一本道の果てには


一本道の果てには  白い闇。
 俺はその中を歩いていた。
 一本道の硬いセメントに暖かい雪が落ちていく。
 俺は死んでいた。
 俺の生きている時の最後の記憶は、新宿でぐでんぐでんに酔っている時に、よく憎まれ口を叩かれていた浮浪者に、ナイフでブスリとやられた事だった。
 この一本道の果ては何があるか、わかっていた。
 地獄なのだ。
 俺は、相当、悪どい事をやってきた。
 恐喝、窃盗、殺し…
 しばらくゆくと、閻魔大王が俺の前に現れた。
「この道を後少しゆくと、道が二つにわかれる。一つは美女のいる国。もう一つは酒の国だ。どっちを選ぶ」
 俺は酒と女には目が無い。
 どっちの道も俺にとっては天国だ。
「俺は地獄におちるのではないのか」
「ここには地獄は無い。さあ、どっちを選ぶ」
「美女のいる国だ」
「じゃあ、右の道を進め」
 俺は言われた通り、右の道を進んだ。
 一歩、一歩、進むうちに… 
 俺の身体に変化が…
 一歩進むごとに一年、二歩進むうちに二年と、歩くたんびに歳をとってしまう。
 白い闇の中から、美女が現れた。
 俺はヨボヨボになりながら、歩き進んだ。
 美女にあと、一歩という所で、俺は白骨死体になっていた。




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