実録風恋愛小説



 俺は新宿アルタ前にいた。
 数日前に元恋人の美浦から手紙があったのだ。
 数年振りだった。
 どうやって調べたか、わからないが、目的の為なら苦労を惜しまない美浦ならやりかねない事だった。
 手紙には『●●日の××時にアルタ前で、待っています』と書かれていた。
 今となって、どうして、会いたい思うか、わからないが、俺は美浦の近況を知りたいと思い、会おうと思った。
 俺と美浦が別れて、四年になっていた。
 俺はその後、新しい恋人と結婚、美浦は・・・
 俺は美浦に競馬を教えた。
 二人して、東京競馬場のゴール前で燃えた。
 当たり馬券を握りしめ、はしゃぐ美浦。
 それから、別れて、風の噂で、ギャンブル狂になり、カジノに狂い、儲けた金でラスベガスに行ったと聞いていた。
 それからの後の噂はプッツリと聞いていない。
 俺はアルタ前で待っていた。
 約束の時間を十分過ぎていた。
 俺の目の前で、待ち合わせの人達がいたが、次々と相手が来て、俺だけが取り残された。
 俺と美浦が別れる原因は、沢山あったが、一番の原因は、美浦が時間にルーズだった点だ。
 何度となく、俺は待たされた。
 約束の時間、二時間過ぎても、美浦は家にいて、デート前の風呂に入っていた事もあった。
 クリスマスのデートの時は、幸せそうなカップルが腕を組んで歩いているビルの蔭で、一時間待っていた。
 元来、俺は待つ事が嫌いな人間だった。
 普通の友達だつたら、五分も経たないうちに、待ち合わせの場所を離れてしまう。
 愛しい恋人だからという理由で、甘やかしていたのだが、それが裏目に出て、別れる原因の一つになってしまった。
 待ち合わせの時間、一時間経過した。
 もう、限界だった。
 美浦の家に電話してみようかと思ったが、待たされる人間が、なぜ、電話をしないといけないのだと思い、気が引けた。
 一時間待ったのだから、もう、よいではないか。
 そう考えたら二時間経過していた。
 俺は待ち合わせ場所を離れる決心をした。
 美浦に会いたい未練を残して・・・




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