顔面障害女がいた。
女の顔を見ると三秒で死ぬというメデューサのような女。
とにかく、存在自体が恐い。
ハルマゲドン級のドブス。
破壊的な顔面観賞会をテレビ局で催したが、視聴者全員が病院送り。
病院が定員一杯で、窓からこぼれ出す始末。
ひとたび、女が歩けば、空気汚染され、放射性廃棄物より恐い有害息。
顔面崩壊女から電話があった。
受話口から、ボロボロと言葉が腐りだす。
「もしもし、本命竜馬さん?」
名前まで呼ばれ耳にガン細胞を繁殖させられた。
「何だ」
俺は電話の声に怒りすら覚えた。
「本命さんとデートしたいの」
何、何。
百億万年早い。
デートの意味を知っているのか。
このスクランブル顔面女は・・・
「ねぇーっ、いいでしょーう」
「・・・」
俺の脳は花火を打ち上げ、前頭葉に火花が炸裂していた。
「何か、言ってよー 本命さーん」
完全に俺は、ピンボケ本命竜馬になったようだ。
バンジージャンプを地球の裏側までやったように、俺は放心状態。
つられるままに、いつのまにかに・・・
「デートしょう」と、洗脳信者のように答えてしまった。
「ありがとう、私、嬉しい。嬉しくて、本命さんを抱きしめてあげたいわ・・・」
想像するだけでも恐しい。
地獄の愛撫が待っている。
そして、そして、禁断の処女膜に・・・
もし、触れれば、世界が暴れだし、宇宙は五臓六臓嘔吐級の二日酔い・・・
もう、世界は終わりだ・・・
叫びたい気持ちも、今は・・・
俺にはお構いなく、その究極の至上最低のドブスは、殺人ウィルス的な言葉を巻き散らす。
「じゃあー、アルタ前で待っている。シースルのドレスで待っているから楽しみにしていてね。
(^-^) (^-^) (^-^) 」
三段 (^-^) のニコニコ顔文字言葉に、俺の心は散弾銃で狙撃されてしまったようだ。
生きた亡霊、脱水症状の廃人となった俺は、フラフラと揺れるように、新宿アルタ前に向かった。
だが、俺はアルタ前にはたどり着けなかった。
新宿アルタ前は、悲鳴と絶叫が鳴り響き、人々はキチガイ地獄にのた打ちまわっていた。
致死量限界値崩れ顔ブス女の周りでは、気が狂った女子高校生が大量の血液を吐き、エリート・サラリーマンは、肛門の括約筋が緩み、ウンコの大噴射。
浮浪者は小便をシャンプー代わりに髪を洗い、風俗嬢はその場でマット運動、主婦は赤ん坊を残酷料理し、ナンパ師はモデル風の女相手に絶倫自慢。
新興宗教の勧誘している非とは顔面麻痺女を見て、何を勘違いしたのか、女を神だと思い、手形と実印を投げ出す。
顔面危険地帯女は、新宿周辺をさらに危険地帯にしていった。
歩くつどに、気絶する者、悶絶死する者、暴れる者、キチガイになる者・・・
高校生はナイフを振り回し、地面をノート代わりにして、血飛沫で微分・積分の問題を解く。
占い師は、お客を締め殺し、動かなくなった秒数で、今日の運勢を占い、お相撲さんは地球を押し出しさせようとする。
新宿はチキガイの街、キチ街(ガイ)と化した。
そして、終演に、無差別嫌悪感女の最後のお叫び。
「本命さーん、待っているからねー」
新宿の魔地(街)は、崩壊した。
この世とは思えぬ振動と共に、新宿は塵となり、粉々に砕け散っていった。
新宿に向かう山手線電車の中の俺の精神状態は、一晩に一千人と、やっちゃったような状態だった。
それを解いたのは、電車から流れる放送だった。
「ただ今、新宿で、異変が起き、新宿は完全に滅亡しました」
衝撃的な放送に、俺は我に返った。
ホッとするのも束の間、俺は電話口で毒された後遺症にさい悩まされた。
俺の身体は誰かに、抱き締められているような気分にさせられていた。
しかし、吐き気と頭痛を伴う抱き締め具合は・・・
これは・・・
これは・・・
次々に俺を見る人々が倒れていく。
叫び、狂ってゆく。
やはり・・・
「本命さんを抱き締めてあげたいわー」
と、言われた言葉が殺人ウィルスの発祥源だと、その時、気づいた。
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