「あっ、何だろう。あの光は」
「流れ星だ」
「いや、違うぞ。よく見ろよ、翼があるぞ」
「宇宙船だ。宇宙船に違いない」
人々は夜空を仰いで叫んだ。
「どんどん、降りてくるぞ」
「行ってみよう」
青白い光りの尾を引いた物体はみるみる間に大きくなると、町外れの林のかげに着陸した。
町中が大騒ぎだ。
人々は大急ぎで林へと向かった。
それはまるで大きな鳥のように見えた。
鋭く尖った三角の翼。
先端は長く突き出し、目のような光る二つの窓さえあった。
「宇宙船だ」
「大変だ、警察に知らせろ。いや、自衛隊もだ」
人々はこれからどんな宇宙人が現れててくるか気が気じゃなかった。
やがて、警察隊や自衛隊が到着し、厳重な非常線が張られた。
戦車や戦闘機はいつでもミサイルが撃てるように、宇宙船にジッと狙いを定めた。
一時間ほど、時間が経過した。
宇宙船は急にブルッと震えた。
遠くに取り巻いて見ていた人々は、わーっと、逃げはじめた。
宇宙船はふいに音もなく舞い上がった。
やってきた時と同じように、青白い光りを吐き出すと、矢のように夜空へ上がっていった。
そして、見えなくなった。
後には大きな箱が残されていた。
科学者が箱の中身を調べようとしたが、開ける事も壊す事も出来ない。
無鉄砲な軍人が戦車のミサイルを箱に向けて、ぶっ放したがビクリともしない。
仕方なく、自衛隊はずっしり重い箱をトレーラーに乗せて町へと運んだ。
それから一時間後、突然、箱はパカッと開いた。
人々が集まって見ると、箱の中から小さな白い塊が出てきた。
よく見るとそれはミニチュアのような小さな町の模型だった。
「何だ、これは」
「宇宙人のプレゼントか」
「きっと自分たちの町の模型を置いていったに違いない」
「妙な形のビルもあるし、この糸を張り回したものは高速道路かな」
人々はホッと安心した。
その時、空から雨が降ってきた。
雨ではない。
かなり高温だ。
「何だ、何だ」
「ワーッ、熱ちぃ、熱い」
「うおーっ、ミニチュアが膨れてきたぞ」
膨れ上がるミニチュアの町は、とんどんと大きくなり、ビルを押し倒し、メキメキと学校を壊し、橋を押し倒し、どんどん成長していった。
その間にも、熱湯の雨が町を襲う。
どうやら、熱湯の雨がミニチュアを大きくさせているようだ。
どんな物質でミニチュアが出来ているのか判らないが、ミサイルを撃ちまくっても、ミニチュアの町をかすり傷一つ与える事が出来なかった。
またたく間に、ミニチュアは町の一つの平野を占領し、やがて隣り町まで飲み込んでいった。林のようにそびえ立つ高層ビル、縦横に走るモノレールや高速道路、学校、公園まである。
素晴らしい街であった。
街に一角には巨大な宇宙船用の空港さえある。
それは、どう見ても人間の為の町ではなかった。
ビルの入り口の高さがどれも二十メートルもあるからだ。
やがて、無人の街に、何百隻の巨大な宇宙船が降りてきた。
インスタント街に。
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