文章上達法

以下、自分が小説・エッセイ・日記等を書く上で参考にしているプロの文章作成法や小説作成法の一部を掲載します。自分だけでなく、他の人にも参考になればと思い紹介します。ただ、自分の参考程度に使ってるので、一部読みづらい部分もあるので、ご了承下さい。
アイデアを捜せ(阿刀田高)

●推理小説を書くときは、様々な入り口がある。動機から入るもの、殺人方法から入るもの、隠蔽工作から入るもの、登場人物の性格から入るもの。

●小説には読者に知識を提供することを第一とするものではないが、面白い知識があれば、読者は楽しんでくれる。

●小説を作るアイデアは、多種多様。トリック型とアフォリズム型の二つある。トリック型は日常生活の中で、何か変だぞと違和感を覚えたときに発見する。アフォリズム型は、警告、諺からモーチフにしてアイデアにしてゆく。

●良いアイデアは、仕事をこなしてゆけば、必然的に低下する。しかし、小説工房としての能力は上がってゆく。

●推理小説は、それぞれ違った位置の穴が開いた何枚かの薄い板に、いとも簡単にスーッと棒が通るようにみえるが、それは作り手が穴を揃えているからである。殺人の動機、殺人方法、隠蔽工作などなど、探偵の登場、解決の糸口、犯罪の証明、小説を構成する諸条件を調整しているのである。

●おもいがけない偶然が、そのお陰で、めでたく悪事が暴露される。

●ショート・ショートはあまり余計な事は加えない方が良い。怨恨による凶行。男が女に振られるパターン。アンカーがしっかりしていれば、前は単純で良い。絶対に必要なのは、ダイニング・メッセージがなければ、男は絶対に疑われないという情況を確保してゆく。偶然がもたらす、皮肉な結果。
ダイニング・メッセージ一つで解決とはならない。偶然の符合。解決した後で、気づく。

●どんでん返しが好まれるのは、よくぞ、読者を騙してくれましたという心理が働くから。

●どんでん返しを作るときは、頭の中に二重の構造が見えている。その一方だけで書き進み、最後にもう一方を露にする。

●酒場のシーンが多い。知らない者同士を会話させるには情況がピッタリ。思いがけない人との出会い。幻想と狂言。

●江戸川乱歩賞などの最終候補作品を読んでいると、専門家が専門の分野を舞台にしている。

ベストセラー小説の書き方(ディーン・Ｒ・クーンツ)

●ストーリーラインを組み立てる。(古典的プロットのパターン)
①作者は今まさに、恐ろしい困難に遭遇しょうとしている主人公を紹介する。
②主人公はその困難から乗り越えようと努力するが、さらに深みにはまる一方である。
③主人公が穴から這い上がろうとするが、色々とやっかいな事が持ち上がる。多くのトラブルは主人公が問題を解決しょうとして、あがくうちに犯した失敗、判断の誤りがもたらしたもの。失敗や誤った判断は、主人公の個性を形成している欠点や美点の相互作用から生じる。
④恐ろしい体験、耐え難い状況により、深く傷つき、変貌をとげた主人公は自分自身について何か学びとる。そして、その危険から脱出するためには、自分は何をすべきか、悟る。そして、行動を起こし、成功したり失敗したりする。

●最初の3ページが勝負。
①出来るだけ早く、読者の心をつかむ。
最初のセンテンスに、突然起こる過激なアクション。その一方で、ユーモラスナ情況。爆弾攻撃中にトイレにいる状況を設定した。
「じらせ」のテクニック。爆撃機の出現と主人公の立たされている恐ろしい状況を書いておいて、爆撃機の事は触れずにいる。その間に状況説明をしておいて、ようやく、爆撃機の話しをする。
②登場人物を早く紹介する。一行目から。
③主人公を恐ろしい困難に突き落とす。
④次に続く、こっけいなシーンのお膳立て。主人公の必死の避難場所探しを通じて、彼が味わった恐怖と、ヒステリックな運命論。
⑤サスペンスあふれるテンポ。主人公を動かし続ける。
サスペンスを盛り上げるための、文体上のテクニック。強くて動きに満ちた動詞を使う。「出て行った」→「体当たりした」　「爆撃機が飛ぶ」→「弧を描く」　「黒い爆弾を落とした」→「ぶっ放した」　走った。命中した。破壊した。打ち込まれた。寸断された。発射された。
サスペンス・シーンやアクション・シーンを書く時は、派手で緊迫した動詞がアクションを盛り上げる。読者が情況を思い浮かべる手助けし、主人公に感情移行しやすい。
⑥強烈なリアリティ。
読者は自分が読んでいるものが、実際起こった、あるいわ将来起こるに違いない話しだと思い込みたい。
二つのテクニックがある。文体上のテクニック。小説を書いて書いて書きまくって、自然と学ぶ。もう一つは、観察の行き届いた正確な細部描写。この細部描写の習得方法は、作家自身の日常生活の体験から、それを引き出す。第二に調査。作家が発掘に骨を折って手に入れた一般的に知られていないもの程、物語に迫真性を持つものはない。
①普通でない、注意を引く、不気味なイメージ
そのイメージが暗にほのめかす暴力
「血だらけの手」→「血みどりの手」
「時を刻む時計のトリック」小説の冒頭で、主人公に果たさなければならぬ、さし迫った任務を与え、そして、彼らが、短い時間内にそれをやりとげなければ、恐ろしい状況になる。

●主人公を恐ろしい状況に突き落としたら、プロットにおけるその問題解決しょうとする時に生じる様々な困難。
①困難は主人公の状況をさらに悪化させるものでなければならない。原稿を水増しする為ではならない。主人公の問題解決を遅らせるためだけでもいけない。
②どんな困難も前の事件から必然的に生じるものでなければならない。読者はつねに前に前に進みたがる。相次ぐ困難とは、主人公が問題解決しょうと試みた結果生じる事態だ。
③物語を複雑にする為むに、偶然の一致を避けるべきだ。プロット上の困難はつねに、主人公の行動の結果、生じたものでなければならない。前に起こった事と、論理的なつながりを持っていなければならない。
④相次ぐ困難は、登場人物の愚かさに起因してはならない。
⑤最後の困難は最悪のものでなければならない。

●プロットの結末。
①それが唯一の必然的なプロットの結末でなければ、主人公を戦いに敗させてはいけない。読者はハッピーエンドを好む。
②物語を通じて積み上げて恐ろしい困難の全てを正当化するに足りる賢明な結末をもってくる。もっと前にその方法を使っていれば良かったのに、また同じような覚えのある手法で、問題解決したらまずい。
③主人公がどうやったら問題解決するか決まらないうちに、小説を書き出したらいけない。
④終わりに近づいたらむ、小説のスピードを上げる。最後の15ページを一気に息もつかずに読めるようにしておく。
⑤結末を知らせ、主人公が首尾よく片付いた事を知らせたのちに、ダラダラ何ページも引き延ばしてはいけない。終わりを引き締め、読者が興奮の絶頂から我にかえるような余裕を与えるような、1、2ページの短い章を提供する。

●緊迫感を出す為のテクニック。
①文章や段落を普通より短くする。断片文章を二三度使う。
②「時間的なずれ」実際は何秒かに起こる一連の行動を、文章にすると長々たらしく書く。その時に、読者は時間的ずれを感じずに一気に読めるように工夫する。こういう手法は失敗する可能性はあるが、息もつかせない早さで、話しが進む非常に長いひと続きの文章、しかも連続的なアクションを盛り込んだ文章は、計算しつくされた打ち上げ花火のようなもので、読者の注意を喚起し、もっと重要な問題、つまり、時間的ずれから、読者の目をそらす機能を持つ

●ヒーローに要求される5つの要素
①高潔さ②有能③勇気④好感⑤不完全さ

●登場人物の「身の上調書作り」　性格描写
①「肉体的特徴」身長。体重。体型。年齢。口や鼻の外形的特徴。顔の輪郭。目の色および、その特徴。髪の色、質、長さ。肌の色やきめの細かさ。あざ。手の大きさや形状。着こなし、その他。
②「声や話し方」声の質や高さ。低い声で話すかあるいわ大声で話すか。アクセントやリズム。語彙の特徴。文法的に正しい言葉を話すか否か。方言。 ③「動作やしぐさ」極度に活動的か物ぐさか、あるいわその中間か。動きがヤボか洗練されているか。手や身体を使って表現するか否か。姿勢が良いか悪いか。機敏か否かなどなど。
④「過去の生活」出身地。両親の経済状態は金持ちか貧乏か、それとも中間階級か。父母の職業。民族的背景。あれば子供時代の怪我。兄弟姉妹の有無。賞罰。職歴。その他。
⑤「宗教」礼拝に参加するか、敬愛な信者か、ごく普通の程度か。その宗教の協議はどんなものか。
⑥「性に関して」性的経験がない、あるいわ豊富。好きかどうか。罪の意識を抱いているか否か等。
⑦「職業」能力。現在の職業に対する態度。職場仲間や上司の評価等。
⑧「特殊技巧」スキーをするか。飛行機の操縦。ギター、ピアノの演奏。登山。絵画。詩作。精巧な家具を作る。ライフルの名手。空手の達人。ワインの味がわかる等
⑨「その他」恐怖。夢。娯楽。将来の計画。ユーモアのセンス。政治的信条。異性、子供、金銭、愛情、死、酒、麻薬に対する態度。理想。後悔の念。一般的嗜好。
登場人物の変化。厳しい試練や自己の過失に学んだ人物、物語の発展につれて、自己の深部を深く洞察するようになった人物、成功した結果、変化をとげた人物達は、読者を納得させ興味を引く事が出来る。

●動機付けの弱い作品はボツになる。
①愛情②好奇心③自己防衛④金銭的欲求⑤自己再認識⑥義務⑦復讐

●背景描写(バックグランド)
細部を誤魔化すな
熟知した作品舞台や材料。徹底した調査。数冊の旅行ガイド。鉄道の本。都市の街並み。

●ストレートでリズミカルな会話
登場人物が口を開く時は、つねにストレートに要点をついている。

●直接話法は次の場合を除けば、すべての場合望ましい方法
①ある登場人物が知っている事柄について説明しなければならないとき。
②ある登場人物が別の登場人物に、読者が詳しく知る必要のない事柄を説明しなければならないとき。
③長い会話文が、2、3行の間接話法の使用で、一層リズミカルになり、面白くなる場合。

●会話を自立させる。誰々が言ったかを連発しない。

●ひとつの場面が終わったら、すぐに読者を次の場面に案内しなければならない。

●複数の視点から書くと厚みと幅が生まれる。

①様々な登場人物の視点を自由に使って書くやり方。プロットが要求する視点で、自由に視点を変える。こうすると、すでに明らかになっている事柄を様々な視点から見る事ができ、作者はいくつかのプロットの糸を操る事が出来る。また、登場人物が真実の状況を知らないうちに、読者には個々の状況が全体として、どういう具合になっているかを知る事が出来る。
②一人の登場人物の視点から全てのストーリーを組み立てて、三人称を用いるやり方。この方法は主人公に対する読者の共感を得やすい。
③一人称小説。さらに主人公が一人称だと、読者は集中しやすい。が、一人称だと、自分の容姿外見や自分の考え方についてあまり多く語れない。そうすれば、自己中心くせのる男と見られ、共感は得られない。

●ＳＦ小説における現実味のある異星人を作るには。
①詳細な異星人の肉体的・精神的特徴を描く。
②外見で人類と異星人の差をはっきり描写したら、
異星人同士のやりとりを通じて描写
異星人と人類とのかかわりを通じて描写
物語の中の起きる事件に対する異星人の反応を通じて描写する。

●ミステリーにおける１５の注意事項
①第一章で犯罪が起こっているかどうか
②第一章で主人公は登場するか
③主人公は捜査に乗り出す動機はあるか
④登場する犯罪は凶悪な犯罪か
⑤殺しの方法や死体の発見のされかたは斬新か
⑥第二章までに容疑者を登場とさせているかどうか
⑦第三章までに、第二の容疑者が登場するか
⑧犯人のわりだしの為に、道理にかなった手がかりは残してあるか
⑨真犯人は誰かという期待感で緊張を生み出せ
⑩主人公を捜査の壁に突きあたらせる
⑪警察や鑑識の捜査手順は本格的か
⑫たなぼた式解決法は最悪
⑬犯人の正体は最後の最後まで明かすな
⑭犯人の正体暴露は事件を通じて行え
⑮無駄な尋問や捜査は無くせ

●スランプ克服法
原因と克服
①働きすぎ(2、3日、2、3週間書くのを辞める)
②自分の作品に対する嫌気(一旦筆を置き、別な事をする)
③自信喪失(軽蔑している作者の作品を読み、新しいアイデアに取り掛かり、新鮮な力を借りて自信回復)
④経済的不安(お金を稼ぐ)
⑤身近な者との感情的なこじれ

１８時間で学ぶ文章講座(岳真也)

●文章上達になるための１０のポイント
①習うより慣れろ
②良い本をよく読め、そして盗め
③自分の背丈にあった文章を書く
④卑俗な表現はやめる(難解な漢字、流行語)
⑤勘に頼らず、勘に頼れ(たくさんある言葉の中からどれを選択するかという問題)
⑥モノを見る眼を養え
⑦書くべき光景を思い浮かべよ
⑧文のメリハリをつけよ
⑨良い作者であるより、良い読者であれ(自分の作品の読み手になれ)
⑩一日一筆

●わかりやすい文章が良い文章

●「設疑法(せつぎほう)」言わんとする事を強調するために、わざと疑問文をしつらえて、読者に注意を引き付ける方法。『何の不思議があるのだろう』小説の心理描写に有効
「名詞どめ」『灰色の海』普通の文章に名詞とめをはさむと、切れがよく、相応に強い印象を与え、かつ余情余韻を与える
「倒置法」主語と述語を逆において、文章に変化をつける。『できないわよ、私』
「比喩」直喩とは「まるで」「さながら」「例えば」「あたかも」といった副詞を用いるなどして「・・・に似た・・・」「・・・を思わせる・・・」「・・・みたいな・・・」

藤本義一の文章教室(藤本義一)

●文章への道は自分で書いたものだという自信を持つ事。自分の自由な発想を大切にする。自分の内側に湧いてきたものが、次第に大きく膨れ上がってくる事が、それが、文字という突破口を見つけてきたときに文章となってゆく。詩は自分の心の中に純粋な目を持つことだ。「風か吹く」を「風が光る」という表現が感受性。コピーライター志願者、新聞、雑誌の記者は、言葉のリズムが最大の財産。歯切れの良い文章を書く場合には大切だ。

●一味違う文章。省略。「私は妻と結婚して二十年経った」を省略、倒置法で「二十年経った。結婚してから・・・」また結婚をという熟語を消して「妻との二十年」　このように、推敲とはより贅肉を削り落として、文体をつくりあげてゆく事。

●イメージを豊かにする方法
①常に何かに疑問を持つ
②集中力
③改良すべき点を見つける
④実現に努力する
⑤実現まで何度も失敗を恐れずに試みる。つまり、頭の体操を楽しむ

●同人誌。集まってくる人の顔が違うように、集まってくる人達の感覚も違う。年齢、職業、性別、えてして、志を同じくした者同士だからといった安易な考えで、相手の作品を評価せずに批判してしまう集まりがある。批評ではなく、批判である。そして、非難である。他人が書いたものには、いくらでも好きな事が言える。それを言っている間に、自分が書けなくなった人が世の中には多い。相当したたかなエネルギーを持っている人は別として、繊細な神経を持っている人は批判や非難を受ける都度に萎縮してしまい、自分の内部にある大切な宝物を失ってしまう。
ブレーン・ストーミング(頭脳を嵐にする)
アイデア獲得法　創造性開発
一つの主題を選ぶ。それは核戦争、塵芥処理でも何でも良い。集団の中に共通事項が持てるものであれば、何でも良い。
①発言の内容は質より量。多ければ多いほど有効性がある。
②他人がどんな発言しようと嘲笑してはならない。批判、非難あるいは議論の対象にしてはならない。
③発言は無秩序でいい。何か思いついた人は挙手などの意志表示をして発言する。内容としては滑稽なものとか、面白いものの方が良い。
自由な飛躍。突飛な発想して、他の人の尻馬に乗った発言をする。

●身近な出来事とか、物を見る目には四段階ある。観察、考察、推察、洞察。

●性格描写の要素には１０種類ある。
風采、境遇、地位、教養、気質、思想、表情、用語、行為、その他
性格描写の一番の問題点は、人間性探求の問題。簡素、明確に行動と台詞によって、人物を立体化させるところにシナリオ作家としての技術が問われる

ぼくのミステリ作法(赤川次郎)

●着想方法
①謎をこしらえて、四苦八苦して解くもの
風変わりな設定しておいて、そこに事件が起こったらどうなるか。連鎖反応型

●新しい物の利用。電卓、マイコン、留守番電話

●「並列法」机の上には空の瓶、万年筆、財布・・・　ずっと、離れた箇所に万年筆はカートリッジという表現。なぜ、インクの瓶があるのかという。謎が。

●どの登場人物にも少し怪しい所を持たせておくと、解決の時は楽である。

ミステリーの書き方(アメリカ探偵作家クラブ)

ルール
①登場人物が直面する問題は読者の関心の引くに足りる重大なものである。
②主な登場人物は物語を通じて登場している。
③事が起こる前に伏線ひかれている。
④登場人物は問題を何とかしようとして努力する。

●アイデアの見つけ方
あらゆる事がストーリーの引き金。歌の一節、一度は気にとめずに見過ごした出来事、何かで読んだり聞いたりした事。変わった人を見かけた時、人の会話が耳に入った時、新聞記事。

●登場人物、テーマ、背景が、徐々に付け加わって増やしていって、プロットに育つ。ストーリーの分析。自分でも書いてみたいと思う小説を一つ選び、三四回じっくり読んだ上で、バラバラに解剖して、どんな構成になっているか確かめる。

●構成のしっかりした小説を書く最善の方法は、まず最初に構成を考える事。書く前に計画して、結末を知ってから中央部のプロットを作る。

●こんな傾向の本を書こうとするアイデアが浮かぶと、まず殺される人物を設定する。次に、犯人と動機を決める。ここまで持ってくる間に、犯人と被害者の素性や性格、生活環境がある程度浮かんでくる。これを念頭において、次に犯人がいつ、どこで、どうやって殺人を犯すか考える。この時点までにトリックを思いついていれば、探偵が謎を解く鍵もわかっているわけだから、鍵が犯行現場にからむ事を忘れずに練りこんでゆく。トリックがまだ決っていなかったら、事件がどうやって解決するかここで考える。

●本当らしく書くための手段は３つ。
①本を読むこと
②自分の目で確かめる
③事情通に聞く

●サスペンスはあらゆる小説の主要素材。読者の興味を捕らえて離さず、次から次にページをめくらせる。その為には、読者に登場人物の身の上を心配させなければならない。

●バックグランドを展開させる上での登場人物の機能。まず、ある社会で重要な役割を持つ個性的な人物を選び出す必要がある。村、街、研究所、国際組織。彼らの発言の中に専門の仕事や育ちを暗示させる言葉を取り混ぜて、新鮮さを与える。方言は駄目。話しぶりやイメージの選択によって人物の素性を充分に伝える。好奇心は作家の命。登場人物が就いている職業に特有の用語を駆使する。「尋問する」は警察という言葉が浮かぶ。雰囲気を感じさせるバックグランドの効果的な使い方は、映画の研究だ。観客に、バックグランドを知らせるために、「足がための場所」騒々しい車の音に逆らいながら電話ボックスから電話を掛けている人物、ボックスの外にはイライラしながら電話の空きを待つ人々、汚いレンガ壁の落書き、これらは「都市」を形づくる。主人公がジュークボックスで一枚のレコードを選べば、直ぐに室内の情景、主人公の音楽の好み、他の常連への関心わるいわ無関心ぶり、常連の反応。バックグランドは見せよ。語るな。見せるとはアクション、物事の関わり方で、語るとはアクションの準備、説明であり、本来、必要の無い事。

笑う満月(花村満月)

●一ヶ月1500枚書いた。とても人様にお見せできることではない。とにかく身辺雑記でない虚構を持続する事が出来た。後は、プロとしての技術を身につけるだけである。推理小説はオチとエンディングが命。

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