ホ ッ プ ・ 軽 井 沢 新 婚 旅 行



12月29日、約一ヶ月遅れの新婚旅行である。正確に言えば、新婚旅行第一弾(ホップ・ステップ・ジャンプ新婚旅行の三段階新婚旅行のホップ部分の軽井沢旅行)の当日なのである。現在、妻のみっちゃんは、埼玉飯能市から横浜に引っ越しが終わり、一週間前から完全に住んでいた。結婚してから約一ヶ月間、別ににケンカしていたわけではないが(彼女の仕事の関係上)別居していたのだが、長いようで短い一ヶ月間は、俺達夫婦にとって新婚旅行はある意味新鮮な感じがしたそれはともかく、朝、起きると、妻がそばにいる。声をかければ起きるかもしれないが、カーテンのわずかな隙間から見える闇から、まだまだ明け方ではない事が確認できた。俺は布団からそっと抜け出した。時計を見ると4時。前夜の忘年会の酒がまだ残っていたが、頭をガンガン鳴らせている場合ではない。これから、緻密な計画の仕上げをやらないといけないのだ。まず予算五万円を新幹線代、宿泊代、お土産代等に振り分け、俺の荷物の文庫本、ポケモン、るぶぶ軽井沢、時刻表等をバックに詰め込む。仕事でも旅行でも何でもそうだが、準備で何事も決まってしまう。成功のカギは準備が握っているのだ。そうこうするうちに、5時になってしまった。そろそろ妻を起こさないといけない。一人で新婚旅行しても、帰ってくれば離婚届けと膨大な慰謝料請求が待っているだけだ。「おい」と、声を一声かける。「いま何時」と、すぐに返事が返ってきた。どうやら起きていたようだ。少し、ゴソゴソ、ガタガタ、ドンドンと旅支度をやっていたようだ。妻を起きて、荷物をバックに詰める。一つのバックに俺と妻の着替えが等が入っていると思うと、もう、夫婦なんだなーと、再び実感する。夫婦はお互いの足らない部分をカバーしながら、二人一緒で巨大な人間として生きてゆける。バック一つだというのが、一人の巨大な人間への偶像だと言える。俺はデカイわりには、軽いバックを肩にかける。まだまだ、これからバックに色々な物を入れていかなければならない。夢の実現とか二人の財産とか・・・ 二人でやっていけば、苦労も楽しみに変わってゆく。二人して、最後の戸締まり、ガスの元栓、予約ビデオ、電気の消灯を確認する。部屋のカギを締めて、外にでると肌を突き刺す空気も気持ちがいい。ところどころには、団地の部屋から明かりが見える。「もう、起きている所もあるんだね」と、二人して言い合う。一つ一つの部屋にも、色々な暮らしがある。俺達夫婦にとっても、その一つ一つの家庭だが、この数百世帯もある団地の中で、一番幸せな家庭を作ろうと二人誓い合う。俺達の団地から、駅まで歩き、駅で新幹線のキップを買う。東京駅まで着くと、サンドイッチを買った。旅の始まりは駅弁に始まるという俺の持ち論がある。駅にはそれぞれの匂いがあり、近年の交通の便が良くなると、その匂いも感じられなくなり、寂しいが。俺にとって、東京駅は、出発、スタートというイメージがある。鹿児島から上京してきた時から、その印象はこびりついている。その頃の俺の東京駅は、巨大な迷路のように田舎者の俺を苦しめた。山の手線なるモノが電車と、どう関わり合いがあるのかわからず、また東京駅自体に数々の改札口が、都会の入り口を、さらにわからなくさせて、俺を不安にさせていた。が、今は違う。相変わらず、ボケた都会人として都会で生活しているせいか、すぐに新幹線の改札口を通り、目を閉じていても歩いていけるような正確さで、無駄なく新幹線に乗り込む。朝も早いせいか、時期がちがうせいか、帰郷シーズンにも係わらず、新幹線の座席に楽々と二人は座れる。しかも、空席が目立つようだ。約一時間の新幹線の旅は過ぎ、軽井沢に着いた俺達に、冷たい風が暖かく俺達わ冷やかす。ヒューヒューと。軽井沢駅から迷いつ、今夜の宿、プリンセスペンション(一泊二食税別6900円)に着く。全国ペンションカタログで見たように、赤レンガが美しい。俺達は早くもチャックインして、荷物を置く。一時間ぐらい旅の疲れを癒し、早速、軽井沢探索。そのペンションから自転車を借りて(一日一台1400円)軽井沢銀座に。東京の銀座風ではなく、観光地原宿風である。軽井沢銀座を真っ直ぐ突っ走り、松尾芭蕉の句碑、軽井沢ショー記念礼拝堂を見学し、そして昼食に細い路地に行列が並ぶと言われる『関所ラーメンさかえ』で、二人ひねくれて焼き肉定食を食べる。そして、再び、サイクリングが続き、聖パフロカトリック教会、三笠通りを走り旧三笠ホテルの見物。そして計画では滝返の滝、白糸の滝とサイクリングしょとと思っていたが、なんと有料と道路に阻まれ、断念。流石に、山道では断念せざるえない。人生には苦労が付き物だが、あえて体当たりすることはない。予定変更し、中軽井沢に向かう。雲場池で、池一周の散歩をすまし、軽井沢高原教会・石の教会・内村鑑三記念堂と、サイクリングの仕上げを向かえる。本当は、この石の教会で、二人だけの結婚式を上げるつもりだったが、いろいろな諸事情で妻の実家の近くの式場が変更になったのだ。だから、この寒い中でも、軽井沢に新婚旅行して、この教会に行こうとしたのだが。二人だけの心の中の結婚式を終えて、色々な思いを残し、教会を離れる。ペンションに帰る前に、もう一度、軽井沢銀座に行くことになる。ワインを買うためだ。お晦日に友人が遊びに来る為、その時に飲むワインを買うためだ。が、ところが、必要な時に必要な物がない時が多い。マーフィーの法則。散々、探したあげくに、もう、無いだろうと、諦めた瞬間、天が我を見逃さなかった。希望の光がコウコウと、店舗から俺達を照らす。ドラマチックに俺達は店に入ってゆく。色々と試し飲みし、散々悩んだ挙げく、一本買う。ペンションには、4時過ぎに着く事になる。久し振りのサイクリング気分は爽快だった。さて、晩御飯だが、ペンションの食堂に出された食事は、俺達を満足させるに、充分だった。フランス料理風で、まずスープからはじまり、サラダ、魚料理、肉料理、ライス、最後のデザートと。その間に飲んだワインも、中々良かった。そして、夜はテレビを見つつ、いつのまにか眠って・・・
  朝、目が覚めると、肌寒さを感じた。ふと、カーテンを開けて、窓の外を見ると、信じられない光景に。軽井沢は一面の雪化粧。やはり、寒いはずだの一言で納得。ぶるるっと震えて、また布団のの中に滑り込む。いかん、いかん。ここで寝てしまっては、昼まで寝てしまう。俺達は、飛び起きて、身支度をはじめた。年末なので、家に帰ってから、色々とやる事があるのだ。時間は8時。そろそろ朝食の時間だと思った時に、放送が流れる。「朝食の準備が出来ました」と。俺達は食堂に行く。朝御飯も、晩御飯に負けずに美味しかった。10時過ぎには、俺達は軽井沢に降った雪に足を踏み込んでいた。駅に向かって、どんどん歩いて行く。冷たい雪がまだ、降り続いているが、心持ち、一人で歩くより、二人で歩いている方が暖かい。俺の父が言っていた言葉を思い出した。「ここに一つの豆腐がある。これを一人で全部食べた方が美味しいか、一つの豆腐を半分づつにして食べた方が美味しいか?」と。俺は冗談で「三分の二を俺が食べて、残りを相手に食べてもらった方が美味しい」と答えたが、実際は、半分づつ食べた方が美味しいに決まっている。そういう事を思い出しながら、駅近くのお土産屋に着く。少しのお土産を買い、駅で釜飯を買い、東京行き新幹線に乗り込む。(終わり)


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