電話が鳴る
俺は、まただと思った。
最近、深夜に電話がかかってくる。
受話器を取り上げると、受話口から女の悲鳴が聞こえて、終わりである。
つまり、相手が電話を切るのだ。
俺は今日こそは電話を取らないことにした。
毎度毎度のイタズラ電話に、懲りているのだ。
馬鹿野郎。
いつまでも、電話は鳴り続いた。
が、俺は電話を我慢して取らなかった。
一時間後、やっと電話がとまった。
誰だが、わからないが、諦めたのだろう。
俺は、ホッとした。
全く、妙なイタズラだ。
どこのどいつが、こんな事をやるのだ。
俺は、段々、腹が立ってきた。
しかも、真夜中に。
電話を見つめていた俺は、スーッと背中に悪寒が走った。
女の悲鳴が聞こえてきたからだ。
電話からではない。
電話機はフックに収まっている。
が、悲鳴は夜の静寂を破って、いつまでもいつまでも、続いている。
俺は布団の中にもぐりこんだ。
そして、悲鳴の間から、か細い声で。
「イ・ジ・ワ・ル」と。
俺は、電話をとらなかった事を後悔した。
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