坂本龍馬の言葉(『竜馬がゆく』より)


竜馬の雄弁は有名で、さかんに例え話しをもってゆく。それが、実にユーモアがあり、的を得ている。気に入っている竜馬の言葉を書いてみよう

水練

川に入ればぬれるのだ。水を浴びるのに晴雨は関係ない。

英雄とは

衆人がみな善をするなら、おのれ一人だけは悪をしろ。逆も、またしかり。英雄とは、自分だけの道を歩くやつの事だ。

議論

竜馬は議論はしない。議論などは、よほど重要な時でない限り、してはいけならぬ、と自分にいいきかせている。
もし議論に勝ったせよ。
相手の名誉を奪うだけのことである。

師匠

おれは剣術だけは師匠についたが、学問はべつに、学者になろうとは思わんから、師匠はいらん。

人生とは

人生は一場の芝居だと言うが、芝居と違う点が大きくある。芝居の役者の場合は、舞台は他人が作ってくれる。なまの人生は、自分で、自分のがらに適う舞台をこつこつ作って、その上で芝居をするのだ。他人が舞台を作ってはくれぬ。

万国公法

剣に頼らず、法律と常識に頼れるような日本にしたい。

形見

脇差なんぞはいくらでも売っている。あんな金物を父の形見だとか武士の魂だとかいっているのは自分に自信のない阿呆のいうことだ。形見はお前さん自身さ

志に向かって

人の一生というのは、たがたが五十年そこそこである。いったん志を抱けば、この志に向かって事が進捗するような手段のみをとり、いやしくも弱気を発してはいけない。たとえその目的が成就できなくても、その目的への道中で死ぬべきだ。生死は自然現象だからこれを計算に入れてはいけない

奇策

奇策とは百に一つも用うべきではない。九十九まで正攻法で押し、あとの一つで奇策を用いれば、みごとに効く。奇策はそういう種類のものである。真の奇策縦横の士とはそういう男をいうのだ

説得

相手を説得する場合、激しい言葉をつかってはならぬ。結局は恨まれるだけで物事が成就できない

徳川幕府

「アメリカでは、大統領が、下女の暮らし立つように考えて政治をやる。徳川幕府は徳川家の繁栄のみを考えて、三万人の人間をおさえてきた。幕府、幕下の諸大名しかり。藩の都合だけで政治をする。いったい、日本人はどこにいるのか。もっとも光栄をになうべき日本人はどこにいるのか。日本人は三百年、低い身分にしばられ、なんの政治の恩恵を受けていない。この一事だけでも、徳川幕府は倒さねばなりませんよ」(龍馬が桂小五郎に言った言葉)

山内容堂への反感

「世に生きものというものは、人間も犬も虫もみなおなじ衆生で、上下などはない」
「本朝(日本)の国風、天子を除くほかは、将軍といい、大名といい、家老というも、みなその時代の名目にすぎぬ。物の数ともなすなかれ」
「藩じゃとか大殿様じゃとかの御意向をいちいち気にしていては、世の大事は成らぬ。もし攻めて来れば、弾丸刀楯をもって馳走する覚悟だから、そのつもりでよ」

大名修行

慎重もええが、思い切ったところがなきりゃいかん。慎重は下僚の美徳じゃ。大胆は大名の美徳じゃ。将か士かはうまれつきできまるものだが、お前は大名修行をやれ

斬り合い

闘る・闘る、と双方同じ気を発すれば気がついた時には斬りあっているさ

志を持って天下に働きかけようとする者は

志を持って天下に働きかけようとするほどの者は、自分の死骸が溝っぷちに捨てられている情景をつねに覚悟せよ。勇気ある者は自分の首が無くなっている情景をつねに忘れるな。そうでなければ、男子の自由は得られん

死生観

「牛裂に逢ふて死するもハリツケに会うも、又は席上にて楽しく死するも、その死するにおいは異なことなし。されば英大なることを思うべし」
「われ死する時は命を天に返し、高き官へ上ると思ひ定めて死を恐れる畏るるなかれ」

西郷隆盛評

われはじめて西郷を見る。その人物、ぼう然としておりとらえどころなし。ちょうど大鐘のごとし。小さく叩けば小さく鳴り、大きく叩けば大きく鳴る

評判

浪人会社をおこすにはこのさき金が頼りだが、金よりも大事なものに評判というものがある。世間で大仕事をなすのにこれほど大事なものはない。金なんぞは、評判のあるところに自然と集まってくるさ

好きな道

人間というものはいかなる場合でも好きな道、得手の道を捨ててはならんもんじゃ


おれの足が半日早ければそのぶんだけ日本は救われる、という気になってきた。ひろい日本に、おれだけしか天下の騒乱をおさめる者はいない、という気になっている

時運

下手な祈祷師はやみくもに祈る。じょうずの祈祷師は、まず雨が降るか降らぬか、そこを調べ抜いたあげく、降りそうな日に出てきて護摩を焚く。されば必ず降る。天下の事も雨乞と同じで、時運というものがあり、その時運を見ぬかねばならぬ

薩長同盟

「薩摩がどうした、長州がなんじゃ。要は日本ではないか」「われわれ土佐人は血風惨雨の中をぐって東西に奔走し、身命をかえりみなかった。それは土佐藩のためであったか、ちがうぞ」「薩長の連合に身を挺しておるのは、たがが薩摩藩や長州藩のためではないぞ。君にせよ、西郷にせよ、しょせんは日本人にあらず、長州人、薩州人なのか」

ワイ談

年上の人を相手にワイ談をしちゃならん。図に乗って淫談戯論をするうちに、どうしてもその語中に見さげられるところが出てくる。年配者は、面白がりながらも心中、軽侮する

人真似

先人の真似ごとはくだらぬと思うな。釈迦も孔子も、人真似でない生き方をしたから、あれはあれで偉いのだ

棲み家

地球こそわが棲み家

異論家

四、五十人も人数が集まれば、一人ぐらい異論家はいる。いるのが当然でもある。その一人ぐらいの異論を同化できぬおのれらを恥ろ

・・・しかない

しかない、というものは世にはない。人よりも一尺高くから物事をみれば、道はつねに幾通りもある

統制力

中岡慎太郎「どういうわけで、そのように人が集まってくるのだ」
竜馬「おれが、気楽だからだろう。助けてやらねばどうにもならぬと思って奴等は集まって来るらしい」
中岡「最初、どうやって見つけるのかね」
竜馬「おい来ないか、と言うだけさ」

大事業を成すには

男子はすべからく酒間で独り醒めている必要がある。しかし同時に、大勢と一緒に酔態を呈しているべきだ。でなければ、この世で大事業は成せぬ

絶望

世に絶望ということはない

恋人と兄姉

恋人なら逢わにゃどうにもならんが、兄姉なら会わんでも兄姉にはわかりがない


もう土佐も長州も薩摩もないがぜよ。藩なんかクソくらえじゃ。さらば、土佐の海よ、ほいたらグッドバイ!

大政奉還実現しての竜間の呟いた言葉

大樹公(将軍)、今日の心中さひそと察し奉る。よくも断じ給へるものかな、よくも断じ給へるものかな。予、誓ってこの公のために一命を捨てん

仕事

「おれは日本を生まれ変わらせたかっただけで、生まれ変わった日本で栄達するつもりはない」「こういう心境でなければ大事業というものは出来ない。おれが平素そういう心境でいたからこそ、一介の処士にすぎなぬおれの意見を世の人々も傾聴してきてくれた。大事をなしとげえたのも、そのおかげである」「仕事というものは全部をやってはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分は誰でも出来る。その二分人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはできない」

償い

船を沈めたその償いは、金を取らずに国を取る。

新政府役人表

西郷隆盛「この表を見ると尊兄の名が見あたらないが」
竜馬「あれは嫌いでな〜」
西郷「なにが」
竜間「窮屈な役人が」
西郷「窮屈な役人にならずに、何ばしなはる」
竜馬「世界の海援隊でもやりましょうかな」

最期の言葉

慎ノ字、おれは脳をやられている。もう、いかぬ






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