起こす必要があるのか。

『1リットルの涙』 木藤亜也 (幻冬舎文庫)
15歳で原因不明の難病・脊髄小脳変性症を発病し、昭和63年に25歳の若さで亡くなった木藤亜也の自らの決心、自分への励まし、反省、感謝の言葉など、手が動かなくなるまで書き続けた日記をまとめたもの。「もし自分が彼女の立場だったら…」と思うと、同じように日記に残すほども前向きにいられただろうか。正直、前評判が良く、期待して読んだ割には、あまり感動しなかった。ただ、病気に立ち向かい、一生懸命頑張って生きていこうとする事は凄いと思った。子供の頃、足が動かなくなった時があった。母におんぶされて病院に行ったのだが、足を切られるのではないかと、物凄く恐怖を味わった。でも、木藤亜也は治療法のわからない病気でも前向きに生き抜いた。そう考えればあらためて凄さがわかる。1リットルの涙を読んで、生きている素晴らしさ、命の大切さを感じた

『模倣犯』 宮部みゆき (新潮文庫)
公園のゴミ箱から発見された女性の右腕、それは史上最悪の犯罪者によって仕組まれた連続女性殺人事件のプロローグだった。比類なき知能犯に挑む、第一発見者の少年と、孫娘を殺された老人。そして被害者宅やテレビの生放送に向け、不適な挑発を続ける犯人。が、やがて事態は急転直下、交通事故死した男の自宅から、「殺人の記録」が発見され、事件は解決するかに見えたが、そこに、一連の凶行の真相を大胆に予想する人物が現れる。死んだ男の正体は? 少年と老人が辿り着いた意外な結末とは? 宮部みゆきが犯罪の世紀に放つ、渾身の最長編現代ミステリ。文庫本全五巻読み終わる。物語は三部構成になっている。第一部では、事件の発端から表向きの終結までが、例えば、警察、被害者の家族、発見者といった、つまり事件の外堀を取り囲む側の視点から語られてゆく。第二部では、一転、同じ事件が犯人の側から語られる。そして第三部で、実際は終結していなかった事件のその後が、最終的な結末まで語られてゆく。孫娘古川鞠子を失った有馬義男、ある事件のたった一人の生き残り塚田真一、 失踪女性のルポを書く前畑滋子、日本そば屋「長寿庵」の娘高井由美子、彼ら一人ひとりが事件にかかわり、犯人との接点があり、いたるところに伏線がありで、物凄く面白いミステリーだと思う。惜しむらくは、あれだけ完璧な犯人が、最後はこれかよという結末。まあ、結末を迎えるTV局でのやりとりは鳥肌モノではあるが。犯人側の事情、被害者の事情、そして、犯罪を犯してはいないのにそれと同等の扱いを受けざるを得ない、犯罪者の家族、それぞれの、立場と心、抜群のストーリーテラーであり、人情を描かせればピカイチの筆者に感動してしまった。「模倣犯」というタイトル、前半はどういう意図からかつかめず、 「まさか、この今起こってる事件の模倣犯による別の事件が後半起こるんだろうか?」と危惧していたが、まさに最後は納得。犯罪を模倣する、その神経も十分不可解だが、この作品の犯人のもつ「オリジナリティ」へのこだわりの強さ、そしてその異常性が読後あらためてタイトルを見た時、実に鮮やかに浮かび上がってくる。印象に残った言葉は「本当のことは、どんなに遠くに捨てられても、いつかは必ず帰り道を見つけて帰ってくる」

『亡国のイージス』 福井晴敏 (講談社文庫)
海上自衛隊のイージス艦「いそかぜ」の宮津弘隆副長は某国工作員のヨンファと結託、艦長を殺害し訓練中の艦を乗っ取る。彼らは一リットルで東京を壊滅させる毒ガス兵器「GUSOH(グソー)」の照準を首都圏に合わせたと日本政府を脅し、要求を突きつける。防衛庁情報局(ダイス)の渥美大輔内事本部長らが解決に当たるが、最新鋭の防空システムを持つ「いそかぜ」を前になす術はない。そんな中、艦の構造を知り尽くす先任伍長の仙石恒史は「いそかぜ」を取り戻すべく、謎の乗員、如月行一等海士とともに、敢然とテロリストに立ち向かう。前半は、登場人物が多いこともあり、登場人物を覚えるのが大変。しかも、武器・戦闘機についての詳細な記述が随所にあり、この分野には全く興味がないので、目が文字を追っているだけで、退屈だったが。それでも、魅力的な登場人物の熱い男たちが行き着く先を見届けたいという思いで、途中で投げ出すことなどできなくなる。特に、先任伍長の仙石恒史と如月行。後半は一気にストーリーに惹かれて読み進む。ラストは、凄い感動を受けた。人物の心情表現も熱い台詞がなかなか良い。登場人物が滅茶苦茶多いのに、こんなに皆に感情移入できるって凄すぎ、傑作だな。

『新・世界の七不思議』 鯨統一郎 (創元推理文庫)
来日中のペンシルベニア大学教授ジョゼフ・ハートマンは、古代史の世界的権威。シンポジウムが終わり、あとは観光がてら京都などを廻って帰国するばかりとなった。しかも同業の早乙女静香が案内してくれるという。明日からの周遊を控えた月曜の夜、静香に連れられ、やってきたのは場末のバー。くたびれたスーツの客がたった一人、とぼけた顔のバーテンダーに酒と料理は期待できそうもない。早々に退散しようと決心したジョゼフだったが、ギムレットの味に気を取り直しているうち、否応なく話に巻き込まれてしまう。内心ため息をつきながら聴いていると、冴えないサラリーマンと見えた男・宮田六郎が、アトランティス大陸に関して静香と真っ向から切り結び、論戦を押し気味に進めていく。歴史の知識において丸腰同然の男・宮田が、完全武装の才媛から飄々と圧倒的なアドバンテージを奪ったのである。しかも、 アトランティス大陸、ストーンヘンジ、ピラミッド、ノアの方舟、始皇帝、ナスカの地上絵、モアイ像と、幾つもの世紀を超えてきた不思議を解く宮田の論理に魅了されていく。「邪馬台国はどこですか?」が面白かったので続編の本作も面白いのではと思い読んでみたが、中々、静香の鋭い毒舌攻撃に、宮田が飄々と一見突拍子もない推論が繰り広げていく。ただ、「邪馬台国はどこですか?」ほどの説得力は感じられず、「そう来るか」という感じ。謎のスケールが格段に大きくなった分、謎の解明も大味になってしまったような感じ。面白かったのは、「始皇帝が暴君だった」いう常識の検証。

『ハサミ男』 殊能将之 (講談社文庫)
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯・ハサミ男。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。ハサミ男は調査をはじめる… まず、わたしとは何だろうとし思い、最初は医師がハサミ男と思ったのだが、医師は現実の人間なのかも気になり、それにしては日高は教師や被害者家族にそんなに不審かられないのも不思議に思ったり… 終盤になると訪問者によってハサミ男の正体がわかる。文章が読みやすいと思っていたのに、俺は何を読んでいたのか… 衝撃の事実。何度も、読み返すのだが、作者に完璧に騙された。そもそも、男女の体重に関する感覚の違いから、読者の誤解がはじまったような… そして真犯人は… 何となくおかしいと思っていたのだが。まんまと作者の術中にはまってしまう。読み返してみてなるほどと感じる。いたる所に伏線も張られて、小説ならではのうまさを感じた。読み進むにつれて、疑問点が解消されて、さりげない伏線に、読者は騙されていたと感じる。「仕掛けがある」とわかっていても見事に騙される快感を味わえた。

『火の粉』 雫井脩介 (幻冬舎文庫)
怖い。後半になればなるほどスリル感満点。それに文章もうまい。とにかく続きが気になり、ページをめくらずにはいられない。閑静な住宅街に住む元裁判官・梶間勲。ある日隣りに昔自分が受け持った裁判で死刑かと思われた一家3人殺害事件を無罪にした元被告人・武内真伍が引っ越してきた。再会を喜ぶ元被告人っだったが、それからというもの小さな問題は抱えてはいるが平穏だった家庭が、音もたてず、自分も気付かない内に静かに静かに崩れていく。手を打とうと思った時にはもう遅い。全てが狂った後だった。徐々に明らかになっていく隣人の素顔。気付いたときには…。最初「判決」で始まる小タイトルが、最後も「判決」。物凄く意味深。小タイトルだけを追いかけて想像しながら読んでいたが、次の展開が読めなかった。最後の「判決」はもとより、「不帰」「性癖」等。

『廃用身』 久坂部羊 (幻冬舎文庫)
漆原医師が、デイケアを開始する。そこにやってくる老人は、皆片麻痺や痴呆(現在は認知症)の為に生活に障害を持つものばかり。家庭での介護という死角に飛び込んでいく医師。そこには想像を超えた悲劇がある。介護によって精神的に追い込まれた介護者がとった行動は、「虐待」であった。更に家族のみならずサービス事業者による虐待についても触れる。そこで主人公の医師は、「Aケア」を考案する。これは、廃用した四肢を切断するというもの。医学的倫理や実際行う医師たちの葛藤が描かれている。すぐそこにある、家族と医療の現実を予言する、衝撃の極近未来小説。そして、危険な橋を渡りながらも、「Aケア」は目に見える効果を表し始めるが…。残酷で猟奇的でグロテスクな感じだが、徹底的にリアルな小説。「編集部注 封印されたAケアとは何だったのか」を読むと、さらにリアル化。実際に自分はこの小説はノンフィクションだと思っていた。確かに、介護は本人、家族・身内に負担が多い。回復の見込みのない手足が手足を切る事により、本人は身軽になり廃用身に対する嘆きが吹っ切れる、廃用身の痛みや疼き、だるさなどが消えて確実に負担を減らせ、介護する者にとっては、鉤状に固まった手が着替えで引っかかったり、体重が重く介護の邪魔になりやすい(介護して腰痛持ちになる事もある)。負担を減らせる。しかも、言語障害や痴呆の改善にも役に立っている。「心臓は手足に血液を送る必要がない分、余力があり、その血を脳に回せば、脳はより血液の供給を受けやすい」と言われれば、説得力がある。無意識にこういう小説は距離を置きたがるが、近い将来、現実に起こりうるものなのかも。理性ではわかっていても、だれもすぐに対応できるような簡単な問題じゃない。どんどん膨れていく高齢者人口、どうするんだろうと誰もが密かに見てるだけで、誰も問題定義しない現状ではないだろうか。作者は現役の医師であるが、こういう治療法もあるのではと、投げかけてくる。残酷な治療法ではあるけど、何もしないのも(何も出来ない)のも、ある意味、残酷なんだよな。手足を切る医師と、圧倒的な影響力で人を追いつめるマスコミ、どちらがより犯罪的か、考えさせられる。興味を持ったのは「お年寄りが病院に行きたがるのは、医者が不安を煽るから。新しい老人医療は、お年寄りの安心を保障すること」。医師が死んでいる事も衝撃的だったけど、家族に虐待されていたAケア患者が家族を残酷に殺人し自殺する。殺し方も戦慄する。妻の顔に手提げ金庫を投げつけるのは、何とも陰惨的。そして医師は失踪して「頭はわたしの廃用身」と遺書を残して、電車に頭を切断されて自殺する。

『脳男』 首藤瓜於 (講談社文庫)
ある地方都市でおきた爆破事件で、巨漢の茶屋刑事は容疑者・緑川を特定し、ヤサに踏み込むが、そこで緑川と格闘する鈴木一郎を発見する。緑川を取り逃がしたものの、鈴木を逮捕。何故、犯人の緑川とこの男は一緒に現場に居たのだろうか。取り調べで何の語らない鈴木は精神鑑定に回される。前半から中盤過ぎまでは「脳男」が形成される過程が描かれ、終盤は爆弾犯との対決のまわるという構成。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとする。そして、鷲谷真梨子と茶屋は衝撃の真実を知る。全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞。爆弾を仕掛けた緑川を追いかける話しかと思ったら、感情を持たない男・鈴木一郎の話し。コンピューターのような頭脳と並外れた運動能力をもちながらも自我に苦悩する主人公の姿には、斬新さが感じられた。意味深な最後が続編を期待させるが、シリーズ物としても面白いと思う。残念なのは、ストーリー的には面白かったが、あまり文章が上手くないような。動きの部分の説明が、わかりづらい。エアシューターを使った爆弾の輸送、緑川の変装、ヨハネの黙示録というアイデアは面白いと思った。それにしても、珍名さんが多すぎ。

『バッテリー』 あさのあつこ (角川文庫)
?では、中学入学を目前に控えた春休み、岡山県・新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持ち、それゆえ時に冷酷なまでに他者を切り捨てる巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むところまで。天才ゆえに野球に対してストイックで協調性のない強烈な個性の主人公の、個性のままに小説で描いており、しかし中学入学前の心のコントロール出来ない少年ぽい不器用な一面もあり、普通なら共感できない主人公に嫌悪感を持ちながら読む進むのだが、不思議とそんな感覚もなく惹かれるように読ませてしまう。?は、中学生になって、野球部に入部した巧。戸村監督の強硬な徹底管理の下の指導に我関せずの巧。そして流れ作業のように部活をこなす先輩部員達。そんな巧に、怒りと嫉妬心から上級生の展西たちは陰湿なやり方で制裁を加える。そして、今度は一部始終を知っている巧の同級生が狙われる。寸前のところで巧たちが助け出すが、同時に戸村監督と小野先生に見つかり事件が公になってしい、野球部は… ?より文章力がついた感じ。ふと、あだち充みたいなマンガぽい小説という感想。?は、活動停止処分が解けた野球部で、部活が開始された。監督のオトムライは3年生対1年生の紅白戦を行うことを命じた。1年生のバッテリーは巧と豪。この紅白戦が盛り上がる。するどい観察眼と戦略勘を持った知将・野々村が良い味を出している。天才ピッチャー巧の球がうなりを上げる。この試合で、因縁のある展西たちが野球部を去り、未だ残る校長の部に対する不信感、対外試合も出来ない状態に。自分たちで、何とかしようと思い立った海音寺キャプテンは名門横手中のキャプテンでありスラッガーの門脇に試合を申し込む。この門脇が物凄いキャラ。天才同士の対決が良かった。しかし、最強と思えていた巧と豪のバッテリー、しかしこの二人の関係がもろくも崩れる出来事が起こる。すぐに?を読みたいのだが、?からはまだ文庫本化されていないので、単行本を買う。?では、ピッチャー原田巧とキャッチャ―永倉豪の葛藤の話し。巧が崩れたのはすぐに分かったのだが、どうやって崩れたのが、ストーリー的にじらされる。強打者・門脇を力でねじふせた巧だが、その後連打をあびる。門脇を三振にとった最高の球を取ることだけに集中していた永倉豪は集中力を失ってしまう。新キャラの瑞垣俊二が良い味を出している。幼馴染である天才バッター門脇の才能を羨んだり妬んだりする複雑な内面を持ちながらも巧との才能の差を改めて見せつけられている豪に、さらにプレッシャーを掛ける瑞垣。残酷のようで、ある意味、少年らしいような… 巧の才能を誰よりも理解している豪だからこそ、抱えてしまった不安。それは、瑞垣にも共通する悩みなのかも。?では、巧と豪の関係は明らかな変化の話し。豪は再びミットを構え、巧と向き合う。「なにがほしくて、ミットを構えてんだよ」巧は豪に問いかけた。瑞垣の存在が、何か不気味に思えた。?では、海音寺や瑞垣の努力で、新田東と横手二中の試合が実現する事に。門脇は巧の球を打つことのみに集中し、それを想定した練習を繰り返す。一方、どんな打者が来ても打者は打者、バッターボックスに入った人間相手に最高の球を投げるのみと言い切る巧。そんな巧に、海音寺は「おまえ、負けるぞ」と言う。最終章、中々の出来。清々しい終り方… 巧や豪の葛藤も結局中途半端なまま終わってしまったようだけど、巧と豪に海音寺が投げかけた、「原田以外のピッチャーとでも、バッテリーを組めるか?」「原田は、永倉がキャッチャーでなくても投げられると思うか?」という問いは二人とってはとても重い問いかけ。果たして、試合の結果は、門脇の対決は…どうなったのだろうか…と言うより、巧と豪の今後は…ろうか…に興味がある。

『リアル鬼ごっこ』 山田悠介 (幻冬舎文庫)
時は30世紀。国王と同じ苗字を持つというだけで追われることになった大学生・佐藤翼。国王はある日突然、7日間にわたる大量虐殺を決行した。捕まれば抹殺、逃げ切れたら…「死の鬼ごっこ」の恐怖の中、生き残りを誓う翼の眼前で殺されていく父や友。陸上選手の翼は、幼い頃に生き別れた妹を探し出すため死の競走路を疾走する。奇抜な発想で読む気にさせられたが、文章が素人ぽい。ラストもだいたい想像できたけど。少しバトルロワイヤル的な感じもしたけど、全然、ホラーっぽくないのは…

『僕の彼女を紹介します』 クァク・ジェヨン (角川文庫)
勘違いの逮捕で出会った、女巡査ギョンジンと、高校教師ミョンウ。恋に落ちた二人の幸せな日々に、相手を思いやるがゆえの悲劇が訪れる。悲しい運命の定めに、二人の強い愛が起こした奇跡とは… 前半はギョンジンによる無鉄砲な行動で笑わされ、後半は一転したラブストーリー。読みやすかったが、会いたい一心で自殺しようとするが、中々死ねない。あまりにも出来すぎ。しかも、紙ヒコーキまで。涙をそんなに誘いたいのかと言う気持ちで読まないと、正直ついてゆけなかった。最後、やっとタイトルの意味の深さに気づく

『血と骨』 梁石日 (幻冬舎文庫)
ビートたけしが主演した映画なので、原作を読んでみた。1930年頃、大阪の蒲鉾工場で働く主人公・金俊平は、その巨漢と凶暴さで極道からも恐れられていた。女郎の八重を身請けした金俊平は彼女に逃げられ、自棄になり、職場もかわる。さらに飲み屋を営む子連れの英姫を凌辱し、強引に結婚し…。実在の父親をモデルにしたひとりの業深き男の激烈な死闘と数奇な運命を描く衝激のベストセラー。文章的に粗い部分もあるが、波乱万丈、主人公の修羅のごとく進むストーリー、ケンカ相手の耳を噛みちぎる迫力ある乱闘シーン、大酒を飲んで家族を虐待し、信じられないくらいの荒れ放題。その父・俊平を憎みながらもどこかで愛している息子と、自分の思うような人間に育てられなかった父との運命的ともとれる激しいぶつかり合い。「血は母より、骨は父より受け継ぐ、お前はわしの骨だ」という父の言葉は、深くこの物語に父と子の葛藤を表す。壮絶な生き様に果てはどんな最後を迎えるのか気になって読みふける。絶対に、殺されるかと思えば…

『黒革の手帖』 松本清張 (新潮文庫)
ドラマを見て、本を読み出した。勿論、結末は知っているけど、それが原作だとどうなるのだろうかと興味深く読んだ。原口元子は帳簿管理も任されるベテラン銀行員。しかし、便利に使われるだけの女子行員の生活に嫌気が差し、その知識と経験を基に大金の横領を図る。その横領も支店長の藤岡と次長の村井にばれてしまうが、そのあとは銀行の架空名義預金者リストを元に二人を脅迫、横領の罪を問わないという念書を得る。そして元子はその資金で銀座にクラブをオープン。さらにクラブの顧客の脱税や裏口入学斡旋の弱みを握って金を出させてのし上がっていこうとするが、元子の行き先には思わぬ落とし穴が待っていた。それにしても、夜の世界・銀座は読みながら、接したいような気分にさせられる。しかしなから、元子はちょっと考えが甘すぎやしないかとか、強引過ぎないかとかと気になる部分も目につくが、後半から最後にかけての展開は、一気に読ませるだけのテンポが良い。ドラマの方も結末はなかなかドキドキしたけど、信頼や愛情があったという点、堕ちて這い上がったという点では救いがあったけど、原作は容赦ないですね。どこにも救いは見られない。

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 上下巻』 J.K.ローリング (静山社)
15歳のハリー・ポッター、突然、吸魂鬼に襲われ、「不死鳥の騎士団」に助けだされる。この不死鳥の騎士団がこの巻の物語の軸になるかと思ったが、それほどでもない。新学期が始まり、恐ろしい新任教授アンブリッジと黒い扉の夢に悩まされ続けるハリーに、チョウチャンとの恋愛が… 額の傷痕はますます激しく痛み、今までとは違うなにかを告げていた。夜な夜な夢にうなされるハリー。実はこれが… そして、ダンブルドアから明かされる真実… 十五年前になにが起こったのか? 感想として、今回はそんなに面白いとは思えなかった。どうも前回より、成長しているハリーなのだが、チョウチャンとの恋愛をはじめ、どうもはがゆい。最後のダンブルドアとの会話でも、なぜそんなに苛立っているのだ。神秘部のあたりから盛り上がってきたようだけど。しかし、今まであったあっと驚く真実が全く無い。一巻ではクィレル、二巻ではリドル、三巻ではシリウス、四巻ではムーディと、それぞれ見た目とは違った事実が隠されているキャラクターが毎回一人はいたのに今回は肩透かし。今まで読んでいたら、実はアンブリッジは…と、予想外の人物だったとかあると思っていたのだが。今回はネビルが意外にも活躍していた。ジニーも意外にも知的な女の子ぽくなったし。トレローニー先生って、意外にも凄い人だったとは。脇役の今後の活躍を期待したい。ダンブルドアとヴォルデモードとの一騎打ちには、迫力があった。本当に、シリウスは死んだのか。ベールをくぐっただけで、本当に死んでしまうか… 謎がありそう。

『アントニオ猪木自伝』 猪木寛至 (新潮文庫)
少年時代のブラジル移住、力道山にしごかれた修業の日々、モハメド・アリ戦をはじめとする異種格闘技戦、結婚と離婚、独自の「猪木外交」を展開した国会議員時代、金銭トラブル、引退と新団体旗揚げ…。日本プロレス界の顔・アントニオ猪木が、初めて肉声でその波瀾の半生を語り尽くした、決定版自伝。アリ戦や新日大黄時代など、懐かしく読んだ。力道山との関係、新間との関係、暴露本のように書かれているが、ファンならなるほどと思わせ、ファンじゃないと言い訳の為に書いたのでは…と、思わせる程の本音の自伝。検察庁で疑っている検察を殺そうと思ったり、後継者だと考えなかった藤波、ジャイアント馬場への嫉妬… 書かれた人間には「何を書いてんだか」と文句が出そうだけど、本音が通るというのが、強いという事なのかも…

『人間の証明』 森村誠一 (角川文庫)
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」西条八十の詩集をタクシーに忘れた黒人が、ナイフで刺され、ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で死亡した。棟居刑事は被害者の過去を追って、霧積温泉から富山県へと向かい、ニューヨークでは被害者の父の過去をつきとめる。日米共同の捜査の中であがった意外な容疑者とは…  全然、違う事件や人物が最後には一つ残らずつながる。展開のうまさを感じた。

『動かぬ証拠』 蘇部健一 (講談社文庫)
新しい推理短編集。犯行は完璧だったが映像や音声を駆使した画期的アリバイ工作の落とし穴。周到な犯人が見落とした想像を超えるダイイング・メッセージの数々。いずれ劣らぬ完全犯罪が思いも寄らない1点から破綻する。その決定的瞬間をラストのイラスト1ページにとらえ、究極の証拠を一目瞭然で明かすかつてない本格ミステリ。オチはともかく、半下石警部と山田刑事の掛け合いにハマり、ついつい読んでしまった。

『死にぞこないの青』 乙一 (幻冬舎文庫)
何事にも自信のないマサオ。集団の中でうまく自分を表現できず、注目を極端に嫌う。そんなマサオに目をつけた担任の羽田先生はマサオをターゲットにし、陰湿ないじめに走る。生徒達も大好きな先生に逆らえず、雰囲気にのまれてマサオを無視し始める。そんなある日、マサオに「死にぞこない」の男の子が見え始める。真っ青な顔面、片耳はそげ落ち、靴ひもで縫い止められた切り裂かれた口、気持ち悪そう…。マサオは家族にも心配かけてはいけないと悩みを相談することもせず、友人たちのことも踊らされているだけ、本当はいいやつだって知ってる。と、あまりにも健気に一人で耐える。理不尽な扱いを受けても、先生の言うことが正しいと思ってしまう描写、なかなかうなづけてしまった。理科室のシーン、本当に実際の学校でもありそうな…

『指先の花 映画 世界の中心で、愛をさけぶ 律子の物語』 益子昌一 (小学館文庫)
「どうしてかなぁ、眠れないの。…明日が来るのが恐くて眠れないの…あたし、もうすぐ死ぬと思う」。結婚を目前に控えながら婚約者に心の空洞を感じている律子が見つけたカセット・テープには、こんな少女の声が残っていた。テープのラベルに記された日付は「'86/10/28」。この日は律子の母の亡くなった日でもあった。何かに突き動かされるように幼少期に育った四国の町へ赴いた彼女は、ある真実に辿り着く。180万部突破のベストセラー「世界の中心で、愛をさけぶ」のその後の世界を描いた映画版をノベライズ化したもの。原作の方が良かったような気もする。朔太郎と律子と出会いからしてご都合主義。律子は朔太郎の死んだ恋人アキの録音したカセットテープを朔太郎に届けていた少女で、二人はそのことを知らぬまま付き合っていて、しかも、律子が四国に行っているのをテレビで見ており、それを追いかけてゆく朔太郎とくる。何か、リアリティーに欠ける。途中の律子の学校のシーンからは、読んでいて律子の夢の中か幻想かと思ったぐらい。最後の文章が良かった。「人を愛するってこと。それは、ともに世界の中心をつくり上げてゆくことなのかもしれない」

『世界の中心で、愛をさけぶ』 片山恭一 (小学館)
主人公は高校2年生の朔太郎。物語は同級生で恋人アキの死から始まる。そして生前の彼女との思い出を回想するように、二人の出会い、放課後のデート、恋人の墓から遺骨の一部を盗んだ祖父の哀しくユニークな話、二人だけの無人島への旅、そしてアキは白血病に。死を予感した二人は、アキの憧れの地・オーストラリアへ行こうと病院を抜け出す。が、空港でアキは倒れてしまい、まもまく短い生涯を終える。そんな彼女の死までのストーリーが語られる。朔太郎とアキの恋はおそろしく純粋。おそらくは誰もが一度は経験したことがある純粋な思い。アキといる時の朔太郎が幸せ過ぎると思うから、朔太郎の喪失感が大きいのだろう。アキの死から十数年が経過した今も粉状になった彼女の遺骨の一部を小さな硝子瓶に持ち続けていた朔太郎は、新たな恋人とともにアキとの思い出が詰まった郷里を訪ねる。そして「アキの死」が残したものの大きさを感じながら、二人がかつて一緒にいた郷里の学校のグラウンドで静かに骨を撒く。「喪失感」から始まる魂の彷徨から、未来を感じさせる後味の良い物語だった。しかし、「泣きながら一気に読みました」という本の帯の紹介で読んでみたけれど、そんなに泣けなかった。文章は下手じゃないですけど話が正直、ありきたり。

『解夏』 さだまさし (幻冬舎文庫)
東京で教師をしていた隆之は、視力を徐々に失っていく病におかされ、職を辞し、母が住む故郷の長崎に帰った。そこへ東京に残した恋人の陽子がやってくる。この先の人生を思い悩む隆之。彼を笑顔で支えようとする陽子。ある日、二人はお寺で出会った老人から「解夏」の話しを聞く。「失明した瞬間に、失明する恐怖から開放される」。目が見えていても、ちっとも見えていない人もいる。隆之は目が見えなくなったが、きっと今まで以上に、あるいは今まで見えていなかったものが、見えてくる人生が始まるような… 表題作以外にも感動的な短編小説があった。フィリッピン女性が農家に嫁ぎ、頑なな姑と最後に心が通じ合う「秋桜」、ダムに沈んだ村で兄妹みたいに育った男女が、数奇な運命を経てふたたびめぐり会う「水底の村」、痴呆の始まった老父を抱えて崩壊寸前の家族が父の想い出の家を訪ねて行く「サクラサク」の3編。情景が浮かぶような文章力、こういう話しはいいんだけど、この次の展開は…と、思った時に物語が終わってしまうので、色々と想像力は膨らんでゆく

『よく見る夢』 シドニィ・シェルダン (アカデミー出版)
アシュレー、著名な心臓外科医師の父を持ち、その父に同じ会社に勤めるボーイフレンドとの交際を反対されている。トーニ。陽気でいたずら好きで大胆で歌が好き、インターネットで知り合ったボーイフレンドがいる。アレット、恥ずかしがり屋で絵を描くことが大好きで、若い画家のボーイフレンドがいる。生まれも育ちも違う3人が同じ街に住み、同じ職場で働いている。そして彼女たちのボーイフレンドが全く同じ手口で惨殺される。3人を繋ぐ謎の糸が解けた時、明らかになる真実とは? 肉親の異常な嫉妬心か、毒婦の執念か? きらびやかな都会の夜に起こる猟奇事件を描くサスペンス。前半で、掟破りのまさかのオチがわかり、どうなるかと思ったが、中盤は裁判、後半は精神病院と舞台が移り… 最後は何かあっけなかった。

『秘密』 東野圭吾 (文春文庫)
妻・直子と小学5年生の娘の藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜に、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。ありふれたSF小説ぽいストーリーなのだが、事故の原因を探ったり、補償金の交渉があったりするが,そう事件が起こるわけではない。こうしたシチュエーションから、主人公の父親の杉田平介と娘の藻奈美、夫の杉田平介と妻の直子、ただ日常の感情の一つ一つが、常に二重の意味を持つ。人生をやり直すことになった直子は、もっと勉強がしたいと言い出し、まず,私立中学を受験し、次いで高校も受験する。そして、中学生や高校生としての生活を送るのであるが、穏当でバランスのとれた男である平介も、次第に心穏やかではなくなってくる。少女の身体と、成熟した女性の心を持つ直子の苦しみ、愛する人を抱きしめられない、愛する人に抱かれてはならない。これ以上の切なさはない。そして、破綻が訪れる。そこでまた、新しい展開が起き、意外な結末がある。秘密というタイトルにも深い意味もある。自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ。簡単そうで、なかなか自分を納得させるのは難しい。あまりにも切ない哀しい物語…

『だめだこりゃ』 いかりや長介 (新潮文庫)
 いかりや長介の自伝、ドリフの歴史…。本は、いかりや長介が亡くなる前に買っていたのだが、他にも読みたい本があり、何か、よくある自伝だと思って、読まないでいた。改めて、読もうと思ったのは、長介が亡くなってから…。色々と興味深い内容があった。親父との思い出、ドリフターズの三大事件(火事、三人ドリフ、停電)などのエピソードも満載。それぞれの芸名をつけたのはハナ肇だったとは、意外。ドリフターズのいかりやさんは三代目のリーダーだった事や、荒井注はピアニストで入ったものの、「猫ふんじゃった」も弾けなかった事や、「へぇー」ボタンを押したくなるネタも満載。そして、全員集合が生番組のために、ネタ作りに苦心したことなど、長介のプロ根性を感じる。「8時だよ、全員集合」が、長く続いたのは、役割分担がしっかりできていたからだという。そこまで計算していたとは… 惜しい人を失くしたと、読後に実感… 

『白い巨塔』 山崎豊子 (新潮文庫)
国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎は、食道噴門癌の手術を得意とし、マスコミでも脚光を浴びている彼は、当然、次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。しかし、現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌い、他大学からの移入を画策。産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力とOB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって熾烈な教授選に勝ち抜こうとする。全5巻で読み応えがある。ちょうどフジテレビの唐沢寿明主演で放映中だったので、ドラマに追いつかれないように読み始めたが、なかなかのドロドロとした人間のエゴが渦巻き、あっという間に、どんどん読み進む。3巻で一回物語の区切りがついているとは言え、4巻、5巻と続き、5巻はそこに辿り着く布石だったと思えるほど感動的だった。作者の膨大な取材に基づく筆さばきは、医学専門用語、医事紛争裁判等、リアルな感じを受ける。大作家の大作という作品だな…

『菊次郎とさき』 ビートたけし (新潮文庫)
病床の母を見舞う道すがら、幼き日からの父母との記憶を辿る『SAKI』、お袋と言うのはどうやったって勝てないだろうな〜。人一倍照れ屋で小心者、酒なしには話も出来なかった父との思い出を振り返る『KIKUJIRO』は、お馴染みのエピソード、姉のニワトリのピーちゃんが鳥鍋になったり、兄がオヤジを轢いてしまう事件も笑えた。母の通夜後、号泣した著者が溢れんばかりの愛情でつづった『北野さきさん死去』。ビートたけしの原点ともいえる両親への思いをつづった感動と追悼の物語三作品、中々、味わいのある作品だった。

『迷宮遡行』 貫井徳郎 (新潮文庫)
デビュー二作目の「烙印」を大幅に加筆訂正したもの(約七割が新たな書き下ろし)。妻が突然失踪。夫が妻の行方を追うと、暴力団や台湾マフィアさらには大量の覚醒剤、まったく信じられない事柄が妻を中心に繋がり始める。妻の本当の姿は…。主人公の迫水はリストラされ失業中の不動産セールスマン。ハードボイルドともっともかけ離れた男が、ヤクザに凄まれればチビってしまうような非常に情けない、へなちょこな男が、愛する妻を救うために悪戦苦闘する姿をユーモアも交えて描いている。後半、迫水も成長したのか、行動力、知性も出てきたような… ラストの意外性や思い出が良い。

『バトル・ロワイアル?  鎮魂歌(レクイエム)』 杉江松恋 (太田出版庫)
今年のバトル・ロワイアルの参加クラスに選ばれたのは、問題児ばかりが集められた鹿之砦中学校3年B組。しかし、今年のBRは今までとは違っていた。BRを生き抜き、首都崩壊テロを起こしたテロリスト・七原秋也を殺すというミッション(BRII)が生徒たちに与えられた。この小説は映画をもっと分かりやすく、細かく書いてある小説。映画のシーンだけじゃわからなかったシオリの心情、拓馬のなおに対する思い、教師竹内の心境、ワイルドセブン結成話等。ラストは映画と違うが、ありがちなオチ。

『39? カルト』 永井泰宇 (角川文庫)
犯罪者の精神鑑定を担当する精神科医・小川香深に、農業共生団体の頌楽苑の苑母殺害事件の殺人犯への依頼が舞い込み、彼女は調査の為、団体に潜り込み「特修」と呼ばれる一週間の洗脳プログラムに参加する。一応、推理小説のようだが、大半は「特修」のプログラム・ドキュメント。緻密に洗脳してゆく様を克明に描かれ、本当に誰もが洗脳されてしまいそうに思えてしまう。心理学ゲームと言ったところか。

『巨人の星に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ』 堀井憲一郎 (講談社文庫)
作者が名作・巨人の星に隠されたナゾを徹底解明。「星一徹はちゃぶ台をひっくり返したことなどない」「星飛雄馬の推定年棒」「星飛雄馬のユニフォームの股間のシワがどんどん増殖していく話し」「星飛雄馬は昭和25年生まれ」など、面白く読めた。

『ボイス』 吉村達也 (角川ホラー文庫)
怖いというので、買って読んでみたが、思ったほど怖くはない。話しの内容は、ストーカー行為に悩まされていた女性記者ジウォンは、携帯番号を新しく6644に変えた。と、その日から悲鳴とも泣き声ともつかぬ不気味な電話がくるようになり、偶然それを耳にした親友(ホジョン)の幼い娘(ヨンジュ)が、怒れる女の人格に取り憑かれ、呪いの言葉を吐きはじめた。驚いたジウォンが6644の番号契約履歴を調べると、過去にその番号をもらった人間は全員死んでいた…。看護婦のエレベーター内での死爪がリアルに効果的に描かれていたり、美術館内でのヨンジュの取り憑かれぶりがよく描かれていたが、読後は携帯を持てなくなるほどの恐怖はなかった。残念ながら期待していたあまり、期待はずれ

『怪文書殺人事件』 吉村達也 (光文社文庫)
本事件の真犯人は最初から二名に絞られている。夫か?妻か?警視庁捜査一課を退職した烏丸ひろみの元に届いた怪文書は、半紙に墨で書かれた殺害予告。第一の犠牲者は別人だったが、ひろみの恐怖は消えず、彼女は氷室想介に助力を乞う。しかし、ふたりの導いた結論は正反対! 中々、面白く、最初に犯人を想定して読んでいたが、物語半ばで、その犯人が明かされる子供の返答で。それからは、氷室想介の推理、ひろみの推理に惑わされ、事実は・・・

『青の炎』 貴志祐介 (角川文庫)
母と妹との3人で湘南で暮らす櫛森秀一は普通の高校2年、17歳。ある日、突然、平和な家庭の一家団らんを踏みにじるアル中の闖入者が現れる。それは母親の離婚相手であり、血のつながらない過去の父親・曾根だった。警察も法律も家族の幸せを守ってくれない事を知った彼は、母と妹を守るために、自らの手で曾根を葬り去り、完全犯罪に挑む。ミステリーとして読むと、後半はアラが目立つが、出版当時、キレる若者、学級崩壊とかあったが、少年が完全犯罪を行わなければならなくなる現実と動機、まだまだ青い17歳の心理を見事に描いている。あくまで青春小説のように思える。心を寄せる女の子に素っ気無く接する主人公が静かに熱い炎が、赤ではなく、青というのが、青春なのか。最初の殺人シーンが読み堪えがあった。また、あまりにも賢すぎる櫛森だが、若いという青さも目立ち、ある意味懐かしく思える。ラストの彼女との会話、ラストシーン、ちょっと切ない小説になった。

『"It(それ)"と呼ばれた子 幼年期』  デイヴ・ペルザー (ソニー・マガジンズ)
「なぜ、ぼくだけがこんな目に?」―母親に名前さえ呼んでもらえない。"That Boy(あの子)"から、ついには"It(それ)"と呼ばれるようになる。食べ物も与えられず、奴隷のように働かされる。身の回りの世話はおろか、暴力をふるわれ、命の危険にさらされ、かばってくれた父親も姿を消してしまう。児童虐待の体験者がその記憶をたどることは、きわめて苦痛と困難をともなうもの。本書は、米国カリフォルニア州史上最悪といわれた虐待を生き抜いた著者が、幼児期のトラウマを乗り越えて自らつづった、貴重な真実の記録である。とにかく、凄まじいまでの幼児虐待に、気分が悪くなった。

『理由』 宮部みゆき (朝日文庫)
直木賞受賞作品である本書は雑誌記者が事件関係者へインタビュー する形式で事件が語られて行くという斬新な語り口。あらすじは、超高級マンション「ヴァンダール千住北ニューシティー」ウエストタワー20階で起きた一家4人殺し事件。しかし彼らはその部屋の持ち主でも正規の住人でもなかった。さらに、この4人は実は「家族」ですらなかった・・・ 裁判所による競売物件にからんだ事件ですが、作品そのもののテーマになっているのは、家、家庭、家族、といった、人と人とのつながり。一応、ミステリーだけど、謎解きを最後まで引っ張ってくれた。

『OUT』 桐野夏生 (講談社文庫)
弁当工場の夜勤パート仲間である主婦4人、その一人である雅子が、パート仲間が殺したその夫の死体を他の二人に手伝わせてバラバラにして捨てる。あるきっかけで人間の一線を超えてしまい、破滅へと向かってゆく。結構登場人物が多く、場面がちょこちょこ変わるのだが、各キャラクターの書き分けが要所要所しっかりとしているのであまり気にならない。その分、人物描写が深い部分まで描かれ、猟奇的な場面、解体シーンのリアルさも凄い。昔、ドラマもやっていたが、原作の方がやはり面白い。ラストは、自分なりには納得する終わり方だった。それにしても、コンビニの弁当が食べたくなくなったのは、読後の後遺症か?

『ハリー・ポッターと賢者の石』 J.K.ローリング (静山社)
全世界で3500万部以上のベストセラー。あまりベストセラー物は敬遠しがちで、子供向けの話しみたいだし、読まないつもりだったけど、あまりにも話題になっているので読んでしまう。意地悪なダドリー(従兄)にいじめられながら、11歳の誕生日を迎えようとした時に、ホグワーツ魔術学校の入学許可書が届き、ハリーは、魔術学校に。親友のロンとハーイオニーに出会い、ハリーの両親を殺した魔法使いヴォルトデモートとの対決。中々、読みごたえがあった。さすがに、前半部分は単調なハリーへの、ありふれた苛められ部分で面白くなかったが、ハグリッドが登場してからが、不思議な世界に導かれた。「蛙チョコレート」「ドラゴン」「ユニコーン」「ゲロ味の百味ビーンズ」たちまち、ハリポタの魅力に虜。実は映画も本の途中で観たのだが、絶対に本を読んでからの方がお薦め。映画を観た後に、後半を読んだので、オチがわかってしまい少し後悔した。ハリーが勘違いする所も文章的に工夫されており、オチには驚かされるかも

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 J.K.ローリング (静山社)
 今回も面白い。前半は第一作と同じようにダラダラ感があるが。どうもマグルの世界はそういうものかもしれない。新学期が始まり、次々と事件か起きる。ホクワーツ校を襲う姿なき声。親しい人が襲われ、ハリーが疑われ、ハグリッドは捕まり、校長が・・・どうなってしまうのだろうと思ってしまう。読みどころは、ハグリットの過去がわかったり、ポリジュース薬での行動、ハリーが経験した不思議な日記、アラゴラとの対面。そして、最後の・・・。それにしても、ロックハート、どんどんミジメになってゆく・・・

『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 J.K.ローリング (静山社)
 今回も前作以上に面白い。相変わらず最初はダラダラ感はあるけど、今回は短い。今回の話しは、脱獄不可能の アズカバンから脱走した囚人シリアス・ブラックがハリーの命を狙うという筋書。面白かったのは、シビル・トレローニーの占い学授業、ハリーとバックビートとの飛行授業、まね妖怪の授業(今回授業内容も前回以上に面白い)、『守護霊の呪文』修得、そしてクィデッチ優勝戦。後半(17章)の新事実の連続。ロンのスキャパーツの秘密に、恐ろしい事件の真相、一気に読むのがもったいない程のドキドキ感がある、そして最後の最後でまた手に汗握る展開。ハーマイオニーの秘密の伏線がここに生かされてくる。それにしてもダンブルドアが後半、いい味をだしている

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 J. K. ローリング (静山社)
ホグワーツの4年生になったハリー・ポッター。そんなある日、クィディッチのワールドカップで、空に不吉な印が上がり、ヴォルデモートの復活を予感させる。そして、今年は、ホグワーツに、2校の魔法学校の生徒が訪れ、三大魔法学校対抗試合が行われる事となった。本来、選ばれないはずのハリーが、炎のゴブレットによって選ばれた。巧妙に仕組まれた罠に怯えつつ、課題をこなしてゆく。そしてついに痛ましい犠牲者が……。犠牲者が出るとは、前もって知っていたけど、予想通り(上巻で予測できた)、彼だった。最後の最後で、ダンブルドアはハグリッドに、スネイプに何を頼んだが気になるが、次回作が気になる所。

『冷静と情熱のあいだ』 辻仁成・江國香織 (角川文庫)
男の視点から切ない愛の軌跡を描いた青の物語(辻仁成著)と、女の永遠に忘れられない恋を描いた赤の物語(江國香織著)。同じタイトルの違う著者による2冊の異色作。順正とあおいの恋物語である。興味を魅かれるのが、あおいの事を忘れられない男の順正は油彩画の修復士をやっている。失われた時間を取り戻すことができる世界で唯一の職業だと。物語は、たわいもない約束がテーマ。十年前に交わした、あおいの三十歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモで待ち合わせをする事。青から読むか、赤から読むか悩む所だけど、自分は赤から読む事を薦める。最後の・・・読めばわかると思うよ

『飯島愛の真実』 板坂剛 (鹿砦社)
飯島愛のAV出演、援交、整形などを全てを語った告白本のプラトニック・セックスが本当に真実なのかを追求する本。100万部突破したベストセラーを見事に文学的に批評。文章が下手だと言いつつも、夏目漱石の草枕と比べるあたりが良い。飯島愛の文章を直木賞が取れるように文章まで考えて、文学的に修正するあたりがユニーク。本の中に衝撃的カラー写真が150点余り公開されている。ビデオから掲載しているので写真は写りが悪いが、どのような雰囲気の中で飯島愛がAVに出演していたかが伺える。一度、飯島愛のプラトニック・セックスを読んでから、この本を読む事をお薦めする

『空が落ちる(上)(下)』 シドニィ・シェルダン (アカデミー出版)
次々に不慮の死をとげる米国の名門ウィンスロープの一家。「一年の間に家族5人もが変死するなんておかしい」と謀殺説を信じて調査に乗り出す売れっ子ニュースキャスターのダナ・エバンス。ジェフ・コナーズとの恋愛、その元奥さんのモデルのレイチェル・スティーブンスの病気、またサラエボから連れてきた少年の片腕のケマンへの愛。興味の尽きないテーマの中で、おそるべき実態。最後に作者の言葉に「この物語はフィクションであるが、●●●・・は事実である」と書かれていた。SF的で無理な設定だと思っていたけど、衝撃的な内容でかなり面白かった

『異形コレクション 玩具館』 井上雅彦 (光文社文庫)
 このシリーズ第1巻から読んでいて、この巻で20巻目。毎回、テーマを決めて、有名な作家にオリジナルの短編を書いてもらう。今回の異形のコレクションのテーマは玩具。面白かった作品について書いてみます。『来歴不明の古物を買うことへの警め』は、オドロオドロしさが最後のオチに結び付く。パズルも下手に作れなくなるな〜 『フォア・フォーズの素数』は数字遊びだけど、中々、計算尽くされた作品。パズルクイズに目はいきそうだけど、最後のオチには参った。『貯金箱』は、外国物を読んでいるかのように恐い。まさか貯金箱が・・・『らっぱ』が、今回の一番だろう。ナンセンス的な伝言が恐怖に変わる時・・「ぬ」という平仮名の前にして、考え込んでしまった。『怪魚知音』は、ド肝を抜かれる残虐猟奇、凄まじい狂気ぶりのラスト。、それで、また最初の部分を読むと、そのラストが、かなり効いてくる。これほどの作品は読んだ事はない。『人形の家』は、書籍小説が物語の奥行きを感じさせ、不気味さが漂ってきた。『綺麗な子』は、現代的な物の考え方のようだ。幼児虐待も、親の心情もこれかもと思わせる。最初はペットの犬の話しから始まり、赤ちゃんになると、かなり恐い。『未完成の怨み』は、まだ綺麗な子を読んだ印象を引きづっている読後に、ホッとさせるものがある。それでも、ラストに近づくにつれての死への恐怖は恐い。今回は、どれも粒揃いなので、この短編に限って、長く書いてしまった

『ブリジット・ジョーンズの日記』 ヘレン・フィールディング (ソニー・マガジンズ)
 ベストセラー小説という事で買って読んでみた。最初は普通の日記だと思っていたが、どんどん引き込まれてゆく。この手の恋愛小説はありがちだけど、文体のうまさと、人に共感を覚えさせる心理が上手に表現されており、本当に実在する女性の日記のよう。女性のダイエットの挑戦、上司と部下の恋、ところどころに女性の本音が現れる。イギリスでは、この本がもとで、ブリジット現象という社会現象が生まれたというから、かなりのお薦め

『13階段』 高野和明 (講談社)
 第47回江戸川乱歩賞受賞作だけあって、凄い。喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官とが、記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らそうとする物語。緻密な構成、意外な展開、登場人物のリアル感、そして、最後に疑問の全てが明らかになってゆく入り組んだ真相、鳥肌が立つような作品だった。しかし、読後、かなりの考えさせられる。一事不再理という原則の判決、法律の正義性、どういうのが罪にあたるのか、矛盾する裁判、死刑と私刑・・・一番、心に引っかかったのは「死刑相当の事件を犯した場合、一人でも多くの人間を殺した方が審理が長引き、被告人は長生きできる」これが、本当の正義だと言えるのか、疑問に思う

『霊感商人』 菅野国春 (徳間文庫)
 無一文の主人公が新宗教を起こし、教祖となり、計算しつくした霊感商法によって、一大教団を築きあげるサクセス・ストーリー。かなり読みごたえある作品。が、この本は絶版のようだ。古本屋でみかけた時は、ビジネスマンや組織のリーターは読んでみた方が良いだろう。一躍千金の秘策と部下の使い方のがわかるようになるだろう

『ベストセラー小説の書き方』 ディーン・R・クーンツ (朝日文庫)
 小説を書きたい人は必読書。どんな本が売れるか、超ベストセラー作家が自作をはじめさまざまな例で、わかりやすく説明。アイデァ・ストリーの見つけ方、タイトルのつけ方、冒頭から結末の書き方、登場人物の性格描写、背景描写、文体などと、親切丁寧。そして、最後に作者は「作家は良い読書家でなければならない」と、読書ガイドまで巻末につけている。この一冊をボロボロになるまで読むと、ベストセラー作家になる日も近い

『怪笑小説』 東野圭吾 (集英社文庫)
 多彩な傑作短篇集。「鬱積電車」では、満員電車でありがちな風景を人の心の中を通して描いて、かなり面白く仕上がっている。「あるジーサンに線香を」は、何か、題名がどこかの小説に似ていると思ったら、やっぱり「アルジャーノンに花束を」だった。小説形態も似ている。「動物家族」は、ある中学生が周りの人間が人間以外の動物に見えてしまうストーリー。母がスピッツで、父がタヌキ、そして兄がハイエナと性格をとらえている所がまた可笑しい

『毒笑小説』 東野圭吾 (集英社文庫)
 これも短篇集。「誘拐天国」は短篇にするには、もったいない作品。塾だ、お稽古事だとかで忙しい孫と遊ぶために、前代未聞の誘拐を考える爺さん達。かなり奇想天外で。本当、短篇ではもったいない。女房を殺して自首しても簡単に手続きを通さないと捕まえてくれない警察の「マニュアル警察」も、憎しみもマニュアルがないと殺意に結び付かない男の話しの「殺意取扱説明書」も好きな作品。かなり現代社会を皮肉っている

『笑い宇宙の旅芸人』 かんべむさし (徳間文庫)
 上・中・下の3巻の長編小説。究極の笑いを探しに主人公達は笑い宇宙に旅立つ。その間、言葉遊び、新作言語、日常のエピソード、尻とり、ドタバタコント、パロディー、ナンセンス、川柳、洒落、狂言、珍答案迷回答と、次々に笑いのネタが飛び出して来て、その旅の途中で考えた事をまとめ見事な巨篇にせしめた。ネタが無い時に読むとアイデァがすぐに浮かびそう

『日本沈没』 小松左京 (徳間文庫)
 科学理論をもとに描いた巨大パニック長編小説。小笠原諸島の小島が一夜で沈み、その海底を調査したら得体のしれない異変を目撃した所から話しは始まる。そして、伊豆火山大噴火、富士火山帯も不気味に活動をはじめ、日本沈没。日本列島がいかにして沈んでゆくか見もの。小説だから壮大なイメージを心に伝える事ができるのであろう。お薦め

『ヒュウガ・ウィルス』 村上龍 (幻冬舎)
 「五分後の世界」の続編。舞台は現代とは五分間時空のずれた世界。日本が太平洋戦争において、多数の都市に原爆を落とされても降伏せずに、日本軍は、長野の地下に都市を作り、国連軍と闘争し続ける設定で、九州のヒュウガに殺人的ウィルスが発生し、手におえない国連軍はアンダーグラウンドと呼ばれる日本軍にヒュウガ村を焼き払う密約をする。が、このウィルスの強烈さは、読むのが耐えられないくらい凄まじい

『顔』 シドニィー・シェルダン (アカメディー出版)
 精神分析医のジェドの周りで次々と不可解な殺人事件が起きる。警察と協力して犯人を突き止めようとするが、被害者が増えるたびに、ジェド自身に疑いがかかる。果たして誰が本当の敵か、味方か。本当、読み出したら止まらない

『ダディ』 郷ひろみ (幻冬舎)
 流行本である。一年たったら忘れられる本。だが、「俺の頭の中にお嫁サンバが流れアドレナリンが噴出した・・」は名言だ。この「ダディ」という言葉は、娘たちが郷ひろみを呼び方。理想の夫婦と言われた友里恵と郷ひろみ、なぜ離婚を選んだかを書き綴り、娘たちに痛切な想いをぶつけている

『邪馬台国はどこですか?』 鯨統一郎 (創元推理文庫)
 とにかく滅茶苦茶。でも、その滅茶苦茶が面白い。表題作の「邪馬台国はどこですか?」では、何と邪馬台国は東北にあったという。文献資料「魏志倭人伝」より見事な注釈により、読後は本当に東北にあったのではないかと思ってしまうほど。「維新が起きたのはなぜですか?」も凄い。何と、明治維新に黒幕がいて、その黒幕は勝海舟だと言う。そして、勝海舟は、明治維新をある方法でやってのけたという。ある方法とは本を読んでみればわかるが、想像を絶する方法。しかも、文献にもちゃんと書かれていたりして、そのまま、これも信じてしまいそうになる。とにかく、読んでみた方が良い

『ブラック・ジョーク大全』 阿刀田高 (講談社文庫)
 ブラック・ユーモアのジョークが647編。どれもこれも面白い。会話形式だから、すぐに読み終わるが、一つ一つじっくり考えると、その笑いの中にゾクリとした恐怖がある。子供が母に「お母さん、真っ赤な手袋が落ちているわ」と、言ったら、母は「あら、中身も入っているわ」と。手首ごと落ちている事になる。ほら、恐いでしょう

『大人になった「矢吹ジョー」』 木全公彦・林公一 (宝島社)
 境遇・環境・思考・行動パターン等から分析した名作マンガの主人公たちの将来はどうなったか。「明日のジョー」の最終回では、ホセ・メンドウサーとの死闘の末、コーナーに戻った矢吹ジョーは髪の毛が真っ白い廃人となる場面で終わっている。でも、ジョーが死んでいないと仮定すると、ジョーはボクシングジムを開く。そして・・ありえそうである。他に、天才バカボン、コマワリ君、エースをねらえの岡ひろみ、銀河鉄道999の星野鉄郎、じゃりん子チエの竹本チエ、東大一直線の東大通の分析されている

『黒い家』 貴志祐介 (角川ホラー文庫)
 第4回日本ホラー小説大賞授賞作。生命保険を舞台に恐怖の連続。作者は元保険会社勤務というだけあって、保険会社の内情が新鮮。保険会社の内幕・保険犯罪のパターンが散りばめられていて、読む者を飽きさせない。。指切り族の存在、障害保険給付金を受け取る為に、自分で指を切る人たち。それぞれの支社には、社長の収入を上回る優績者の外務員がおり、彼女たちは例外なく、明るさと芯の強さを持っている。日本では、客が生命保険に入るほとんどの場合は外務員の執拗な勧誘と泣き落としに負けた場合で、客の方から、わざわざ保険会社の支社や営業所にを訪ねた場合は、何か裏があると思ったほうが良いとか。最後の殺人鬼が包丁を持って迫りくる場面は怖い

『風の中の子供』 坪内譲治 (新潮文庫)
 筒井康隆が読んで泣いたという本。自分も読んで泣けた。三平が、おじいちゃんの家に預けられる事になって、兄の善太が三平の荷物を集める場面、泣けますな〜

『元祖羅門堂病院』 羅門祐人 (ハヤカワ文庫ハイ!ブックス)
 作者は医学部を中退して、SFやファンタジィーの世界に足を踏み入れただけあって、医療関係の描写は中々。田中幸太、大学を卒業したばかりの研修医。それが初めて勤務する病院が、女嫌いの産婦人科医や始末書男の天才外科医に、一度も病院を出た事のない謎の美少女患者と、常識はずれの人間ばかり、かなりブラックである。この元祖羅門堂病院は、田中幸太が医師になるまでのシリーズになっている

『黒いカーテン』 ウィリアム・アイリッシュ (創元推理文庫)
 記憶喪失から回復したタウンゼンドは、三年間の歳月が空白になっていた。この三年間に、自分は一体、何をしたのかわからない。そんなタウンゼンドを追跡する怪しい人影。はじめは逃げていたが、あえて、危険をおかして過去の自分の世界に飛び込んでゆく。すると、自分がダニーという名で、殺人を・・本当に殺したのか、タウンゼンドはダニーが付き合っていた女の手助けを得て、真相に迫ってゆく。かなりのサスペンスで臨場感に溢れてかなり面白かった

『漫才病棟』 ビートたけし (文春文庫)
 売れなかった頃から、売れ始める直前の浅草下積み時代の話。電車の中で油断して読んでいたら抱腹絶倒で、かなり白い目で見られるくらい笑える。精神病院での病院祭での漫才、事務長とのやりとりからも、笑える。たけしの原点というのか、精神病院でブラックな漫才、馬鹿野郎に、ジジィと飛び出せば、事務長も血相を変える。かなり、笑えるんでお薦めです

『水素製造法』 かんべむさし (徳間文庫)
 短編。馬鹿馬鹿しさと、くだらなさにおいて活字で笑わせる本の中で群を抜いている。話しは、就職試験において文系の学生が「水素ガスの製造法を述べよ」という問題に、国語辞典だけを駆使して無理やり回答する悪戦苦闘ぶりを淡々に描いているが、何度、読んでも声を出して笑ってしまう。この本を読んで、言葉遊びを覚えた

『笑え!五体不満足』 ホーキング青山 (星雲社)
 著者も言っている通り、タイトルを見ればわかるが、乙武さんの「五体不満足」の便乗本。しかし、乙武さんの本より、こっちの方が、素直に本音を語っているようで共感が持てる。著者は、先天性多発性関節拘縮症状で、生まれた時から両手両足が使えず、電動車イス生活しているが、さすが、史上初の身障芸人、いきなり前書きで、「なおくれぐれも立ち読みはするなよ。書いているオレが立てないから」と、ブラックジョーク。しかし、笑いの中にも考えさせられる。身障の生徒が、先生に恋していたので、著者が「女っていうのは、強引な男にひかれる。抱きついてみろ」と、恋のアドバイスをしたら、先生は抱きついてきた生徒にびっくりして、鎮静剤を打たれる。これこそ、発情期の獣ですね。また、身障の身障者の運動会では、学校側に何でもかんでも、健常者と同じようにやらせようとしていると批判し、身障なら身障の特徴を生かした運動会(去年より身体の動きがよくなった部分がみえるように)にすればいいと言っている。また、善意の人にもほっといてとも言う。銀行のATMで、お金を下ろそうとしたら、オバチャンが「番号を押しましょうか」と。押してもらうという事は、番号をオバチャンに教えるという事で、好意で言うのもわかるんだけど、踏み込んでいい領域と踏み込んではいけない領域があるんだと。それにしても、著者は「五体不満足」の乙武さんをライバル視している。早稲田大学、ルックス・・とも、著者は負けている。しかし、著者は乙武さんより、健常者の接点が多く(乙武さんは、学校は普通の学校だった)、養護学校に12年も通い、色々な身障と触れ合い、会話もし、発作で暴れている身障にぶん殴られたり、尿瓶のションベンをかけられそうになったり、接点は多いと。でも、乙武さんの事は認めており、「五体満足」の本は、身障と健常者がお互いに知り合う貴重の本だと言っている。自分も読んでみて、身障と自然な付き合い方が出来そうな気がしてきた

『宇宙衛生博覧會』 筒井康隆 (新潮文庫)
 筒井康隆の短編集の中では一番のお薦め。まずは、「関節話法」はかなり笑える。マザング人とのコミュニケーシュンの言語は関節の骨をポキポキ鳴らして、会話する関節話法。その翻訳官として選ばれた主人公、骨が鳴らないと反対の意味になるので悪戦苦闘する。読みながらかなり笑ってしまった。『急流』は、オチがわかっていても、何度も読んでしまう。落後的に出来すぎ。時間が経過するのが徐々に早くなる話しで、時刻表によって動く乗り物もぶっ飛ばしはじめ、何から何まで早くなる。しかも自分のページをめくるスピードも早くなるようなスピード感で、次から次へと話しが進み、オチは・・他に『こぶ天才』『顔面崩壊』『問題外科』『最悪の接触』『ポルノ惑星のサルモネラ人間』が収録されている

『爆笑問題の日本原論』 爆笑問題 (宝島社文庫)
 今となったら細川首相辞意表明とか阪神大震災とかネタは古いが、爆笑問題の真骨頂というべき時事漫才集。1つの話題につき、5、6ページだが、どれも完成度が高い

『日本語練習帳』 大野晋 (岩波新書)
 どうすればよりよく読めて書けるようになるか。何に気をつけて、どんな姿勢で文章に向かえば良いのか。45問の練習問題に答ながら、単語一つ一つに敏感になり、文章の組み立て、展開などの日本語の骨格を学びとろうとする、大人の作文教室のような本。単語の「思う」と「考える」は、似たような言葉だけど、「献立を考える」とは言うけど、「献立を思う」とは言わない。あれこれを組み合わせる時に「考える」を使い、「明日の試験を思う」というように、試験一つの事が心配な時に「思う」を使う。言葉を鋭く読む時はこういったニュアンスを明らかに区別しなければならないと書いてあった。「なるほど」と感心しながら読んでみるといい。ただ、難しい話しばかりではない。所々のページに『お茶を一杯』というコラムも面白く、興味深い

『あじゃ@109』 吉村達也 (ハルキ・ホラー文庫)
 これほど哀しいホラーはなかったという事で帯広告に書いてあったので、読んでみると、確かに。主人公の桐島尚紀が恋人の玲美との結婚を目前にに交通事故に遭い、入院をするが、そこでガングロの看護婦が忽然と現れて尚紀に30日後に死を宣告する。それにしても『先の見えない不安という言葉があるが、本当は先が見えないからこそ人間は安心して過ごせるのではないだろうか』に共感した

『おまえとは寝たいだけ』 石原里紗 (知恵の森文庫)
 副題にヒドイ男とおろかな女というタイトルがついている。それにしてもヒドイ男。女に面と向かい「愛情のかけらもない、お前とは、寝たいだけ」「俺にとって、お前に会うのは、ソープに行くのと同じ」とか書いてある。色々なカップルがあるけど、こういう恋愛も珍しい。好きになってしまえば、相手がどんな事をされようが、やっぱり、好きは好きなんだろうな。あとがきに、この話しを読んで、悲惨な話しか、それともノロケ話しに感じましたか?と書いていたけど、自分はノロケに感じましたね。そういう恋愛って、めったに出来ないから

『プラトニック・セックス』 飯島愛 (小学館)
 女性に今、読んでいると言うと「読み終わったら貸して、貸して」と、よく言われる。少女から大人の女性になってゆく内面が表れていた。親のありがたみは、自分が大人にならないとわからないのかもしれない。最後のエピローグに羞恥心の昔話しが載っている。ちょっとエッチぽいが、味わいがあり、自分も好きである

『20世紀語辞典』 「死語」復活委員会 (二見文庫)
 60年代、70年代のファッション、音楽、映画、テレビ、漫画、CM等から死語を集め、今時の使い方まで載っている親切な辞典。例えば、『人生山あり谷ありクロードチアリ』は、落ち込んでいる人の肩を叩いて、そう言えば、落ち込んでいるのもバカバカしくなるといった具合。流行語とは、将来的には死語となる。それを現代に残そうとする試みは面白い

『怖い日曜日 赤い使者篇』 木原浩勝 (廣済堂)
 日本テレビの番組の原作。不思議な消息を伝えるエピソードの編集版。一番好きな作品は『ポッチャン』だった。これを読んでから、ラーメンを食べていると天井から何か落ちてこないかと気になってしょうがない

『ストーカーズ』 友成純一 (ハルキホラー文庫)
 血まみれの殺人事件、美人OLの臓器が持ち出され、幽霊までも現れる。スプラッター・ホラーの本領発揮。変態じみたストーカーよりも、不思議と殺された美人OLの方が怖かったという不思議な物語

『「口説き方」 心理事典』 櫻井秀勲 (三笠書房)
 『女も読む。女が気づく前に読め。ほとんどの男が女心を読み違えている』との帯広告と、女学の神様という櫻井秀勲に釣られて本を買ったのだが、この本を女性が読んだら「何を作者は勘違いしているのだろう」と思える本である。例えば、女性は防御の生き物である。まだ、ここまでは何となく頷ける。保守的だと言いたいのかもしれない。ところが、この防御ラインを破られないように様々なウソをつくそうだ。男が告白しても、もし、嫌だったら、「私には決まった人がいるから」(本当かもしれないじゃないか)とか、「地方の実家に帰らないといけないから」(今時、そんな言葉で断る人はいないと思うが)、きわめつけが、「海外に留学する予定がある」だ。もし、男が海外まで追いかけてきたら、どうするのだ。何か笑える本だった

『悪趣味の本』 別冊宝島編集部 (宝島社文庫)
 フリークス、死体、小人プロレス、犬鍋、寄生虫館、変態マニア等、悪趣味と言われる物が勢揃い。興味本位で買ったのだが、そもそも悪趣味とは何だろう? 悪趣味に興味を持っている人にとっては、それは当たり前の趣味であって、自分が悪趣味だと思っていない。悪趣味だと思っている事が悪趣味であって、そう考えれば、自分の趣味について考えると、そう大した趣味は持っていない事に気づく。そう気づいて、また読んでみると、悪趣味は魅力的な趣味だと思えてしまう不思議な本

『壁抜け男』 マイセル・エイヌ (角川文庫)
 奇抜な発想を駆使した短編集である。表題の『壁抜け男』はどんな壁でも通り抜けられる男の話しで、『サービヌたち』は自分を好きな数だけ増やす事が出来る話し。『死んでいる時間』は二日に一日しか、この世に存在しない男の話し。異常な設定でストーリーを書いてみると面白そうな話しのような気もするが、実際に読んでみると、長編にすれば良いだの、オチがイマイチだの感想があるが、奇妙な幻想世界は論理的で中々楽しめた

『美と共同体と東大闘争』 三島由紀夫・東大全共闘 (角川文庫)
 生身の三島由紀夫が見えるような、そんな気分にさせられる討論である。討論中に灰皿がないので、タバコが吸えないと三島が訴えると、全共闘は床にたばこの灰を落としてもいと言われると、拍子抜けしたような。傲慢な三島を見るような気もするが、とにかく、面白い

『ジャズ小説』 筒井康隆 (文春文庫)
 ジャズを聞きながら、そのナンバーに触発されて描いた短編集である。名ナンバーに乗せて筒井康隆節のショートショートが冴える。一番面白かったのは『ラウンド・ミッドナイト』。追われる男が、最後は筒井らしからぬ物語。『葬送曲』の方が、筒井らしいのだが。綺麗にまとまっていた。『葬送曲』が聖歌だったとは、驚いた

『秘密の手紙箱(女性ミステリー作家傑作選3)』 山前譲(光文社)
 女性推理作家のアンソロジーである。女性特有の繊細で大胆な作品が集まっている。『傷自慢』でも男性作家では書けない小説でもあるし、『うすい壁』の最後の2行は、特にそうである。宮部みゆきの『弓子の後悔』は、クラス会の話からSF的な話に展開するのだが、女性だからこういう話を思いつくという小説である。「それでも彼を締められない」という言うのは、現実的でいい。

『女子高校生誘拐飼育事件』 松田美智子 (幻冬舎アウトロー文庫)
 この小説は映画化(竹中直人主演)されているが、9年2ヶ月監禁事件を思わせる小説である。17歳と40過ぎのハゲオヤジ、欲望の渦にまかれたオヤジが少女に性的調教し、自分を完全に愛してくれるまで監禁から解放しないという、不条理な話。精神的に悲しい男の話しだと思いつつ、読んでいたが、あながちそうではないような気がしてくる。最後は少女が警察に保護された時にオヤジの事を「パパは優しい人だった」と言っている。

『完全なる飼育 香港情夜』 松田美智子 (竹書房文庫)
原作は実際に起きた事件に基づくノンフィクション小説「女子高生誘拐飼育事件」(松田美智子作)。今回は香港版か。修学旅行で訪れた日本の女子高生が、地元のタクシードライバーに誘拐される。日本人と香港人、意思の疎通さえ困難な関係、しかも誘拐犯と被害者の関係が、お互いの孤独が心の隙間を埋めてゆき、監禁状態から同棲生活に変わってゆく。そういう少女の心の変化は、正直、小説だからなのかと思ってしまう程で、感情移入出来なかった。

『バトル・ロワイアル』 高見広春 (太田出版)
 2001年、ビートたけし出演の映画という事もあり、興味深く読んだ。内容が、離島のの中で、中学三年生が殺し合いを行い、最後に生き残った者だけが、家に帰れるというバトルロイヤル的な凄まじさ。クラスメイトを殺さなければ、自分が助からない中で、恋愛・社会への反発・信用・死とか色々と考えさせられた。そもそも人間はいつかは死ぬものだから、リングが地球と考えて、生き方としてのバトルロイヤルをやっているのではないだろうか

『とびっきり奇妙にこわい話』 阿刀田高 (光文社文庫)
 一般応募で寄せられた体験シリーズの第4弾である。なかなか、粒揃いのこわい話が掲載されている。最優秀作の『不審火』も偶然なのか、それともとか、考えさせられる謎で、物語としても読みごたえがあった。自分としては『蟻』の方が良かった。蟻の葬式という現実離れした話しがゾクゾクと。ありえない事が自然に起こると人間は恐怖を味わうのだ。また何が起こるかわからない、何を考えているのかわからない事にも恐怖は感じる

『獣儀式』 友成純一 (幻冬舎アウトロー文庫)
 とにかく凄いスプラッター表現描写である。『狂鬼降臨』では、樹木の枝を切り払い、幹を削り先端が尖った杭を作り、それに人間を肛門から口まで貫きさせて、人間の柱にする。数珠のような人間を串刺しにした柱が何万本もある。自分の想像力を越えた発想である。また、儀式でカップルの歯抜きの刑にはゾクゾクさせられた。互いに相手の二十八本の歯を交互にヤットコで抜くのだが、これも凄まじい。この文庫本には、他にもショートショートも収録されているので、お得な本である。

『洗脳体験』 二澤雅喜・島田裕巳 宝島社出版
 著者が自己開発セミナー『ライフダイナミックス』への潜入体験が書かれている。様々なセミナーを受けるうちに、強烈な自己破壊と自己形成が行われ、最後には完全に洗脳されて、人を勧誘してゆく。今までの自分を変えたいからセミナーに参加したと思うが、結局はこのライフダイナミックスに利用されているのがわかる。実際にこのライフダイナミックスをしている人を知っているが、洗脳によって異様に高揚し間違った事でも多弁になったり、自己破壊された影響でツメを噛むという幼児行為をしていたり。セミナー内では通用しても、やはりこの社会では、他人と接する時は、極端に感情を出し過ぎないようにした方が良いのでは。とにかく、セミナーの内容が、利益優先で、ずさんで、トレーナー(講師)の価値感に自分を合わせ(合わせないと、標的になりボロクソに言われるから)認められるようになると、自分が変わったように錯覚を起こす。著者自身が体験した記録なので、リアリティーがあり、興味深く読む事ができた

『超日本史』 藤井青銅 扶桑社文庫
 やられたーという感じ。日本の歴史を短時間で理解しょうとするのだが、聖徳太子に駄ジャレを言わせたり、北条政子と大屋政子と一緒にしてみたり、黒船が毎年毎年日本に来るくだりをマルチ黒船商法と紹介したりと、面白おかしく書いている。

『だから あなたも 生きぬいて』 大平光代 講談社
 いじめを苦に自殺、極道の妻になり、立ち直り、猛勉強の末、司法試験に合格。波乱万丈の人生だが、一つだけ懐かしい思いにさせてくれた。それは、自分も一回、社会に出た後、自分の道をみつけ、猛勉強したのだが、英語だけは苦しかった。白い紙に何度も何度も声に出しながら書いて、真っ黒になるまで書いて覚えようとするのだが、日々の疲れと慢性的な睡眠不足で覚えられない。それでも自分も泣き言を言わず、頑張った。結果は、希望の所には合格しなかったが、完全燃焼できた。今でも、その事が自信となっている。作者も今は弁護士という事で、頑張っているが、もし不合格だったとしても、その経験は貴重なものだったろう。

『虹の架け橋3時のおやつ』 かんべむさし 光文社文庫
 簡単に言えば、願えば叶うという話しである。マニュアル的な要素もあるので、理解しやすい。実用書としても読める。

『ドクラ・マグラ』 夢野久作 角川文庫
 とにかく、凄い作品。何度読んでも解らない。三度、読んだが感想はどれも違ってくる。読んでみるとわかるが、奥が深い。「これを書くために生きてきた」と作者が言うだけあって、10年の歳月をかけた推敲されて完成された作品は、読む者に精神異常をきたしそう。でも何度でも読んでみる価値がある

『残像に口紅を』 筒井康隆 中央文庫
 小説の中で『あ』から始まり、どんどん使える言語がなくなっていく実験小説。最後は『ん』しか残らなくなるが、ちやんと、最後まで小説になっているのは、作家の器量か。脱帽したくなる作品である。

『痩せゆく男』 s・キング 文春文庫
 映画も見たが、映画の方がいい。訳の方がヘタクソなのかもしれないが、それでも、ジプシーの呪いによって、食べても食べても痩せてゆく男。死に向かって自分の体重が減ってゆく恐怖と戦いながら、呪いの解く鍵を握るジプシーを追いかけてゆく展開は一気に読ませてしまう

『死の蔵書』 ジョン・ダニング ハヤカワ・ミステリ文庫
 1996年のミステリーベスト一位である。オチも凄いが、とにかく面白い。最後まで一気に読んでしまった。電車の中で読み終わったが、しばらく放心状態。感動で立てなかった

『龍馬死せず』 緒形忍 学研
 もし、坂本龍馬が暗殺されなかったらという、シュミレーションの小説だが、お龍は助かったのかとか、色々と伏線的には面白い展開になりそうだと思ったが、何箇所か、未消化に終わっている。ちょっと残念だが、坂本龍馬の作品という事で。

『謀略の本命馬』 志茂田景樹 青樹社文庫
 作者は外見からすると、変な人だと思われるが、中々どうして、れっきとした作家なのである。飽きさせずに読ませてもらった。

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』 夢枕ばく 講談社文庫
 最初はは駄目な人間が、徐々に才能を開花させたり、努力で花開かせる話しが好きである。その点、この小説にもその要因はある。しかも格闘技もあるので楽しませてもらった。

『新興宗教オモイデ教』 大槻ケンジ 角川文庫
 あまり期待していなかったが、中々、俺好みの小説。一ヶ月前に学校から消えたヒロイン、新興宗教のオモイデ教の信者になって、主人公の前に現れる。そして、人間を発狂させるメグマ祈呪術を使う信者と主人公は・・筋肉少女帯のヴォーカリストでありながら、魅力的な文章を書く作者初の長編小説、希望としては、もっと長めに書いた方が良いのかも

『火車』 宮部みゆき 新調文庫
 カード社会の自己破産を扱ったミステリーだが、どうも犯人に同情的になってしまう。どんどん物語に引き込まれてゆく。人間の心理描写が非常にうまい作家である。

『殺人鬼』 綾辻行人 新調文庫
 スプラッタ的表現方法は凄まじい。文章ながら頭にこびりつき、いつまでも悪夢が離れてていかない。パート2もそれ以上に凄かった。冒頭の子供が殺人鬼に殺される所は、凄まじい

『女医』 シドニィ・シェルダン アカデミー出版
 ページが飛ぶように進む。気がついたら上・下とも読み終わっていた。テレビドラマ化されたが、小説の方が面白かった。外科のブラックなジョークも飽きさせない要因か。

『ご立派すぎて』 鈴木輝一郎 講談社文庫
 本当に笑えます。お見合い小説です。そう言えば、実際、この作者もお見合いを何度も経験して、それだけ、実態に地階部分で書いてあるので、おろしろかった。考えてみれば、貴志祐介の生命保険業界の事をとりいれた『黒い家』も、そうだが、実体験してきた部分を小説に取り入れると、読んでいて飽きない。

『異形コレクション15』 井上雅彦監修
 自分の好きな作家、眉村卓、かんべむさし、横順といった、そうそうたるメンバーの短編衆である。このシリーズ1から読んでいるが、なかなか面白い。中には駄作もあるが、そういう事は気にしないで読もう。全編書きおろしなのだから。この15では、『宇宙生物ゾーン』とタイトルされている。その中で、面白かったのは、『時間虫』だ。一見、下品な話しかと思ったが、最後のオチが良かった。

『臓器農場』 帚木蓬生 (新潮文庫)
臓器移植をテーマに、医学の暗部の部分と人間の心に潜む闇を描いたサスペンス小説。無>脳症の胎児の扱い方、とらえ方は色々あるが、簡単に医者が悪いとは言えない所に、考えさせられた。名作ですね。

『小説 消費者金融 クレジット社会の罠』 高杉良 (講談社文庫)
貸すほうが悪いのか、借りるほうが悪いのか。貸す方は商売だからね。

『やぶれかぶれ青春記』 小松左京 (旺文社文庫)
著者自身の青春時代をユーモアを交えて描いた青春小説。特攻隊の話しには興味深く読んでしまった。他に、少年時代の読書遍歴を綴った「わが読書歴」も掲載。

『白い不等式』 眉村卓 (角川文庫)
異次元で行われる激烈な争いに巻きこまれた二人の少年の冒険を描く、SFスリラー、ジュブナイル物。初めて読んだ小説。それでSF小説に興味を持つ。

『自薦短篇集1 ドタバタ篇 近所迷惑』 筒井康隆 (徳間文庫)
ドタバタ小説集。学生時代に筒井康隆を読んでいたが、納められている短編は何度も読んでおり、どれも傑作で面白い。特に「俺は裸だ」は面白かった。

『お聖どんアドベンチャー』 田辺聖子 (集英文庫)
筒井康隆、小松左京、田辺聖子などの作家が実名で登場する連作短編。鯨牧場を経営したり、宇宙観光船の乗務員をしたり、新興いんちき宗教をはじめたり、タイムマシンまで登場したり・・・中々、楽しめる

『狼の紋章』 平井和正 (角川文庫)
ウルフガイシリーズの第一作。暴力で荒れた悪徳学園に不死身の人狼である犬神明が転校してきた。不良・羽黒獰に人質に捕らわれた担任の美人教師・青鹿晶子を救出に暴力団本拠地に乗り込んでゆく。名作中の名作。

『狼の怨歌』 平井和正 (角川文庫)
ウルフガイシリーズの第二作目。狼人間の不死の秘密を手に入れる為、CIAが動くという一作目より大掛かりになる。それでも、とにかく、最初から最後まで、息もつかせぬ展開で、一気に読ませる。

『一身上の都合により、殺人』 吉村達也 (角川文庫)
ミステリー短編集。「新宿駅でドッキリ」オチは強引でも、面白かった。「仕事なんだからしょうがないだろ」サラリーマンならわからないでもない話し。








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