プ ロ フ ェ シ ョ ナ ル


 こんな物事が都合良く運ぶわけがない。
 世の中が俺にそう感じさせたのは、数ヶ月前からだった。
 彼女が欲しいと願えば、本屋で一緒の本を手に取ったキッカケで付き合い始め、大恋愛に発展。
 チンピラに絡まれたら、偶然、近くを通った大学時代の先輩に助けられ、仕事の世話までしてもらい、有利な条件で転職。
 財布を落とし、普通なら、戻ってこないのに、拾った相手が可愛い女子高校生。
 今どき、親切に交番に拾った財布を届ける女子高生はるかっ。
 何から、何まで、ドラマチックに物事が運ぶ。
 今日も競馬で、メインレースを外し、大金を逃したと思ったら、レースを間違っており、そのレースが大的中。
 しかも、大万馬券。
 これで、先輩に紹介してもらった会社を辞めて、好きな絵の勉強にパリに行くか本気で迷う事になる。
 こんなエキサイトした人生を歩んでいのだろうか。
 疑問を持ちながら、新宿高層マンションの寝室のベットに入ろうとした時に、ほらほら、電話が鳴り出した。
 おそらく、彼女だろう。
 母がお見合いの写真を持って上京してきたという内容だろう。
 俺は次の展開を読めるようになっていた。
 俺は何もかも面倒になってきた。
 そして、電話には出ずに、布団をかぶった。
 その時、俺の部屋の外から、怒鳴り声。
「こらっ、台本通りにやってもらわないと困るではないか。俳優なら、俳優らしく、しっかりしろ」と、テレビドラマの監督の声。




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