謝 罪 の ス ス メ



 犯罪者は、出所の日が待ち遠しかった。
 随分、長い刑期が過ぎ、やっと刑務所から出られる頃には、犯罪者の髪は白くなりシワが増えた。
 が、犯罪者にとっては、そういう事はどうでも良かった。
 もうすぐ、大金が手に入るのだ。
 数十年前に、銀行強盗で手にした金をある場所に隠した。
 犯罪者は大金のありかを白状せずに、刑が終わった。
 犯罪者大金のある場所まで急いだ。
 ある場所は、数十年前と一緒だった。
 犯罪者は大金が埋まっている土の下を掘りはじめた。
 あった。
 ジェラルミントランクが。
 犯罪者は震える手で、トランクを開けた。
 札束が出てくる。
 が、犯罪者は札束を見た途端、ヘナヘナと座り込んでしまった。
「こんな事が・・・」
 一万円札の札束の福沢論吉は、数十年の歳月が経ったように、髪は白くなり、シワが増えて、別人のように変わっていた。


えすえふ少説に戻る